製品を製造する過程においては、従来以上に高品質の製品を製造することやコスト削減、納期短縮などが求められるようになりました。以前は図面で作成していた企業の多くがCAD/CAMの導入に踏み切らざるを得なくなったのではないでしょうか?
とはいえ、それらの設備を導入するだけで多くの費用を必要とします。すべての機能をオールインワンで搭載しており、より業務効率化を図れるツールについて徹底して比較検討している方も多いでしょう。
そういったソフトの中で選択肢の一つとなるのが「Simcenter 3D」です。今回は、Simcenter 3Dのソフト概要やおすすめの理由、導入で可能になることなどを詳しく解説します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
Simcenter 3Dとは
画像引用元:Simcenter 3D
Simcenter 3Dとは、線形静解析、疲労解析、非線形解析などさまざまな構造解析ソリューションがオールインワンとなっている総合型CAM/CAEソフトです。ソフト一つでさまざまな現場に対応でき、解析の際にツールごとに変化するUIを覚える必要がありません。
また、複雑な形状の作成や簡易化、さらにFEMメッシュのコントロールなどの機能も搭載されており、製造過程においてミスが発生した場合にもスムーズに対処できます。意図しないミスが発生した際にも労力をかけずに実際の構造に近いモデルを作れるのは、大きなメリットでしょう。
Simcenter 3Dの動作環境
Simcenter3Dは、次の環境で役立ちます。
- 対応OS:Microsoft Windows(64ビット)Microsoft Windows 10 ProおよびEnterpriseエディション
- RAM:32GB以上
- HDD:500GB以上
- 画面解像度:1280 x 1024 以上
- ビデオカード:NDIVA Quadroシリーズ/AMD FireProシリーズ OpenGL4.2以上 VRAM 2GB以上
これらの環境を構築しておけば、ソフトで発生するバグを大幅に削減でき、効率的に作業が行えるでしょう。
Simcenter 3Dの価格
Simcenter 3Dは、動作環境によって価格が大きく異なります。そのため、価格が知りたい場合にはSimcenter 3Dの公式サイトから問い合わせを送ってください。
Simcenter 3Dがおすすめの理由
Simcenter 3Dを活用することでさまざまな恩恵が受けられます。ここでは、Simcenter 3Dをおすすめする6つの理由を紹介します。
FEMモデリングに強みを持つ
1つ目のメリットは、FEMモデリングに強いことです。Simcenter 3Dには主に3つのFEMコントロール機能があり、高品質なモデルを高い操作性で修正・作成できます。
- シンクロナステクノロジー:FEM作成時にCADデータの修正を簡単に削除、編集できる機能。小規模の凹凸やFEMモデルには必要ないソリッド形状を取り除ける。
- サーフェイストリム機能:曲面を自然に延長させたり、ソリッドの境界面にエッジを作成したりできる機能。
- FEMコントロール:メッシュ品質に影響を与える小さなサーフェイスをCADモデルを編集することなく修正可能。また、サーフェイス同士をペアリングすることでメッシュパターンを一致させられる。
このような機能を駆使して、製造するモデルのメッシュクオリティを向上させられます。従来では難しかった複雑な形状のモデルを作成したり、複雑になりすぎた部分を簡略化できたりするため、解析モデル作成にかかる時間を大幅に短縮可能です。
連成解析ができる
2つ目のメリットは、連成解析ができることです。
「熱流体解析と構造解析を同時に行いたい」「荷重がかかる条件とどれだけの荷重に耐えられるか把握したい」など、同時に複数の事象を解析したいこともあるでしょう。
通常の場合、解析のソルバーが異なるためモデル後音に解析を行い、結果をあとで結合する必要があります。
一方で、Simcenter 3Dの場合はそれぞれの解析を垣根を越えずに行えるため、必要な解析をシームレスに行えます。別ソフト用にデータを変更したり、解析結果を適切に加工したりする手間がかからないため、ストレスを極力抑えた状態で解析が行えるでしょう。
トポロジー最適化でモデルを軽量化できる
3つ目のメリットは、トポロジーを最適化できることです。
