高精度な設計で知られるNXと、直感的な操作で人気のSOLIDWORKS。
NXとSOLIDWORKSは、3DCAD市場において高いシェアを占め、3DCADソフトの選定において比較検討されることが多いツールです。
この記事では、NXとSOLIDWORKSの用途、グレード、価格、機能、サポート体制など、多角的に調査しました。
NXとSOLIDWORKSのメリット、NXとSOLIDWORKSの選び方についても解説しているので、「NXとSOLIDWORKS、どちらが自社の製品開発に適しているのか?」と迷っている方はぜひご一読ください。
NXとは
NXは、ドイツのSiemens社が開発した3DCAD/CAM/CAEの統合ソフトウェアです。
NXは、設計履歴を保持しながら形状を直接操作できる「シンクロナスモデリング」を採用することで、複雑な形状の製品でも自由度の高い設計を可能としています。
NXの開発元であるSiemens社は、NXと同じくシンクロナステクノロジーを使ったCADソフト・Solid Edgeも開発しています。
Solid Edgeについては、以下の記事で機能や特徴を詳しく解説し、NXとの違いについても具体的な事例を交えて比較しています。ぜひご一読いただき、選択肢の一つとしてご検討ください。
クラウドベースのNX X
NX Xは、NXの全機能をクラウド上で使える画期的なツールです。
クラウドベースのシステムにより、外出先からのアクセスやチームとのリアルタイムな共同作業、さらにデータ共有もスムーズに行えます。
クラウドベースでありながら、必要に応じてデバイスへのダウンロード・インストールもできるため、インターネット接続がない場所でも柔軟な対応が可能です。
NX XはNXやシーメンスのXceleratorプラットフォーム上の他の製品と完全に統合されており、同一のデータモデルを活用することでシームレスな連携を実現します。
高い機能性と柔軟性、スケーラビリティを備えたNX Xは、設計の生産性向上、そしてモノづくりのイノベーションを加速し、企業の競争力強化に大きく貢献する魅力的なソリューションです。
SOLIDWORKSとは
SOLIDWORKSは、フランスのDassault Systèmes社が提供する3DCADソフトウェアです。
直感的な操作性とリースナブルな価格設定により、機械設計や製品設計の分野を中心に世界中で220万人を超えるユーザーに活用されています。
製品開発の全工程をサポート
SOLIDWORKSは、アイデアを具現化するための設計はもちろん、シミュレーションによる検証、3Dレンダリングによる可視化など、製品開発に必要な機能を網羅しています。
これにより、設計から製造までの一貫したデータ管理が可能となり、工程間の連携強化や試作回数の削減、製造期間短縮など、製造工程の効率化に大きく貢献します。
SOLIDWORKSについては、以下の記事で解説しています。
Solid Edgeと機能や価格を比較しているので、CADソフト選びの参考にぜひご活用ください
NXとSOLIDWORKSの違いを比較
以下では、NXとSOLIDWORKSの違いを7つの観点から比較検討し、それぞれのソフトウェアの特性をお伝えします。
- 用途
- グレード
- 価格
- モデリング機能
- シミュレーション機能
- データの互換性
- サポート体制
①用途
NXとSOLIDWORKSは、それぞれ異なる産業やプロジェクトのニーズに応じたCADソフトです。
NXの用途
NXは、航空宇宙産業や自動車産業など、主に複雑な製品開発を行う分野で活用されています。
大規模なアセンブリ設計や、流体解析などの動的構造物のシミュレーション機能が充実しており、これらを必要とする製品開発において高い効果を発揮します。
SOLIDWORKSの用途
SOLIDWORKSは、一般的な機械設計や製品開発を中心に、金型設計や板金設計など、幅広い設計業務で利用されています。また、教育機関には手頃な価格でライセンスが提供されており、高校や大学、専門学校などの授業や実習で採用されることも多いCADソフトです。
②グレード
NXとSOLIDWORKSは、CADソフトのグレードが異なります。
