Blender(ブレンダー)は、世界中のクリエイターから高評価を得ている無料の3DCGソフトウェアです。Blenderには、3Dモデルやアニメーション、動画編集など多くの機能が搭載されているため、コストパフォーマンスに優れています。初心者からプロの方まで無料で3DCGを使えるメリットは、かなり大きいでしょう。
しかし、3DCGを使ったことがない方にとっては、最初は難しく感じるかも知れません。そこで今回は、Blenderの特徴から使い方を解説します。インストールとセットアップの手順を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
Blender(ブレンダー)で何ができる?
Blender(ブレンダー)では、主に3Dモデリングやアニメーション、レンダリング、動画編集が可能です。実際にアニメ制作やゲーム開発、建築設計の分野でよく使用されていることから信頼性の高いオープンソースソフトウェアとして知られています。世界中の開発者によって定期的にアップデートが行われており、ユーザーは常に更新された状態でBlenderを利用できます。
Blender一つで複数の3D制作が可能なので、多くのクリエイターの間で人気を集めています。Blenderは初心者からプロまで無料で気軽に使えるため、これから3DCGに挑戦してみたい方におすすめです。
Blenderのインストールとセットアップ手順
実際にBlender(ブレンダー)を使用するには、自分のPCにインストールを行う必要があります。Blenderは、公式サイトから簡単にインストールが可能です。Blenderの公式サイトを開くと、最新版とLTS版のいずれかを選択できます。
個人の趣味程度で楽しむなら最新版のBlenderのインストールがおすすめです。LTSとは、「Long Term Support」の略ですが、主にバグ修正や更新のサポートを行うため、企業で使用することを想定したものです。
2年間の長期サポートを意味しますが、技術的なサポートは受けられないことには注意が必要です。ただし、Blenderの使い方は多くのユーザーによって公開されているため、検索すれば欲しい情報を見つけやすいメリットがあります。
先に進むと、ダウンロードを行う画面が表示されます。自分のPCのOSを選択したら、Blenderのダウンロードを開始しましょう。
セットアップの画面が表示されたら、「Next」を選択して次に進みます。
ユーザーのライセンス契約について表示されたら、同意することを表明するためにチェックボックスにチェックを入れて「Next」を選択しましょう。
Blenderのダウンロードファイルの保管場所が表示されますが、問題がなければ「Next」を選択して先に進みましょう。
インストールの準備が整えば、「Install」を選択してダウンロードを開始します。
Blenderのインストールが完了するまでに約5~10分程度かかります。インストールを中断する場合は「Cancel」を選択しましょう。インストールを続ける場合は、完了するまで待ちます。
Blenderのセットアップ完了の画面が表示されたら「Finish」を選択して終了します。
ほとんどの場合、PCのデスクトップ画面にBlenderのアイコンが追加されるため、ダブルクリックで起動します。Blenderを起動すると、簡易的な初期設定が表示されます。使いやすい言語を選択し、見やすいインターフェースに設定できれば設定完了です。
Blenderを使う目的に合わせて新規ファイルや公式サイトにアクセスが可能です。
ビューポートが表示されたら、これからBlenderを好きなように使えます。デフォルトでは、真ん中に立方体のオブジェクトが配置されていますが、削除したり追加したりすることも可能なので操作してみてください。
Blender(ブレンダー)における3Dモデリングの基礎
続いて、Blender(ブレンダー)における3Dモデリングの基礎について解説していきましょう。
3D空間の基礎
3D空間とは、縦・横・奥行きの3つの軸を持つ立体的な空間を指します。平面で表現される2D空間とは異なり、オブジェクトが奥行きを持って存在するため、立体感やリアル感を表現できます。
たとえば、Blenderでは、3次元空間の中でX軸、Y軸、Z軸の3つの軸を持ち、オブジェクトの位置を3つの座標で表現が可能です。また、照明やカメラ機能を使用することで、光の当たり具合やアングルを調整できるため、より立体的でリアルな3Dモデリングを再現する役割を担います。
オブジェクトの作成と編集
Blenderのオブジェクトとは、3D空間内に配置される物体や形状、カメラや照明などの要素を指します。オブジェクトは基本的に、点、線、面などの幾何学的な形状を持ち、それぞれが位置、回転、拡大縮小、変形の属性を持ちます。
