工事現場や建設現場では、騒音と共に振動の苦情が来る場合もあります。
今回は、そんな振動が現場でどれくらい出ているのか把握するための、おすすめ振動計測器を比較してみました。
振動はどこまで被害が出ると危険なのか、振動計測器はどんなものがおすすめなのかを知りたい人はぜひ参考にしてください。
振動計測器とは?
振動計測器とは、地震で起きる揺れだけでなく、工事や車の搬入で起こる揺れも測定できる機械のことです。
主に建設現場で使われて、現場の周りの住民に対してどれだけ揺れが起きてしまっているかを確認するために使用します。従来は設置型の大きめな機械が使われていましたが、最近ではどんどん小さくなっていてハンディで手軽に使えるものも存在します。
振動計測器を使う目的
先述した通り、振動計測器は基本的に建設現場で使われますが、その目的として下記が挙げられます。
- 周りの住民にどれだけ振動が響いているか確認できる
- 揺れの原因が分かりやすいので振動を小さくする対策が練れる
- 周りの住民や通行人からのクレームを少なくできる
振動を測定することにより、どれだけこの建設で揺れているかが分かるので、クレーム防止や振動を抑える対策を計画することができるようになります。
そもそも振動計測器がないと周りに迷惑をかけているかが把握できないので、急にクレームが来て急いで対応しなくてはならない、というケースに陥る場合もあります。
振動計測器を使わないと起こること
振動による健康被害には、内臓の損傷や循環器の不調、呼吸や代謝への悪影響が報告されています。これらは90db以上の強い振動に日常的にさらされた際に発生しやすくなります。
また、振動の睡眠への影響は大きく、あまり深く眠っていない場合は、65db程度の振動によって多くの人は目を覚ましてしまうことが明らかになっています。
振動については下記記事でも詳しく解説しています。
さらに、振動の難しいところは、睡眠障害など直接的な身体への影響がない場合にも心理的な影響を及ぼすことです。心理的影響については年齢や地域、性別、発生源との関係性などにより結果が異なるため調査が難しいといわれています。
例えば、電車や自動車などに乗っているとき、人はかなり大きな振動に晒されています。
しかし、振動に対する苦情は滅多にないものです。
ところが、建設工事においては50db未満でも苦情を受けている現場が少なくありません。
特定建築作業における規制基準値は75dbですが、これはだいぶゆるめと思っておきましょう。
規制基準値を守っているだけでは、トラブルが発生しかねないことに留意しなければなりません。
振動計測器を選ぶポイント
振動は、ひとたび苦情を受けてしまうと工事の進行に重大な影響を及ぼします。
それでは、振動測定器を選ぶ際にどのような点を見た方が良いのか解説していきます。
現場全体の振動を計測できること
広い建設現場では、さまざまな作業が同時進行しています。
振動測定器が一つだけでは、現場全体の振動が把握できない可能性があります。
振動状況は「点」で把握するのではなく、現場を「面」としてとらえ、全体の影響を知ることが大切です。振動測定器は複数設置することが望ましいでしょう。
何の振動か特定できること
振動原因になる可能性が高い建設機械トップ3は、
- バックホウ
- ブレーカ
- 圧砕機
といわれています。しかし、地盤の状況や走行速度などによって振動の大きさは変わります。
過度な振動を発生させないようにするためには、何が、どのような作業でどれくらいの振動を発生させているか知る必要があるでしょう。
また、「振動に対する苦情を受けたものの、実は付近を走る鉄道の振動だった」というケースもあります。周波数などから振動を発するモノが特定できると良いでしょう。
リアルタイムで振動の計測結果がわかること
振動の程度は作業内容によって常に変化しています。
振動を発生させやすい建設機械が複数同時稼働しているときなどは特に注意が必要ですが、現場で作業しているとそこまで気を付けることは困難です。
そのため、一時的に大きな振動が発生したときは、すぐにアラートが発せられ、工事を中断できる仕組みがあると良いでしょう。
苦情を受ける前に振動への対策を迅速に行うことが大切です。
振動の計測結果がすぐに説明できること
上述の通り、振動公害は受けた人の主観的な部分が大きく、規制基準値以下の振動でも苦情を受けることがあります。また、「我慢できない」「煩わしい」「怖い」など、振動被害への表現も人によって異なり、想定以上の大事(おおごと)になってしまうことも少なくありません。
そのため、苦情を受けた際にその瞬間の振動がどの程度であったかすぐに説明できることが重要です。一日を通じて規制基準値以下を順守していることが伝えられれば、近隣住民の安心感にもつながるでしょう。
振動計測器の価格相場
振動計測器はどれだけクオリティを求めるかによりますが、相場的には6〜7万円程度です。
安定した振動測定や、細かく振動測定をしたいなら相場以上の予算を考えた方が良いですし、もっと簡易的で良いと思った場合はもう少し安い振動計測器を探しても良いでしょう。
ただし、クレーム防止や振動対策を慎重に考えている企業の場合は、値段より機能や使いやすさを重視するのがおすすめです。
おすすめの振動計測器5選を比較!
