グローバル化とデジタル化が加速する現代のビジネス環境において、企業は急速な変化に対応し、全体最適化を実現することが求められています。しかし、DX推進や基幹システムの更新などの変革の取り組みが必ずしも成功しているわけではなく、多くの企業が課題を抱えています。
このような状況下で、ビジネスアーキテクチャは企業の構造と機能を可視化し、戦略と実行の整合性を確保することで、変革を推進し、持続的な成長を支援する重要な役割を担います。また、顧客ニーズの多様化に対応するため、顧客中心の視点からビジネスプロセスや情報システムを設計する上でも、ビジネスアーキテクチャの重要性は高まっています。
今回は、ビジネスアーキテクチャの概要や必要なスキル、推進する方法を詳しく解説します。
ビジネスアーキテクチャとは
ビジネスアーキテクチャは、企業の全体像を把握し、戦略の実現に向けて計画を立てるための手法です。企業を構成する業務や目標、情報システム、データなどの要素を可視化することで、最適な視点から事業を設計することができるのです。
業務プロセス図やデータフロー図を用いて、企業全体の流れを明確にすることで、非効率な部分を特定し、改善につなげることができます。また、個々のシステムではなく、企業全体の視点からシステムを設計することで、無駄な投資を防ぎ、効果的なシステムを構築することができるでしょう。
ビジネスアーキテクチャの仕組み
ビジネスアーキテクチャは、企業のビジネスを構造的に捉えるためのフレームワークであり、以下の3つの層から構成されています。
- ビジネスモデル
- モチベーションモデル
- ケイパビリティモデルケイパビリティモデル
これらの3つの層は相互に関連しており、ビジネスモデルが企業の基礎となる構造、モチベーションモデルが企業の行動方向性、ケイパビリティモデルが目標達成のための能力を規定します。以下で詳しく解説します。
ビジネスモデル
ビジネスモデルは、企業がどのように価値を提供し、収益を得るかという仕組みを表したものです。具体的には、誰に対して（顧客）、何を（商品やサービス）、どのように（販売方法や提供方法）提供し、それによってどのように収益を得るかといった、事業の全体像を体系的に表した概念です。
例えば、ある飲食店が「健康志向の若い女性」をターゲットに「新鮮な野菜を使ったヘルシーなランチ」を提供し、「SNSでの口コミ」や「デリバリー」などを通じて顧客に届けることで収益を上げる、というように企業の事業活動を具体的に可視化します。
モチベーションモデル
モチベーションモデルは、企業の目標や戦略、達成するための具体的な行動計画を表したものです。ビジネスアーキテクチャという建物を建てるときに、モチベーションモデルは、その建物の設計図であり、建てたい建物のイメージを具体的に可視化する役割を担います。
モチベーションモデルは、前述したビジネスモデルと密接な関係にあります。ビジネスモデルが、企業がどのようなビジネスをしているのか、その構造を説明する地図だとすれば、モチベーションモデルは、その地図を元に、どこへ行くべきか、どのように成長していくべきかを描き出す羅針盤のようなものです。
ケイパビリティモデル
ケイパビリティモデルは、企業が目標を達成するために必要な能力や資源を表したものです。「何をすべきか」という具体的な行動と、「なぜそれをすべきか」という目的を結びつけ、ビジネスの実行に必要な能力を可視化します。
ビジネスアーキテクチャに必要なスキルや知識
ビジネスアーキテクチャを行うためには、企業の戦略とITを連携させ、ビジネスの変革をリードする必要があります。企業が目指す未来像を描き、実現するための具体的なロードマップを設計し、組織全体を巻き込んで変革を推進していくのです。
以下では、ビジネスアーキテクチャに必要なスキルや知識を、具体的にご紹介します。
DXを実現するために必要なスキル
近年、DXが加速する中、企業は既存のビジネスモデルや業務プロセスを根本から見直し、新たな価値を創出することが求められており、企業全体のDX推進においては、以下のようなスキルが特に重要です。
| 変革マネジメント | 変革を阻む要因を把握し、スムーズな移行を図る能力 |
| プロダクトマネジメント | 顧客のニーズを捉え、製品を開発する戦略立案能力 |
| システムズエンジニアリング | システム開発の価値を考慮した全体最適を実現する能力 |
| エンタープライズアーキテクチャ | 企業全体を外部環境に対応できるよう最適化する能力 |
また、製品・サービス単位のDXでは、以下のようなスキルが重要です。
| ビジネス調査 | トレンドを分析し、製品の優位性を明確にする能力 |
| ビジネスモデル設計 | 収益構造や販売経路を設計し、持続的に成長させる能力 |
| ビジネスアナリシス | 製品の現状と理想を比較し、改善点を特定する能力 |
| ビジネス視点での検証 | 製品の競争優位性や持続可能性を評価する能力 |
これらのスキルを習得し、組織全体で連携することで、企業はデジタル変革を成功させ、持続的な成長を実現することができます。
製造DXについては以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
データ活用スキル
