KDDIは配送ロボットや自動運転車、ドローンが連携し、より効率的な物流網を構築する搬送の自動化を目指しています。
この取り組みによって、それぞれのモビリティが持つ特徴を活かし、より迅速かつ安定的な物流サービスの提供が期待されます。
例えば、都市部では配送ロボットが人混みを避け、効率的に荷物を運搬し、郊外や山間部では自動運転車が長距離を移動し、ドローンが障害物を回避しながら最終目的地へ配送するといったシナリオが考えられます。
物流業界における搬送自動化の更なる進展を促し、人手不足問題の解消や災害時の物資輸送の効率化など、様々な社会課題の解決に繋がることが期待されています。
今回は、搬送を自動化することで得られる7つのメリットや導入の際の課題を解説します。
搬送を自動化することで得られる7つのメリット
搬送を自動化することで以下のようなメリットが得られます。
- 業務の質が向上する
- 生産効率が向上する
- コストを削減できる
- 安全性を確保できる
- 量産に対応できるようになる
- 人手不足が解消される
- 工場全体のDXが推進される
導入にあたっては、いくつかの重要なポイントを理解しておく必要があります。これらのポイントを、以下で詳しくご説明します。
①業務の質が向上する
工場内において、異なるリードタイムを持つ2種類の部品を生産する場合、準完成品の保管が必要となることがあります。
この保管中に、ホコリなどが付着して、製品品質が低下してしまうという課題が存在します。
しかし、搬送自動化システムは、それぞれの生産ラインを停止させることなく、部品を搬送できるため、一時的な保管が不要になり、ホコリやゴミの付着を防ぎ、製品品質の維持・向上に繋がります。
②生産効率が向上する
従来、手押し台車などを使用して工程間を人力で搬送していた作業では、作業員の負担が大きく、生産性にも限界がありました。
しかし、搬送自動化システムを導入することで、搬送作業の効率が飛躍的に向上します。これにより、搬送工程に割いていた人員を他の業務に充てることが可能となり、結果として全体の生産性向上にも繋がるのです。
③コストを削減できる
従来の有人搬送では、搬送量に合わせて人員を配置しなければならなかったため、人件費が大きな負担となっていました。
しかし、自動化によって無人化を実現することで、この人件費を大幅に削減することが可能です。
さらに、人が行う作業には、常に教育や指導が必要となりますが、自動化されたシステムは一度設定すれば、安定した作業を継続することができます。
④安全性を確保できる
従来の搬送業務では、人の手による作業のため、転倒や落下などの事故リスクが常に存在していました。
5S活動やヒヤリハット活動などの取り組みは有効ですが、人的要因によるミスは完全に排除できません。
しかし、搬送工程を完全に自動化することで、人による作業をなくし、安全性を飛躍的に向上させることが可能です。
自動化されたシステムは、あらかじめ設定された手順に基づいて正確かつ安全に作業を行うため、人的ミスによる事故の発生率を大幅に減らすことができるのです。
⑤量産に対応できるようになる
人の手による作業では受注数が急増すると、生産能力の限界があり、人材だけでは対応が困難な状況に直面します。
熟練の職人さんであっても、休みなく最大限の速度を維持し続けることは不可能ですが、搬送を自動化することで、作業者の能力に左右されることなく、高速かつ長時間での作業が可能です。
これにより、生産速度の向上と安定化を同時に実現し、急増する需要に柔軟に対応することが期待できるのです。
⑥人手不足が解消される
物流業界は、季節やイベントなどにより取り扱う荷物量が大きく変動するため、それに合わせて必要な人員数も頻繁に変化します。
近年深刻化する人手不足の問題は、こうした人員リソースの変動をより困難なものにし、安定した物流運営を阻む大きな要因となっています。
しかし、搬送の自動化によって、人手に頼っていた作業を機械が担うようになれば、人員の配置を柔軟に行うことができ、繁忙期には効率的な作業を、閑散期には人員の配置転換をスムーズに行うことができるようになるのです。
結果として、シーズンを通して安定した物流運営を実現し、人手不足による影響を最小限に抑えることが期待できます。
⑦工場全体のDXが推進される
搬送の自動化は、工場の様々な作業内容をデジタルデータとして詳細に記録し、可視化することができます。
そのため、いつ、どの資材が、どこからどこへ運ばれたのかといった情報が、ひと目で把握できるようになるのです。
収集されたデータは、工場全体のDXを推進するための貴重な情報源となるため、生産計画の最適化や在庫管理の改善、予知保全など、工場全体の業務プロセスを革新的に変える可能性を秘めています。
工場DXについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
搬送の自動化における技術の種類
搬送の自動化において活躍するロボットは、その役割によって以下の2種類に分けられます。
運搬系 | 工場内や倉庫内などで、製品や部品などをある場所から別の場所へ運搬する |
アーム系 | 人間の腕のように可動するアームで、ピッキングや積み下ろしなどのより繊細な作業をこなす |
運搬系は、自動運転車のように、決められたルートや指示に従って、スムーズに物資を移動させることができます。
一方、アーム系は、箱詰めされた製品から特定の商品を取り出すといった作業も高い精度で行うことが可能です。
それぞれのロボットの特徴を理解し、最適なロボットを導入することで、作業効率の向上や人件費の削減など、様々なメリットが期待できます。
以下で、搬送の自動化で活躍するロボットを詳しくご紹介します。
【運搬系】無人運搬車
無人運搬車は、自動搬送車とも呼ばれており、床に磁気テープやラインなどを設置し、その上に設置されたセンサーで読み取ることで、あらかじめ決められたルートを自動で走行する搬送ロボットです。
工場や倉庫内において、人手を介さずに物資を運搬する作業を自動化することで、作業効率の向上や人件費の削減に貢献しています。
