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データ可視化システムの開発がスタート!国内製造業を救うDXソリューションを紹介

産業向けのサービスを展開している三菱商事が、アメリカのシンクIQと資本提携して、データ可視化システムの開発をスタートしました。では、どのようなデータ可視化システムが開発中なのでしょうか。

今回は、三菱商事がデータ可視化システムの開発をスタートしたというニュースをもとに、活用事例や国内製造業で生まれる効果について深掘りします。DXの実現を早める魅力的なソリューションの特徴を、ぜひチェックしてみてください。

三菱商事がデータ可視化システムの開発をスタート

三菱商事は、産業界に幅広いサービスを展開している企業です。
急速なデジタル技術の発達に合わせて産業DX部門が新たに設立され、サービス提供がスタートしました。

そして今回、三菱商事とアメリカのシンクIQがタッグを組み、製造業向けのDXソリューションの開発を始めました。

現在開発されているDXソリューションは、データを可視化し生産〜出荷のプロセスをすべて情報に落とし込める便利なシステムです。受発注の最適化を実現できることはもちろん、歩留まりの改善や納期短縮といった効果が期待されています。

三菱商事とタッグを組むシンクIQとは

今回、三菱商事の開発に注目が集まる理由のひとつに、アメリカのシンクIQとタッグを組んだことが関係しています。シンクIQは、2014年に設立したばかりのスタートアップ企業であり、次のようなサービスを提供中です。

  • 製造業向けシステムの開発
  • システム運用
  • データ可視化機器の開発

すでにシンクIQは企業としての実績もあり、穀物の生産業務における歩留まり改善や加工の最適化をデータ可視化のシステムで実現しています。三菱商事は自社のDX推進との共有性を見つけ、すぐに資本提携を組みました。

シンクIQのシステム開発、そして三菱商事のDX支援を組み合わせることにより、高品質なデータ可視化システムが提供されだすだろうと注目が集まっています。

三菱商事が開発するデータ可視化システムとは

三菱商事の製造業向けDXソリューション
出典:ニュースイッチ「三菱商事がデータ可視化システム投入、米シンクIQと資本提携」

今回、三菱商事が開発をスタートした製造業向けのDXソリューションでは、製造業の全工程のデータを可視化して業務効率を向上させるのが狙いです。例えば、以下の作業でデータを収集し、可視化することを目的としています。

  • 原料
  • 加工
  • 在庫
  • 配送

通常だと各工程は細かいデータ収集が難しく、ブラックボックスになりやすいのが特徴でした。一方、データ可視化システムが開発されればすべての情報を数値として把握できるようになります。

例えば、シンクIQが提供する設備「プログラマブルコントローラー(PLC)」を活用すれば、機械作業の中からデータの取得・可視化が可能です。また、人が作業するアナログな工程では、カメラの解析技術を活用してデータ取得できるという2つの機能が利用されます。

また、関連性の高い情報を自動で結びつけてくれる「セマンティックモデル」と呼ばれるデータソースを使うことにより、製造工程で密接にかかわる因果関係を導き出せると期待が集まっています。

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データ可視化システムの開発の狙い

三菱商事のDXソリューションによる狙い

データ可視化システムは、すでにさまざまなメーカーが開発を進めている要素です。
では、なぜ三菱商事が今、シンクIQと手を組んで開発をスタートしたのでしょうか。

実はその理由のひとつに、三菱商事が展開している人工知能(AI)が大きくかかわっています。

例えば三菱商事では、MCデジタルと呼ばれるAIソリューションを提供しています。
当ソリューションは、以下の情報を取り込み、事業に付加価値を追加できるのが特徴です。

  • 海外イノベーション
  • エコシステム
  • 学術機関
  • 行政機関

莫大な情報が蓄積されたAIは、アプリケーション開発やデジタルプラットフォーム開発に活用します。しかし、製造業など人力が関わる事業では、まだ展開できていないのが実情です。

そこでシンクIQとの連携をきっかけとし、新たなソリューション展開に臨もうという狙いから、お互いの強みを活かせる「製造業向けDXソリューション」にチャレンジすることとなりました。

さらに三菱商事は、データ可視化の実現に合わせ、食品流通における「在庫最適化システム」、鋼材情報の「電子管理プラットフォーム」を組み合わせることで製造業DXの相乗効果を狙っています。

製造業におけるデータ可視化の活用事例

三菱商事が開発を進めるデータ可視化の技術のみならず、すでに数多くの機器・システムが製造業の現場で活用がスタートしています。製造業DXの参考として、国内外企業が実施するデータ可視化事例を整理しました。

データ可視化の企業事例 概要
富士フイルムビジネスイノベーション社 コピー機の故障位置をデータで取得し、修理効率を向上
小松製作所 重機操作の可視化
ヤマハ発動機 鋳造工程から200種類のデータ収集・可視化
ダイキン社 技術継承データの可視化

富士フイルムビジネスイノベーション社におけるデータ可視化

コピー機製品やプリンターを製造・販売・管理している富士フイルムビジネスイノベーション社は、提供しているコピー機の故障位置がわかるように、IoT技術を駆使して故障位置を特定できる製品の製造をスタートしました。