3Dプリンターなどを使用して試作品を製造する場合、解析結果以外の部分においてはできる限り材料を使用しないことが求められます。そうすることでコスト削減を行いつつ最適なデータを確認できるためです。
しかし、実際のところはデータを改変したことで本当に影響を及ぼさないのかについて疑問を抱く方も多いでしょう。Simcenter 3Dであれば、CAEの位相最適化により形状を変化させたとしても製品クオリティに影響を与えないトポロジーを作成できます。
実現象に近い解析シミュレーションが行える
4つ目のメリットは、実現象に近い解析シミュレーションが行えることです。
制御・物理試験によって得た情報を取り入れて解析を行うことで、ほとんど実現象と遜色のない結果が得られます。たとえば、ソフトを連続使用したことによる挙動を分析し解析したり、実際の振動波形に基づいた応答解析なども行うことができます。より具体的には、Simcenter 3Dには次のような機能が備わっています。
- 1D/Controls Simulation:制御システムの挙動を解析、油圧、空気圧、熱、 電気・電子システム、機械の状況などを評価、検討し、試験結果に反映させられる
- Testing Physical Simulation:電盾色解析によってどの部分に問題が発生しているのかを解析し、課題解決に必要な対策を提供してくれる
外部データを編集できる
5つ目のメリットは、外部データを編集できることです。
Simcenter 3Dは、CADの機能を受け継いでいるため、複雑な形状を簡略化したり、メッシュをコントロールしたりすることが容易です。
たとえば、エッジをマージしたりサーフェスを編集したりするのが簡潔になります。また、実構造に近い解析モデルを作れることも大きなメリットとなります。
stlデータからメッシュを直接作成できる
6つ目のメリットは、stlデータからメッシュを直接作成できることです。
従来のソフトでは外部からのデータを活用して解析を行う場合、修正点が発生したとしてもメッシュを編集するのが困難でした。
一方で、Simcenter 3Dの場合は、ソリッドボディと同様にモデリング機能を扱い、メッシュを変換させることが可能です。stlデータを編集し、ソリッド化する手間が短縮できるため、業務効率アップにつなげられるでしょう。
Simcenter 3Dの主な機能・使い方
次に、Simcenter 3Dの主な機能や使い方を10種類紹介します。
モーションシミュレーション
複雑な機械システムの動作環境を理解できる、動的なシミュレーション機能が搭載されています。機械システムの反力やトルク、速度、加速度などを計算し、実際の製品挙動に近いシミュレーションができます。
力学シミュレーション
力学シミュレーションでは、荷重がかかった部分のシステムを把握、解析ができます。前述したモーションシミュレーションと組み合わせると、動的な荷重がかかった部分の計算も行えます。
構造シミュレーション
構造シミュレーションでは、マテリアルが応力や振動に対してどのように反応するのかを示します。複雑な材料を活用したり、複数のマテリアルを組み合わせたりする場合にも構造解析が可能です。
流体力学シミュレーション
流体力学シミュレーションでは液体や気体などの流体をシミュレーションできる機能です。加えて、それぞれの混合物の解析も同時に行える上、関連する物理現象もまとめてシミュレーションできます。
熱シミュレーション
熱シミュレーションでは、開発している材料の熱特性を理解でき、正確な解析が可能です。熱解析結果が色味で表示されるため、多くの人が理解しやすい状態にシミュレーション結果が表示されます。
耐久性シミュレーション
耐久性シミュレーションでは現実的な荷重条件を計測し、疲労寿命に関する予測解析を行えます。部品単体にかかる荷重だけではなく、動作環境に合わせて条件を設定できるため、使用環境に合わせた耐久度を把握できます。
複合材シミュレーション
製品に複合材を使用する場合に、どのような部分に負荷がかかるのかを理解できるのが複合材シミュレーションです。積層複合においてどの程度の負荷がかかるのか、材料の違いによってどのような負荷がかかるのかなどをシミュレーションできます。
電磁界シミュレーション
電磁界シミュレーションでは、電気部品の性能やエネルギー変換率などをシミュレーションできます。また、最適なアンテナの配置を設定したり、電磁干渉が発生しない配置を設定したりすることが可能です。
