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【2024】OTセキュリティとは?ITセキュリティとの違いや導入を成功させるためのポイント

近年、工場のスマート化が進み、製造業におけるサイバー攻撃のリスクがかつてないほど高まっています。産業用モノのインターネットの普及により、工場内だけでなく、複数の拠点間、企業間、サプライチェーン全体でシステムが連携するスマートファクトリーが実現しつつあります。このような高度に接続された環境においては、従来のITシステムとは異なる、OTセキュリティ対策が不可欠です。

今回は、OTセキュリティの概要やITセキュリティとの違い、OTセキュリティを講じるメリット、導入を成功させるためのポイントを具体的に解説します。

OTセキュリティとは

OT(Operational Technology)は​​、物理的なプロセスを制御するシステムであり、製造業やインフラなど、私たちの生活を支える様々な産業で利用されています。従来、OTシステムはインターネットから隔離され、サイバー攻撃の脅威にさらされることはありませんでしたが、デジタル化の進展に伴い、ITとOTが融合し、OTシステムもサイバー攻撃の標的となるようになりました。

OTシステムは、物理的なプロセスを直接制御するため、サイバー攻撃が引き起こす影響はより深刻になり得ます。ITとOTの融合で産業システムの効率化が図られる一方で、新たなセキュリティリスクも生まれています。そのため、OTセキュリティは、安全かつ安定したシステム運用を実現するために不可欠となっています。

OTセキュリティとITセキュリティの違い

ITシステムは、多様な用途を想定し設計された汎用性の高いシステムです。一方、OTシステムは、特定の産業用アプリケーションにおける自動化を目的とした専門的なシステムです。この両者の設計目的の違いから、それぞれのセキュリティ対策には大きな隔たりが生じています。

OTシステム ITシステム
目的 専門的な業務の自動化 情報の管理や共有、業務効率化
ライフサイクル 数十年 4~6年

特に顕著な違いは、システムのライフサイクルの長さです。ITシステムは、技術革新のスピードに合わせた比較的短いサイクルで更新されることが一般的です。しかし、OTシステムは、数十年にわたって運用されるケースも珍しくなく、古いインフラやパッチが適用できない機器が数多く存在しており、OTセキュリティ対策の難易度を引き上げています。

また、OTシステムの中には規制当局による厳しい規制が課せられているものもあり、医療機器メーカーは、導入から20年間のサポートを義務付けられるなど、長期間にわたるセキュリティ対策が求められます。そのため多くの場合、事業部門によって管理されており、IT部門の関与が低いという特徴があります。そのため、OTシステムのセキュリティ対策に対して十分な権限や責任を持っていないケースが少なくありません。

両システムの特性を理解し、それぞれの課題に合わせた適切な対策を講じることで、より安全なシステムを構築することが可能になるでしょう。

OTセキュリティを講じるメリット

OTセキュリティを講じるメリット

OTセキュリティ対策を適切に行うことで、以下のようなメリットが得られます。

  • 現場のセキュリティリスクを早期検知できる
  • 適切なアクセス権限の付与ができる
  • 継続的にセキュリティ管理が改善でき

それぞれを具体的に解説しましょう。

現場のセキュリティリスクを早期検知できる

OTセキュリティ対策を導入することで、現場におけるサイバーセキュリティ状況をリアルタイムで把握できるようになります。具体的には、ネットワーク上に存在するOT機器を一元的に管理し、セキュリティ状況を可視化することで、潜在的なリスクや脆弱性を早期に発見し、的確な対策を講じることが可能です。

製造業のセキュリティリスクについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】製造業のセキュリティリスクとは?おさえるべき5つの対策方法やポイント

適切なアクセス権限の付与ができる

OTシステムのセキュリティ対策において、アクセス権限の適切な管理は欠かせない要素です。システムの根幹に関わる設定変更などの重要な操作は、管理者などの権限を持つ限られたユーザーにのみ許可されるべきです。適切なOTセキュリティ対策を導入することで、アクセス権限を細かく設定し、不正なアクセスを未然に防ぐことが可能になります。

