工事現場や建設現場では、騒音と共に振動の苦情が来る場合もあります。
今回は、そんな振動が現場でどれくらい出ているのか把握するための、おすすめ振動計測器を比較してみました。
振動はどこまで被害が出ると危険なのか、振動計測器はどんなものがおすすめなのかを知りたい人はぜひ参考にしてください。
振動計測器とは?
振動計測器とは、地震で起きる揺れだけでなく、工事や車の搬入で起こる揺れも測定できる機械のことです。
主に建設現場で使われて、現場の周りの住民に対してどれだけ揺れが起きてしまっているかを確認するために使用します。従来は設置型の大きめな機械が使われていましたが、最近ではどんどん小さくなっていてハンディで手軽に使えるものも存在します。
振動の定義や仕組みに関しては下記記事も参考にしてください。
振動計測器を使う目的
先述した通り、振動計測器は基本的に建設現場で使われますが、その目的として下記が挙げられます。
- 周りの住民にどれだけ振動が響いているか確認できる
- 揺れの原因が分かりやすいので振動を小さくする対策が練れる
- 周りの住民や通行人からのクレームを少なくできる
振動を測定することにより、どれだけこの建設で揺れているかが分かるので、クレーム防止や振動を抑える対策を計画することができるようになります。
そもそも振動計測器がないと周りに迷惑をかけているかが把握できないので、急にクレームが来て急いで対応しなくてはならない、というケースに陥る場合もあります。
振動計測器の価格・相場
振動計測器はどれだけクオリティを求めるかによりますが、相場的には6〜7万円程度です。
安定した振動測定や、細かく振動測定をしたいなら相場以上の予算を考えた方が良いですし、もっと簡易的で良いと思った場合はもう少し安い振動計測器を探しても良いでしょう。
ただし、クレーム防止や振動対策を慎重に考えている企業の場合は、値段より機能や使いやすさを重視するのがおすすめです。
おすすめの振動計測器10選を比較!
建設現場の振動を測定するためには、振動測定器を設置します。
最近ではさまざまな振動測定器が各メーカーで開発されており、現場に合ったものが選べるようになりました。
ここでは、おすすめの振動測定器を10個紹介します。
①揺れウォッチャー
CACH(カック)株式会社の揺れウォッチャーは、タテ75mm×ヨコ75mm×高さ35mm、重量約600gと、手のひらサイズのコンパクトな外見が特徴です。
電池駆動なので電源が必要なく、どこにでも置くことができ、マグネット式で柱などにも取り付けることも可能です。
揺れウォッチャーは多点測定が基本となっており、現場の広さに応じて複数の筐体を設置します。それぞれの筐体が振動を測定するため、「いつ」「どこで」「何が」振動を発生させているのか特定できます。
また、振動の分析は筐体内で自動で行われ、測定結果はスマホなどからリアルタイムで確認可能です。データの見やすさにもこだわり、振動レベルの色分けや現場写真や図面を重ね合わせた表示ができるので、各所の振動値が一目でわかります。
一定の振動値を超えた場合には、振動源に近い重機オペレーターへアラートメールを送ることもできるため、苦情につながりかねない振動のみにピンポイントで対策できます。
周波数データを蓄積していくことで、建設機械や作業を特定することもでき、振動減の特定にも役立ちます。
「置くだけで振動対策完了」は現場にとってはとても嬉しいですね。
②振動レベル計 VM-53/VM-53A
引用:SOOKI
音響・振動の老舗企業・リオン株式会社が開発・販売する振動計測器です。
振動公害の原因となる地盤振動の測定を、人体の振動感覚特性で補正した振動レベルとして測定することができます。
VM-53は、3方向振動ピックアップと表示部本体で構成され、両者がコードでつながった状態で使用します。電源には単2形乾電池またはACアダプタ(オプション)を使います。
表示部本体には液晶画面が2つあり、大きい画面に瞬時値を、小さい画面にレベルタイムやバーグラフメニュー画面などが表示されるため、振動の状況が一目でわかるようになっています。
また、オートストア機能やタイマ機能を内蔵し、測定データを内部メモリやメモリカード(CFカード)にストアすることで、長時間自動測定を可能にしています。
振動データをデータ管理ソフトでパソコン上に表示すれば、編集・演算・日報作成・印刷などを行うことができ、多様な業務に対応することが可能です。
延長コードやより細かな分析ができる1/3オクターブ実時間分析プログラムカードなどオプションも多く用意されており、現場に応じてカスタマイズすることもできます。
③騒音・振動表示装置 SVP-208
引用:SOTEC
