facebook

【2025】オンプレAIとクラウドAIの違いはなに?それぞれのメリットや移行する具体的なステップ

近年、ハードウェアベンダーがAI専用サーバーや導入支援サービスを積極的に提供し、AI市場が活況を呈しています。特に、大手企業はAIに特化したハードウェアと導入をサポートするソリューションを次々と発表しており、AI導入を検討する企業にとって選択肢が増えています。このような状況の中、2024年10月にNutanix Japan、DataRobot Japan、日立システムズの3社は、日本企業における生成AI導入を支援するため、新たなパートナーシップを締結しました。

3社は共同で、オンプレAIを提供することで、生成AIのメリットを享受できるように支援していきます。高いセキュリティレベルを確保しつつ、効率的なAI開発と運用を実現することを目指しているようです。

今回は、オンプレAIの概要やクラウドAIとの違い、それぞれのメリットとオンプレAIからクラウドAIに移行する際のステップを解説します。

オンプレAIとは

オンプレAIとは

オンプレAIとは、自社内にサーバーを設置し、AIを構築・運用する形態です。例えば、AIチャットボットのようなシステムを自社で開発し、自社のサーバー上で稼働させるイメージです。

この「オンプレミス」という言葉は、IT用語で「自社運用」を意味し、システムを自社で完全に管理することを指します。

オンプレAIとクラウドAIの違い

AIの導入を検討する際は、オンプレミスAIとクラウドAIという2つの選択肢があります。両者の主な違いは、システムの設置場所と管理主体です。

オンプレAIは企業が自社のサーバーやコンピューター上にAIシステムを構築し、運用する方式です。自社でハードウェアやソフトウェアを管理するため、カスタマイズ性の高さとセキュリティが確保できます。

一方、クラウドAIは、インターネット経由で外部のサーバーを利用し、AIサービスを提供する方式です。初期費用を抑えられ、迅速に導入できる点が魅力です。また、利用状況に応じて柔軟にリソースを調整できるため、コストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。

オンプレAI クラウドAI
導入のしやすさ ×
柔軟性な拡張性 ×
カスタマイズ性
セキュリティ性

オンプレAIの導入におけるメリット

オンプレAIの導入におけるメリット

オンプレAIの導入におけるメリットを以下で解説します。

自社の業務に応じたカスタマイズができる

オンプレAIを導入する際は、サーバーなどのハードウェアやソフトウェアなどすべての機器を自社で選択できるという大きなメリットがあります。自社の業務や業態に最適な機器を選定し、柔軟なカスタマイズが可能なため、生成AIをより使いやすく、効率的に活用することが期待できるでしょう。

不正アクセスのリスクを回避できる

オンプレAIはインターネットに接続せず、社内ネットワークで完結する点が大きな特徴です。そのため、企業の機密情報が外部に漏洩したり、不正アクセスを受けるリスクを大幅に軽減することができます。

自社内でシステムを完結させることで、情報セキュリティをより強固に保ち、安心して業務を行うことが可能です。

クラウドの安全性については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

クラウドの安全性は信頼できる?発生するリスク一覧と対処法を紹介

既存システムとの連携ができる

オンプレAIは、使用するハードウェアやソフトウェアを企業が自由に選択できるという大きなメリットがあります。この自由度により、既存のシステムとの親和性の高い機器を選択することで、スムーズなシステム統合ができます。

既存のシステムとの整合性を考慮しながら、最適なAIやハードウェアを選択することが可能なため、新たな価値を生み出すための柔軟なシステム構築が可能になります。

長期使用でコスト削減ができる

オンプレAIは、サーバーやネットワークなどのインフラを自社で用意するため、導入時の初期費用が大きくかかるものの、一度構築すれば、長期間にわたって利用できるため、クラウドAIのように月々の利用料金が発生し続けることはありません。そのため、長期的な視点で見ると、トータルコストを抑えられる可能性があります。

さらに、利用量に応じて追加費用がかかることもないため、予算計画を立てやすく、安定した運用が期待できます。

通信速度がぶれることがない

オンプレAIは、社内ネットワークを通じて直接アクセスするため、安定した高速な通信環境が確保されます。そのため、場所や時間帯に左右されることなく、いつでもスムーズに生成AIを利用することができます。

一方、クラウド環境では、インターネット経由で生成AIにアクセスするため、通信速度はインターネットの接続状況や他のユーザーの利用状況に左右されます。回線速度の低下などにより、レスポンスが遅くなったり、一時的に利用できなくなるといった状況が発生する可能性があるでしょう。