これにより、システムへの不正侵入によるデータ漏洩やシステム障害のリスクを大幅に軽減することができるでしょう。

継続的にセキュリティ管理が改善できる

OTセキュリティの仕組みが適切に導入されていれば、セキュリティ管理が継続的に改善されることが期待できます。セキュリティ管理は、システムのユーザーがどのような操作を行ったか、どのようなアクセスを試みたかなどのログを収集します。

これらのデータを分析することで、セキュリティの脅威となりうるパターンを特定した具体的な対策を講じることができます。例えば、ある特定のユーザーが頻繁にアクセス制限エリアにアクセスしようとしていることが判明した場合、そのユーザーの権限を見直したり、アクセスログをより詳細に監視したりといった対策が考えられるでしょう。

効果的な​​OTセキュリティ対策の具体的なステップ

効果的な​​OTセキュリティ対策の具体的なステップ

OTセキュリティ対策は、ITシステムのセキュリティ対策とは異なる側面も多いため、体系的なアプローチが重要です。以下では、効果的なOTセキュリティ対策の具体的なステップを段階的に解説します。

①現状を把握する

まず最初に行うべきは、システムの現状を詳細に調査し、潜在的なセキュリティリスクを洗い出すことです。現状調査を行わないままセキュリティ対策を進めてしまうと、資産台帳に未登録の端末が発見されたり、IT部門が把握していないソフトウェアが勝手にインストールされていたりするなど、思わぬ脆弱性が明らかになることがあります。

このような脆弱性は、サイバー攻撃の格好の標的となり、機器の停止や誤動作、工場全体の操業停止などの深刻な事態を引き起こす可能性があります。現状調査の結果得られた情報を、工場セキュリティガイドラインや国際的なセキュリティ標準に基づいて評価することで、どのようなセキュリティ対策が必要なのかを客観的に判断できるようになります。

これにより、OT部門の責任者や経営層に対して、具体的な対策の必要性を説明し、理解を得るための根拠を示すことも可能です。

②OTシステム全体の可用性を維持する

STEP1でOTシステムの現状を把握し、潜在的なリスクを特定したら、次に進めるべきは具体的なセキュリティ対策の実施です。このステップの目的は、万が一サイバー攻撃が発生した場合に、その影響範囲を限定し、OTシステム全体の可用性を維持することです。

まず、OT環境内のネットワークをさらに細かく分割します。外部からの脅威がOT環境の中心部にまで到達する経路を最小限に抑えるためです。次に、分割されたネットワーク間での通信を厳しく管理し、必要な通信のみを許可するアクセス制御を導入します。これにより、不正なアクセスを未然に防ぎ、攻撃者がシステム内で横展開することを困難にします。

さらに、リモートアクセスはセキュリティリスクが高いため、必要最低限に限定することが重要です。また、アクセス履歴をしっかりと保存することで、万が一問題が発生した場合に、原因究明や責任追及の際に役立てることができます。

これらの対策に加え、OT環境に特化した不正侵入検知システムを導入することで、より高度な脅威に対処することができるでしょう。

③対応できるよう体制を構築しておく

STEP2までの対策を施した上で、サイバー攻撃が発生した場合に備え、迅速かつ適切に対応できる体制を構築することが不可欠です。STEP3では、OTシステムを24時間365日監視し、異常な挙動や不正なアクセスを早期に検知する仕組みを導入します。

モニタリングには、高度な専門知識と豊富な経験が必要となり、企業内だけで対応が難しいケースも多く見られます。そのため、外部のセキュリティ専門企業に委託し、専門的な知見とツールを活用して、より強固なセキュリティ体制を構築することが一般的です。

モニタリングによってサイバー攻撃を早期に検知し、迅速に対処することで、OTシステムの停止やデータ漏洩などの深刻な事態を未然に防ぎ、生産活動の継続性を確保することができるでしょう。リアルタイムでの対応だけでなく、モニタリング結果を定期的に分析し、得られた知見を活かして、より効果的なセキュリティ対策を講じることも重要です。

サイバー攻撃などから身を守るサイバーレジリエンスについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】サイバーレジリエンスとは?その必要性や得られるメリット・高める方法を解説