これまでは、ユーザーから故障の状況をヒアリングしなければ、故障位置を確定できませんでした。一方、IoT技術によりデータ可視化を実現すれば、取得したデータをもとに故障位置の判断が可能です。

修理依頼〜対応にかかる時間を大幅に削減できたのはもちろん、取得したデータを蓄積し、製品の改善にも活用されています。

小松製作所におけるデータ可視化

油圧ショベル、ダンプトラックなど現場重機の製造・開発を提供している小松製作所は、重機をインターネットに接続する専用プラットフォーム「KOMTRAX」の開発をスタートしました。

KOMTRAXを活用すれば、操縦者だけでなく遠隔地にいる従業員や発注者にも作業データを可視化して送信できます。重機の稼働状況のチェックに役立つことから、リース事業を展開している企業などにKOMTRAXが活用されている状況です。

またKOMTRAXでは、重機の位置情報や操作者の個人情報も閲覧できます。
業務管理に役立つことはもちろん、作業状況の把握にも活用できるのが特徴です。

ヤマハ発動機におけるデータ可視化

輸送機器の製造を提供しているヤマハ発動機は、工場生産のロスを減らすために、設備にIoT技術を導入し、データ可視化を実現しました。

ヤマハ発動機では、型の制作から必要となる鋳造工程において、品質のばらつきや従業員の経験の差に課題を抱えていました。また、鋳造は経験がものを言う工程であるため、人の目で判断するのが困難なポイントです。

そこでヤマハ発動機は、画像認識技術を活用して鋳造工程から200種類ものデータを取得し、情報として可視化できる仕組みをつくり出しました。

ビッグデータを集めることによって、どういった動き方でミスが多いのか、どういった作業でロスが生まれやすいのかを抽出します。データ可視化の実現により、ヤマハ発動機は年間1億円近いコスト削減を成功させました。

また製造業界では、データの可視化に合わせてフォークリフトのDX化も実施されています。詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。

フォークリフトDX化のメリットとは?人力操作の課題・解決策を紹介

ダイキン社におけるデータ可視化

空調機器や化学製品の製造を担うダイキンは、製造作業における技術継承問題を解決するために、IoT技術を活用したデータの可視化を実現しました。

まずダイキンは工場内に情報解析ができるセンサーやカメラを設置し、熟練従業員の動きをビッグデータに蓄積します。蓄積されたデータをAIで解析し、経験の差で生まれやすいミスやロスのポイントをマニュアル化しました。

言語化しづらい情報をIoTの技術により、効率よく実現しています。
データを可視化できる技能訓練支援システムは国内だけでなく、ダイキンの海外拠点でも活用されている状況です。

データ可視化で起きる製造業の変化

製造業DX・データ可視化によって訪れる変化

三菱商事が開発中のソリューションや、他メーカーが提供しているデータ可視化の技術が製造業に浸透すれば、業界全体の生産性が向上すると期待が集まっています。参考として、データ可視化に期待されているポイントをまとめました。

人手不足の解消

データ可視化が浸透すれば、これまで人力で実施できていた作業の一部を機械が実施できるようになると予想されています。例えば、自動で製造できるスマート工場化を実現できれば、現場で対応する人材の省人化が可能です。

人手不足に悩まされる製造業の課題を解決できることはもちろん、従業員ひとり一人の負担軽減にもつながり、社内満足度の向上にも良い効果が生まれると期待されています。

また日本の人手不足倒産の状況ついて知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
なぜ人手不足倒産が起きるのか解説しています。

人手不足倒産が急増中!業界別の倒産傾向や人材流出対策を解説

サプライチェーン全体の生産性向上

製造業全体でデータ可視化を実現できれば、事業に強いつながりのある次の業界でも生産性向上の相乗効果が生まれていくと予想されます。

  • 運送業
  • 小売業

例えば、製造業で生産の効率が上がれば、その分だけ大量の製品を届けられるようになるでしょう。つまり、輸送に関わる運送業でも効率化の波に乗るために、データ可視化といったDX化がスタートします。

また、運送先の販売店舗である小売業等でも在庫管理の効率化が求められるようになり、ここでもDX化が進んでいくはずです。1つの業界でDX化が進めば、かかわりのある業界も少しずつDXの波が広がっていきます。

サプライチェーン全体の生産性が上がれば、大元となる製造業でも利益増加といった効果が生まれるため、今後、国内経済の活性化が起きる可能性が高まるかもしれません。

データ可視化についてまとめ

三菱商事がデータ可視化といった技術を活用し、製造業向けDXソリューションの開発をスタートしました。大手企業がDX化の実現に向けて乗り出せば、かかわりのあるサプライチェーンでもデータ可視化の技術が浸透していきます。

その結果、中小企業にも生産性向上の効果が波及していき、製造業全体の経済成長が生まれやすくなるでしょう。三菱商事の開発は今始まったばかりです。どのようなデータ可視化のソリューションが発表されるのか、今後の動向から目が離せません。

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