CADソフトは、一般的に機能や性能に基づいて、ハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドの3つのグレードに分類されます。
NXのグレード
NXのグレードは、最も高度な機能を備えたハイエンドです。
ハイエンドは、大規模なアセンブリ設計や複雑な形状のモデリング、高度なシミュレーションなど、高度な設計要求に対応できる最高レベルの性能を誇ります。
SOLIDWORKSのグレード
SOLIDWORKSはミドルレンジに分類され、ハイエンドほどではないものの、ローエンドよりも豊富な機能を備えています。一般的な機械設計や製品設計に必要十分な機能を備えており、幅広い設計業務に対応可能です。
③価格
NXとSOLIDWORKSは、それぞれ価格も異なります。
以下ではそれぞれの価格をライセンスの種類ごとに表にまとめてみました。
製品区分 | ライセンス名 | 年間価格 | 月額価格 |
NX | ー | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
NX X | NX X Design Standard | 1,079,901円 | 89,992円 |
NX X Design Advanced | 1,402,948円 | 116,912円 | |
NX X Design Premium | 1,790,605円 | 149,217円 | |
NX Xオプション | NX X Value Based Licensing (50トークン) |
1,611,879円 | 134,323円 |
SOLIDWORKS | SOLIDWORKS Standard | 528,216円 | ー |
SOLIDWORKS Professional | 602,952円 | ー | |
SOLIDWORKS Premium | 854,952円 | ー |
なお、表示価格はシングルユーザーライセンスで、SOLIDWORKSの価格は為替レートによって変動します。
④モデリング機能
続いて、NXとSOLIDWORKSのモデリング機能を比較しましょう。
NXのモデリング機能
NXは、高度なモデリングに対応できる柔軟性の高いCADソフトです。
履歴ベースのパラメトリックモデリングと履歴フリーのダイレクトモデリングの両方を使えるため、複雑な形状や大規模なアセンブリでもスムーズに扱えます。さらに、サーフェスモデリング機能を利用すると、複雑な曲面もスムーズに作成できます。
SOLIDWORKSのモデリング機能
SOLIDWORKSは、部品を組み合わせてモデルを作成するフィーチャーベースモデリングを採用しています。設計の効率化を実現しつつ設計意図も明確に保てるのが特長で、2Dスケッチから3Dモデルに変換できる機能を使えば、2DCADを使っていた方でもスムーズに移行できます。
⑤シミュレーション機能
次は、NXとSOLIDWORKSのシミュレーション機能を比較します。
NXのシミュレーション機能
NXのシミュレーションは、多様な解析に対応可能です。
構造、熱、流体、モーション解析など、幅広い物理現象を精密にシミュレーションします。
また、制御設計との連携機能も備えており、メカニカル設計者と制御設計者が協力して製品性能の最適化を図れます。
SOLIDWORKSのシミュレーション機能
SOLIDWORKのシミュレーションは、3DCADとシームレスに連携できます。
構造解析や強度解析など、製品設計に必要な主要な解析機能を備え、設計プロセスに自然に組み込めるため、スムーズなワークフローをサポートします。
⑥データの互換性
続いて、NXとSOLIDWORKSのデータの互換性を比較してみましょう。
NXのデータの互換性
NXは、幅広いCADデータに対応しています。
Parasolid、STEP、JTなどの標準フォーマットはもちろん、CATIA、Pro/ENGINEERなどの主要CADのネイティブデータも直接取り扱い可能です。異なるCADで作成されたデータをシームレスに統合できるため、複雑なアセンブリデータの効率的な管理・編集を実現します。
SOLIDWORKSのデータの互換性
SOLIDWORKSも、30種類以上の多様なCADデータに対応しています。
