機械学習やAI(人工知能)、ディープラーニングのことを学ぼうと思った際、E資格取得を目指す方も少なくないでしょう。しかし、E資格のことを色々調べているうちに、「E資格は意味がない」ということばを目にすることもあるのではないでしょうか?
実際、E資格は意味がないものなのでしょうか?
今回は、そんな疑問を解消すべく、E資格取得のメリットや難易度、本当に意味がないのか解説していきます。
E資格とは
まずは、E資格について、しっかりと理解していきましょう。
E資格の概要
E資格は、一般社団法人ディープラーニング協会によって提供・運営されている試験で、ディープラーニングについての理論をしっかりと理解して、適切な手法を用いてディープラーニングを実装する知識や能力を持っていることを証明する試験です。
提供している一般社団法人ディープラーニング協会は、ディープラーニングを中心とする技術によって、日本の産業競争力を向上することを目的に作られた教会で、東京大学大学院工学系研究所の松尾豊氏が理事長を務める団体です。
試験時間は120分で、前提として一般社団法人ディープラーニング協会が認定している「JDLA認定プログラム」という講座を受講しなければ受検すらできません。
各運営会社が実施するJDLA認定プログラムという講座受講の上、指定会場にて受検をする形です。
E資格とG検定の違い
E資格とよく比較されるのが「G検定」です。
G検定との違いは色々ありますが、まず大きく違うのが対象者です。
E資格がディープラーニングの実装を中心とした知識や技能を身につけるのに対して、G検定はディープラーニングの基礎知識をもとに、活用方針の決定や事業で活用するための能力を身につけるものです。そのため、E資格は技術者向けの試験の傾向が強く、G検定はジェネラリストに向けられた傾向が強くなっています。
内容としても、機械学習の具体的な手法やディープラーニングの手法については触れていますが、G検定ではディープラーニングの社会実装に向けての運用や評価、法律や契約などといった分野での内容も含まれています。
E資格の難易度
E資格の難易度については、決して高すぎるものではありません。
公表されている合格率を見ていくと、2018年からはじまったE資格の合格率は、初年度69.44%と7割近くの方が合格しており、2024年前期においても72.61%と高い水準になっています。
JDLA認定プログラムを受講してから受検する流れになっているため、いやでも勉強してから受検することになり、その分合格率が高いと考えられます。
受検されている方の数は、2018年が337名に対して、2024年の前期試験では1,194人が受検するなど、4倍近くまで受検者が多くなっています。それでも、7割強の受講者が合格しているため、決して難易度が高い試験ではないといえるでしょう。
また、年代別に見ていくと、10代の合格率が0.25%に対して、20代が39.78%、30代が34.70%と、20代30代の受講者の合格率が高いことがわかります。
そもそも、受検者も20代30代が多いため、その年齢の時期に受検を検討される方が多いと考えられるでしょう。
業界別には、ソフトウェア業が22.80%と多く、技術者向けの試験であることが納得できるデータとなっております。
E資格の受検は意味がない?そう言われる理由
E資格を受検する人は多くいることがおわかりいただけたでしょう。
それではなぜ「意味ない」といわれてしまうのか、その理由について解説していきましょう。
E資格意味ないといわれる理由1.認知度が低いから
資格取得を考える方の目的としては、「転職で活用したい」「就職活動で利用したい」「自分のスキルアップに」といったものでしょう。その中でも、就職・転職に活かしたいと思って資格取得を目指す方が多いのではないでしょうか。
しかし、E資格は、2018年にはじまった試験となり、ディープラーニングや機械学習の業界もそこまで歴史があるわけではないため、まだまだこれからの市場となります。
そのため、機械学習の試験やE資格そのものが、世の中での認知度が低く、あまり知られていない試験となっています。
そのようなことから、認知度がないことで「就職・転職に活かせないのではないか?」と、資格取得することへの意味のなさを感じてしまう方もいるでしょう。
E資格意味ないといわれる理由2.G検定と似ているから
E資格は、先述したようにG検定と比べられることが多い試験です。
ただ、お伝えしたように実際にはE資格とG検定では受検者の対象も違えば学べることも異なります。エンジニアとしては、G検定よりも間違いなくE資格の方がエンジニアとしての実践的な知識や技術を学ぶことができます。
ただ、G検定は受検費用もE資格より安価であり、似たようなことを学べると思っている方もいるため、G検定よりも割高で難しいイメージのあるE資格を取得するより、G検定くらいを取得しておけば良いのではないかというところから、「意味ない」と思われている方も少ないかもしれませんがゼロではないでしょう。
E資格意味ないといわれる理由3.難易度が高いから
E資格は難易度が高めと感じられている方も少なくないようです。
実際には、公式発表されている合格率を見ると、7割ほどが合格しているため、合格率は決して低くありません。
ただし、E資格は受検するためにJDLA認定プログラムを受講しなければならず、期間が長期的になるため、そういった意味で難易度が高い(ハードルが高い)と思われている方もいるでしょう。ハードルが高い割には知名度も低いために意味がないと思われていることがあるかもしれません。
ただ、実際には受検をする前にJDLA認定プログラムを受講することで深くディープラーニングや機械学習について学ぶことができ、実践的な技術を学べるため、資格取得と合わせて知識や技能を身につけることができる資格となっています。
E資格は取得の意味がある
E資格は本当に意味がない資格なのでしょうか?
