世界最大規模のIT分野調査・助言企業であるガートナージャパンは、獲得すべきマインドセットを提言しており、テクノロジーを駆使できる企業や組織、人とそうでない人たちとの二極化が進むと指摘しています。
産業革命時代に生き残るためには、新たなマインドセットを獲得し、自らが変革をリードする存在になる必要性を強調しており、積極的にテクノロジーを活用する姿勢こそ、これからの製造業に求められるマインドセットと言えるでしょう。
今回は、企業に重要なマインドセットの傾向や製造業が取り組むべき成長型マインドセットを効果的に養う方法を解説します。
企業におけるマインドセットとは
マインドセットとは、経験や価値観に基づく考え方や枠組みのことで、心のあり方や心構えとも言い換えられます。個人だけでなく、企業や組織にも存在し、企業の場合はいわゆる企業文化や企業風土のことです。
企業のマインドセットは、以下のような様々な要素をもとに構成されています。
- 経営理念
- 経営方針
- 事業特性
- 企業戦略
- 企業が経験した出来事
例えば、時代に左右されないオーソドックスな商品を扱う会社もあれば、常にトレンドアイテムを取り揃える会社もあります。
これらの違いは、企業が持つマインドセットの違いによって生まれ、ビジネスの成果に大きな影響を与えると言えるでしょう。
現代社会は変化が激しく、従来のやり方が通用しにくくなっており、企業が生き残り、成長していくためには、変化を恐れず、常に新しいことに挑戦するマインドセットが重要です。
企業に重要なマインドセットの傾向
製造業の現場において、社員のマインドセットはビジネスの成果に大きく影響します。社員のマインドセットを捉える際には、「成長型マインドセット」と「固定型マインドセット」という2つの傾向に分けて考えることができます。
成長型マインドセットが、人間の基本的な能力や資質は努力次第で成長させることができるという思考である一方、固定型マインドセットは、人間の能力や資質は固定的なものであり、努力などによって変わらないという思考を指します。
成長型マインドセット | 学ぶことに意欲的で、新しい事にも積極的に挑戦する傾向 |
固定型マインドセット | 失敗を避けたり、新しい物事に挑戦しなかったりする傾向 |
人間は誰でも両方のマインドセットを持っており、どちらか一方だけというわけではありません。しかし、どちらかの傾向が強いか弱いかによって、個人の行動や成果に違いが現れます。
どちらのマインドセットが優れているというわけではありませんが、製造業においては、社員一人ひとりが成長型マインドセットを持つことが重要です。
従業員が成長型マインドセットを持つメリット
マインドセットは、個人や企業のビジネスに対する姿勢に影響する重要な考え方であり、多くの企業が成長型マインドセット教育に注目しています。
自社の従業員が成長型マインドセットを持つメリットを詳しく解説します。
社員が自信を持つようになる
成長型マインドセットを持つ従業員は、困難な状況にも積極的に立ち向かうことができます。失敗を恐れず、そこから学び、次へと繋げることで、着実にスキルアップしていくでしょう。
従業員の自信を育み、目標達成への意欲を高め、目標に向かって努力し、成功体験を積み重ねることで、自信を深めることができるのです。
また、失敗した場合でも自分の能力不足を嘆くのではなく、「どうすれば成功できるのか」「次はどうすれば良いのか」と前向きに考えることができ、目標達成に向けて努力することに喜びを感じ、常に向上心を持って業務に臨むことができるでしょう。
ポジティブな考えが浸透する
従業員一人ひとりが成長型マインドセットを持つことで、従業員のモチベーションが向上するだけでなく、チーム全体がお互いの成長を応援し、協力し合い、より高い目標を達成することができます。
さらに、新しい技術や手法を積極的に学び、変化をチャンスと捉えることで、企業全体の競争力を活性化することができるでしょう。
組織の成長や強化に繋がる
成長型マインドセットを持つ従業員は、自らの成長に意欲的であり、目標達成に向けて主体的に行動します。困難な課題にも粘り強く取り組み、達成感を得ることで、さらなるモチベーション向上に繋がり、生産性向上にも大きく貢献するでしょう。
また、常に新しい知識やスキルを吸収しようと失敗を恐れずに新しいことに挑戦するため、革新的なアイデアが生まれやすい環境が整います。
さらに、自らの成長だけでなく、周囲の成長にも貢献しようとするため、チームワークを重視し、互いに協力し、高め合う文化が育まれます。リーダーシップを発揮し、組織を強化させる役割も担うようになるでしょう。
成長型マインドセットを効果的に養う方法