Blenderでは、さまざまな種類のオブジェクトを作成することができるため、メッシュや曲面、カーブ、メタボール、文字列、ラティス、カメラ、照明を使用することでモデリングが可能です。
メッシュの作成と編集
Blenderのメッシュとは、3Dオブジェクトを構成するポリゴンの集合体を指します。ポリゴンとは、3つ以上の頂点をつなぎ合わせた三角形や四角形など多角形のことです。
Blenderの3Dモデルは、ポリゴンの密度や配置、角度によって、外観や動作、レンダリングの質が大きく影響します。たとえば、ポリゴン数が多ければ多いほど、高精度のモデリングが可能ですが、処理に時間がかかるため、適切な数値に調整する必要があります。
逆に、ポリゴン数が少なければモデリングの質が低下する可能性があるため、目的に合わせて使用することが大切です。
マテリアルの作成と編集
Blenderにおけるマテリアルとは、オブジェクトに対して表面の外観や光沢、反射率、透過度などの物理的な特性を設定するための機能を指します。たとえば、金属やプラスチック、木材、布、ガラス、液体、光、影などの表現が可能です。
マテリアルをアニメーションに適用もできるため、見た目を重視したい場合におすすめです。オブジェクトの表面の色や質感、光沢、透明度などを無料で自由にカスタマイズができるメリットは大きいでしょう。
また、外部からダウンロードで取得したマテリアルをBlenderにインポートが可能なので、イメージ通りのモデルを再現できます。
Blender(ブレンダー)における3Dアニメーションの基礎
続いては、Blender(ブレンダー)における3Dアニメーションの基礎を解説していきましょう。
キーフレームアニメーションとは
Blenderのキーフレームアニメーションとは、3Dオブジェクトの位置、回転、スケールなどの変化を指定した特定の時間位置を設定し、その間の変化を自動的に調整するアニメーションの作成方法です。
たとえば、オブジェクトを左から右に移動させたい場合、最初の位置であるスタート位置と移動後の位置の2つのキーフレームを設定し、Blenderが自動的に両方のキーフレームの間を補完してアニメーションを作成します。
キーフレームアニメーションを使用することで、オブジェクトの移動や回転、スケールの動作を簡単に再現可能です。3DCGの分野において基本的なテクニックであるため、映像制作でよく使われています。
アニメーションのタイプ
Blenderには、キーフレームアニメーション以外にも、次のアニメーションのタイプが存在します。
モーションキャプチャアニメーション | 実際の動作や動きを計測したデータをもとにアニメーションを作成する方法。 |
物理アニメーション | 物理法則を基にアニメーションを作成する方法。衝突、重力、摩擦、反発力などの物理法則をシミュレーションしてアニメーションを作成する方法。 |
パーティクルアニメーション | 爆発や煙、雨、雪などの「パーティクル」と呼ばれる粒子を扱うアニメーション方法。 |
形状キー | オブジェクトの形状を変形させたり、モデルの表情を変えたりするアニメーション。形状キーを設定して、それを時間軸上で変形させることでアニメーションを作成する方法。 |
アニメーション曲線エディター
Blenderにおいて、アニメーションは基本的に曲線で表現されます。アニメーション曲線エディターを使うことで、曲線の調整とアニメーションのカスタマイズを行います。
アニメーション曲線エディターは、アニメーションをより自然に見せるためにフレームごとに値を表示し、それぞれの値の編集が可能です。また、Blenderには、グラフエディターやダブルクリックで編集できるドライバーエディターなど、アニメーションを調整するためのエディターが搭載されています。
エディターを使いこなせば、オブジェクトの移動や回転、拡大縮小、マテリアルの変更、カメラの動きなどさまざまなアニメーションを作成できます。
Blender(ブレンダー)における3Dレンダリングの基礎
続いては、Blender(ブレンダー)における3Dレンダリングの基礎を解説していきましょう。
レンダリングとは
Blenderのレンダリングとは、3Dモデルやアニメーションを画像や動画に変換することを指します。具体的には、Blender内で作成されたシーンをライティングやマテリアル、カメラの設定を適用して、最終的に静止画や動画を出力するプロセスです。
たとえば、Blenderのレンダリングエンジンの一つであるCycles(サイクルズ)は、物理ベースレンダリングエンジンで、光の挙動をリアルに再現可能です。Blenderのレンダリングエンジンにはメリットとデメリットがあり、使用目的に合わせて選ぶ必要があります。
レンダリングの種類