プロバイダーに依存することがない

クラウドAIは、サービスを提供するプロバイダーに大きく依存することになります。プロバイダーは、利用状況や市場の動向に応じて、一方的に料金を値上げする可能性があったり、プロバイダーがサービス提供を突然中止してしまう可能性も否定できません。

一方、オンプレAIは、必要な設備や機器を自社で所有するため、外部のプロバイダーに左右されることなく、安定的な継続ができます。これは、企業にとって高い独立性と安定性を確保できるという大きなメリットと言えるでしょう。

オンプレAIの導入におけるデメリット

オンプレAIにはメリットもある一方で導入する際には、以下のようなデメリットや注意すべき点もあります。

多大な初期コストがかかる

オンプレAIを導入する場合は、サーバーやネットワーク機器、ストレージなどのハードウェアの購入が必須です。これらの機器に加え、ソフトウェアのライセンス費用やシステムの設置・構築に要する費用も発生するため、初期投資額は決して少なくありません。

クラウドAIと比較すると、導入時のコスト負担が大きい点が特徴と言えるでしょう。しかし、一度オンプレAIを導入してしまえば、その後は継続的な利用料金が発生しないため、長期的な視点で見ると、クラウドAIよりも費用対効果が高いケースも少なくありません。

社外からアクセスしにくい

オンプレAIは、基本的に自社のネットワーク内に構築されるため、外部からのアクセスが制限されるという特徴があります。例えば、テレワークや外出中の社員がオンプレAIにアクセスしたい場合、単にネットワークに接続するだけでは利用できません。

安全性を確保するため、認証システムを導入し、クライアント端末の認証などを行う必要があります。

製造業の在宅ワークについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】製造業の在宅ワークってある?求人例3選と在宅をこなすポイント

機器を設置するスペースが必要になる

オンプレミス環境を構築するためには、サーバーや関連機器を設置し、安定稼働させるための物理環境の整備が必要です。具体的には、機器を設置するための十分なスペースの確保、機器の性能を維持するために必要な温度や湿度の管理が求められます。

また、サーバーなどのIT機器は、長時間の稼働に伴い、大量の熱を発生させるため、空調設備による冷却が必須です。また、湿度が高すぎると結露が発生し、機器の故障の原因となる可能性があります。

自社でメンテナンスを実施する必要がある

オンプレミス環境では、システムを構成するハードウェアやソフトウェアのメンテナンスをすべて自社で行う必要があります。そのため、導入前に、機器の寿命や故障頻度を考慮し、メンテナンスにかかる費用や人員を正確に見積もることが重要です。

また、クラウドAIのように、システムの自動アップデートや新機能の即時利用が難しいという点もオンプレミス環境の大きな特徴です。新しいテクノロジーやソフトウェアを導入する場合、既存のシステムとの互換性を確認し、システム全体への影響を評価するなど、綿密な計画と準備が必要なため、新しい技術への対応が遅れてしまい、ビジネスの変化に迅速に対応できない可能性があります。

キャド研では、企業様のAI活用を推進し、AI人材を育成するための研修サービスを提供しています。このサービスは、多くの企業様から高い評価をいただいており、AI導入を検討されている企業様にとって、大きな力となるはずです。

AI導入に関するご質問や具体的な研修内容など、ご不明な点がございましたら、お気軽に無料相談をご利用ください。10年以上のコンサルティング経験を持つコンサルタントが、お客様のご要望に合わせた最適な解決策をご提案いたします。

オンプレAIからクラウドAIに移行するメリット

オンプレAIからクラウドAIに移行するメリット

AIの活用がますます加速する中、多くの企業がオンプレAIから、柔軟性に優れたクラウドAIへの移行を検討しています。以下でクラウドAIのメリットを具体的に解説します。

簡単に導入することができる

生成AIを稼働させるには、高度な性能を持つGPUが必要ですが、クラウドAIを利用すれば、高価なハードウェアを自社で用意する必要はありません。サービス提供業者がインフラを整備し、利用者は必要な時に必要な分だけ、生成AIの機能を借りることができます。

高額な初期投資やハードウェアの管理・運用などの手間から解放され、手軽に生成AIを導入できるのです。この手軽さは、クラウドAIの最も大きなメリットと言え、明日からでも自社の業務に生成AIを組み込むことが可能になります。

ノウハウの共有が得られやすい

クラウドAIは、多くのユーザーが同一の環境を共有する特性上、ユーザー同士やサービス提供事業者との間でノウハウが活発に共有される傾向にあります。具体的には、自社のAI活用をある程度具体的にイメージしている場合、類似の取り組みを行っている他の企業の事例を参考にしたり、AI導入における課題を事前に整理したりすることが可能です。