製造業を取り巻く環境は常に変化しており、企業が成長し続けるためには、社員一人ひとりの成長型マインドセットが欠かせません。
以下で、社員の成長型マインドセットを効果的に養う方法をご紹介します。
マインドセットを自覚してもらう
成長型マインドセットを育成するためには、まず自身がどのようなマインドセットの傾向を持っているのかを認識することが重要です。
人間は成長型と固定型の両方のマインドセットを持ち合わせていることが多いため、どのような場面でどちらの傾向が強くなるのかを把握することが大切なのです。
特に、成長を阻害する固定型マインドセットは、苦手な分野や課題に直面した際に現れやすい傾向があります。
固定型マインドセットがどのような場面で顔を出すのかを明確にするためには、日々の業務内容を書き出してもらい、それぞれの業務に対する自分のマインドセットを振り返ってみると良いでしょう。
具体的な目標を設定する
マインドセットについて自覚したら、次は具体的な目標を設定します。目標は単に「頑張る」といった抽象的なものではなく、具体的なイメージを持ち、達成可能な計画を立てることが重要です。
目標を達成するためには、いつまでに何をどのように達成するのか、具体的な計画を立てる必要があります。
特に、個人の夢や人生の目標に沿った目標であればあるほど、仕事に対するモチベーションが高まり、成長型マインドセットが発揮されやすくなります。
計画を立てることで、今何をすべきかが明確になり、どの業務や施策に成長型マインドセットで取り組むべきかが見えてくるでしょう。
技術職員のキャリアアップの仕組みについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
マインドマップを作成する
目標を実現させることをテーマにマインドマップを作成し、さらに深く掘り下げて考えます。マインドマップとは、思考を視覚的に表現し、整理するためのツールです。
中心にテーマを置き、そこから連想されるキーワードやアイデアを放射状に展開していきます。
頭の中にある考えを紙の上に視覚的に表現することで、思考の整理や新しい発想を促し、発想の幅が広がり、より柔軟な思考が可能になります。
製造業における目標実現のためのマインドセットを作成する際は、以下の要素を軸にして考えることをおすすめします。
能力やスキル | 現状とのギャップを認識し、具体的な学習計画やスキルアップの道筋が見えてくる |
習慣や行動 | 目標が大きければ大きいほど、日々の習慣や行動が最終的な結果に大きな影響を与える |
意識や想い | 深く掘り下げることで、目標達成へのモチベーションを高め、より主体的に行動できるようになる |
実際に行動し成功体験を積み重ねる
マインドセットの変革には、具体的な行動が不可欠です。明確に言語化した目標に沿って、日々の行動を一つひとつ考え、実行していく必要があります。
考えるだけでなく「行動する」 ことこそが、マインドセット変革の第一歩となるのです。また、目の前の業務だけでなく、新しい技術や知識や改善点など、あらゆることに目を光らせ、行動に移せる機会を探りましょう。
一度の行動で終わらせず、習慣化することで、着実に成長へと繋がります。行動力こそが成長を加速させるエンジンと言えるでしょう。
このプロセスを繰り返すことで、問題解決能力が向上し、成功体験を積み重ねることができます。すぐに行動できる癖をつければ、成功に繋がりやすくなるだけでなく、成功体験や自身の成長を実感しやすくなります。
このような成功体験の積み重ねが、成長型マインド への変化を促進し、さらなる成長へと繋がる好循環を生み出すのです。
フィードバックを行う
製造業の現場では、社員一人ひとりの行動が製品の品質や生産性に大きく影響するため、企業の役割として、社員の行動を観察し、適切なフィードバックを行うことが重要です。
社員としては実行しているつもりでも、まだ不足している部分を第三者の目から見て、次の行動に繋げるために何が必要かを検証する必要があります。
例えば、行動が固定型に偏ってしまっている時には指摘し、評価・改善することで、少しずつ変化を促していく必要があります。
企業は、社員の行動を観察し、具体的な事例に基づいてフィードバックを行うことで、社員の成長をサポートすることができるでしょう。
企業におけるマインドセットの注意点
マインドセット教育を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
以下で、企業におけるマインドセットの注意点を解説します。
修正には時間がかかる
マインドセットは、個人の経験や育った環境や時代背景などに深く根ざしているため、短期間で簡単に変えられるものではありません。