株式会社ソーテックの騒音・振動表示装置 SVP-208は、従来の振動対策に「周辺地域との融和促進」を加えた、シンプルながら現場に嬉しいデジタル表示器です。
小型・軽量で設置が簡単なので、工事の期間中ずっと屋外に設置しておくことが可能です。
内部には計量法の検定に合格した普通騒音計・振動レベル計を使用しているため、常時、正確な騒音・振動レベルを表示することができます。
騒音なら50~100dB(A)、振動なら30~80dB(VL)を表示可能です。
騒音・振動のレベルがあらかじめ設定した規制値を超えると回転灯が回る(騒音:赤、振動:緑)ので、現場のスタッフへのアラートにもなるのも嬉しいですね。
収集したデータを管理ソフトでプリントしたいなら、測定データが保存されるSVD210やSVD310もおすすめです。「振動への苦情を減らすために、まず地域へのPRを」という考えは、円滑な工事進行の基本ともいえそうです。
④騒音・振動モニター・きんりんくん
引用:ACO
株式会社アコーの騒音・振動モニター・きんりんくんは、「工事現場における騒音、振動の”見張り係”と”広報係”の1台2役」がコンセプトで、検定に合格した騒音計・振動レベル計を搭載し、10分ごとの騒音・振動データを記録しています。
データは専用アプリで簡単に表示でき、エクセルなどでグラフ表示・リスト表示したり、印刷することが可能です。見る人・使う人のわかりやすさを重視した仕様になっているのが嬉しいですね。
モニター部分には視認しやすい大型LEDを搭載し、近隣住民へのPRにも大いに役立ちます。
電源プラグをコンセントに挿したらすぐに測定が開始できるので、安全で地域にやさしい建設工事をアピールするためには最適ですね。
⑤騒音振動計測システム rexse SVモニタリング
引用:rexse
株式会社レックスのrexse SVモニタリングは、騒音や振動、低周波音を複数箇所で自動測定し、測定結果を集中管理するシステムです。
遠隔地の現場の状況をパソコンでリアルタイムに管理できるので、管理に携わる人件費削減に役立ちます。
測定器は、騒音計、振動計を合わせて最大8台まで接続できるため、広い現場や複数の現場を一括管理したい事業者には最適です。
表示・印刷専用ソフトでは、月次集計データや一覧表、グラフの作成ができるため、用途に応じてデータを集計することができます。
また、測定器が設置してある現場では騒音・振動レベルが常にモニターで確認できるようになっており、規定値を超えると回転灯が点灯します。
事務所で異常感知できるだけでなく現場の作業者への注意喚起や近隣住民へのPRにもつながります。
⑥ペン型振動計VB-03
引用:ペン型振動計VB-03
ペン型振動計VB-03は、ペン型のコンパクトなデザインとリモートスイッチの採用により、狭い場所や手の届きにくい場所でも簡単に測定が可能な製品です。リモートスイッチを使用することで、片手で振動計を操作しながらもう一方の手で機械を支えたり、他の作業を行うことができ、作業効率が向上します。また、測定時に振動計本体を動かさずに操作できるため、測定中の不要な動きが減り、より正確な数値が取得できます。さらに、リモートスイッチを活用すれば、危険な場所での振動測定も安全な距離を保ちながら実施可能です。
この振動計は、加速度、速度、変位の3つの測定が可能で、それぞれの単位で正確な値を表示します。また、ホールド機能や40秒の自動電源オフ機能が搭載されており、省エネルギー設計が施されています。本体は軽量かつスリムで、胸ポケットにも収納可能なため、持ち運びにも優れています。これにより、産業機械設備の保守や製品開発の設計、現場の品質管理など、多岐にわたる用途に対応可能です。
ペン型振動計VB-03は、高精度な測定を可能にしながらも、使いやすさと安全性、携帯性を兼ね備えた優れた製品であり、現場での迅速かつ正確な振動測定に最適です。
⑦振動計TPI-9070
引用:振動計 TPI-9070
振動計TPI-9070は、FFT(高速フーリエ変換)分析機能を搭載しており、振動データの周波数解析が可能なため、異常振動の原因を特定しやすく、予防保全や修理の判断をサポートします。有機ELディスプレイにより、ISO規格に基づく速度、加速度、ベアリング劣化度(BDU)をリアルタイムで表示し、異常を色分けして即座に判断できる機能が特徴です。
この振動計は、ユーザーフレンドリーな設計により、専門的なトレーニングがなくても簡単に操作可能で、作業効率を高めます。また、手のひらサイズのコンパクトボディと軽量設計に加え、防塵防水性能(IP67)を備えており、現場での持ち運びや厳しい環境での使用にも適しています。