Blenderのレンダリングには、次の種類があります。
Cycles(サイクルズ) | 物理ベースのレンダリングエンジンで、レイトレーシング方式を採用。光源から発せられた光線を追跡して物体に衝突し、その後反射や屈折などの光の挙動を計算して、最終的なイメージを生成する方法。 |
Eevee(イーブイ) | リアルタイムレンダリングを提供するレンダリングエンジンで、高速なリアルタイムレンダリングが可能。光源、影、反射、屈折、透過、ボリュームレンダリングなどの効果をサポートする方法。 |
Workbench(ワークベンチ) | ビューポートでのプレビューに特化したレンダリングエンジンで、簡易的なシェーディングや簡単な照明効果を提供する方法。 |
Freestyle(フリースタイル) | 2Dアニメーションの描画に特化したレンダリングエンジンで、フリースタイル描画という独自の手法を用いて、2Dラインアートの描画を行う方法。 |
External Renderers(エクスターナルレンダー) | 外部のレンダリングエンジンを使用しており、高品質で写実的な視覚化を作成する方法。 |
レンダリングのエフェクト
Blenderのレンダリングを行う際に、以下のエフェクトを使用することでより高品質の映像を制作が可能になります。
ブルーム | 輝度の高い場所で光が漏れ出る効果を作り出す方法。オブジェクトやシーンの外観をより柔らかく、幻想的に光の発散感やまぶしさが表現され、よりリアルな映像表現が可能。 |
モーションブラー | オブジェクトが移動しているときに、その動きに応じて生じるぼやけを表現する方法。よりリアルな動きや速度感を表現が可能。 |
アンビエントオクルージョン | 光が届きにくい場所に暗くなるように調整し、オブジェクトの外観をよりリアルに見せる方法。光の散乱によって物体の内部に入り込む光が減衰することを表現することで、リアルな影を作り出すことが可能。 |
深度オブフィールド | 被写体に焦点を合わせた際のボケ具合や奥行き感を表現する方法。カメラの焦点距離を指定することで、被写体との距離に応じて、鮮明に写る範囲とボケた範囲の調整が可能。 |
Blender(ブレンダー)の活用事例
最後に、Blender(ブレンダー)の活用事例を紹介していきましょう。
ゲーム開発への応用
Blenderはゲーム開発でよく使用されており、3Dモデリングやアニメーション制作に適したソフトウェアとして信頼を集めています。たとえば、Blenderで作成したモデルやアニメーションをUnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンに取り込こめば、ゲームの世界を構築できます。
Blender自体にもゲームエンジンが搭載されているため、簡易的なゲームの制作も可能です。Blenderを用いたゲーム制作は、低コストで高品質で納品できるメリットがあります。
3Dプリントへの応用
近年、3Dプリンターの普及が広まったことで業務用以外にも個人の趣味で始める人も増えています。Blenderで作成した3Dモデルを3Dプリンターに転送し、実物で再現が可能です。
Blenderは、3Dプリントに必要なファイル形式でデータ出力に対応しているため、3Dプリンターがあれば、簡単に3Dモデルを実体化できます。また、3Dプリントに適した厚みや、オーバーハングなどの機能もBlenderに搭載されています。
ただし、Blenderで作成した3Dモデルが3Dプリントできる形状であることやプリンターの性能を考慮しなければなりません。
動画編集への応用
Blenderには、動画編集機能が搭載されているため、動画のトリミングやカット、色調補正、オーディオトラックの編集まで可能です。基本的なモデリングやアニメーション以外に動画やオーディオを編集する専用のタイムラインエディターが用意されています。他にもプロレベルの動画編集ができるエフェクトやトランジションを使用できるため、無料のソフトウェアのなかでは多機能で珍しいでしょう。さらにBlenderで作成した3Dモデルのレンダリングやアニメーションを動画に組み込むことも可能であるため、型にはまらない動画編集機能として人気です。
まとめ
Blender(ブレンダー)の特徴から使い方について解説しました。
無料で3Dモデリングやアニメーション、レンダリング、動画編集が可能であるため、世界中のクリエイターから支持を得ています。ゲーム開発や3Dプリント、動画編集の分野で活用されていることから使い方は形にとらわれずに自由なクリエイティブを可能とします。
今回紹介したBlenderの機能は、3Dモデリングやレンダリング、アニメーションを制作する際に役立つので、ぜひ使ってみてください。この機会にBlenderのインストールと3DCG制作を始めてみましょう。