東京商工リサーチが実施した企業調査で、過年度と比べて人手不足倒産が増加していると発表がありました。なぜ多くの企業が人手不足倒産に陥っているのでしょうか。
今回は、人手不足倒産について紹介されたニュースをもとに、中小企業が抱える原因や課題解決策を深掘りしていきます。今後、企業が生き残るためのヒントを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
人手不足倒産が過年度の2.4倍に増加
東京商工リサーチが実施した調査にて、人手不足倒産に悩む企業が過年度の2.4倍に増加したと発表がありました。以前から人手不足に悩む企業が多く見受けられましたが、近年に入ってから倒産する企業が大幅に増加しているようです。
人手不足倒産が起きた場合には、その企業で働いていた人材が分散してしまうほか、新たな求職先を探さなければなりません。しかし、他の企業でも人手不足が起きているため、再就職が難しいケースもあり、国内企業の多くが人手不足倒産に課題を感じています。
人手不足倒産に悩む業界傾向
日本中の企業が人手不足に悩んでいますが、その中でも倒産が相次いでいる業界を以下にまとめました。
人手不足倒産が起きている業界 | 件数 |
運送業、サービス業 | 15件 |
建設業 | 12件 |
製造業 | 6件 |
中でも運送業は、以前の5倍近い企業で人手不足倒産が起きている状況です。
東京商工リサーチの分析によると、次のような指摘が発表されています。
人手不足は受注機会の喪失につながり、業績回復が遅れる負のスパイラルを引き起こすが、人件費の上昇が収益悪化を直撃する構図が鮮明になってきている
日本経済の不況はもちろん、人材が集まりにくい業界での問題発生が明確に表れています。
また世界全体の物価が上がる中、日本では円安といった課題を抱えているのが特徴です。
しかし、中小企業の場合には賃上げに踏み切れずにいます。
悪い循環状況を早期に断ち切らねば、今後さらになる人手不足倒産が発生するかもしれません。
また自動車メーカーでも過去最多の倒産が発生しています。
詳しい状況を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
人手不足倒産が起きる原因
ニュース、そして東京商工リサーチの調査結果から、人手不足倒産が起きている原因を読み解いていきます。なぜ人材が集まらないのか(出ていくのか)を詳しく見ていきましょう。
求人数が減少している
人手不足倒産の原因として挙げられるのが求人数の減少です。
例えば、次のことが関係して、求人数を減らしている場合があります。
- 経営不振に陥っている
- 取引先の数が減っている
- 人材育成の余裕がない
- 低賃金の人材採用を優先している
例えば、日本が不景気になった影響を受けて、経営不振に陥って資金繰りが悪くなっているのかもしれません。
潤沢な資金がなければ人材を採用できないため、求人数を減らす場合があります。
また、取引先企業も経営不振になっており、売上を確保できずに求人数を減らしているケースもあるでしょう。
お金や安定した業務が続かなければ、人材確保が難しくなります。
結果として十分な報酬をもらえる求人が少なくなり、人手不足倒産が相次いでいるようです。
人件費が高騰している
近年の日本で起きている物価の上昇が影響し、人件費を上げざるを得なくなっていることも、人手不足倒産の原因だと言われています。なぜなら、1人当たりの人件費が上がれば、その分だけ人材採用の機会・可能性を失ってしまうからです。
例えば、人件費の予算300万円があり、月収30万円で働ける人材が10人集められていたとしましょう。しかし、人件費の高騰により月収33万円まで挙げる必要ができました。すると、9名の人材で予算のほとんどを使ってしまいます。
結果として1人分の人件費を確保できずに、人手不足倒産が起きるのです。
人件費の高騰は日本中の企業が頭を悩ませています。人手不足倒産が起きやすい運送・建設・製造といった業界だけでなく、すべての業界に影響するポイントだと覚えておきましょう。
従業員の退職が増加している
前述した求人数の減少、人件費の高騰などが同時に起きてしまうと、企業内で次のような問題が生まれてしまいます。
- 人材が集まらなくなったことで1人当たりの業務量が増加する
- 業務量が増えたのにもかかわらず給料が増えない
働けば働く分だけ給料がもらえる会社なら良いのですが、中小企業など資金に限度がある会社の場合は、給与を支払うだけで負担が大きくなります。結果として、働いた分の給料が支払われなくなり、不満を感じた従業員の退職が増加してしまうのです。
最終的には企業から重要な人材がいなくなり、人手不足倒産が起きてしまいます。人手不足倒産は複合的な原因でも発生する問題です。早めに対策しなければ手遅れになる恐れもあるでしょう。
人手不足倒産を回避する方法
