現在、製造業の倒産が増え続けており、直近で月間120件の倒産があったと発表されました。
技術の発展が著しい今、なぜ製造業の倒産が増えているのでしょうか。
今回は、製造業の倒産に関するニュースをもとに、倒産が進む背景や、今後の展望について詳しく解説します。解決策も説明しているので、製造業の今後を考える参考にしてみてください。
9年ぶりに製造業の月間倒産が120件を超える
リサーチ企業の帝国データバンク、そして東京商工リサーチによると、全業種におけるひと月あたりの倒産件数が1,000件近くまで増加しています。さらに、製造業については120件もの倒産が起きていると発表がありました。
調査結果では、各産業の負債総額が7,000億円を超え、膨大な損失が出ていることがわかっています。なかでも製造業の倒産が120件を超えたのは約9年ぶりであり、製造業に大きな打撃が生まれるのではないかと注目が集まっている状況です。
業界全体でみる倒産の傾向
前述した製造業の倒産の値は、帝国データバンクによる全7業種の調査において、6業種で倒産の傾向が強まっていること、また東京商工リサーチでは10産業のうち8産業で前年同月の倒産傾向が上回っていることがわかっています。
製造業はもちろん、産業界全体で倒産が相次いでいることはもちろん、サプライチェーンとして関りが強い業種に倒産の影響が及んでしまうことが課題です。リサーチ企業2社で、次のような回答があることも含め、日本企業は今後の対策を余儀なくされるでしょう。
「帝国データバンク」
金利上昇が(企業の)収益を下押しする。稼ぐ力が見劣りする中小企業を中心に秋口以降、倒産件数が増勢局面に入る「東京商工リサーチ」
中小企業を取り巻く環境は厳しく、現在の発生状況が続けば年間の倒産が(前年より約2割多い)1万500件程度になる
製造業で倒産が加速する背景
製造業の倒産が月120件を超えた理由として考えられるのが「支援の打ち切り」「物価高」「人手不足」という3つのポイントです。具体的な背景を解説します。
国・自治体による支援の打ち切り
現在、製造業が倒産しつつあるのは、国や自治体による支援が打ち切りになっていることが、ひとつの理由として挙げられます。
まず、新型コロナウイルスのまん延以降、製造業全体の事業が一時的にストップしたことにより、国や自治体が次のような補助金・助成金といった支援をスタートしました。
支援 | 支援の目的 | 補助率・支援額 |
雇用調整助成金の特例措置 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受けるといった理由で、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に事業費の一部を支援する | 中小企業5分の4 大企業3分の2 |
テレワークを実施する中小企業のための支援 | テレワークを導入した中小企業に対し、費用の一部を助成する | かかった費用の2分の1(上限100万円) |
事業再構築補助金 | 事業活動が縮小した場合において、事業の再構築を実施する企業を支援する | 通暁型の成長分野の場合最大2分の1(上限4,000万円) 通常型のコロナ回復加速の場合最大2分の1(上限2,000万円) |
高額な事業費を支援してもらえていたことから、多くの製造業が新型コロナウイルスまん延中・まん延後も事業を継続できていましたが、一度支援を利用すると、その後に同じ支援を受けられなくなります。また支援が終了した補助金なども少なくありません。
その結果、利益を回復できずに倒産を余儀なくされてしまう製造業が増え、現在のような倒産数が出ているのだと考えられます。
物価高の継続
世界で起きている戦争や経済変動の影響を受け、日本では円安ドル高の状態が続いています。
その結果、海外からの材料輸入に依存している日本は、製造業で利用する材料コストが増え続けてしまい、倒産に追い込まれる事態が生まれました。
例えば、1ドル100円だった物価が1ドル150円になると、今まで材料を1つの製品を生み出す単価が1.5倍に膨れ上がります。その結果、物価上昇による購入者が減り、次第に工場での生産量が減ってしまうという悪いサイクルが起きてしまいます。
最終的には製造業が利益を生み出せなくなり、倒産してしまうという流れが起きているのです。
人手不足の加速
製造業の担い手不足、人材不足の影響も、倒産を加速させるひとつの要因になると考えられています。なぜなら、人がいなければ仕事が回らないほか、対応できる業務範囲が限られてしまうからです。
少子高齢化が続く日本では、現在そして将来的にも人手不足が続いていくと考えられています。
もちろん日本では自動化技術や作業効率化システムの導入といったDX化が進んでいる状況です。
ただし、すべての製造業の会社がDX化を実施できるリソースを持っているとは限りません。
特に中小企業はDX化よりも現状の課題に悩まされている状況であることから、人手不足が加速するほど、倒産リスクが高まっていくと考えられます。
