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【2025】ローカル5Gとは?導入メリットから具体的な手順を徹底解説

5Gと聞くと大手キャリアのサービスを思い浮かべがちですが、実は企業や自治体が自ら構築できるローカル5Gという選択肢もあるのです。

これまでは、高い導入コストや運用の大変さなどがあり、ハードルが高いイメージでしたが、最近では状況が変わりつつあります。

NTTコミュニケーションズが2025年3月に発表した「ローカル5Gサービス」はドコモのインフラを活用した技術です。月額50万円から使えるという価格は、多くの企業にとって現実的な選択肢となりそうです。

今回は、ローカル5G導入のメリットや具体的な導入手順をわかりやすく解説します。

ローカル5Gとは

ローカル5Gは、自分たちだけの5G通信環境のことです。大手キャリアが提供する5Gとは違い、企業や自治体が独自に構築し運用できるので、データの流れやセキュリティを自分たちの手で管理できます。

現場のニーズに応じた設計ができるため、特に製造業や医療など、安定した高速通信が命綱となる場面で注目を集めています。

ローカル5Gの特徴

ローカル5Gはキャリアの5Gでは難しい、エリアや用途に応じて最適な構成ができるので、自社だけの通信環境が築けるのが最大の特徴です。以下では、その中でも特に重要な周波数帯と制度について解説します。

2つの周波数帯を使い分けられる

ローカル5Gで使用される周波数帯は、Sub6(サブシックス)とミリ波の2種類があります。それぞれに特性があり、目的や設置場所で選び方が変わります。

Sub6
  • 電波が広範囲に届きやすい
  • 工場などで安定した通信を確保したい時に向いている
ミリ波
  • 超高速かつ大容量の通信
  • 映像データのリアルタイム配信などに向いているが、障害物に弱いという欠点もある

どちらを使うか、両方をどう組み合わせるかは現場の状況によって変わってきます。

基地局免許が必要になる

電波を利用するには、電波を使うための基地局免許が必要です。基地局免許は、総務省が発行するもので、電波の使用エリアや内容に応じて申請が求められます。

ただし、免許を取得するには、設備の構成や運用計画などの資料をそろえて申請する必要があります。少しハードルが高いかもしれませんが、最近ではベンダーが申請サポートをしてくれるサービスも増えており、以前ほど手間に感じることは少なくなっています。

ローカル5Gの導入で得られるメリット

ローカル5Gの導入で得られるメリット

ローカル5Gは、既存のWi-Fiや4Gではカバーしきれないニーズに応えることができます。以下では、ローカル5Gの導入によって得られる具体的なメリットを解説します。

高速かつ大容量通信ができる

5Gと言えば、高速・大容量通信ですが、ローカル5Gでもその特徴が活かされます。特に、高解像度の映像や大量のデータを扱う環境では、通信速度や容量が作業効率を左右します。

ローカル5Gなら、専用帯域を使うため混雑が少なく、常に安定したパフォーマンスが期待できるでしょう。

遅延しにくい

ローカル5Gの強みの一つが遅延しにくいことです。反応の速さが求められる自動制御や遠隔操作などでは、遅延は安全性や正確性に影響します。

例えば、遠隔でロボットを操作する際、わずかな遅れでも大きなトラブルに繋がる可能性があるでしょう。しかし、ローカル5Gでは通信環境を自社で管理できるため、遅延の原因を最小限にすることができ、リアルタイム性が重要な作業も安心してこなせるでしょう。

同時接続ができる

工場のラインにはロボットやセンサー、カメラなどが設置されています。これらが常に通信していると、混線したり、途切れたりしてしまうことも。

しかし、ローカル5Gなら多くの機器を同時に繋げても安定した通信ができます。元々、5Gは同時多接続に強く、狭い範囲でも数千の機器をまとめて繋げることができます。

データ量が多くても遅延が起こりにくく、リアルタイムでやりとりできるのは、多くの機器が稼働する現場にとって心強いでしょう。

柔軟な通信環境を構築できる

大手キャリアの5Gは、通信エリアや設備に制約がありますが、ローカル5Gなら、使いたい場所や方法に合わせて通信環境を自由自在に構築できます。

例えば、工場内の特定の場所だけを対象にしたい、建物の屋上で使いたいなどのニーズにも対応できるのが特徴です。また、自社の敷地内のみで通信環境を構築できるため、品質や保守体制も自分たちでコントロールしやすいです。