そのため、生成AIを提供するサービス事業者の中には、ユーザー間のノウハウ共有を目的としたコミュニティを積極的に立ち上げ、運営する動きが広がっています。これらのコミュニティは、AI活用の成功事例の共有や導入時の課題解決のための情報交換の場として機能し、ユーザー間の連携を促進する上で重要な役割を果たしています。

アップデートも自動で任せられる

クラウドAIサービスを提供する事業者は、常に最新のAIを導入し、ユーザーに提供します。そのため、ユーザーはAIの選定や導入に関する手間を省くことができ、最新の技術をすぐに活用することができるのです。

さらに、AIの利用環境の維持管理においても、ハードウェアの管理やソフトウェアのアップデートなど、煩雑な作業を事業者に委託することで、ユーザーはコア業務に集中することができるでしょう。

ただし、クラウドAIの導入にあたっては、どのLLMを採用するか、どのようなハードウェア環境でサービスが提供されるかといった点をサービス事業者が決定します。そのため、ユーザーは自社のニーズに合ったサービスかどうかを慎重に検討する必要があるでしょう。

オンプレAIからクラウドAIに移行する際のステップ

オンプレAIからクラウドAIに移行するには、いくつかの段階を踏む必要があります。以下で詳しく見ていきましょう。

①打ち合わせで目的を明確にする

オンプレAIからクラウドAIへの移行を成功させるためには、IT部門だけでなく、各部署の代表者も巻き込んだ丁寧な準備が重要です。クラウドAI移行によって、企業はどのような課題を解決し、どのような目標を達成したいのかを、関係者全員で共有する必要があります。

そのため、移行を始める前に、各部署の代表者を集めた打ち合わせの場を設けることをおすすめします。この打ち合わせでは、クラウドAIによって実現したい具体的な目的を明確にすることを目指しましょう。

②具​​体的なシステムの導入計画を立てる

システム導入や移行計画を策定する際には、導入時期や移行内容、新システムの仕様を明確にし、具体的な計画を立てることが大切です。特に、複数のシステムやデータを同時に移行する場合は、移行順序を慎重に検討し、本来の業務に支障が出ないように配慮しましょう。

③クラウドAIサービスを導入する

クラウド化の目的が明確になり、社内関係者の合意を得て、移行計画が固まれば、いよいよ具体的なシステム開発とクラウド環境の導入に着手していくことになります。既存のクラウドサービスのみで、貴社の抱える課題を全て解決できるとは限りません。

そのため、新たにクラウドアプリケーションを設計・開発する必要があるケースも想定されます。

④動作確認を行う

クラウドAIへの移行が完了したら、事前に準備しておいたチェックシートに基づき、動作確認テストを行います。このテストでは、一般的に以下の3つのステップを踏むことで、システム全体の動作が正しく行われているかを確認します。

単体テスト 各機能が個別に期待通りに動作するかを検証する
結合テスト 複数の機能が連携して正しく動作するかを検証する
総合テスト システム全体が想定通りの性能を発揮し、全ての機能が連携して目標を達成できるかを検証する

これらのテストを順次実施することで、問題点を早期に発見し、修正することができるのです。

⑤運用する

クラウドAIの運用開始直後は、操作に慣れていないことから、様々なトラブルが発生しやすい傾向にあります。そのため、定期的な保守・運用はもちろんのこと、運用管理者が必要に応じて社内のユーザーをサポートすることで、円滑なシステム運用ができるでしょう。

自社の状況によってオンプレAIを導入しよう

自社の状況によってオンプレAIを導入しよう

今回は、オンプレAIの概要やクラウドAIとの違い、それぞれのメリットとオンプレAIからクラウドAIに移行する際のステップを解説しました。企業がシステムを導入する際、オンプレAIとクラウドAIのどちらを選ぶべきか悩むケースは多いでしょう。

オンプレミスAIは、自社でシステムを完全に管理できるため、高度なカスタマイズやセキュリティ対策が可能ですが、初期費用がかかり、システムの管理・運用に専門知識が必要となるため、導入にはハードルが高いという側面もあります。

一方、クラウドAIは初期費用を抑えられ、簡単な設定でシステムを利用できます。また、場所を選ばずにどこからでもアクセスできるため、リモートワークなどにも対応しやすいというメリットがあります。どちらを選ぶかは、企業の規模やシステムの要件、セキュリティレベル、予算など様々な要素を考慮して選択しましょう。

オンプレAIとクラウドAIの違いはなに?それぞれのメリットや移行する具体的なステップ
最新情報をチェックしよう!