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半導体検査装置の需要が増加!AIの普及で期待される効果や市場動向も解説

AIを活用したビジネスなどが普及し始めた結果、半導体チップの品質や信頼性を確認する「半導体検査装置」の需要が高まりつつあります。なぜ、AIが普及すると半導体検査装置のニーズが高まっていくのでしょうか。

今回は、半導体検査装置のニュースをもとに、AI普及の背景や半導体検査装置の概要、市場の動向を深掘りしていきます。半導体に関わる技術の発展について、詳しく見ていきましょう。

半導体検査装置とは

半導体検査装置とは

半導体検査装置とは、工場で製造される半導体チップが正しく動作するのか、他の製品と同様の品質を維持しているのかを確認するために用いる装置です。

あらかじめ用意されている半導体の品質基準を満足しているのかチェックすることはもちろん、製造段階で不備のある半導体チップを見分けて、市場に出回らないように対策するために利用します。

精密部品である半導体は、電子機器を正しく動作させるために欠かせません。
キズやゆがみ、破損といった問題が生じていると、制御トラブルが起きる恐れがあるため、あらかじめ半導体検査装置を用いて確認を行います。

半導体検査装置の検査項目

半導体検査装置は主に、製造時・回路製作時・パッケージ化のタイミングで次の項目をチェックします。

検査のタイミング 検査内容
製造時 ゆがみ、割れ、かけ、異物の付着など
回路製作時 回路パターンのズレ、電気特性不良、寸法不良
パッケージ時 電気特性不良、ワイヤー不良

画像データを用いて状態を判別するほか、センサーやレーザーで問題が起きている位置を特定します。

工場の自動化が進んでいますが、必ずしもすべての製品を高品質でつくることはほぼ不可能です。製造ロスなども起こることから、人間の目だけでは判別できない品質などを半導体検査装置で確認していきます。

そもそも半導体がどのようなものなのかイメージできないという方は、以下の半導体について解説している記事をチェックしてみてください。仕組みや半導体の原料といった情報を詳しく解説しています。

半導体の基礎知識を初心者向けにわかりやすく解説!よく出る専門用語の意味とは?

半導体検査装置の種類

検査装置の種類

半導体検査装置は、検査のタイミングに合わせて「ウェーハ装置」「パッケージ装置」と呼ばれる2種類の装置が提供されています。参考として2種類の装置の役割や機能についてわかりやすく整理しました。

ウェーハ装置

ウェーハ装置とは、半導体の基盤であるウェーハの製造品質をチェックするための検査装置です。例えばウェーハの場合は、製造時などに起きやすい次の欠陥を検査します。

  • 表面のキズ・かけ
  • ゆがみ
  • 異物の付着

主な仕組みとしては、ウェーハにレーザー光を照射して、反射する光の状態で検査をするのが特徴です。正常な品質を維持しているウェーハは正しい位置に光を反射しますが、傷やゆがみがあると、通常とは異なる形状に光を反射します。

シンプルですが確実に形状の確認を行えることから、ほとんど半導体検査装置に用いられている技術です。

パッケージ装置

パッケージ装置とは、半導体製造の最終工程であるパッケージの際に実施される検査を担当する装置です。配線などに正しく電流を通せるかチェックするほか、外観に変化がないのかを細かく検査します。

検査項目も多く、検査を終えるまでに1週間程度の時間が必要になるケースも少なくありません。
とくに小型の半導体の場合、小さな問題であっても電子機器の重大な事故につながります。
半導体の製造で特に注意して確認されるポイントだと覚えておきましょう。

AIの普及で半導体検査装置に注目が集まる

注目の理由

半導体の製造工場に導入されている「半導体検査装置」は、技術の発展とともに、検査の品質が上がり続けています。そして近年ではAI(人工知能)の登場により、新しくAIに対応するためのDRAM(半導体メモリーのひとつ)にニーズが集まっています。

DRAMとは、パソコンのメインメモリとして利用されている半導体の一種であり、従来のRAMと比べて膨大なデータを保存できるのが魅力です。

しかし、従来のDRAMではテストの負荷が大きく、AI技術への対応が難しいと言われています。そこで注目されているのが、DRAMを複数積層で稼働させられるHBMという新しいDRAMです。

HBMは複数のDRAMをまとめて稼働し、膨大なデータを読み込み・保存できます。
AI生成の不かにも耐えることができるため、今度大量のHBM(半導体チップ)の製造が必要になっていくでしょう。