IGES、STEP、DWG/DXFなどの一般的なCADフォーマットに対応しており、データ互換性を確保します。また、データ品質の自動チェック機能により、スムーズなデータ交換が可能です。
⑦サポート体制
最後に、NXとSOLIDWORKSのサポート体制を比較しましょう。
NXのサポート
NXのサポートは、Siemensの技術スタッフによる充実のサポートが特徴です。
サポートサイトでは、操作面の質問をはじめ、ソフトウェアのダウンロード、ドキュメント管理など多彩な質疑応答に対応しており、電話でのサポートも受け付けています。
シルバー・プランとゴールド・プランという2種類のプランを提供し、顧客ニーズに応じた柔軟なサポートを実現。ライセンスに合わせたお得なキャンペーン情報もメールで通知しています。
SOLIDWORKSのサポート
SOLIDWORKSは、公式サポートページで各種サポートや情報提供をしています。
このページでは、SOLIDWORKS製品の最新バージョン、および機能追加を含むサービスパックのダウンロードが可能です。その他、学習リソース情報やユーザーからの問題報告が表示される「サービスリクエスト(SR)」、報告されたバグの修正状況を確認できる「バグ報告(SPR)」なども閲覧できます。
NXを使うメリット
NXは、他のCADソフトウェアにはない魅力的なメリットが数多くあります。
以下では主なメリット3つについて解説しましょう。
NXを使うメリット①強力なCAD、CAM、CAEを統合して利用できる
NXは、設計(CAD)、製造(CAM)、解析(CAE)機能を一体化したソフトウェアです。
この3つの機能を一つに統合することで、データの一貫性が確保され、作業効率が向上します。
さらに、製品ライフサイクル管理ツール「Teamcenter」との連携により、全工程でのデータ整合性が保持されます。NXは、一つのデータを複数の工程でスムーズに共有できるため、複雑な製品開発や短納期化が求められるプロジェクトに最適です。
NXを使うメリット②大規模な製品開発ができる
NXは、大規模なアセンブリや複雑な形状設計の効率化が図れます。
形状を直接的に操作しながらも設計履歴を維持できる「シンクロナスモデリング」により、設計者は大規模で複雑な製品形状においても自由度が高く柔軟な設計変更を実現できます。
NX CAEでは、構造解析、熱伝導解析、流体解析など、多岐にわたるシミュレーションを統合的に実施し、複雑な連成解析もスムーズに実行。設計から製造までの一貫したワークフローにより、生産性の向上や製品品質の安定化、製品開発期間の短縮など多彩なメリットが得られます。
NXを使うメリット③多様なオプション機能をお得なパッケージで提供
NXのクラウド型サービス・NX Xは、市場における大きな差別化要因であるお得なパッケージプラン「NX X Value Based Licensing」を採用し、NXの様々な機能に非常に魅力的な価格でアクセスできます。
NX X Value Based Licensingでは、必要な機能を使う際にトークンを消費する仕組みになっており、1つの製品コードで包括的なトークンプールにアクセスできます。このライセンス体系は、柔軟に高度な機能を活用できるコスト効率に優れたプランです。
また、トークンは「使いきりではなく」、使い終わった分は上限まで戻るため、無駄なく利用できる仕組みになっています。
Value Based Licensingは100以上のアドオンモジュールから選択可能
NX XユーザーがNX X Value Based Licensingを活用することで、100以上のアドオンモジュールから選択できるようになります。
たとえば、特殊設計ツール、標準部品アプリケーション、設計と統合されたシミュレーションソリューション、プログラミング、カスタマイズツールキット、ダイレクトトランスレータなど、幅広い機能を必要に応じて使用可能です。
これらの強力なオプションは共有して使い回すことができるため、必要な機能が揃っている場合には非常にお得なプランといえるでしょう。なお、このライセンスは年間と月間の2種類から選択でき、それぞれ50トークンが付与されます。
SOLIDWORKSを使うメリット
続いて、SOLIDWORKSを使うメリットについて解説しましょう。
