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【2025】製造業のM&Aとは?急増している6つの理由や売却側と買収側のメリットや注意点を解説

近年、製造業向けERPを提供するベンダーによるテクノロジー企業の買収が活発化しています。かつては、大企業による中小企業の買収のイメージが強かったM&Aですが、現在は、業界の垣根を越えた異業種間の提携や、スタートアップ企業への投資など、その形態は多様化しています。

今回は、M&Aが急増している6つの理由や売却側と買収側のメリットや成功させるための注意点を詳しく解説します。

製造業のM&Aとは?

製造業のM&Aとは?

製造業のM&AとはMergers and Acquisitionsの略で、企業が合併や買収によって規模を拡大したり、新たな事業に進出したりするための戦略的な手法です。具体的には、株式の譲渡や事業の譲渡を通じて、企業の所有権や事業が移転されます。

合併 複数の企業が一つになる
買収 ある企業が別の企業の事業や株式を取得する

従来、製造業では主に大企業や中堅企業によるM&Aが盛んに行われていましたが、近年では、中小企業の後継者不足が深刻化する中で、事業承継を目的としたM&Aが増加しています。

製造業の仕事については以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

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製造業のM&Aが増えている6つの理由

先述したように、近年は製造業におけるM&Aの動きが活発化しています。その背景には、後継者不足で事業承継を目的とする以外にも以下のような様々な理由があります。

  1. 大手企業が自社で一貫した製造を行うため
  2. ビジネスモデルを変えるため
  3. コア事業に集中するため
  4. 大手企業への傘下入りを図るため
  5. 業績低迷のメーカーをファンドが買収するため
  6. 後継者問題を解消するため

各項目を具体的に見ていきましょう。

①大手企業が自社で一貫した製造を行うため

大手企業は自社グループ内で部品の設計から製造、販売までを一貫して行うことで、製品の品質向上や納期短縮、コスト削減などのメリットを期待しています。中小部品メーカーにとっても、大手企業の安定的な需要を確保できることや技術指導を受けることで製品の品質を高められるといったメリットがあり、M&Aは双方にとって相互利益をもたらします。

②ビジネスモデルを変えるため

デジタル化が加速する時代において、企業は既存のビジネスモデルを見直し、新たな成長戦略を模索しています。特に、AIやIoTなどの最新技術の普及により、ビジネス環境が大きく変化する中、多くの企業がIT企業との連携を強化するため、M&Aによる事業領域の拡大を進めています。

企業は、M&Aを通じて既存事業のデジタル化を進め、新たな収益源を創出したり、顧客体験の革新を図ったり、競争優位性を確立したりすることを目指しています。

③コア事業に集中するため

製造業では、従来の多角化経営から一転し、コア事業に経営資源を集中させる動きが加速しています。具体的には、非中核事業の売却と並行して、自社のコア事業と相乗効果を生み出す他業種の企業を買収するケースが増加しています。

このようなM&Aは、事業の選択と集中を図るだけでなく、コア事業の革新を同時に推進する戦略的な取り組みとして注目されています。

④大手企業への傘下入りを図るため

中小規模のメーカーでは、後継者不足や業績不振を背景に事業承継を検討する動きが活発化しています。後継者が見つからず、事業を継続できなくなった場合、企業は廃業せざるを得ない状況に陥るためです。廃業すれば、従業員は職を失い、長年築き上げてきた顧客との取引関係も途絶えてしまうという問題が生じます。

そのため、多くの中小メーカーは、経営基盤が安定しており従来から取引関係のある大手メーカーの傘下に入ることを選択しています。大手企業の傘下に入ることで、従業員の雇用を継続し、顧客との取引関係も維持できるケースが多いのです。

製造業の廃業については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

製造業の倒産が120件超え!企業の倒産が増える背景・対策・将来予想を解説

⑤業績低迷のメーカーを投資信託が買収するため

中小メーカーの中には、高度な技術力を持っているにも関わらず、経営戦略や資本戦略が十分に検討されていないケースが少なくありません。近年では、このような企業に対して、投資信託がM&Aによって買収し、事業再生を行う事例が増えています。

投資信託がこのようなメーカーを買収する主な目的は、企業の潜在的な価値に着目し、経営改善や事業再編を通じて企業価値を向上させた後、より高い価格で売却することで、その差額である売却益を得るためです。

⑥後継者問題を解消するため

国内企業の後継者不在問題は、近年、徐々に改善されてきていますが、後継者がいる場合でも事業承継がスムーズに進まないケースは少なくありません。製造業においても経営者の後継者がいない、相続税や贈与税などの経済的な負担、個人保証の問題が壁となり、事業承継が困難な状況に直面する企業が存在します。

そのため、国が中小企業のM&Aを支援する施策を強化しており、中小企業もM&Aを実施しやすい環境が整いつつあります。その結果、製造業で後継者問題を解決するためにM&Aを選択する企業が増加傾向にあります。

