フォークリフトは、工場作業の荷役作業や運搬のために利用すると考えられがちです。しかし実際には、フォークリフトは運ぶための機械ではないと記述されているニュースがありました。
このとき「なぜフォークリフトが運ぶための機械ではないのか」と疑問に感じた人もいるでしょう。
今回は、フォークリフトが運ぶための機械ではない理由、そして今後実施すべきフォークリフトDX(デジタル・トランスフォーメーション)化のメリットについてわかりやすく解説します。既存業務の課題や具体的な解決策を紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
フォークリフトの用途・目的
フォークリフトと言えば、荷物の出し入れ・整理・移動に利用する機械だとイメージする方も多いでしょう。ですがニュース記事によると、運搬という目的には使わず、近距離での荷物の出し入れ・整理のみに利用するのが当初の用途だったと説明されています。
フォークリフトは小型の重機でありながら高重量な荷物を積載するのが特徴です。
その影響もあり、積載時に移動や細かな旋回が伴うと、次のようなリスクが伴います。
- フォークリフトの転倒
- 積載物の破損
- 操縦者のケガ
どのリスクも、工場作業に大きなダメージをもたらす要素です。
また、フォークリフトの転倒によって、周辺の荷物が雪崩を起こしてしまう恐れがあることから、十分に注意した走行が求められます。
フォークリフト操作の課題
フォークリフトを移動の目的で使うと、さまざまな課題が発生するとご存じでしょうか。
参考として、工場作業で頻繁に発生する3つの課題をまとめました。
紹介するのは、ニュースの中でも「ムダな動き」と説明されている内容です。
どのような問題が発生するのか、ぜひチェックしてみてください。
渋滞による混雑
工場内で複数のフォークリフトが荷役作業を実施していると、渋滞が発生しやすくなることに注意しなければなりません。例えば、荷物を運び出すために別のフォークリフトを移動させなければならない、渋滞で身動きが取れないといった問題が起きます。
荷役作業に時間がかかるほか、運搬が計画通りに進まず、トラック運搬に時間ロスが発生するかもしれません。
空走行・パトロール走行
フォークリフトを人力で操縦する際に発生しやすいのが、何も積載せずに移動する「空走行」「パトロール走行」です。
「次に何をやるのか」「どういったルートを通るのか」を人の判断に任せるため、時間のロスが発生しやすくなります。特に工場業務に慣れていない人や、フォークリフト資格を取得したばかりの人に起きやすい課題です。
荷役の繰り返し
さまざまな製品を取り扱う工場に多いのが、荷物の出し入れを何度も繰り返す作業です。
例えば、4段重ねになった製品の最下層の荷物を取り出したいときに、上3段を一度下してまた積み上げるといった作業が必要になります。荷役を繰り返す回数が多いほど、工場の回転効率に影響が及んでしまうと覚えておきましょう。
少子高齢化による作業効率の低下
2024年に団塊の世代が後期高齢者へと移り変わるなど、徐々に少子高齢化の波が製造業にも押し寄せてきています。その影響を受け、フォークリフトの熟練操縦者が減り、工場内の荷役作業の効率が落ちているのも事実です。
若年層の就職状況にも偏りが生まれているため、企業によっては工場規模の縮小を求められるかもしれません。
フォークリフトの課題はDX化で解決できる
結論として、フォークリフトに発生する慢性的な課題は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)化を目指すことにより解決できます。
DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスを効率化する取り組みのことです。
参考として工場業務でよく利用されているDX化の項目をまとめました。
DX化の項目 | 参考例 |
新システムの導入 | ERPシステム、在庫管理システム、RFIDシステム |
工場内設備のIoT化 | 設備の部品をIoT化して、作業状況やメンテナンスをデータ化 |
設備・重機の自動化 | AI技術や画像処理技術を駆使して、機械の動きを自動化 |
DX技術者の育成・採用 | 新技術の知識を持つ人材を確保 |
上記のうち、フォークリフトは重機の自動化などを活用することによって、業務課題を解決できます。もちろん、工場の設備や人材の状況、業務状況などによって、必要となるDX化が変わるのも事実です。
もしフォークリフトの課題を含めて工場の効率化・省人化・自動化などを検討しているのなら、DX化を検討してみてはいかがでしょうか。もしDX関連の講座をお探しなら、以下のセミナーがおすすめです。
フォークリフトをDX化するメリット
フォークリフト操作の課題を解決したいのなら、DX化を検討することが重要です。
参考として、DX化に成功することで得られるメリットを3つまとめました。
人材の省力化が可能になる
フォークリフトのDXを実施して自動操縦を実現すれば、その分だけ操縦者を削減できます。
人による判断を減らせるため、渋滞の発生しない荷役作業を実現できるのがメリットです。
