東京エレクトロンデバイスは2024年11月、AIとIoTを融合し、新たなビジネスを生み出すための取り組みとした「AI x IoTビジネス共創ラボ」を設立しました。
このラボでは、日本マイクロソフトとの連携のもと、AIやIoTに関する最新の技術や、技術を活用した具体的な事例を共有する勉強会を定期的に開催します。
この取り組みの目的は、AIとIoTの力を借りて社会が抱える様々な課題を解決し、同時に企業が新たなビジネスチャンスを掴むことを支援することです。
今回は、AIとIoTの関係性やAIとIoTを組み合わせるメリット、活用事例、技術を組み合わせる際の注意点を解説します。
AIとIoTの関係性とは
AIとIoTは、それぞれが得意とする分野を持ちながらも互いに密接な関係にあるため、AIとIoTが連携することで、様々な分野で革新的なサービスが生まれつつあります。
| AI | 大量のデータを分析し、そこからパターンを見つけ出し、予測を行うことで、より高度な判断や行動を可能にする |
| IoT | 身の回りのあらゆるモノをインターネットに接続し、リアルタイムでデータを収集することで、物理的な世界とデジタルな世界を繋ぐ |
AIがIoTから収集された膨大なデータを分析することで、より精度の高い予測や最適化が可能です。
例えば、スマートファクトリーでは、IoTセンサーが製造ラインのデータを収集し、AIがそのデータを分析することで、生産効率の向上や品質管理の強化を実現します。
このように、AIとIoTは互いの強みを補完し合い、AIがIoTのデータを活用することで、IoTはより賢くなり、私たちの生活をより便利で快適にすることができるのです。
IoTについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
AIとIoTを組み合わせるメリット
IoTとAIを自社に導入し、適切に運用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 業務の自動化ができる
- 従業員の管理ができる
- セキュリティが強化される
それぞれの項目を具体的に見ていきましょう。
業務の自動化ができる
これまで人間が行っていた作業をAIやIoTに置き換えることで、ヒューマンエラーを最小限に抑え、業務効率を大幅に改善することができます。
例えば、資料フォーマットの統一や業務マニュアルの整備といった、人によって作業結果が異なりやすい部分を自動化することで、品質の安定化を図ることができます。
また、自動応答システムの導入により、問い合わせ対応の効率化や記事や議事録の自動作成による情報共有の迅速化も期待できます。
アンケートの自動振り分けなど、ルーティンワークの自動化は、従業員の負担を軽減し、より創造的な業務に集中できる環境を創出します。
従業員の管理ができる
AIやIoTを導入することで、企業は業務の効率化を図り、従業員がより重要な業務に集中できる環境を創出できます。
これにより、従業員の労働時間や労働環境の改善が期待され、従業員満足度の向上にも繋がります。
従業員が企業に満足していれば、他の企業への転職を検討する可能性が低くなり、結果として企業は優秀な人材を長く確保できるようになります。
また、従業員満足度の高い企業は、優秀な人材の採用においても有利な立場に立つことができるでしょう。
従業員満足度の高い企業は、働きやすい職場であるという評判が広がり、多くの優秀な人材から注目されるようになります。
さらに、従業員が自分の仕事に満足し、モチベーション高く働いている場合、より高いパフォーマンスを発揮する可能性が高まるでしょう。
セキュリティが強化される
経済産業省がDXの導入を強く推奨している背景には、「2025年の崖」と呼ばれる問題があります。
これは、企業がDXを遅らせることで、従来のITシステムが陳腐化し、更新が困難になった場合、巨額の経済損失が発生する恐れがあるため、一刻も早いDX推進が求められています。
また、IoTデバイスの増加に伴い、サイバー攻撃の標的も拡大しており、企業の機密情報漏洩やシステム障害のリスクが高まっているため、AIを活用した高度なセキュリティ対策を導入することで、こうしたリスクを軽減し、企業の資産を保護することができるのです。
さらに、最新の技術に触れることで、従業員はセキュリティの重要性をより深く理解し、情報漏洩防止に積極的に取り組むようになることが期待できます。
AIとIoTの技術を組み合わせた活用事例
IoTとAIを業務に部分的に導入する事例は既に数多く存在します。以下では、IoTとAIを広範囲なシステムに統合し、新たな価値を生み出している事例をご紹介します。
スマートファクトリー
スマートファクトリーは、従来の製造業にAIやIoTを導入し、工場内のあらゆる情報をデータ化することで、生産性を飛躍的に向上させる取り組みです。
スマートファクトリーでは、製品設計の段階から3D CAD/CAMなどのデジタルツールが活用されるため、製品の設計図がデジタルデータとして共有され、製造工程へのスムーズな移行が可能です。
また、製造現場ではロボットアームをはじめとする各種機械が自動的に稼働し、製品を組み立てていきます。
IoT技術の導入により、これらの機械から生成される膨大なデータがリアルタイムで収集され、クラウド上に蓄積されます。
収集されたデータはAIによって分析され、分析結果に基づいて、生産計画や在庫管理が最適化され、無駄な資源の消費を削減することができるのです。
スマートファクトリーについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