さらに、速度、加速度、変位の測定に対応しており、多様な機械や状況に対応可能な汎用性を持っています。回転機器の異常診断では、アンバランスやミスアライメント、ゆるみを周波数帯ごとに自動診断し、ダウンタイムの削減に貢献します。また、FFT分析機能により、100ラインから800ラインまでの分解能で周波数スペクトラムを詳細に表示することができ、異常の早期発見を可能にします。
振動計TPI-9070は、産業機械の保守管理、ベアリングの摩耗診断、回転機器の異常検知など、幅広い用途に対応し、製紙、食品、金属加工など多くの業界で活用されています。高性能ながらも直感的に操作できる設計により、信頼性と利便性を両立した製品です。
⑧振動計バイブロ7231
引用:振動計バイブロ7231
振動計バイブロ7231は、FFT分析機能を搭載したハンディタイプの振動分析計で、簡易設備診断から精密診断まで幅広い用途に対応しています。この振動計は、振動の発生源を特定するために周波数解析を行い、アンバランス、ミスアライメント、機械的ゆるみなどの異常の原因を推定することが可能です。ピエゾ効果を利用して振動を電気信号に変換し、速度、加速度、変位の測定値をスペクトルグラフとして表示します。
デジタル値モードとリアルタイムでスペクトルを表示するスペクトルモードの2つの表示モードを備え、暗い場所でも操作しやすいバックライト付きディスプレイを搭載しています。さらに、アラーム機能や制限値の設定機能により、振動が許容範囲を超えた際に即座に警告を発することができます。
専用ソフトウェアを使用すれば、測定データをPCに保存し、ExcelやWordでの出力や印刷が可能です。本体に記録できる100ポイントのデータとスペクトルを管理し、各ポイントごとの測定結果やスペクトルデータを観察できる機能も搭載されています。また、振動ピックアップの取り付けには複数の方法があり、精度を向上させるための工夫がされています。
振動計バイブロ7231は、加工業や設備機械、自動車業界などの振動トラブル解決に役立つ高機能かつ高精度な診断ツールであり、回転機械の状態管理や設備保全の効率化に貢献します。携帯性と操作性を兼ね備えたこの製品は、現場での信頼性の高いパートナーとなるでしょう。
⑨振動計デジバイブロMODEL-1332B
昭和測器の振動計デジバイブロMODEL-1332Bシリーズは、ハンディタイプのポータブル振動計で、幅広い振動計測に対応可能な多機能性と高い汎用性が特徴です。Hi/Loのレンジ切替機能により、加速度、速度、変位をそれぞれ広範囲で測定でき、さまざまな計測シーンで活用できます。また、小型軽量設計で持ち運びが容易なため、現場での測定作業を効率的に行うことができます。
この振動計は、JIS B 0907に準拠した振動シビアリティ測定が可能で、回転機器の良否判定に役立ちます。さらに、振動波形の記録や周波数分析を行える拡張オプションを備えており、簡易な振動測定から精密診断まで幅広い用途に対応しています。付属品としてコンタクトピン、マグネット、取付ネジ、ショルダケースなどが標準装備されており、多様な計測方法に対応できます。
振動計デジバイブロMODEL-1332Bシリーズは、自動車の部品検査や設備機械のメンテナンス、工作機械の不具合診断など、多岐にわたる用途で使用されています。また、電磁弁の作動調査やベアリング異常のチェック、冷却塔ファンの保守管理など、産業界のさまざまなシーンで信頼されています。
標準タイプから微小振動や大きな振動に対応した高感度タイプ、大入力タイプ、軽量センサタイプまで多様なバリエーションが用意されており、計測対象や目的に合わせた最適な選択が可能です。さらに、単3形アルカリ乾電池2本で連続30時間以上の駆動が可能なため、長時間の使用にも適しています。総合的な性能と使いやすさを兼ね備えた本製品は、振動計測の信頼性を向上させる頼れるツールです。
⑩振動レベル計 VM-57
リオンの振動レベル計 VM-57/VM-57EXは、交通振動や工場・建設現場などの環境振動を計測し評価するための高性能な振動計です。本製品はJIS C 1510:2023およびJIS C 1517:2014規格に準拠しており、振動レベル(Lv)および振動加速度レベル(Lva)の瞬時値、時間率レベル、時間平均レベル、最大値、最小値を3方向同時に測定可能です。
特に、VC曲線を用いた評価機能により、精密機械の設置場所における振動測定や評価が簡単に行えます。半導体製造装置や加工機械など、高い精度が求められる機械の影響を評価するのに最適です。また、波形収録や1/3オクターブ実時間分析などのオプションプログラム(VX-57WR、VX-57RT)を利用することで、さらなるデータ解析が可能です。