そのため、マインドセット教育を実施する際には、修正に時間がかかるということを認識することが重要です。
マインドセットに関する育成計画を立てる際も、途中でのキャリアアップも見越しながら、中長期的な視点で考える必要があります。
中長期的なビジョンという軸があれば、たとえ目標達成に失敗してしまった場合でも、容易に挫折することはありません。
中長期的なビジョンは、短期的な目標達成の成否に左右されない、より大きな目標や理想を指し示す羅針盤となります。
過程を評価する
固定型マインドセットの傾向が強い人は、結果によって挫折したり、自信を失ったりしやすい傾向にあります。
例えば、新しい技術や手法に挑戦する際に、「自分には無理だ」とか「どうせ失敗するだろう」といった考えが浮かんでしまう場合、固定型マインドセットの可能性があります。
固定型マインドセットを持つ人は、自分の能力は固定的なものであり、努力しても変わらないと考えがちであるため、失敗を恐れて挑戦を避けたり、失敗すると自分の能力がないと落ち込んだりすることがあります。
しかし、実際には、人間の能力は努力や経験によって成長するものです。たとえ失敗しても結果を出すための戦略や行動を評価し、その過程でよかった点を具体的に褒めて伸ばすことを意識しましょう。
マインドセットのアップデートを行う
ビジネスで求められるマインドセットは、役職によって大きく変化します。例えば、新入社員は、学生時代の意識から転換し、社会人として活躍するためのマインドセットを獲得することが必要です。
一方、管理職には、プレイヤーとしての能力に加え、マネージャーとしての意識改革が求められます。
入社直後の社員 | 企業の理念やビジョン、仕事に対する基本的な考え方を時間をかけて丁寧に教育する |
管理職 | 部下の個性や能力を最大限に引き出すためのコミュニケーションスキルやリーダーシップスキルを、継続的に研修する |
そのため、マインドセット教育は、入社時と昇格時に必ず行うようにしましょう。これまで身につけてきたマインドセットを意図的に取捨選択し、新たな役割を果たすために必要なマインドセットへのアップデートを促すことが重要です。
従業員のキャリアステージに合わせて、必要なマインドセットを育成し、変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成しましょう。
製造業の新入社員研修については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
研修は役職別に実施する
先述したように、マインドセットは役職によって異なるため、研修も役職別に実施することが重要です。
特に管理職の場合、自分自身のマインドセットを確立するだけでなく、部下を育成するという役割も担う必要があります。
そのため、管理職研修では、部下のマインドセットを育成するための技術を習得することも重要です。
CAD人材育成サービス
ProSkilllのCAD人材育成サービスは、CAD人材育成に特化しており、短期的なプランから中長期的なプランまで、企業のニーズに合わせた柔軟なプランをご提案するのが特徴です。
まずは、弊社の担当者が企業の現状をヒアリングさせていただき、ヒアリング内容を基に、課題解決に向けたマインドセットのプランをご提案します。
ご納得いただけるまでカリキュラムや研修後のフォローについてお打ち合わせを重ね、研修実施後には、研修中に出たご質問やメンバーが興味を惹かれた内容、理解度などを記載した実施報告書を提出いたします。
この報告書は、今後の業務のプロジェクト計画策定や、より高度な人材教育のためにご活用いただけます。マインドセット研修を通じて、企業の競争力を高めるために必要な人材育成を支援いたします。
企業における成長型マインドセットは成長の糧となる
今回は、企業に重要なマインドセットの傾向や製造業が取り組むべき成長型マインドセットを効果的に養う方法を解説しました。
成長型マインドセットは、個人の成長だけでなく、組織全体の成長を牽引する力となります。このマインドセットを持つことで、従業員は常に自己成長を追求し、新しい知識やスキルを積極的に習得することができます。
また、困難な課題に直面した場合でも、諦めずに解決策を模索し、そこから学びを得て成長の糧とすることができるでしょう。
企業が成長型マインドセットを組織全体に浸透させることで、従業員一人ひとりの能力が向上し、チームワークが強化され、組織全体の生産性や創造性が向上します。
成長型マインドセットは、製造業が未来に向けて持続的に成長するための重要な鍵となるでしょう。