SOLIDWORKSを使うメリット①幅広い業界で利用できる
SOLIDWORKSは、自動車や産業機械など、多岐にわたる製品の設計開発に活用されています。
板金加工、溶接構造、サーフェスモデリング、金型設計、配線・配管システムなど、専門的な設計ツールを豊富に備えているため、カスタマイズが求められる設計に最適です。
SOLIDWORKSを使うメリット②直感的に操作できる
SOLIDWORKSは、使いやすい操作性も魅力です。
Windowsに似たインターフェースを採用しているため、パソコンを普段から使っている方であればスムーズに操作を習得できます。
効率を追求した設計により、最小限のマウス操作で目的の作業が完了できるのもメリットといえるでしょう。
SOLIDWORKSを使うメリット③コミュニティが充実している
SOLIDWORKSは、活発なユーザーコミュニティを持つことでも知られています。
コミュニティはSOLIDWORKS公式サイトから参加できるので、誰もが手軽に利用可能です。
なお、日本では、SOLIDWORKS Japan User Group(SWJUG)が技術交流の中心となり、全国各地で定期的な技術交流会を開催しています。オンラインフォーラムでは24時間365日、ユーザー同士が情報交換や問題解決のサポートを実施しています。
NXとSOLIDWORKSの選び方
最後に、NXとSOLIDWORKSの選び方について解説します。
①製品の複雑さで選ぶ
まず、開発する製品の複雑さ、規模、そして必要な機能を具体的に洗い出しましょう。
NXは、複雑な形状のモデリングや大規模なアセンブリの設計、そして高度なシミュレーションなど、設計の自由度を大幅に広げる高度な機能を搭載しています。
一方、SOLIDWORKSは、一般的な機械設計や標準的な製品設計に必要な機能をバランス良く備えています。自社の製品の設計規模を考慮し、NXとSOLIDWORKSのどちらがより適しているか判断してください。
②必要な機能で選ぶ
次に、具体的に必要な機能を整理しましょう。
NXは高度な解析機能やカスタマイズ性など、ハイエンドな機能を豊富に搭載しており、製品開発の上流から下流まで、一貫した環境で作業を進めることができます。
一方、SOLIDWORKSはモデリングを中心とした総合設計ツールで、幅広い設計分野に対応した使いやすさが魅力です。
それぞれの機能を自社の製品開発におけるニーズと照らし合わせ、最適なCADシステムを選択することが重要です。
③価格で選ぶ
続いて、価格面をリサーチします。
初期投資を重視する場合、必要最小限の機能で十分な場合はSOLIDWORKSが適しています。
製品の付加価値向上を目指し、市場競争力を高めたい場合にはNXが最適です。
価格は選択時の重要な要素ですが、製品の品質向上と顧客満足度の観点から、得られる価値とのバランスを考慮の上、最終的な判断に進みましょう。
④デモを見て実際の動作を確認する
NXとSOLIDWORKSの選定において、実際にソフトウェアに触れてその操作感を確かめることは非常に重要です。
デモを見る際には、以下の点に注目しましょう。
- 実際のワークフローでの使いやすさ
- 業務に必要な機能の実装
- 大規模データの処理速度や安定性
- 既存の業務プロセスやツールとの連携
NXとSOLIDWORKSを選択する際、操作性、必要機能、パフォーマンス、チームとの連携など、実際にソフトウェアを操作することで初めて分かる要素が数多くあります。
NXのデモンストレーションをご覧いただき、貴社の環境での実際の動作をご確認すると良いでしょう。
NXとSOLIDWORKSの違いについてまとめ
NXは複雑な製品開発や大規模プロジェクトに強みを持ち、高度な機能と拡張性を備えた統合的なソリューションを提供します。
一方、SOLIDWORKSは直感的な操作性と優れたコストパフォーマンス、そして充実したユーザーコミュニティを持つことが特徴です。
最適なCADソフトウェアの選定には、製品の複雑さ、必要機能、予算、そして実際の使用感を総合的に評価することが重要です。
最終的な判断に進む前に、製品のデモンストレーションを利用して実際に操作してみましょう。
実際に操作することで、カタログや資料からは得られない貴重な情報を得ることができます。
