日立製作所を皮切りに、国内大手企業が次々とDXブランドを立ち上げる中、富士通のUvanceが誕生した背景には、サステナビリティに対する強いこだわりがありました。
2024年5月には、NECのBluStellarや三菱電機のSerendie、KDDIのWAKONXなど、数多くのDXブランドが誕生しています。
しかし、Uvanceは単なるDXブランドの1つとして終わらず、サステナビリティという観点から、他のブランドとは一線を画す独自の価値を提供しています。
今回は、企業がサステナビリティに取り組むメリットや取り組む際の手順を解説します。
サステナビリティとは
サステナビリティとは「環境」「社会」「経済」の側面において、将来の世代まで持続可能な状態を保つことを目指す考え方です。
1987年の国連報告書で「持続可能な開発」という言葉が提唱されて以来、世界中で注目を集めています。
近年では、サステナビリティは企業活動においても重要なテーマとなり、企業は自社の利益だけでなく、社会全体への貢献を意識した経営が求められています。
サステナビリティにおける環境や社会、経済という3つの側面は互いに密接に結びついており、どれか一つが欠けても持続可能な社会の実現は困難です。
環境 | 原材料の調達から製品の廃棄に至るまでのライフサイクル全体で環境負荷を低減し、生物多様性の保全に努める |
社会 | 人種や性別、年齢、宗教など、あらゆる人々が健康で文化的な生活を送れる社会の実現を目指す |
経済 | 長期的な視点で利益を追求し、社会への貢献を意識した経営を行う |
企業は、これらの側面を考慮した経営に取り組むことで、社会全体の持続可能な発展に貢献することができるでしょう。
製造業が取るべき未来への対策については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
サステナビリティとSDGsの違い
サステナビリティとSDGsは、どちらも「持続可能な社会」という共通の目標を持ちながら、その意味合いが異なります。
サステナビリティは、より広範な概念で、環境や社会、経済のバランスを保ちながら、将来の世代も豊かに暮らせるような社会を目指していくという考え方です。
一方、SDGsは、このサステナビリティを実現するための具体的な「目標」を17個掲げたものです。貧困をなくしたり、気候変動対策をしたり、海の豊かさを守ったりなど、具体的な課題と達成すべき目標が示されています。
サステナビリティ | 持続可能な社会を実現するための理念 |
SDGs | 2030年までに達成を目指す国際的な取り組み |
企業がサステナビリティに取り組むメリット
企業は、積極的なサステナビリティ経営を行うことで、以下のようなメリットを得ることができます。
- 企業イメージが向上する
- 従業員の満足度が高まる
- 資金調達が有利になる可能性がある
- 事業を拡大できる可能性がある
以下で、各項目を詳しく見ていきましょう。
企業イメージが向上する
サステナビリティ経営は、企業のイメージアップだけでなく、具体的な数値として現れるメリットをもたらします。
例えば、天然資源の消費量を減らすことで生産効率が向上し、結果的にコスト削減に繋がるケースも少なくありません。
また、従業員に対してより良い労働環境を提供することで、従業員の満足度を高め、離職率を下げ、優秀な人材を惹きつけ、企業の成長を加速させる原動力となります。
さらに、サステナビリティ経営は、企業のブランド価値を向上させ、投資家や顧客からの信頼を高めることにも繋がり、企業の長期的な成長を支える重要な要素になると言えるでしょう。
従業員の満足度が高まる
快適な労働環境は、従業員の満足度向上だけでなく、企業理念への共感度を高め、企業への愛着や帰属意識を強固にすることにも繋がります。
こうした多角的な効果が期待できるため、近年、サステナビリティ経営に取り組む企業が急増しているのです。
資金調達が有利になる可能性がある
世界的にESG投資が注目される昨今、企業のサステナビリティ経営への関心は高まる一方です。
サステナビリティとは持続可能な社会の実現を意味しますが、ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の非財務的な側面を評価する指標です。
サステナビリティ経営とESG経営は密接に関連しており、どちらも環境や社会への配慮を重視します。
これらの取り組みは、企業の利害関係者から高い評価を得ることに繋がり、投資家からの注目を集め、資金調達を円滑に進めることにも繋がります。
事業を拡大できる可能性がある
社会貢献型の事業は、企業イメージ向上だけでなく、新たな顧客層を開拓するチャンスにも繋がります。
サステナビリティ経営を推進する企業は、投資家や顧客、従業員など、様々な利害関係者から高い評価を得ることにより、既存の取引先との関係を強化し、新たなビジネスパートナーとの出会いを促進することも期待できます。
また、サステナビリティへの取り組みは、環境問題の解決に向けた新たなアイデアや技術が生まれ、既存の事業を革新する力となるでしょう。
企業のサステナビリティ成功事例
最後に、様々な企業の具体的なサステナビリティの取り組み事例をご紹介します。
NTTグループ
2016年9月にSDGsへの賛同を表明したNTTグループは、教育活動にも力を入れており、小学生向けのICT体験イベントを開催し、子どもたちにICTの最新事例や情報通信の利用ルールを学ばせています。
また、企業のDX化を支援するため、自治体や中小企業、大学などを対象に、DX導入支援を行う新会社を設立するなど、社会全体のデジタル化を推進しています。
製造業のサステナビリティ事例については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
旭化成株式会社
「Care for People」を理念に掲げる旭化成は、サステナブルな社会の実現に向けて、災害時における人々の安全確保に力を入れています。その取り組みの一つとして、IoTを活用した画期的な防災システムを開発しました。