データ活用スキルは、事業や顧客、組織が抱えるさまざまな課題に関する情報を集め、ビジネスモデルやビジネスプロセスの設計を効果的に活用するためのスキルです。具体的には、統計資料やデータ分析結果を深く理解し、その情報を基に革新的な解決策をデータやAIを用いて生み出す能力、その解決策を実際の業務にスムーズに導入し、効果を最大化する能力が求められます。
生成AIやIoTなどのデジタル技術を活用する知識
ビジネスアーキテクトにとって、ソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストなど高度な専門知識を持つ人材と協力するためには、深い専門性こそ必要ありませんが、生成AIやIoTなどの基礎的な知識を備えておくことは非常に重要です。
これらの知識を身につけることで、より効果的にテクノロジーを活用したビジネス戦略を立案し、実行することができるようになります。
サイバーセキュリティの知識
デジタル技術を活用したビジネスモデルやプロセスを設計する際には、サイバーセキュリティに関する知識が不可欠です。DX推進プロジェクトにおいては、専門のサイバーセキュリティ担当者がいる場合でもビジネスアーキテクトがセキュリティに関する基本的な知識を身につけることが求められます。
担当者と円滑に連携し、プロジェクトを成功させるためには、ビジネスアーキテクトがセキュリティの重要性を理解し、基本的な概念を把握している必要があるためです。具体的には、プライバシー保護に関する法制度や対策、サイバー攻撃や内部不正発生時の対応など、幅広い知識が求められます。
製造業のセキュリティリスクについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
企業がビジネスアーキテクチャを推進する方法
近年は、DXが加速するにつれて、ビジネスアーキテクトがよりビジネス側の視点から企業の戦略を設計することが求められるようになり、事業側の責任者の管轄下にチームが置かれる傾向が強まっています。ビジネスアーキテクトとは、その名の通り「ビジネス」と「アーキテクト」を組み合わせた言葉で、企業が「DXの取り組みで何を実現したいか」という目的を明確にし、その実現に向けて業務設計を行う人材です。
自社の事業内容や規模、目指す未来像を踏まえ、関係者を適切に配置し、業務プロセスを設計することで、企業全体の最適化を図ります。以下で、企業がビジネスアーキテクチャを推進する方法を解説します。
DX関連資格の取得を推進する
ビジネスアーキテクトを育成する上では、DX関連資格の取得を促進することが効果的な施策の一つです。ITストラテジスト試験やプロジェクトマネージャ試験、データベーススペシャリスト試験などは、ビジネスモデル構築やマネジメントに必要な知識やスキルを体系的に習得できる機会となるでしょう。これらの資格取得を奨励することで、ビジネスアーキテクトの専門性を高め、企業のDX推進を加速させることができます。
DX人材育成を実施する
ビジネスアーキテクトの育成において、ビジネス戦略やマネジメントに関する知識を深めるためのDX人材育成研修は欠かせません。自社でカリキュラムを作成し、実施することも可能ですが、専門的な知識やノウハウが必要となり、時間やリソースが不足するケースも少なくありません。
このような場合、外部の専門機関が提供する以下のような人材育成サービスを活用することで、より効率的にビジネスアーキテクトを育成することができるでしょう。外部のサービスでは、長年の経験と実績に基づいた体系的なカリキュラムが用意されており、ビジネス戦略やデータ分析、テクノロジーなど、ビジネスアーキテクチャに必要な幅広い知識を習得することができます。
CAD・CAM・CAE人材育成サービス
CROSS TECHのCAD人材育成サービスでは、以下の3つのステップを軸に御社の業務に最適なCAD人材の育成を支援いたします。
- 基本的なスキルやリテラシーの向上
- 業務に直結するスキルの習得
- 人材育成の内製化
御社の業務内容や育成したい人材をヒアリングした上で、最適な教育プログラムをご提案いたします。eラーニングを御社用にカスタマイズすることもできるため、日常の業務である開発や設計、製造、生産などを行いながら新しい技術を習得することも可能です。
CROSS TECHのCAD人材育成サービスでは、短期的なプランから中長期的なプランで御社の業務にあわせてカリキュラムを構築することで、御社にとって必要な内容を厳選し教育を実施することができます。
ご相談は無料で承ります。まずはお気軽にご連絡ください。
ビジネスアーキテクチャの推進にはDX人材育成が必要
今回は、ビジネスアーキテクチャの概要や必要なスキル、推進する方法を解説しました。ビジネスアーキテクチャを推進するビジネスアーキテクトは、DXを進めるすべての企業にとって不可欠な存在です。
しかし、このような人材は容易に見つけることができないため、採用だけに頼るのではなく、社内外の教育プログラムを通じて育成していくことが重要です。まずは、自社のDX推進に必要な人材像を明確に定義することが出発点となります。
CROSS TECHのCAD人材育成サービスでは、貴社の課題や状況に合わせたビジネス戦略やマネジメントに関するカリキュラムをご提案いたします。研修後にはアイデアを出し合い、実際の課題解決に繋げるための支援も行っているのが特徴です。
単なる知識の詰め込みではなく、実践的な課題解決能力を養い、企業が求める人材を育成することを目指します。DX推進にお悩みであれば、ぜひお気軽にご相談ください。