多くの企業が悩んでいる人手不足倒産は、事前に自社の課題を分析して、最適な対策を導き出すことによって回避できます。
具体的な方法を解説しているので、人手不足倒産の不安を抱えている方はポイントを押さえて現状の課題を洗い出してみてください。
業務の見直し
人手不足倒産を回避したいのなら、現在の業務内容を見直すことが重要です。
例えば、次のポイントを確認してみてください。
- 業務に無駄が発生していないか
- 導入しているシステムを活用できているか
- 人材の采配が正しいか
まず業務工程や内容に無駄がある場合には、ムダを改善することによってコストの削減が可能となります。人手不足倒産には資金や手間が影響するため、非効率なポイントを抽出してみると良いでしょう。
また、高額な費用を支払っているシステムをうまく活用できているのか見直すことも重要です。
中にはまったくシステムを使わずに費用だけ支払っている場合もあるため、システムの見直しを検討してみてください。
さらには、従業員の得意・不得意を理解したうえで人材の采配を決めることも大切です。
中には苦手な業務に従事した結果、効率が落ちている人材もいるので、配置計画を再検討してみると良いかもしれません。
DX化に対応できる業務体制を整えたいのなら、以下の記事を参考にしてみてください。
継続的な人材育成
人手不足倒産を避けるためには、人材の流出をなくすための育成環境を整えることも重要です。
これまで企業の多くは、従業員に経験に基づく技術・能力の向上を求めていました。
しかし、業務負担が大きくなり、途中でやめてしまう人材がいたのではないでしょうか。
一方、継続的に人材育成のサポートに取り組めば、社内満足度の向上につながります。
働きやすい職場、充実した職場であるほど、人材流出を防止しやすくなるので、この機会に従業員の育成計画を検討してみるのはいかがでしょうか。
リファラル採用の活用
人材の確保が難しい影響で人手不足倒産に陥りかけているのなら、既存従業員から知り合い、友人、家族などを推薦してもらう「リファラル採用」を検討するのも有効です。参考としてリファラル採用のメリットをまとめました。
- 仲の良い従業員がいるため離職しにくい
- 身近にいる人材を集めやすい(大学の同期、同郷など)
またリファラル採用は、面接だけでなく従業員による判断が加わるため「自社が求める人材なのか」を詳しく分析できるのが魅力です。近年ではよく用いられている採用手法ですので、人手不足倒産を回避するために導入してみてはいかがでしょうか。
人手不足倒産の改善におすすめの新技術・システム一覧
人手不足倒産の不安を解消したいなら、省人化した状況でも効率よく業務を進行できる環境を整えることが重要だと言えます。参考として、人手不足倒産に悩む企業向けに、自動化・効率化に役立つ新技術・システムを一覧でまとめました。
新技術・システム | 概要 |
IoT技術 | 設備・部品等からデータを取得できるようにする技術であり、生産管理やメンテナンスの効率化に役立つ |
RPA | 繰り返し作業などシンプルな動作を機械で自動化できる技術であり、一部の業務を自動化できる |
新システム | 複数の機能がまとまったシステムであり、情報管理に役立つ |
企業のDX化が実現すれば、少ない労力で数多くの業務を進行できます。
また、業務の自動化等にも役立つため、人手不足倒産を回避しやすくなるのが魅力です。
企業によって役立つ新技術・システムは違うため、まずは自社の課題を抽出したうえで必要な製品・サービスを検討するのが良いでしょう。
もしDXに関して興味をお持ちならオンラインセミナーに参加するのがおすすめです。
この機会に、次のようなセミナーに参加してみるのはいかがでしょうか。
人手不足倒産は外部委託・M&Aで防止できる
人手不足倒産に悩む企業の多くは、従業員の持つリソースで業務をこなせない、知識・技術が不足しているといった問題に悩んでいます。もし自社で対応できないとお悩みなら、外部委託やM&Aを検討するのがおすすめです。
まず外部委託を活用すれば、自社で不足している知識・技術を補えます。
委託先企業によって提供価格やサポートの質が変化するので、自社と相性の良い企業を探してみてはいかがでしょうか。
次に人手不足倒産のリスクがある場合には、会社の合併や買収を実施するM&Aを検討するのが良いかもしれません。複数の企業がまとまることによって、人手不足の問題を解消できるほか、合併した企業同士のスキル・ノウハウを組み合わせられるのが魅力です。
人手不足倒産についてまとめ
近年、人手不足倒産が相次いでおり、特に運送、建設、製造といった業界の倒産が頻発しています。また人手不足倒産には現在の日本が抱えている不況や円安の問題が影響しているようです。
今後、人手不足倒産を回避するためには既存業務の見直しやシステムの活用、採用手法の拡大などが効果的です。いずれ起きるかもしれない人手不足倒産を回避したいのなら、今のうちから対策を練っておくことをおすすめします。