facebook

【2025】サイバーリスク管理とは?その流れや実現に向けて抱えやすい課題

近年、サイバー攻撃はますます巧妙化し、製造業はサプライチェーンを介した攻撃の標的となっています。

特にランサムウェア攻撃は、企業の生産活動を停止させ、多大な損害をもたらす可能性があります。そのため、企業はサプライチェーン全体におけるサイバーリスク管理を強化することが重要です。

サプライチェーンのどこかに脆弱性があれば、そこから攻撃者が侵入し、企業全体のシステムを乗っ取ってしまう可能性があるのです。

今回は、サイバーリスク管理の流れや得られるメリット、サイバーリスク管理を行う際に抱えやすい課題を解説します。

サイバーリスク管理とは

サイバーリスク管理とは、企業の情報システムが抱える様々な危険性を特定し、その重要度を評価した後、適切な対策を講じる一連のプロセスです。

この概念は、サイバーセキュリティ・リスク管理とも呼ばれ、企業全体の総合的なリスク管理における重要な役割を果たしています。

現代社会において企業は、業務の中核を情報技術に依存しているため、サイバー攻撃や従業員の誤操作、自然災害など、様々な脅威に常に晒されています。

これらの脅威は、システムの停止やデータ漏洩などの深刻な事態を引き起こし、企業の収益や評判に大きな損害を与える可能性があります。

サイバーリスク管理の目的は、これらのリスクを完全に無くすことではなく、その影響を最小限に抑えることです。

具体的には、自社のビジネスやIT環境を分析し、最も大きな脅威を特定し、適切なセキュリティ対策を導入します。

サイバーリスク管理の流れ

サイバーリスク管理の流れ

サイバーリスク管理は、以下の4つの流れに分けて行われます。

  1. 潜在的なリスクを特定する
  2. リスクの脅威に優先順位を付ける
  3. リスクに対処するための措置を講じる
  4. リスク評価を実行し定期的に確認する

それぞれの項目を以下で詳しく解説しましょう。

製造業のセキュリティにおける5つの対策方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2025】製造業のセキュリティリスクとは?おさえるべき5つの対策方法やポイント

①潜在的なリスクを特定する

サイバーリスク管理の成功は、リスクの早期発見にかかっています。サイバーセキュリティリスク管理において、最初のステップとなるIT環境の監査は、組織のセキュリティレベルを向上させるための基盤となります。

この監査を通じて、潜在的な脆弱性や脅威を洗い出し、組織が抱えるサイバーリスクを具体的に把握することが可能になるでしょう。

②リスクの脅威に優先順位を付ける

サイバーリスクの脅威は、その性質や対象となるシステムによって、組織への影響度が大きく異なります。

例えば、機密性の高い顧客情報が保存されているデータベースサーバーへの攻撃は、情報漏洩によるブランドイメージの低下や法的リスクだけでなく、業務の中断による直接的な損失をもたらす可能性があります。

一方、従業員のワークステーションに対する攻撃は、個人情報漏洩などのリスクはありますが、業務への影響は限定的であるケースが多いでしょう。

組織は、このような多様なリスクに対して、それぞれ発生する可能性と、もし発生した場合にどれほどの損害をもたらすのかという影響度を慎重に評価する必要があります。

この評価に基づいて、組織にとって最も深刻な脅威を特定し、優先順位付けを行うことで、限られたセキュリティリソースを効果的に配分することができるでしょう。

③リスクに対処するための措置を講じる

優先順位付けリストを作成した上で、組織はそれらのリスクへの対策を講じます。一般的なリスク管理戦略としては、以下のような選択肢があります。

修復 リスクを完全に取り除く
軽減 リスクの影響や発生確率を減らす
移転 リスクを他者に転嫁する
受け入れ 何もしない

④リスク評価を実行し定期的に確認する

組織は、リスク評価を通じて、組織が抱えるリスクを常に把握し、その重要度を評価する必要があります。

また、既存の対策がこれらのリスクに対して十分な効果を発揮しているかを定期的に見直すことで、新たなリスクの発生や既存のリスクの変化に対応し、組織の安定的な運営を確保することができるでしょう。

サイバーリスク管理で得られるメリット

サイバーリスク管理で得られるメリット

サイバーリスク管理は、企業のサイバーセキュリティ対策をより効率的かつ効果的に行うための重要な取り組みです。

この管理体制を確立することで、企業はビジネスに様々なメリットをもたらすことができます。以下で詳しく解説します。

セキュリティ体制を強化できる

サイバーリスク管理は、組織が直面する多種多様なサイバーセキュリティの脅威の中から、最も深刻なリスクを特定し、優先的に対策を講じることで、より効果的なセキュリティ体制を構築することができます。

従来の漫然としたセキュリティ対策ではなく、組織が抱える具体的な脅威を詳細に分析し、そのリスクの大きさを評価するため、限られたリソースを最も効果的に活用し、組織にとって最も重要な資産を保護することが可能です。