従来のDRAMに比べ複雑なためテスト負荷が高く、検査装置の重要性が高まっている。今後も市場拡大が見込まれており、各社は巨大需要獲得を目指し、狙いを定める。

引用:ニュースイッチ「生成AIの流行、半導体検査装置に好影響の背景」

上記のとおり、製造工場ではHBMのニーズの高まりに合わせて新たな半導体検査装置が必要になると読んでいます。

AI普及の背景

OpenAIが開発したGPTと呼ばれるAI技術を皮切りに、近年では、データを高速処理する人工知能の進化が続いています。

AIに膨大なデータを読み込ませることで傾向を分析してくれるほか、新たなアイデアの創出などに利用できるのが魅力です。また近年では簡単な指示だし(プロンプト)でデータを処理してくれる生成AIなども人気を呼んでいます。

しかし、生成AIを利用できるのは一般的な市販のパソコンではなく、高速処理に対応したビジネス向けのハイスペックパソコンが主です。

今後さらにAIのニーズが高まっていき、一般ユーザーもAI技術に触れる機会が増加していくと予想されています。そのためパソコンのメモリーや電子制御を担う半導体企業などは、大量の半導体製造に向けて、半導体製造装置の品質アップに力を入れ始めたのです。

関連企業における半導体検査装置導入の動向

AI生成技術のニーズが上昇していることを受け、半導体製造に関わる関連企業ではすでに半導体検査装置の導入に向けてさまざまな動きをみせています。

ニュースでも説明されている動向について詳しく見ていきましょう。

テラダインによる半導体検査装置導入の動き

アメリカのテラダイン社は、ヘルスケア・自動車テクノロジーを提供している企業であり、半導体の製造にも関わる大手企業です。生成AIの需要増加に合わせて半導体および半導体検査装置を増やし、自社の需要拡大を狙おうと動き始めています。

日本法人でもHBMの製造に追加して、ネットワーク関連の需要を取り込む動きが始まっていることから、付加価値をもつ半導体検査装置の増産をスタートする予定です。

サムスンによる半導体検査装置導入の動き

韓国のサムスン社も半導体産業に力を入れている企業のひとつです。

すでにサムスン社は膨大な研究開発の投資を実施しており、DRAMを12層重ねられる「HBM3E 12H」という高性能DRAMを開発しています。

新たなDRAMを製造するための工場建設も進んでいることから、HBMを検査するための半導体検査装置についても新しく導入が進められる予定です。

日本マイクロニクスによる半導体検査装置導入の動き

半導体計測器具・半導体検査装置の開発・製造・販売を提供している日本マイクロニクス社より、HBMの需要が次のように変化していると説明されています。

22年でDRAM全体の10%程度だったHBM関連の受注が、23年7-9月期から増えてきた

引用:ニュースイッチ「生成AIの流行、半導体検査装置に好影響の背景」

今後もさらなる需要の増加が期待されることから、製造工場に新たな半導体検査装置が導入されていくと予想しています。生産能力の拡充にも力を入れ始めており、提供数の増産を目指している状況です。

半導体検査装置の市場動向

半導体検査装置の市場動向

QY Researchが実施した「グローバル半導体製造装置・検査装置に関する市場レポート」によると、半導体検査装置の市場規模は世界全体で今後も上昇をし続けると予想されています。

過去からの調査傾向を見ても右肩上がりの状態が続いているほか、電子機器の需要増に合わせてさらに半導体需要が高まっていくと予想されています。その中でも、上位のシェア率を誇るのが以下に示す企業です。

  • KLA Corporation
  • Applied Materials
  • 日立ハイテクノロジーズ
  • ASML
  • Onto Innovation

日本企業である日立テクノロジーズも市場の一部を確保できていることから、日本でも半導体検査装置の需要が継続して高まっていくものだと予想されます。

太陽光発電の需要増加も半導体検査装置のニーズに影響する

パソコンや自動車などの電子機器に導入されている半導体ですが、今後は地球温暖化防止や気象変動対策につながる「太陽光発電」という点でも、半導体検査装置のニーズが高まっていくと予想されます。

太陽光発電は電気をつくる際にCO2を排出しない再生可能エネルギーのひとつであり、日本を含む先進国で導入数が膨らんでいます。日本の場合、現在約1割程度が太陽光発電によって電気を生み出されており、今後、メガソーラーなどの導入が増えていく計画です。

他国でも火力発電から太陽光発電へ移行する動きができているため、発電システムに必要な半導体の需要増加にあわせて、半導体検査装置のニーズも高まっていくと考えられています。

半導体関連の製品はほかにもさまざまな種類の需要が高まっています。電気自動車などに採用されているパワー半導体について興味がある方は、以下の記事をチェックしてみてください。

パワー半導体で電動車の電力効率を向上!SiC採用によって生まれる効果とは?

半導体検査装置についてまとめ

AI技術の発展と普及に伴い、それを処理するためのパソコンなどに導入が必要な半導体、そして半導体検査装置の需要が高まっています。

半導体検査装置は半導体の品質をチェックするために欠かせない装置であり、半導体需要増加に伴う大量生産でも品質を維持し続けるために欠かせません。今後も半導体のニーズは高まり続けていくと予想されているので、半導体産業の動向から目が離せません。

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