スマート農業
スマート農業はAIやIoTなどの先端技術を導入することで、従来の農業が抱えていた課題を解決し、持続可能な農業を実現しようとする取り組みです。
具体的には、過去の収穫データや気象データ、生育予測システムなど、様々なデータを統合し、それらを最大限に活用することで、農作業の自動化や効率化を図ることで、収益の向上やコスト削減、高品質な農産物の安定供給が期待できるのです。
スマート農業は、農業が抱える課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献する新たな農業の形として、ますます注目を集めています。
スマートシティ
スマートシティとは、AIやIoTなどの先端テクノロジーとデータを活用し、温室効果ガス削減などの社会課題を解決しながら、市民が快適かつ安全に暮らせる持続可能な都市のことです。
SDGsの達成と並行して、国を挙げて推進されており、地域固有の特色を生かしつつ、行政サービスからエネルギー、交通、商業、医療、福祉、観光、災害対策に至るまで、都市機能のあらゆる側面をスマート化することを目指しています。
行政だけでなく、民間企業やNPOなどが連携するエコシステムの構築も進んでおり、多様な主体が協力することで、都市運営の効率化が図られ、スマートシティの持続可能性が向上するとされています。
また、地域間格差を解消し、都市機能の高度化を通じて、地方都市の活性化を図り、より公平な社会の実現に貢献することも期待されています。
AIとIoTの技術を組み合わせる際の注意点
AIやIoTの技術を導入しても、必ずしも期待通りの効果が得られるとは限りません。導入を成功させるためには、いくつかの注意点に留意する必要があります。
以下で詳しく解説します。
誤った分析をすることがある
AIによるビッグデータ解析は、膨大なデータから新たな価値を引き出しますが、一見すると無関係な事象に因果関係を見出してしまうという課題も存在します。
例えば、ある犯罪を犯す人は、特定の食品を頻繁に購入するといった、人間から見れば明らかに不合理な関連性を見つけ出すケースが挙げられます。
この問題が生じる原因は、AIがデータの統計的な相関関係に過度に注目し、因果関係を誤って解釈してしまうためです。
膨大なデータの中には、偶然の一致や他の要因によって説明できる相関関係が数多く含まれています。
AIは複雑なデータの中から、人間が気づかないようなパターンを発見することができる一方で、誤った結論を導き出す可能性も高まるのです。
コストをかけても必ず成功するわけではない
AIやIoTの導入は、高額な投資にも関わらず、必ずしも期待通りの成果が得られるとは限りません。
導入効果を最大限に引き出すためには、収集するデータの種類や分析方法を慎重に検討することが重要です。
自社の課題や現状を深く理解した上で、AIやIoTを導入しなければ、的外れなシステムとなり、かえって非効率を生みかねません。
データ分析の専門家が不足している
AIやIoTが企業に浸透する一方で、これらの技術を最大限に活用できるデータ分析の専門家であるデータサイエンティストの不足が深刻な問題となっています。
せっかく収集した膨大なデータを活用できずに、経営に活かす機会を逸している企業も少なくありません。
AIやIoTは、単に導入して運用するだけでなく、その分析結果を基に次の経営戦略へと繋げ、継続的にビジネスに貢献していくことが重要です。
そのためには、社内にAIやIoT、データ分析の専門家を育成し、彼らが企業の成長を牽引していくことが重要です。
社内の人材育成には、様々な方法が考えられますが、その中でも効果的な手段の一つが以下のようなセミナーです。
専門家による講義やワークショップを通じて、社員は最新の技術動向や分析手法を学ぶことができ、実践的なスキルを習得することができるでしょう。
データサイエンティストセミナー
データサイエンティストセミナーは、2日間でデータサイエンスの基礎を学び、ビジネス課題解決に繋がるスキルを習得できるセミナーです。
本セミナーでは、統計学の基礎やPythonプログラミング、データ分析の一連の流れを体系的に学びます。
データの前処理方法や、より良い結果を得るためのアルゴリズム選択、仮説検証のための適切な分析手法の選び方も習得できます。
本セミナーにご参加いただくと、オリジナル教材「データサイエンティスト完全攻略セミナーガイド」をプレゼントいたします。
この教材は、セミナー内容の復習や、データサイエンティストを目指す上での参考書としてお役立てください。
AIとIoTの導入はスモールスタートで始めよう
今回は、AIとIoTの関係性やAIとIoTを組み合わせるメリット、活用事例、技術を組み合わせる際の注意点を解説しました。
AIとIoTの技術を導入することで、業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出が期待できますが、企業にとって決して簡単な決断ではありません。
そのため、企業がAIやIoTを導入する際には、慎重かつ長期的な視点を持つことが重要です。
自社の経営戦略とビジョンを明確にし、AIやIoTがどのようにその実現に貢献できるかを検討する必要があるでしょう。
また、いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、スモールスタートで導入し、効果を検証しながら段階的にシステムを拡張していくことが望ましいです。
経営者は、AIやIoTの技術動向を常に把握し、自社の状況に合わせて最適な導入戦略を立案していく必要があります。