音響シミュレーション
音響シミュレーションでは、音がどのように響いているのかを視覚的に表現します。あらかじめ設定した情報をもとに解析できるため、改善点を素早く把握できます。
モデルの最適化
モデルの最適化機能では、材料をどのように削減すべきかを示したり、プロパティの変更にどのような対策を示せるのかを提案してくれます。最適化する対象はトポロジーだけでなく、ジオメトリやパラメーターも含まれるため、軽量化と製品性能の向上を両立させられるでしょう。
Simcenter 3Dでできること
次に、Simcenter 3Dでできることを4つ紹介します。
不必要なCADデータの削除・編集
CADデータにおいて不適切なホールやフィレットが存在する場合には、その部分を簡単に修正・削除できます。また、製品では必要だけど、FEMモデルには必要のない部分の簡略化も可能です。
サーフェストリム
サーフェストリムでは曲面やエッジなどの修正が行えます。こちらも編集機能と同様にFEMモデルの削除に大きく貢献します。
FEMコントロールにおけるメッシュ同士の一致
メッシュ品質を向上させるFEMコントロール機能も搭載されています。FEM環境でエッジの修正・削除ができるため、元のCADデータを変更させることなくFEM用のモデルに仕上げられます。
また、メッシュ同士の一致を行うことで、試作品で発生しやすい部品の結合ミスを減らせます。
小ロット試作のコストの大幅削減
小ロットで試作品を製造する際に、不要な部分のメッシュを削除できる機能があります。たとえば、球体のモデルを製造する際に球体内部を省略し、モデルに必要な材料を削減したりすることも可能です。
Simcenter 3Dの活用事例
最後に、Simcenter 3Dを導入した実際の事例を2つ紹介します。
アカデミック モータースポーツ クラブ チューリッヒ
チューリッヒ工科大学の学生によって2006年に設立されたアカデミックモータースポーツクラブは毎年新しいレースカーを設計する団体です。これまでも多くの機体を製作してきた同団体ですが、デザインから制作にかかるまで多くの時間を必要としていました。
また、毎年メンバーが変化するため、ノウハウを蓄積することが難しいという課題があったようです。そこで、設計にかかる時間を短縮する施策としてSimcenter 3Dを導入しました。
Simcenter 3Dは開発段階のすべてのプロセスで設計を検証できるメリットがあり、実際の条件に基づいてシミュレーションが可能です。また、流体力学だけでなくマシンにかかる負荷を検証する構造解析、熱を帯びる部分を解析する熱解析などさまざまな解析を実行することができます。
このように、エンジニア業務に必要な機能を余すことなく搭載しているため、設計からストレスなく開発までを行えます。
同団体はソフトウェアの導入によって多くの時間を短縮できました。また、結果も優秀で、8ヶ月で新しいレースカーを設計、最高の生産者よりも30%優れた加速を出したことで世界記録を達成するなど多くのメリットを感じているようです。
シーメンス株式会社
シーメンス株式会社は、自動車や重機などを開発している企業です。同社は、Simcenter3Dの導入によってCADで形状を変化させながら構造解析が実行可能になったことに魅力を感じているようです。
また、最適化設計機能と組みわせてCADの形状を指定することで、適切な機構設計を自動的に模索することもできるため、より高度な開発が実現可能となります。
また、弾性体変形解析を行えば、部品の変形や部品にかかる応力を分析することもできます。たとえば、常に動く機械の部品を製造する際に変性を考慮した上で設計を行うことで、安心して利用できるモデルを製造できるでしょう。
実際に同社はこれらの機能を活用し、設備生産だけでなく情報通信や交通、家電製品などの幅広い分野でトップクラスのサービス、ソフトウェアなどを提供しています。
まとめ
Simcenter 3Dのソフト概要やおすすめの理由、導入で可能になることなどについて解説しました。
Simceter 3Dはオールインワンで解析に必要な機能が搭載されているCAD/CAM/CAEです。さまざまな機能を同プラットフォームでストレスなく行えるため、複数のツール間を行き交いしている方は大きなメリットを感じられるでしょう。
今回お伝えした内容を参考に、Simcenter 3Dの導入を検討してみてください。