結論をお伝えすると、E資格は取得する意味がある資格です。
その理由について解説していきましょう。
市場価値を高めることができる
E資格を取得することで、自分の市場価値を高めることができます。
知識や技術があっても、それを評価してくれる第三者がいなければ、自分で自分の評価をしていることになるため、自分のことを良く知らない人からは、高い評価を受けられないかもしれません。
しかし、E資格は機械学習やディープラーニングの業界においては受講期間なども考えると決して易しい試験ではありません。
そのため、E資格を取得することによって、機械学習やディープラーニングについての知識や技能があることを第三者から認められており、さらに一般的に必要とされる知識や技能を一定期間学んでいることが評価につながるでしょう。
つまり、E資格を取得することは、周りからの評価を高めることになり、それは自分の市場価値を高めることにつながります。
資格にチャレンジするだけで知識・技能を身につけられる
E資格を取得するにはJDLA認定プログラムを受講する必要があり、資格取得を目指す過程で必ず知識や技能を身につけていくことが必要です。
これまで独学で学んでいたり、実践で培ってきた知識や技能を体系的に学び直すこともできますし、知らなかったことを発見出来たり、学び直したりすることもできるため、資格取得にチャレンジするだけで知識や技能を身につけられます。
そのことだけでも、E資格取得にチャレンジする意味があるといえるでしょう。
自分自身の自信につながる
E資格に限ったことではありませんが、資格取得を目指してチャレンジすることは、自分自身の自信につながります。何かの目標に対して取り組んだり、努力したりすることは、その努力をしていない方よりも学びに時間をかけて目標達成することにチャレンジしているため、そのこと自体、自分の自信につながるでしょう。
たとえ、資格を使う機会がなかったとしても、その取り組みが経験となり、新たなチャレンジをする際にどのように努力をするべきか、前向きに取り組んでいくことができるでしょう。
資格取得は取得することだけがゴールではなく、その過程も重要な経験となります。
E資格を取得するメリット
次に、E資格を取得する5つのメリットについて解説していきましょう。
- 就職・転職に有利
- エンジニアとしての向上
- CDLEへの参加
- 会社での評価が上がる
- 給付金で受講できる
E資格取得のメリット①就職・転職に有利になる
E資格を取得することで、履歴書に記載できる資格が一つ増えるため、就職や転職に有利になるでしょう。もちろん、資格だけが選考基準ではないはずなので、資格取得をすればどこでも入社できるということではありませんが、資格を取得していない人よりも有利に運ぶ可能性はあります。
先述したように、資格取得はその過程を評価されるケースもあるため、そのような会社の場合には、資格を取得していることで評価してもらえる可能性があります。
また、機械学習やディープラーニングという業界においても、市場規模が拡大しているため、業界そのものが人材不足であり、就職や転職に有利な業界といえるでしょう。
E資格取得のメリット②エンジニアとしての向上ができる
資格取得をすることで、エンジニアとしての技術や知識を向上させることができるでしょう。
普段、実践的にディープラーニングや機械学習に携わっていても、普段の業務で触れない知識や技術について学ぶ機会になり、エンジニアとして知識の幅を広げたり技術を向上したりすることができるでしょう。
E資格取得のメリット③CDLEへの参加が認められる
CDLEは、一般社団法人日本ディープラーニング協会が運営するコミュニティで、E資格やG検定の合格者のみしか参加できないことが特徴です。
E資格を取得することによって、CDLEにも参加できるようになり、エンジニアの交流や新しい技術や知識のインプット・アウトプットする機会をつくることができます。
5万人を超えるAIコミュニティとなるため、このようなコミュニティに参加できることもメリットの一つと言えるでしょう。
E資格取得のメリット④会社での評価が上がる
資格取得をしたからといって、給料が上がるかどうかは会社によりますが、少なくとも資格取得をすることで会社からの評価は上がるでしょう。
会社の人事評価の中に資格取得が含まれているケースもあると思いますので、チャレンジする姿勢や実際に合格をしていくことで、会社からの評価を上げることができるでしょう。