この振動計は、防塵防水性能(本体:IP54、センサ部:IPX7)を備えており、厳しい作業環境にも対応します。さらに、LAN端子やUSB Type-Cコネクタを搭載し、通信機器との接続やモバイルバッテリからの給電が可能です。内部メモリおよびSDカードに測定データを記録でき、最大1,000組のデータ保存が可能です。
また、3.5インチタッチパネル付きカラー液晶ディスプレイを採用し、直感的な操作が可能で、データの視認性も向上しています。付属の3方向振動ピックアップ(PV-83E)は、優れた感度を持ち、広範囲の振動測定に対応します。
本製品は、振動加速度レベルの測定機器として計量証明事業登録にも対応しており、充電式電池による環境配慮設計や16~20時間の連続動作が可能な長時間使用にも適した設計となっています。工業環境から精密機器の振動評価まで幅広い用途に対応する、信頼性の高い振動計です。
振動計測器の選び方・見るといいポイント
振動は、ひとたび苦情を受けてしまうと工事の進行に重大な影響を及ぼします。
それでは、振動測定器を選ぶ際にどのような点を見た方が良いのか解説していきます。
現場全体の振動を計測できるか
広い建設現場では、さまざまな作業が同時進行しています。
振動測定器が一つだけでは、現場全体の振動が把握できない可能性があります。
振動状況は「点」で把握するのではなく、現場を「面」としてとらえ、全体の影響を知ることが大切です。振動測定器は複数設置することが望ましいでしょう。
何の振動か特定できるか
振動原因になる可能性が高い建設機械トップ3は、
- バックホウ
- ブレーカ
- 圧砕機
といわれています。しかし、地盤の状況や走行速度などによって振動の大きさは変わります。
過度な振動を発生させないようにするためには、何が、どのような作業でどれくらいの振動を発生させているか知る必要があるでしょう。
また、「振動に対する苦情を受けたものの、実は付近を走る鉄道の振動だった」というケースもあります。周波数などから振動を発するモノが特定できると良いでしょう。
リアルタイムで振動の計測結果がわかるか
振動の程度は作業内容によって常に変化しています。
振動を発生させやすい建設機械が複数同時稼働しているときなどは特に注意が必要ですが、現場で作業しているとそこまで気を付けることは困難です。
そのため、一時的に大きな振動が発生したときは、すぐにアラートが発せられ、工事を中断できる仕組みがあると良いでしょう。
苦情を受ける前に振動への対策を迅速に行うことが大切です。
振動の計測結果がすぐに説明できるか
上述の通り、振動公害は受けた人の主観的な部分が大きく、規制基準値以下の振動でも苦情を受けることがあります。また、「我慢できない」「煩わしい」「怖い」など、振動被害への表現も人によって異なり、想定以上の大事(おおごと)になってしまうことも少なくありません。
そのため、苦情を受けた際にその瞬間の振動がどの程度であったかすぐに説明できることが重要です。一日を通じて規制基準値以下を順守していることが伝えられれば、近隣住民の安心感にもつながるでしょう。
振動計測器を使わないと起こること
振動による健康被害には、内臓の損傷や循環器の不調、呼吸や代謝への悪影響が報告されています。これらは90db以上の強い振動に日常的にさらされた際に発生しやすくなります。
また、振動の睡眠への影響は大きく、あまり深く眠っていない場合は、65db程度の振動によって多くの人は目を覚ましてしまうことが明らかになっています。
さらに、振動の難しいところは、睡眠障害など直接的な身体への影響がない場合にも心理的な影響を及ぼすことです。心理的影響については年齢や地域、性別、発生源との関係性などにより結果が異なるため調査が難しいといわれています。
例えば、電車や自動車などに乗っているとき、人はかなり大きな振動に晒されています。
しかし、振動に対する苦情は滅多にないものです。
ところが、建設工事においては50db未満でも苦情を受けている現場が少なくありません。
特定建築作業における規制基準値は75dbですが、これはだいぶゆるめと思っておきましょう。
規制基準値を守っているだけでは、トラブルが発生しかねないことに留意しなければなりません。
振動については下記記事でも詳しく解説しています。
まずは簡単で便利な振動計測器を導入してみよう
多くの建設事業者を悩ませている振動対策。
実態がつかみにくいこともあり、振動公害に対する感じ方も人ぞれぞれであることから、現場で発生する振動を完全にコントロールするのは困難のように感じます。
しかし、振動対策の基本は、近隣住民への思いやりと誠意のある現場づくりといえます。
そのためには、現場の状況をしっかりと把握し、今できる最善の方法を採用していくほかありません。
振動測定器に関しては、現場のことを考えた製品が次々と登場しています。
自社の現場に合った製品を選び、振動対策を万全にしましょう。
