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【2024】産業用メタバースとは?デジタルツインに活用できる最新技術・事例を紹介

近年よく話題になっているメタバース。
生産系の工場向けに、産業用の新たなメタバースが登場したことをご存じでしょうか。

その名も「産業用メタバース」と言い、デジタルツインとメタバースの技術を融合した仮想空間のことです。すでに日本国内でも導入・業務活用が進んでおり、大手企業を中心にさまざまな取り組みが実施されています。

今回は、産業用メタバースの概要や注目が集まる理由、そして最新動向についてご紹介します。

産業用メタバースとは?

産業用メタバースとは、産業分野で活用できるインターネット上の仮想空間のことです。
仮想空間に現実の工場等の施設を生成し、次のような目的で利用します。

  • 産業用の工場運用を仮想空間上でテストする
  • 新たな産業用設備の配置を検討する
  • 効率的な産業用の工場設計・実証実験をおこなう

工場をそのまま再現することはもちろん、配置する機械設備やその動作をすべて再現するのが特徴です。また、産業用の検討をメタバース上で実施できるため、手軽に何度も計画検討を重ねられます。

さらには、専用のヘッドセットデバイスを着用することによって、メタバースに参加して、仮想上の現物を見ながら検討・チェック・コミュニケーションをできるのが産業用メタバースの魅力です。

メタバース・デジタルツインの違い

産業用メタバースは、仮想空間上を自由に移動できる「メタバース」、現実世界の物体をデジタル上に再現する「デジタルツイン」という技術が融合して作り出されているのが特徴です。参考として、2つの違いを表にまとめました。

メタバース デジタルツイン
目的 仮想空間上の操作 現実世界の仮想データ化
関係性 データを反映する空間 現実世界のデータを取得する技術

2つの要素は、仮想空間なのか、データとして再現する技術なのかという違いがあり、デジタルツインとして作り出した工場をメタバース上に生成するという関係が成り立っています。

現実世界のものを仮想空間に再現することによって、現実世界では難しい現物の配置検討やシミュレーションなどを手軽に実施できるのが産業用メタバースの魅力です。

産業用メタバースが注目される理由

産業用メタバースのイメージ

産業用メタバースが注目されている理由を解説します。
企業導入が進んだ背景を含めて解説しているので、産業用メタバースの魅力を知る参考にしてみてください。

問題をすばやく発見し修正できる

従来、現実世界の産業用の工場では、事前の図面検討などにより配置や移動、運転時の問題を発見しなければなりませんでした。しかしこれには、次のような負担があります。

  • 図面の書き換えに時間がかかる
  • 1つの検討に時間を要する

一方、産業用メタバースを活用して生産工場および設備をまるごとデジタルツイン化してしまえば、図面を使った手動での確認・検討が不要になります。

例えば「設備導入時に衝突の危険性はあるか」「運転時にエラーが起きそうな場所はあるか」という情報をすべて電子上でチェックできるのが魅力です。産業用の工場効率化および維持管理に役立つ技術として、産業用メタバースに生産分野の企業から注目が集まり始めました。

未然に問題発生を防げる

これまでの産業用の工場建設では、完成後に運転テストを実施しなければ本当に安全なのかを確認できませんでした。場合によっては、工場の完成後に不備が見つかり配置の再検討が必要になるケースもあったのです。

また、当初は問題が起きなくとも、時間の経過とともに不具合が起きてしまうのが、産業用の工場のネックな部分でした。

一方で、産業用メタバースを活用すれば、長期利用を想定した運転シミュレーションをメタバース上で実施できます。いつ設備や部品の交換が必要なのか簡単にチェックできるのはもちろん、誰もが情報を理解できるように可視化できるのがポイントです。

わかりやすく具体的な工場の設計検討ができ、将来発生するかもしれない問題を未然に防ぎやすくなることから、産業用の安全対策を重要視する企業から産業用メタバースに注目が集まっています。

産業用メタバースの最新動向

2024年現在の産業用メタバースの最新動向を、詳しく紹介します。
世界中のIT・デジタル技術が集まるイベント「CES 2024」で発表された情報をもとに解説しているので、産業用メタバースについて知る参考にしてみてください。

Siemens Xceleratorを使用したパートナーとの協業

Siemens Xceleratorを使用したパートナーとの協業
出典:Siemens公式サイト

デジタル分野に特化した世界有数のテクノロジー企業「Siemens(シーメンス)」は、CES 2024でオープンデジタルビジネスプラットフォーム「Siemens Xcelerator」を使用したパートナーとの協業による新製品を発表しました。

例えば、国内でも有名なSONNY(ソニー)とパートナーシップを結び、空間コンテンツ作成システムを活用した産業用メタバースの開発ソリューションを2024年中に提供すると発表しています。

専用ヘッドセットを装着することによって、仮想空間上で工場関連の設計が可能です。
産業用メタバースを活用することで没入型のデザイン体験のほか、同じ仮想空間上で共同作業を実施できる点に注目が集まっています。

人々の生活・仕事・動き・生産を変える産業用メタバースを発表

人々の生活・仕事・動き・生産を変える
出典:Siemens公式サイト

同テクノロジー企業の「Siemens(シーメンス)」は、AWS(Amazon Web Service)とパートナーシップを結び、産業界のAIアプリケーション構築の効率化を目指すと発表しました。

「人との生活」「仕事」「動き」「生産」を効率化するために産業用メタバースを活用し、工場内のAI運用テストや工場同士のネットワーク展開などを目指しています。

CESを含め、近年ではデジタルを活用したイベントが多数提供されています。
もしデジタル展示会に興味をお持ちなら、以下の記事もチェックしてみてください。

デジタル展示会プラットフォームの選び方とおすすめを紹介!