製造業のM&Aによる売却側のメリット

製造業の企業がM&Aを通じて事業を売却する場合は、以下のようなメリットを得ることができます。

後継者問題から解放される

製造業において、高度な技術力と安定した経営基盤を持ちながらも、後継者不在のために廃業に追い込まれる企業が少なくありません。これは企業の貴重なノウハウや技術が失われるだけでなく、従業員の雇用や地域の経済にも大きな影響を与えます。

しかし、M&Aによる事業売却は、後継者がいなくても企業の存続を可能にする有力な手段の一つなのです。

自由な時間を得られる

中小製造業の中には高齢になってもなお、事業から離れることができずに働き続けている経営者が少なくありません。しかし、M&Aによる事業売却は、このような経営者にとって、長年の事業から解放され、自由な時間を手に入れるための選択肢となります。

一方、下請けの製造業は、親会社からの厳しい値下げ要求や品質に対する高い要求に常にさらされており、経営環境は非常に厳しい状況にあります。このような状況下で、自社事業を子どもに継がせることが困難と判断した場合、M&Aによる事業売却を検討する企業も少なくありません。

従業員の再雇用先が確保できる

中小製造業の経営者の中には、従業員のことを思うあまり、簡単には事業を諦めることができないという方も少なくありません。しかし、後継者が見つからず、業界全体が厳しい状況で廃業を検討せざるを得ないケースもあるのです。特に、従業員の再就職先を探すことは、経営者にとって大きな負担となります。

このような状況の中で、M&Aにより事業を譲渡することで、従業員の雇用を継続させ、企業の価値を最大限に引き出すことが可能です。買収企業も譲渡企業の持つ技術やノウハウ、顧客基盤などを活用することで、自社の事業を拡大することができるのです。

廃業によるコストの発生を回避できる

製造業では、大型生産機械や設備などの固定資産が大きな割合を占めています。これらの資産は、一度導入すると廃棄する際に多額の費用がかかります。そのため、事業を縮小したり、新たな事業に注力したい場合でも、これらの資産の処理が大きな課題となります。

従来は事業を完全に停止し、廃業という選択肢が検討されることもありましたが、近年では事業譲渡や機械・設備の個別譲渡などの柔軟な選択肢が注目されています。そのため、廃棄費用を削減し、経営の負担を軽減することができます。

売却益を得ることができる

製造業の廃業は、企業の規模や業績により状況が異なります。十分な資金が残っていればスムーズに廃業を進められますが、負債を抱えていたり、現金が不足していたりするケースも少なくありません。

そのため、会社を存続させるための資金調達や事業の縮小などの選択肢も検討されます。しかし、最終的に会社を売却し、M&Aにより売却益を得ることを目指すケースも少なくありません。

製造業のM&Aによる買収側のメリット

製造業のM&Aによる買収側のメリット

製造業のM&Aは、買収側の企業にとっても様々なメリットをもたらす可能性があります。以下で、主なメリットを具体的に解説します。

優秀な技術者の確保ができる

製造業における熟練工の不足は、団塊の世代の大量退職によって深刻化しています。技術者の育成には長い時間がかかるため、企業は即戦力となる人材の確保に苦慮しているのです。

M&Aは、この問題に対する一つの解決策であり、買収を通じて経験豊富な技術者を組織に取り込むことで、技術継承を加速させることができます。

環境の変化に対応しやすい

グローバル化やデジタル化など、製造業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。このような状況下で、自社だけで最新の設備を導入し、高度な技術を習得することは容易ではありません。

しかし、M&Aを活用すれば、すでに確立された技術や市場を持つ企業を買収することで、短期間で事業を拡大し、環境変化に対応することができます。

効率的な事業の内製化ができる

近年、大手製造業において、多重下請構造から自社グループ内で一貫した製造を行うビジネスモデルへの転換が進んでいます。そのため、M&Aによる買収は、自社で一元管理することができ効率的に内製化を進めるための有力な手段なのです。

事業の成長や立ち上げにかかる時間が短縮できる

製造業の新規事業を立ち上げるには、工場の建設や新たな技術や知識の習得、顧客との関係構築など、多くの時間と労力が必要です。しかし、M&Aを活用すれば、これらのプロセスを大幅に短縮し、短期間で新たな事業に進出することが可能です。

既存の企業が持つ工場や技術、顧客などを手に入れることで、市場の変化に迅速に対応し、競争優位性を確立することができます。

製造業のM&Aを成功させるための売却側の注意点

製造業がM&Aによって円滑な事業継承を実現するためには、売却側が注意すべき点が数多く存在します。以下では、製造業におけるM&A成功の鍵となる、売却側の視点からの注意点について解説します。