サイバーセキュリティの脅威を優先的にリストアップすることで、組織は最大の脅威に最初に対処し、セキュリティ体制をより迅速に改善することができるでしょう。

リスク修復の取り組みに集中できる

サイバーリスク管理によって、企業は自社の資源を最大限に有効活用し、最も大きな損害をもたらす可能性のあるリスクに重点的に対処することができます。

結果として、企業は限られたセキュリティ予算を効果的に運用し、サイバーセキュリティ投資に対する収益率(ROI)を最大化することが可能です。

機密データが保護できる

近年、個人情報保護法をはじめとするデータプライバシー法が厳格化する中、機密データを安全に保護することは、企業にとって一刻を争う課題となっています。

サイバーリスク管理を導入することで、企業は法令遵守だけでなく、自社の資産や顧客の信頼を守ることにも繋がるのです。

サイバーリスク管理で抱えやすい課題

サイバーリスク管理で抱えやすい課題

近年、組織は経営戦略と整合性のあるサイバーリスク管理体制の構築が求められていますが、その実現に向けては多くの組織が共通の課題を抱えています。

以下では、そうした課題を具体的に説明します。

経営側と現場で目的のズレが生じる

サイバーリスク管理は、IT資産の管理やセキュリティ対策の構築などの技術的な側面だけでなく、企業の事業継続に直結する経営課題として捉える必要があります。

ITインフラや端末のセキュリティ対策は、あくまでもリスク回避や軽減のための手段であり、それ自体が目的化されてしまうと、事業リスク低減という本質的な目的を見失いがちです。

経営層は、自社の事業リスク低減にとって優先度の高いリスクシナリオと、投資すべきセキュリティ領域はどこかという問いに対して明確な答えを持つ必要があるでしょう。

近年注目されているアタックサーフェスリスクマネジメント(ASRM)は、組織全体のサイバー脅威に対する攻撃対象領域を可視化し、多角的な知識を用いてリスクを分析する手法です。

ASRMは、リスクスコアリングとビジネスへの影響度を紐づけることで、優先的にリスクコントロールを施すべき箇所を判断することができるでしょう。

IT・OT環境のサイバーリスクを把握していない

事業を継続し発展させるためには、サイバーリスクを単なる脅威として捉えるのではなく、ビジネスリスクの一環として捉え、組織全体で管理することが重要です。

サイバーリスクは、サイバー攻撃のような脅威と組織が抱える脆弱性が組み合わさることで発生します。そのため、組織の規模や事業内容、IT環境により、その内容は多岐にわたります。

例えば、国内外の企業買収や新規事業の拡大に伴い、サイバーリスクの定義は常に変化し、IT環境だけでなく、OT環境においても異なるリスクが存在します。

組織が抱える多様なサイバーリスクを効果的に管理するためには、個々の脅威だけでなく、組織全体のリスクシナリオを把握し、その影響度に基づいて対策を優先順位付けすることが重要なのです。

リスク管理のフレームワークである「3つのラインモデル」をサイバーリスク管理に適用することで、組織全体のサイバーリスクをより効果的に管理することができるでしょう。

1線 事業部門(リスクオーナー) 部門のリスクを特定、分析、評価し、コントロールする
2線 リスクマネジメント部門 リスク管理フレームワークの設計、リスク測定、報告を行う
3線 内部監査部門 リスク管理の有効性を評価し、改善を促す

国内外でセキュリティレベルのギャップが生じる

サイバーリスク管理は、特に、国内外の事業会社や関係会社を擁するグローバル企業においては、その複雑さが増します。

事業規模や地域により、セキュリティに投じられるリソースや従業員のセキュリティ意識には大きな差が生じるためです。

このセキュリティレベルのギャップは、組織全体の脆弱性を高め、深刻な事業被害に繋がるリスクがあります。

例えば、ビジネスメール詐欺では、海外拠点が商習慣の違いから送金プロセスに甘さがあり、結果的に多額の損失を招いた事例が報告されています。

組織全体で共通のガイドラインや従業員研修を実施することは重要ですが、地域ごとの特性やセキュリティレベルの差を完全に解消することは容易ではありません。

画一的なアプローチではなく、各地域の状況に合わせた柔軟な対応が求められるでしょう。

共通のガイドラインに基づきつつ、各地域の状況に合わせた柔軟な対応を行い、技術的な対策と人材育成を組み合わせることで、より強固なセキュリティ体制を構築することができるでしょう。

サイバー攻撃から消費者や企業を守る欧州連合の新しい法律「欧州サイバーレジリエンス法」については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2025】欧州サイバーレジリエンス法とは?日本企業への影響や求められる対策

サイバーリスク管理の人材育成ならProSkilll

CAD・CAM・CAE人材育成サービス

組織のセキュリティレベルを維持・向上させるためには、高度なスキルを持つサイバーリスク管理人材の育成が欠かせません。

ProSkilllのCAD人材育成サービスでは、貴社のニーズに合わせたサイバーリスク管理における最適な教育プログラムを提供することで、この課題解決を支援します。

実際の業務に即した演習やシミュレーションを取り入れることで、実践的なスキルを習得できるでしょう。

時間や場所の制約なく学習できるeラーニングを貴社用にカスタマイズして提供することも可能です。

まずはお気軽にご相談ください。貴社の課題解決をサポートいたします。

サイバーリスク管理で組織のセキュリティを強化しよう

今回は、サイバーリスク管理の流れや得られるメリット、サイバーリスク管理を行う際に抱えやすい課題を解説しました。

サイバーリスクは、もはや技術的な問題にとどまらず、企業経営の最重要課題へと進化しています。

特に海外では、企業の信用力評価の基準にサイバーセキュリティ対策が組み込まれ始めており、日本企業も例外ではありません。

組織全体でサイバーリスクに対する共通認識を醸成するためには、定期的な情報共有と意識啓発が重要です。

サイバーリスクに対する感性を磨くことで、組織はより効果的にセキュリティ対策を強化し、ビジネスの継続性を確保することができるでしょう。

サイバーリスク管理とは?その流れや実現に向けて抱えやすい課題
最新情報をチェックしよう!