また、少子高齢化が進み人手不足に悩んでいる企業にとって、人材の省力化を実現できるのもフォークリフトDXのメリットだと言えます。人件費の削減にもつながるため、浮いた人件費をDX導入に活用できるのも魅力です。
生産性向上を実現できる
フォークリフトのDX化を実現すれば、効率良い荷役作業による生産性の向上が可能となります。参考として、生産性が向上するポイントをまとめました。
- 荷物の整理
- 運搬車への荷積み
荷役作業中の渋滞や空走行がなくなるため、自然と業務効率が良くなります。
自社工場内の作業のみならず、運搬業者といったサプライチェーンの時間ロス防止につながるでしょう。
結果として、素早く荷物を出し入れできる、新たな運搬車を呼び込めるようになるといった魅力があります。現在よりも多くの業務にあたることができるため、利益率が向上しやすくなるのも魅力のひとつです。
フォークリフトレスを実現できる
フォークリストのDX化を実施すれば、フォークリフトの台数を必要最小限に抑える(もしくは無くす)フォークリフトレスを実現できます。
転倒や破損、ケガといったリスクのあるフォークリストは、もともと長距離の移動を伴わない荷役作業が主な役割です。安全管理・品質の取れた工場業務を実施できるようになるのはもちろん、フォークリフトの維持管理費用を削減できます。
フォークリフトをDX化する手順
フォークリフトに課題を抱えている企業向けに、DX化を実現する手順を2つ紹介します。
失敗しないDX化を実施したいのなら、紹介するポイントを押さえつつ動いてみてください。
自社フォークリフトの課題を抽出する
まずは、自社が抱えるフォークリフトの課題を抽出してください。
例えば、次のような課題があるはずです。
- フォークリフトに維持管理費用がかかる
- フォークリストの操縦者の人件費がかかる
- 定期的にフォークリフトのトラブル・事故が起きる
- フォークリフト操縦で現場が混乱しやすい
もし1~2の課題を解決したいなら、自動操縦のフォークリフトを導入する、フォークリフトレスの荷役設備を整えるといった対策で問題を解決できます。また、3~4について、工場内設備の動線を整える、荷役作業のマニュアルを整備するといった準備が必要です。
課題抽出によって対策できる項目が変化します。
誤った対策を実施しないためにも、事前に課題抽出を実施してください。
DX化のシステム・重機をテストする
課題解決の対策を実施する際には、最初から本格導入するのではなく、一度テスト検証を実施してください。なぜなら、本格導入後に次の問題が発生する場合があるからです。
- 導入したシステム・重機が自社のスタイルに合わなかった
- 別の設備の改善が必要だった
DX化の実現には、労力・手間・時間・費用といったコストがかかります。
コストをかけた後に失敗したと気づいてしまうと、企業に大きな損失が生まれるケースもあるので、事前テストの実施をおすすめします。
もしテスト方法について検討しているのなら、産業用メタバースを活用してみるのはいかがでしょうか。DX化のテストに役立つ情報を、以下の記事で解説しています。
フォークリフトDX化の事例
製造業では、すでにフォークリフトのDX化が実現しつつあります。
参考としてフォークリフトを活用したDX事例を2つ紹介します。
ICTタグ検知によるフォークリフト作業の効率化
自動認識システムの開発サービスを提供している株式会社マーストーケンソリューションでは、RFID(電波によるモノの識別・管理システム)の読み込み技術を搭載したフォークリフトの販売をスタートしました。
積み荷に専用のICタグを貼り付けることによって、フォークリフトが荷物を指示した場所まで荷役してくれるのが特徴です。人力による操縦にも対応しており、DX技術と操縦者の技術をかけあわせて高い精度の荷役作業を実施できます。
無人フォークリフトによる積み荷作業の自動化
物流業界でも活躍している三菱重工業株式会社では、工場の荷物を効率的に運搬車へ荷役する方法として、無人フォークリフトを発表しました。
人工知能を備えたフォークリフトであり、設定された荷物・運搬車の位置を判断して工場内の荷物を運び込むのが特徴です。また、工場内の荷物の流れは遠隔地で管理されており、トラブルが起きてもすぐに対応できるよう、必要最小限のスタッフが配置されています。
また、製造現場では他にもさまざまなDXの取り組みが実施されています。詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
フォークリフトのDX化についてまとめ
工場作業を含む製造業は、2024年現在人材不足や法律規制といったさまざまな問題に直面しています。また、既存従業員の高齢化が著しい業界なのも事実です。
中でもフォークリフトを使った荷役作業を人力で実施した場合、渋滞や事故、非効率的な作業が発生する恐れもあります。そこで現在求められているのが、フォークリフトなどの人力作業に依存した項目のDX化です。
デジタル技術を活用して、省人化・効率化を実現できれば、必要最小限の人材だけで工場を円滑化できます。製造業は現在、DX化が激しく進んでいることから、今後の動きから目が離せません。