Wi-Fiでは不安定だった場所でも、ローカル5Gにすることで安定するケースもあります。

セキュリティが向上する

ローカル5Gは、外部とのやりとりを最小限に抑えられます。例えば、医療機関や金融系の企業など、機密情報を扱う場所では外に出さない通信環境が大前提になります。

ローカル5Gの閉鎖的な環境はそんなセキュリティ対策にもピッタリでしょう。通信設定やアクセス権限も自社でコントロールできるため、不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限にできます。

製造業のセキュリティリスクについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。

【2025】製造業のセキュリティリスクとは?おさえるべき5つの対策方法やポイント

コスト削減ができる

初期費用や設備投資が必要になるものの、長期的な視点で見ると、ローカル5Gがコスト削減に繋がる可能性も十分あります。例えば、Wi-Fi環境では対応しきれないほどの機器を繋げたい場合や、外部のクラウド通信に頼らずに社内だけで完結させたい場合、トラブルや保守コストを減らせる可能性があります。

最近では、NTTコミュニケーションズのように月額50万円前後から導入できるパッケージも登場しており、導入のハードルはどんどん下がっているでしょう。

ローカル5Gにおける導入の注意点

ローカル5Gにおける導入の注意点

メリットが多いローカル5Gですが、もちろん、注意すべき点もあります。以下で、導入前に知っておきたい注意点をチェックしておきましょう。

導入コストがかかる

ローカル5Gの最初のハードルが、やはり導入にかかる費用です。基地局やアンテナ、通信設備はもちろん、免許申請やローカル5Gの設計にもお金がかかります。

NTTなどで月額プランを提供し始めてはいるものの、月数十万円規模の支出はかかるので、小規模な企業にはまだハードルが高く感じられるかもしれません。

そのため、費用対効果をきちんと見極めることが大切です。また、補助金制度を上手に活用するのも有効でしょう。

通信への専門知識が重要になる

ローカル5Gを安定して運用するには、それなりの専門知識と体制が求められます。特に、自社で通信環境を構築して管理する場合は、基本的な知識が欠かせません。

機器同士の通信トラブルやセキュリティリスクが発生したときの対応は、現場スタッフに求められることもあります。社内に詳しいスタッフがいない場合、外部に頼ることもできますが、それにもコストがかかります。

ローカル5Gを支援するベンダーも増えていますが、通信インフラを自社で持つことの責任感が長期的な運用の鍵になるでしょう。

電波干渉が起きることがある

電波干渉とは、電波が重なり合って通信の質が不安定になることです。特に、Sub6帯を使う場合、同じ周波数帯域を近隣の施設と共有することになるので、電波干渉が起きる可能性があります。

周波数の割り当てや出力調整などで対策できますが、事前の設計やシミュレーションが必要です。環境の変化や新たな施設により、予想外の電波干渉が起きるケースもあるため、定期的なモニタリングが欠かせません。

自社の中だけの通信だから安心と油断していると、外部要因が影響していたという落とし穴もあります。

セキュリティ対策が必要になる

ローカル5Gは、キャリア回線と切り離されているので、外部からの侵入リスクは低めです。しかし、完全に安全とは言い切れません。むしろ、ローカルで構築されているからこそ、セキュリティ設計も自己責任になります。

例えば、機器の連携が増えるほど、通信の入り口も増えていきます。その中で一つでもセキュリティが甘い端末が紛れていたら、そこが弱点になりかねません。

サイバー攻撃は年々巧妙になっているので、万が一に備えた体制がないまま運用を始めるのは危険です。自社に専門の人材がいない場合は、セキュリティ対策に強いベンダーを選ぶことをお勧めします。

ランサムウェアから身を守るための対策方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。

【2025】ランサムウェアに感染したらどうなる?対処法や身を守るための対策方法を詳しく解説

カバーできるエリアに制限がある

ローカル5Gは必要な場所にピンポイントで通信環境を構築できますが、カバーできるエリアには制限があります。出力制限や基地局の設置数などが影響するので、広範囲のエリアをまんべんなくカバーするには、それなりの設備投資が必要です。

例えば、広大な敷地や複数の建物がある場所では、一つの基地局では足りず、複数のアンテナを設置する必要になることも。設置場所や障害物の影響で、電波が届かない死角ができることもあります。