製造業が倒産する前兆とは
実は、企業が急に倒産するということは少なく、事前に何かしらの前兆があって、徐々に売り上げが下がり倒産に追い込まれるというのが一般的です。参考として、製造業の倒産としてよく起こる前兆を以下にまとめました。
- 優秀な社員の離職率が高い
- 会社経営がワンマン経営・ワンマン社長に依存している
- 会社全体の雰囲気が悪い(コミュニケーション不足)
- パワハラが・セクハラといったハラスメントがまん延している
- 特定の社員に業務が中秋している
- サービス残業・長時間労働が多い
なかでも大きな影響として挙げられるのが、離職・ワンマン経営です。
離職率が高いと社内にノウハウが蓄積されにくくなるほか、社員ひとり当たりの負担が増えて仕事が回らなくなってしまいます。また、ワンマン経営の場合、ひとつの動き方に固執しすぎるせいで、課題解決が遅れてしまうケースも少なくありません。
上記の項目にあてはまることはもちろん「最近、自社の売上が落ち続けている」という製造業の場合、倒産するリスクが高いため注意が必要です。
また近年では、海外に拠点を広げていた製造業で、国内回帰の流れが生まれています。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
製造業の倒産を食い止める対策
製造業の倒産を食い止める対策を3つ紹介します。
自社で導入できそうな取り組みがないかチェックしてみてください。
新技術の導入
少子高齢化の問題や製造業の事業コストを解決したいなら、新技術の導入をスタートすることが重要です。参考として、新技術の導入のメリットを以下にまとめました。
- 少ない人材で膨大な業務を処理できる
- 一部の作業を自動化できる
- 利益を追求した施策を分析できる
特に製造業では、製造管理システムなど豊富な新技術が存在します。
人による管理の限界をなくし、機械・データを使って効率よく事業を進められます。
今まで人が対応していた作業をロボットなどが担当するようになれば、人件費の削減にもつながるのが魅力です。少子高齢化や事業コストにお悩みなら、自社の課題を解決できる新技術を探してみてください。
また、新技術のひとつとして用いられているのがPRAという自動化技術です。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
M&A(企業の合併・買収)の検討
事業の祝勝会にお悩みなら、一度他社のノウハウなどを取り込んだり、新たな事業展開を始めたりするためにM&A(企業の合併・買収)を検討するのもひとつの手段です。
自社だけの事業だと将来性を見出せなくとも、M&Aにより異なるノウハウをもつ企業などと合併すれば、新たなノウハウ・事業の組み合わせから利益を生み出せるかもしれません。
もちろん、合併や買収における相性の良し悪しがあるため、M&Aを実施する企業の選定が重要です。近年ではM&A向けのマッチングサービスなども登場していることから、新たな方向性を見つける参考として、M&Aの実施を検討してみてはいかがでしょうか。
製造業の倒産について今後の展望
倒産が相次ぐ製造業ですが、今後さらなる倒産が出てくると予想されます。
今後の展望として、これから起きるであろう問題を含め、注意すべきポイントについてまとめました。
企業の共倒れが深刻化する
製造業の倒産をきっかけとして、次のような関係性の強い企業が共倒れしていくと考えられます。
- 製造業に関わる下請け企業
- 運送業
- 販売・サービス業
製造業が倒産して製品を製造できなくなれば、下請け企業は仕事が仕事を失うほか、運送業や販売・サービス業も新たな取引先を探さなければなりません。場合によっては取引先が見つからずに利益が激減する恐れもあるため、十分に注意することが重要です。
逆に、上項目の製造業が倒産したことにより、製造業自体がダメージを受けることもあります。
製造業が大企業に吸収されていく
中小企業など、特定の技術・ノウハウをもつ製造業は、今後大企業との合併が加速して、自社ならではの魅力を発揮できなくなる恐れがあります。もちろん大企業に吸収されることで安定化というメリットはありますが、次のポイントに注意が必要です。
- 社員が再編成される
- 給与・福利厚生が変化する
以前よりも待遇が悪い方向へ進む場合もあるため、中小企業は経営の存続を図ることが欠かせません。自社の技術を残したい想いがあるのなら、事業継続の施策検討が重要です。
製造業の倒産についてまとめ
製造業で進み続ける倒産は、直近で月120件をたたき出すなど、急速な倒産が問題化しています。
また、現状は問題がなくとも、小さな予兆により利益の激減が発生するかもしれません。
なかでも中小企業は倒産のリスクが高まりやすいため、早めに現状の課題を解決し、長期的に持続して経営を続けられる事業スタイルを生み出すことが重要です。