無人運搬車はその柔軟性から、多品種少量生産に対応できる生産システムにも適しており、現代の製造業において欠かせない存在となっています。
無人運搬車については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【運搬系】自律走行搬送ロボット
自律走行搬送ロボットは、カメラやセンサーを搭載し、周囲の環境をリアルタイムに認識しながら、自律的に目的地まで移動する搬送ロボットです。
床面に特別なガイドラインを敷設する必要がないため、柔軟なレイアウト変更に対応でき、作業環境の変化にも迅速に対応可能です。
一方で、運搬できる荷物の重量には制限があるため、軽量な物品の搬送に適しており、走行ルートが頻繁に変わるような環境や多様な作業に活用したい場合に、その能力を発揮します。
【運搬系】自動棚搬送ロボット
自動棚搬送ロボットは、作業員が商品棚まで移動する手間を省き、ピッキングや収納作業に集中できる環境を提供します。
そのため、作業効率の向上だけでなく、人為的なミスを減らし、作業品質の安定化にも繋がります。さらに、作業場所が固定されることで、作業員の負担軽減にも繋がり、離職率の低下が期待できます。
しかし一方で、大型商品の搬送は、専用の装置やシステムとの連携が必要となるでしょう。
【アーム系】垂直多関節ロボット
アーム型の垂直多関節ロボットは、荷物の積み降ろし作業において、荷降ろし(デパレタイジング)と積み上げ(パレタイジング)の両方を担うことができます。
このロボットは、従来人手で行われていた重労働を自動化し、作業員の負担を大幅に軽減します。
アームの可動域が広いことから、作業環境や積載パターンに合わせて柔軟に配置や動作を変更できる点が特徴です。
【アーム系】ピッキングロボット
ピッキングロボットは、注文された商品を倉庫内の棚から自動で探し出し、指定された場所へ運ぶためのロボットです。
従来、ピッキング作業は人手で行うことが一般的でしたが、近年では3Dビジョンによる高精度な物体認識技術の発展により、ロボットによる自動化が現実的になってきました。
3Dビジョンは、物体の形状や位置を立体的に捉えることができるため、複雑な形状の商品でも正確に識別し、ピッキングすることができます。
さらに、3Dビジョンとロボットアームを連携させることで、ロボットはまるで人間の腕のように商品を掴み、移動させることが可能となりました。
ピッキング作業の自動化により、人為的なミスが大幅に減少し、作業効率が飛躍的に向上します。
また、搬送ロボットと連携させることで、ピッキングから搬送までの全工程を自動化することも可能なため、物流業界における生産性向上とコスト削減に大きく貢献することが期待されています。
搬送の自動化における課題
搬送の自動化は、多くのメリットをもたらす一方で、導入前にしっかりと理解しておくべき課題も存在します。
以下では、搬送の自動化における課題について詳しく解説していきます。
導入コストが必要になる
搬送作業の自動化を検討する際、特に大規模な設備導入では、多額の初期投資が必要となるケースも少なくありません。
そのため、自動化によるコストダウン効果や業務品質の向上効果を、自社の具体的な状況に基づいて慎重に試算することが重要です。
他社の事例は参考にはなりますが、自社の生産規模や扱う製品の種類、作業環境など、様々な要素が異なれば、得られる効果も大きく変わってくるでしょう。
これまでの作業内容を変える必要がある
搬送の自動化は、既存の業務フローを根本から見直すことを要求されるため、人員配置の見直しはもとより、業務内容そのものが大きく変化することも想定されます。
スタッフの業務内容が変更される可能性があるため、反発が生じないように、十分な事前説明と丁寧なコミュニケーションが求められます。
具体的には、自動化によるメリットを明確に示し、個々の従業員がどのように新しい業務に携わるのか、どのようなスキルが求められるのかを具体的に説明することが重要です。
また、変化に対する不安や疑問を解消できるよう、質疑応答の機会を設けることも効果的です。
さらに、従業員が新しいシステムや手順に慣れるためのサポート体制を整備し、必要に応じて研修を実施することも重要です。
従業員の協力なしには自動化の成功はありえないため、丁寧な説明とサポート体制を構築することで、スムーズな移行を実現し、自動化によるメリットを最大限に引き出すことができるでしょう。
運用マニュアルを構築する必要がある
搬送の自動化を導入する際には、業務フローが根本的に変わり、新しい手順を社員全員に周知徹底させる必要があります。
そのため、新たなマニュアルを作成し、説明会や研修を実施するなど、多岐にわたる準備が求められます。
既存の業務と並行して、新しいマニュアルを整備し、浸透させていく必要があるため、移行期間は担当者にとって大きな負担となることが予想されます。
システム障害が起こる可能性がある
搬送の自動化は、ヒューマンエラーを大幅に削減できる一方で、システム障害や設備トラブルのリスクが付きまといます。
そのため、緊急事態が発生した場合は、業務への影響を最小限に抑えるため、バックアップ体制の構築、迅速な連絡網の整備、徹底した保守点検が欠かせません。
これらの対策を講じることで、安定した搬送システムを維持し、業務の継続性を確保することができるでしょう。
搬送の自動化はメリットの大きい施策になる
今回は、搬送を自動化することで得られる7つのメリットや導入の際の課題を解説しました。
工場や倉庫において搬送作業を自動化することは、業務の質や生産性を高め、安全性を向上させる上で非常に有効な手段です。
自動化によるメリットとしては、人件費削減によるコストの低減、人的ミスによる製品の損傷や出荷遅延の防止、生産性の向上などが挙げられます。
また、危険な作業をロボットに任せることで、作業員の安全確保にも繋がるため、搬送の自動化は、企業の競争力強化に大きく貢献すると言えるでしょう。
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