設計の段階で電波が届く範囲をシミュレーションすれば、ある程度はカバーできますが、どこでも快適に繋がると思っていると、思わぬギャップを感じるかもしれません。

ローカル5Gの活用事例

ローカル5Gの活用事例

ローカル5Gが必要なのは、先進企業だけの話に感じてしまうかもしれません。実はすでに多くの現場で、導入が進んでいます。

従来のWi-Fiや4Gなどの通信環境では対応できなかった環境でも、ローカル5Gの特性が活かされ、生産性や安全性に繋がっています。特に、以下のようなリアルタイム通信が重要になる現場では、ローカル5Gの効果は想像以上かもしれません。

  • 製造業:ロボット制御、生産ラインの監視
  • 建設業:ドローン撮影、や遠隔操作、作業員の安全管理
  • 医療分野:リアルタイムでのモニタリング、遠隔手術のサポート
  • 教育機関:高速通信、教職員間の情報連携
  • 農業:自動運転農機の管理、遠隔監視
  • 自治体:リアルタイムデータでの行政効率化
  • エンタメ:ライブ配信、AR演出

ローカル5G導入の具体的な4つの手順

ローカル5Gを導入したいけど、何から始めればいいのか分からない、という方も少いはずです。導入にはいくつかの段階があるので、その手順を以下で見ていきましょう。

1.目的を明らかにする

まず、なぜローカル5Gを導入したいのか、何に活用するのか、明確な目的を定めましょう。例えば、安定した通信の確保なのか、セキュリティの強化なのか、その目的によって必要なシステムや構成は大きく変わります。

社内の課題やニーズを整理し、どのエリアにどんな形でローカル5Gを導入するのかを検討しましょう。また、初期コストや運用体制、必要なスキルも把握しておく必要があります。

最近では、各ベンダーが導入支援やコンサルティングを提供しているので、専門家からアドバイスを受けることもできます。

2.免許を申請する

先述したように、ローカル5Gを運用するには、基地局免許が必要です。免許の申請には、専門知識が必要な部分も多いため、通信事業者やベンダーが申請代行やサポートを行うことも多いです。

また、第2種利用制度を利用すれば、設備の一部をベンダーに委託することで、より柔軟な運用ができるようになるでしょう。免許申請から交付までは数週間〜数カ月かかる場合もあるので、早い段階で準備を整えておくと安心です。

3.通信環境の設計や構築を行う

免許を取得したら、本格的な通信環境の構築をします。基地局を設置する場所やエリアの場所、使用する周波数、機器同士の接続方法など、現場に合わせて設計していきます。

例えば、工場なら、作業ラインをカバーしつつも邪魔にならない場所にアンテナを配置する必要があるでしょう。病院であれば、診察室など重要な部屋の通信の質を優先させる工夫が必要です。

また、将来的に機器が増えるときに対応できる構成にしておくことも大切です。設計が固まったら、アンテナや基地局の設置、接続テスト、電波測定など、実際の構築へ移ります。

これらの作業を一貫してサポートしてくれるベンダーに任せることもできます。

4.運用しながら保守作業を行う

ローカル5Gは、導入して終わりではなく、継続して使い続けるための体制づくりが重要です。安定した通信環境を維持するためには、定期的な点検やトラブル対応、セキュリティ更新など保守作業が欠かせません。

特に、ローカル5GはWi-Fiよりも複雑なシステムのため、専門知識を持つスタッフの配置や、外部業者との保守契約が重要になることも。また、通信障害が発生した際にすぐ対応ができる体制を整えておくことも大切です。

最近は、AIによる管理システムも登場しており、保守の手間を軽減できるので、このような技術も取り入れながら、ローカル5Gの能力を最大限に引き出していきたいものです。

ローカル5G導入で実現する自分たちだけの通信環境

今回は、ローカル5G導入のメリットや具体的な導入手順を解説しました。ローカル5Gは、次世代通信という枠を超えた実践的なインフラへと進化しています。自社専用の通信を柔軟に構築できることで、これまで通信環境に悩まされていた現場にも、新たな可能性が見えてきました。

導入コストや運用体制、セキュリティの確保などのハードルはありますが、補助金やベンダーのサービスにより、導入のハードルは確実に下がっています。

ローカル5Gは、まだ成長途上の技術ですが、すでに私たちの暮らしやビジネスに影響を与え始めています。必要な場所に、必要なだけ通信を行う選択肢として、その可能性に注目してみてはいかがでしょうか。

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