M&Aの準備は丁寧に行う

M&Aは会社を手放すだけでなく、会社の未来を託す相手を選ぶ行為です。そのため、M&Aを成功させるためには、綿密な計画と準備が不可欠です。

企業価値を高め、最適な買収候補を見つけるための取り組みが求められます。

自社の強みや特徴をまとめる

M&Aを成功させるためには、自社の魅力を最大限にアピールすることが不可欠です。例えば、製造業では独自の技術力や高品質な製品、安定した生産体制など、様々な強みが考えられます。これらの強みを明確に把握し、具体的なデータで裏付けることで、買収候補企業に対して自社の価値を効果的に伝えることができます。

また、自社の強みを磨くための継続的な取り組みを示すことで、中長期的な成長性もアピールでき、魅力的な買収候補として評価されるでしょう。

希望条件を明確にしておく

M&A交渉は、希望条件を明確にすることが重要です。条件が曖昧なまま交渉を進めると、お互いの期待値が一致せず、交渉が長期化したり、最悪の場合、交渉がまとまらない可能性があるためです。

M&Aの専門家と綿密に話し合い、譲れない条件や妥協できる範囲を明確にすることで、スムーズな交渉を進めることができるでしょう。

交渉中の情報漏えいに注意する

M&A交渉中の情報は、企業の将来を左右する重要な機密情報です。この情報が外部に漏洩してしまうと、M&Aが頓挫するだけでなく、企業の信用失墜や株価の下落など、経営に深刻な影響を与える可能性があります。

そのため、交渉に関わる全ての関係者に対して、情報漏えいの防止に関する教育を徹底し、機密保持体制を構築することが不可欠です。

M&Aの専門家に相談する

M&Aは法的な手続きや財務分析など、非常に複雑なプロセスを伴うため、経営者がM&Aを遂行するには、多大な時間と労力が必要です。

しかし、M&Aの専門家に相談することで、これらの負担を軽減し、専門的な知識や経験に基づいた適切なアドバイスを受けることができるでしょう。

製造業のM&Aを成功させるための買収側の注意点

製造業のM&Aを成功させるための買収側の注意点

M&Aは成功すれば大きなメリットをもたらす一方で、失敗すれば企業に多大な損失を与える可能性も秘めています。以下で、M&Aを成功させるために買収企業が注意すべき点を具体的に解説します。

買収監査を徹底する

M&Aは企業にとって大きな決断であり、慎重な検討が必要です。一見健全に見える企業でも、買収後に思わぬ問題が発覚する可能性があるためです。例えば、隠された負債や従業員とのトラブルなど、企業の財務状況や法務上のリスクは様々です。

このようなリスクを事前に把握するため、M&Aでは、買収監査が欠かせません。買収監査では財務状況や法務状況、税務状況などを詳細に調査し、買収後のリスクを最小限に抑えることを目指します。

会計士や弁護士などの専門家の知見を借りながら、慎重かつ徹底的に監査を行うことが重要です。

適切な買収価格を検討する

買収価格を決める方法は複数ありますが、売却会社の将来の期待収益にもとづいて決める場合には、相乗効果のある見積もりが大切です。買収会社が売却会社の事業計画をブラッシュアップすることで、より適切な買収価格を決定できるでしょう。

M&A後に巨額投資が必要になるケースがある

M&Aで企業を買収する場合、譲渡先の企業が十分な設備投資を行えていないために、買収後に巨額の投資が必要になるケースは少なくありません。特に、近年ではDX化やIT化が急速に進んでいるため、新たなITインフラを構築したりする必要がある場合、多額の費用がかかる可能性があるでしょう。

そのため、買収を検討する際には、対象企業の設備投資状況を詳細に調査し、M&A後に必要な投資額を正確に見積もることが重要です。

M&A後の統合プロセスを徹底する

M&Aを成功させるには、対象企業の選定以上にM&A後の統合プロセスが重要です。M&A後の統合プロセスは、両社の人材や資産を統合し経営効率を高める作業です。

一般的には、両社のメンバーから成るチームを組成し、統合計画にもとづき実行します。

製造業のM&Aを成功させるには事前の計画に気をつけよう

今回は、M&Aが急増している6つの理由や売却側と買収側のメリットや成功させるための注意点を詳しく解説しました。製造業は、長年培ってきた独自の技術やノウハウを持つ企業が多く存在するため、M&Aが新たな製品開発や市場開拓など、企業の成長に欠かせない手段として注目されています。

近年では、大企業だけでなく、中小企業でもM&Aのニーズが高まっており、今後も加速すると予想されます。ただし、M&Aは複雑な手続きを伴うため、専門的な知識と経験が求められます。

M&A仲介会社などの専門家に依頼することで、スムーズかつ円滑に取引を進めることができるでしょう。

製造業のM&Aとは?急増している6つの理由や売却側と買収側のメリットや注意点を解説
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