​​OTセキュリティ対策を成功させるためのポイント

​​OTセキュリティ対策を成功させるためのポイント

ここでは、OTセキュリティ対策を成功させるためのポイントについて詳しく解説していきます。

優先度を理解する

OTセキュリティは情報漏洩を防ぐだけでなく、生産活動の継続性と製品の品質を確保することを最優先目標としています。そのため、「安全性」「設備の継続的な稼働」「品質」という3つの要素が、セキュリティ対策における優先順位のトップに位置づけられます。

これらの優先事項を踏まえ、OTシステムでは、まず、セキュリティ対策によってこれらの要素にどのようなリスクが及ぶ可能性があるのかを分析する必要があります。リスク分析に基づいて、具体的なセキュリティ対策のルールを策定し、運用していくことが重要です。

OTセキュリティは製造現場の特殊な環境や要求に合わせた、よりきめ細やかな対策を講じることが求められるのです。

​​現場の担当者が理解しやすいルールを作る

OTセキュリティ対策は、製造現場の担当者が日々の業務の中で行っていくものです。そのため、生産活動に支障をきたすことなく、スムーズに運用できることが重要です。

セキュリティ対策の運用を円滑に進めるためには、現場担当者の負担を軽減できるようなルールを策定し、同時に、セキュリティ対策の重要性を深く理解してもらうための取り組みが不可欠です。

OTセキュリティツールの失敗しない選び方

自社でOTセキュリティの仕組みを構築することは、専門知識やリソースが不足している企業にとってはハードルが高いのが現状です。そこで、多くの企業が、OTセキュリティ管理ツールを提供するベンダーに目を向けることになります。

しかし、数多くのベンダーが存在する中で、自社のニーズに合った最適なツールを選ぶことは容易ではありません。以下では、OTセキュリティツールを導入する際の失敗しない選び方について解説します。

自社のセキュリティ基準に合うかどうか

OTセキュリティ製品の選定は、企業の生産性と安全性を直接的に左右する重要な決断です。単に自社のセキュリティ基準に合致するだけでなく、多角的な視点から製品を評価し、長期的な視点で導入を検討することが求められます。

導入実績が多いか

OTセキュリティツールを選ぶ際には、導入実績の多さが重要な判断材料となります。導入実績の多さは、その製品の品質の高さを示すだけでなく、多くのユーザーから支持されていることの証でもあります。多くの企業が導入しているということは、それだけ多くの種類のシステムや環境に対応してきた実績があるということでもあるのです。

多くのユーザーを抱えているベンダーは、豊富なサポート経験とノウハウを蓄積している可能性が高く、導入後のトラブル発生時にも迅速かつ的確な対応が期待できるでしょう。

予算にあった価格帯で提供可能かどうか

OTセキュリティ対策の導入を検討する際は、導入コストも重要です。多くの企業において、セキュリティ対策に充てられる予算は限られているため、限られた予算内で、最適なセキュリティ対策を実現できるベンダーを選定することが求められるでしょう。

ベンダーの選定においては、初期費用だけでなく、導入後のサポートや保守費用などのランニングコストも考慮することが重要です。初期費用が安くても、ランニングコストが高額な場合、中長期的な視点で見ると、全体の費用が大きくなってしまう可能性があります。

初期費用とランニング費用の両方を比較し、自社の予算と中長期的な計画に合ったOTセキュリティツールを選択することが重要です。

OTセキュリティ対策の重要性が増している

今回は、OTセキュリティの概要やITセキュリティとの違い、OTセキュリティを講じるメリット、導入を成功させるためのポイントを解説しました。これまで、OT環境は、外部のネットワークから隔離された閉じた環境で運用されており、サイバー攻撃のリスクは低いと考えられてきました。しかし、近年、スマートファクトリー化が進展し、OT環境もサイバー攻撃の脅威に晒されるようになってきました。

サイバー攻撃の手法はますます巧妙化し、従来の閉じたOT環境にも侵入経路を見つけることが可能となるため、OTセキュリティ対策は、もはや無視できない課題として浮上しています。この機会にOTセキュリティについてより深く理解し、自社のセキュリティ対策に役立てていただければ幸いです。

OTセキュリティとは?ITセキュリティとの違いや導入を成功させるためのポイント
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