製造業における産業用メタバースの活用事例

産業用メタバースは、すでに国内外の製造業で活用が進んでいます。
産業用メタバースの活用方法の参考として、大手企業が実施する産業用メタバース導入の事例を4つまとめました。

BMWによる自動車工場のデジタルツイン化

BMWによる自動車工場のデジタルツイン化
出典:BMW公式サイト

大手自動車メーカーのBMWは、世界各地にある自動車生産工場をデジタルツイン化・メタバース化し、産業用メタバースとして活用することを発表しました。

工場内の敷地・建物・設備をすべて3Dスキャンし、メタバース上で設計検討ができる産業用の「バーチャル工場」を作成している状況です。また、BMWの生産工場のサプライチェーンを可視化するために、工場のDX化を図る「BMW iFACTORY」が実施されています。

すでに約1万5,000名のBMW社員が、産業用メタバースを活用してデジタルツイン化した工場を使って検査業務を実施しています。

ダイキンによるメタバースを活用した製造ラインの効率化

ダイキンによるメタバースを活用した製造ラインの効率化
出典:ダイキン公式サイト

空調設備・製品の生産を実施する国内企業ダイキンは、2021年にデジタルツインの技術を活用した産業用メタバースの生産管理システムを開発しました。

工場内の全データを産業用メタバースとして電子化し、工場内に潜む潜在的な問題を予測するために利用されています。生産管理全体のワークフローをシミュレーションすることにより、工場運転前に安全性を確認できるのがポイントです。

産業用メタバースの実現により、生産ロスの30%削減が想定されています。

旭化成によるメタバースを活用した人手不足の解消

旭化成によるメタバースを活用した人手不足の解消
出典:旭化成公式サイト

化学製品や医薬製品等の生産を担う国内企業旭化成は、産業用メタバースの活用として、水素製造プラントのデジタルツイン化・メタバース化を実現しました。

製造・貯蔵・輸送までのプロセスをすべてデジタルツイン化したデータ上で管理し、工場の遠隔操作および運転の自動監視を実施しています。さらには、遠く離れたエリアの担当者が工場の監視や管理を担うなど、国内外の産業用の工場管理を省人化できるようになりました。

また、旭化成の産業用メタバースの活用は、人手不足に悩む国内問題の取り組みとして動き始めた対策です。2024年現在で、すでに人手不足の解消を実現しました。

トヨタ自動車による都市・サービス開発のデジタルツイン化

トヨタ自動車による都市・サービス開発のデジタルツイン化
出典:トヨタ自動車公式サイト

国内大手自動車メーカーのトヨタ自動車は、IoT技術を活用した実証都市「Woven City」の管理のために産業用メタバースとしてデジタルツインの技術を活用しました。

都市の運営を産業用メタバースの中に組み込み、エリア内で得られた情報をすべて産業用メタバースで管理します。

また、都市内の店舗配置・誘致の検討にも産業用メタバースを活用し、産業用のツールとしてだけではなく、人々の生活やビジネスの動きをリアルタイムでシミュレーションしているのが特徴です。

産業用メタバースでは、よくレーザースキャンやドローンを使ってデジタルツイン化を実施しています。産業用メタバースのために3Dスキャナやドローンの活用を検討しているのなら、以下の記事もチェックしてみてください。

ドローン、3Dスキャナを活用した「上下水道インフラ向け3Dモデル化」サービスをご紹介!

産業用メタバースの将来性・展望

産業用メタバースの将来性や展望について紹介します。
今後、産業用メタバースがどのように発展するのかを予想する参考にしてみてください。

市場の増加が見込まれる

産業用メタバースの将来予想
出典:情報流通行政局

産業用メタバースはもちろん、メタバースという分野の市場は現在も伸び続けており、今後数年で10倍近い市場拡大が起きると予想されています。その拡大に伴い、メタバースの一種である産業用メタバースも大きな伸び率を見せると予想できるでしょう。

工場設計や工場に関わるサプライチェーンも含め、産業用の工場運営に関わるすべてを効率化できるのが特徴です。安全性が重要となる生産業界のニーズも極めて高いことから、産業用メタバースは安定的な伸びを見せていくでしょう。

産業用メタバースを起因とした新たな産業革命がおこる

これまでメタバースと言えば、エンタメ分野等で活用されるのが一般的でした。
一方、今回紹介した産業用メタバースがさらなる普及を見せれば、産業用の工場のみならず製造関連全体の効率化を期待できます。

人々の手作業で運営されていた産業用の工場が、石炭利用により産業革命が起きたように、今回の産業用メタバースによって、新たな産業革命が起きるのではないかと期待が集まっています。

産業用メタバースについてまとめ

今回は、生産系の工場等で注目されている「産業用メタバース」の概要や最新動向についてご紹介しました。産業用メタバースはすでに国内外で導入が進んでおり、工場生産の効率化を実現している企業も登場しています。

また、将来的にも市場拡大が期待されている分野であるため、今後も目が離せません。

今回ご紹介した産業用メタバースの業務活用を検討しているのなら、ぜひメタバースやデジタルツインについて学んでみてください。

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