E資格取得のメリット⑤給付金などで安価に受講できる
E資格は給付金が対象となる講座の受講が可能となっているため、全額自分で負担しなくても受講・受検できる場合があります。
資格取得のために国が負担してくれる給付金が利用できるのは、メリットといえるでしょう。
E資格を取得するデメリット
次に、E資格を取得するデメリットはあるのかを確認していきましょう。
- 取得費用が高い
- 合格までの期間が長い
- 講座の受講が必須
E資格取得のデメリット①取得費用が高いと言われている
資格取得に向けて対策を自分で行いたいという方もいるかも知れませんが、E資格の場合は必ずJDLA認定プログラムを受講する必要があるため、必ず受講費用がかかります。
そのため、他の資格と比べて取得する費用が高めとなっています。
E資格取得のデメリット②合格までの期間が長い
E資格合格までには、試験を受ければよいということではないため、受講期間も考えると数ヶ月かかります。
すぐに取得したいという方にとってはデメリットに感じるかもしれません。
E資格取得のデメリット③資格取得には講座の受講が必須となる
先ほどお伝えしたように、JDLA認定プログラムを受講する必要があるため、資格取得のために通学形式、オンライン形式問わず何かしらの講義を受ける必要があります。
学校の勉強のように授業を受けることが苦手な方はデメリットに感じるかもしれません。
E資格が転職に有利である理由
次に、E資格が転職に有利である理由について解説していきましょう。
AI市場が急成長しているから
IT専門の調査会社であるIDC Japan株式会社の調べによると、2021年における国内のAIシステム市場は、2,771億9,000万円にものぼり、前年からの上昇率を28.5%増加させています。
このような背景から、AI市場は急成長しており、業種全体から見ても、市場が広がっているため転職に有利と考えられるでしょう。
参照元:IDC Japan株式会社
技術者が枯渇しているから
市場が拡大している一方で、IT人材は不足しています。
経済産業省の調べによると、2030年には79万人ほどのIT人材の不足になると言われており、国全体として、AIなどを利用した第4次産業革命に対応した人材育成が必要と判断されています。
そのため、AIや機械学習、ディープラーニングなどを学び知識・技能がある技術者にとっては転職に有利と考えられるでしょう。
参照元:経済産業省
高収入の仕事につきやすいから
求人ボックスの調べによると、AIエンジニアの仕事の平均年収は約600万円と、全体的な平均年収と比べると高い傾向にあるとしています。
つまり、機械学習やディープラーニング、AI等の技術を学び転職をすると、高収入の仕事につける可能性があるということになります。
参照元:求人ボックス 給料ナビ
E資格を受検する流れや方法
最後に、E資格を受検する流れや方法を確認しておきましょう。
E資格を受検する流れ
E資格を受検する流れとしては、次のとおりです。
- JDLA認定プログラムの講座を受講
- 受検予約
- 受検
至ってシンプルですが、受検をする前にまずは講座を受講することが必要です。
まずは、JDLA認定プログラムの選定を行いましょう。
試験の受検予約は、下のサイトから行えます。
E資格受検合格には講座選定が重要
試験に合格するためのポイントとしては、「どのJDLA認定プログラムを受講するか」にかかっているといっても過言ではないでしょう。
JDLA認定プログラムは認定を受けている各社の講座によって内容が異なります。
試験に合格するためにサポート体制が充実していたり、内容が充実している講座を選択したりするようにしましょう。
また、合格だけではなくその後の実践に役立つ講義を選択することがおすすめです。
E資格は意味ない? まとめ
E資格取得について、「意味があるのか」について解説しました。
結論をお伝えすると、E資格取得には意味があり、メリットもたくさんあるといえます。
合格率70%ほどの資格となるため、全員が合格できるわけではありませんが、合格に向けてチャレンジすることで、知識・技能を身に着け、就職・転職にも有利になるでしょう。
DXを推進したいと考えられていても、AIについての知識が不足しているため、どう進めたらよいか迷われているかもしれません。
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