このシステムは、自社が手掛ける住宅の一部に設置された地震計の観測データと地域の地盤情報、個々の建物の詳細な情報などの多様なデータを統合することで、地震発生後、わずか10分~2時間で、顧客の住宅が被る可能性のある被害レベルや液状化が発生するリスクなどを推定することが可能です。
迅速かつ正確な情報提供を実現することで、災害時の対応をより効率的に進めることを可能にし、より安全で安心な社会を実現することが期待されています。
株式会社SUSTAINABLE JAPAN
株式会社SUSTAINABLE JAPANは、海洋ゴミ問題の解決に積極的に取り組む企業です。オーストラリアで開発された海洋ゴミ回収装置のリース・販売を行い、海洋ゴミを無害化し、環境に循環させるサステナブルな社会システムの実証実験を進めています。
この装置は海面に浮かべられ、海水を吸い込み、ゴミだけを捕獲し、海水はろ過して海に戻すという仕組みにより、海洋ゴミの回収効率を大幅に向上させ、海洋環境の改善に貢献することが期待されています。
株式会社えこでん
株式会社えこでんは、エアコンをはじめとする電気設備の運用に関するコンサルティングから、省エネ効果の高い機器の設置、既存機器の入れ替えなどの幅広いサービスをワンストップで提供している企業です。
電気設備の専門家として、企業のエネルギーコスト削減とCO2排出量の削減に貢献しています。
顧客の要望に合わせた最適な解決策を提案し、企画から設計、施工までを一貫して行うことで、効率的な省エネを実現しています。
キッコーマン株式会社
キッコーマン株式会社は、食料品の製造において、製品を作り出すだけでなく、環境への負荷を最小限に抑え、持続可能な社会の実現に貢献するための取り組みを行っています。
同社は、しょうゆの製造過程で発生する「しょうゆ粕」を、廃棄物として廃棄するのではなく、飼料として再利用することで、新たな価値を生み出しています。
しょうゆ粕は豊富な栄養を含んでおり、家畜の飼料として非常に有効であるため、飼料業者を通じて畜産農家に提供することで、農業と畜産の双方における循環型社会の実現に貢献しています。
企業がサステナビリティに取り組む際の手順
サステナビリティという言葉は広く、どこから手をつければ良いのか悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
以下では、企業がサステナビリティに取り組む際の手順を具体的なステップに分けて解説します。
①サステナビリティの本質を理解する
サステナビリティへの取り組みを成功させるためには、最初にしっかりと理解を深めることが重要です。まずは、以下の重要な点に留意する必要があります。
- 取り組みが自社の規模や能力に見合っているかどうか
- 取り組みの成果を明確に示せるかどうか
- 取り組みが持続可能であるかどうか
- 自社ならではの強みや特徴を活かした取り組みであるか
ただし、サステナビリティの課題は複雑に絡み合っているため、一つの取り組みが別の課題に悪影響を与える可能性も考慮する必要があります。
このような観点を認識せずに取り組みを進めると、形だけの活動となる事態に陥る可能性があるでしょう。
サステナビリティの本質を深く理解し、多角的な視点から社会課題を捉えることが大切です。
②中長期的な目標を設定する
サステナビリティに取り組む上で、明確な目的意識と中長期的な目標設定は欠かせません。これらの目標は、企業によって多種多様であり、それぞれの事業特性や社会への貢献度を反映しています。
例えば、ライオングループは、自社の事業活動が社会に与える影響を深く分析し、「サステナビリティ重要課題」を特定しており、この課題解決に向けて具体的な活動目標を設定することで、より持続可能な社会の実現に貢献しようとしています。
一方、キユーピーは、「健康寿命延伸」や「資源の有効活用」など、社会全体の課題解決に繋がる5つのテーマを掲げ、サステナビリティ目標を定めています。これらの目標達成を通じて、企業の長期的なビジョン実現を目指しています。
これらの企業の事例からも分かるように、サステナビリティにおける目標設定は、具体的な行動計画へと繋がるための重要なプロセスです。
社会課題を解決し、持続可能な社会を実現するためには、それぞれの企業が自社の強みを活かし、長期的な視点を持って取り組むことが求められます。
③ロードマップを策定する
ロードマップとは、プロジェクトの出発点から目標達成までの道のりを時間軸に沿って詳細に描き出した計画書です。
地図が目的地までのルートを示すように、企業の全体像を可視化し、チームメンバー全員が同じ方向を目指せるようにすることにより、プロジェクトの進捗状況を把握しやすくなり、より効率的なタスク遂行が可能になります。
例えば、先述したライオングループやキユーピーは、2030年までに達成したいサステナビリティ目標を明確にし、その目標達成度を測るための具体的な数値目標を設定しています。
これにより、目標達成に向けた取り組みの進捗を定量的に評価し、必要に応じて計画を修正することができます。
ロードマップを作成することで、企業は自社のサステナビリティ目標を達成するための具体的な行動計画を立て、利害関係者に対しても透明性を高めることができるでしょう。
企業に合ったサステナビリティ経営で事業を拡大しよう
今回は、企業がサステナビリティに取り組むメリットや取り組む際の手順を解説しました。企業がサステナビリティを推進するには、その本質を正しく理解することが最も重要です。
サステナビリティは、単に環境問題に焦点を当てた概念ではなく、ダイバーシティやインクルージョンといった社会的な課題も包括し、持続可能な社会の実現を目指す包括的な概念なのです。
近年、企業を取り巻く環境は大きく変化しており、サステナビリティへの取り組みはもはや選択ではなく、企業が持続的に成長していくための必須条件となっています。
企業は、サステナビリティを経営の最重要課題として位置づけ、積極的に取り組むことが求められているのです。
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