建設現場の振動を測定するためには、振動測定器を設置します。
最近ではさまざまな振動測定器が各メーカーで開発されており、現場に合ったものが選べるようになりました。
ここでは、おすすめの振動測定器を5つ紹介します。
①揺れウォッチャー
CACH(カック)株式会社の揺れウォッチャーは、タテ75mm×ヨコ75mm×高さ35mm、重量約600gと、手のひらサイズのコンパクトな外見が特徴です。
電池駆動なので電源が必要なく、どこにでも置くことができ、マグネット式で柱などにも取り付けることも可能です。
揺れウォッチャーは多点測定が基本となっており、現場の広さに応じて複数の筐体を設置します。それぞれの筐体が振動を測定するため、「いつ」「どこで」「何が」振動を発生させているのか特定できます。
また、振動の分析は筐体内で自動で行われ、測定結果はスマホなどからリアルタイムで確認可能です。データの見やすさにもこだわり、振動レベルの色分けや現場写真や図面を重ね合わせた表示ができるので、各所の振動値が一目でわかります。
一定の振動値を超えた場合には、振動源に近い重機オペレーターへアラートメールを送ることもできるため、苦情につながりかねない振動のみにピンポイントで対策できます。
周波数データを蓄積していくことで、建設機械や作業を特定することもでき、振動減の特定にも役立ちます。
「置くだけで振動対策完了」は現場にとってはとても嬉しいですね。
②振動レベル計 VM-53/VM-53A
引用:SOOKI
音響・振動の老舗企業・リオン株式会社が開発・販売する振動計測器です。
振動公害の原因となる地盤振動の測定を、人体の振動感覚特性で補正した振動レベルとして測定することができます。
VM-53は、3方向振動ピックアップと表示部本体で構成され、両者がコードでつながった状態で使用します。電源には単2形乾電池またはACアダプタ(オプション)を使います。
表示部本体には液晶画面が2つあり、大きい画面に瞬時値を、小さい画面にレベルタイムやバーグラフメニュー画面などが表示されるため、振動の状況が一目でわかるようになっています。
また、オートストア機能やタイマ機能を内蔵し、測定データを内部メモリやメモリカード(CFカード)にストアすることで、長時間自動測定を可能にしています。
振動データをデータ管理ソフトでパソコン上に表示すれば、編集・演算・日報作成・印刷などを行うことができ、多様な業務に対応することが可能です。
延長コードやより細かな分析ができる1/3オクターブ実時間分析プログラムカードなどオプションも多く用意されており、現場に応じてカスタマイズすることもできます。
③騒音・振動表示装置 SVP-208
引用:SOTEC
株式会社ソーテックの騒音・振動表示装置 SVP-208は、従来の振動対策に「周辺地域との融和促進」を加えた、シンプルながら現場に嬉しいデジタル表示器です。
小型・軽量で設置が簡単なので、工事の期間中ずっと屋外に設置しておくことが可能です。
内部には計量法の検定に合格した普通騒音計・振動レベル計を使用しているため、常時、正確な騒音・振動レベルを表示することができます。
騒音なら50~100dB(A)、振動なら30~80dB(VL)を表示可能です。
騒音・振動のレベルがあらかじめ設定した規制値を超えると回転灯が回る(騒音:赤、振動:緑)ので、現場のスタッフへのアラートにもなるのも嬉しいですね。
収集したデータを管理ソフトでプリントしたいなら、測定データが保存されるSVD210やSVD310もおすすめです。「振動への苦情を減らすために、まず地域へのPRを」という考えは、円滑な工事進行の基本ともいえそうです。
④騒音・振動モニター・きんりんくん
引用:ACO
株式会社アコーの騒音・振動モニター・きんりんくんは、「工事現場における騒音、振動の”見張り係”と”広報係”の1台2役」がコンセプトで、検定に合格した騒音計・振動レベル計を搭載し、10分ごとの騒音・振動データを記録しています。
データは専用アプリで簡単に表示でき、エクセルなどでグラフ表示・リスト表示したり、印刷することが可能です。見る人・使う人のわかりやすさを重視した仕様になっているのが嬉しいですね。
モニター部分には視認しやすい大型LEDを搭載し、近隣住民へのPRにも大いに役立ちます。
電源プラグをコンセントに挿したらすぐに測定が開始できるので、安全で地域にやさしい建設工事をアピールするためには最適ですね。
⑤騒音振動計測システム rexse SVモニタリング
引用:rexse
株式会社レックスのrexse SVモニタリングは、騒音や振動、低周波音を複数箇所で自動測定し、測定結果を集中管理するシステムです。
遠隔地の現場の状況をパソコンでリアルタイムに管理できるので、管理に携わる人件費削減に役立ちます。
測定器は、騒音計、振動計を合わせて最大8台まで接続できるため、広い現場や複数の現場を一括管理したい事業者には最適です。
表示・印刷専用ソフトでは、月次集計データや一覧表、グラフの作成ができるため、用途に応じてデータを集計することができます。
また、測定器が設置してある現場では騒音・振動レベルが常にモニターで確認できるようになっており、規定値を超えると回転灯が点灯します。
事務所で異常感知できるだけでなく現場の作業者への注意喚起や近隣住民へのPRにもつながります。
まずは簡単で便利な振動計測器を導入してみよう
多くの建設事業者を悩ませている振動対策。
実態がつかみにくいこともあり、振動公害に対する感じ方も人ぞれぞれであることから、現場で発生する振動を完全にコントロールするのは困難のように感じます。
しかし、振動対策の基本は、近隣住民への思いやりと誠意のある現場づくりといえます。
そのためには、現場の状況をしっかりと把握し、今できる最善の方法を採用していくほかありません。
振動測定器に関しては、現場のことを考えた製品が次々と登場しています。
自社の現場に合った製品を選び、振動対策を万全にしましょう。