「IoT導入は本当に効果があるの？」「IoT導入の費用対効果は？」と思っている方は多いのではないでしょうか。IoTは企業が成長するために欠かせないテクノロジーとなりつつあります。しかし、いざ導入となると、どこから手をつければいいのか、どんな効果が期待できるのか、多くの疑問が湧いてくるものです。
そこで今回は、IoT導入を成功させるためのポイントや製造業におけるIoTのメリット、成功事例、企業がIoT導入を成功させるポイントを解説します。
IoTとは
IoTは「Internet of Things」の略で、直訳すると「モノのインターネット」という意味です。私たちの身の回りにあるIoTデバイスという様々なモノをインターネットに繋ぐことができるものにセンサーなどを埋め込み、インターネットを通じてデータを収集・共有し、モノを遠隔操作することができる技術です。
製造業でIoTを導入するメリット
IoTの導入は、競争力を高めるための必須事項となりつつあります。IoTによって、製造現場は劇的に変化し、以下のようなメリットをもたらします。
- リアルタイムで柔軟に対応できる
- 生産管理を自動化できる
- 機械設備の状態がわかりやすくなる
- 技術やノウハウを数値化できる
- 作業を最適化することができる
- トラブルの予兆を早期に発見できる
以下で、製造業におけるIoT導入がもたらす具体的なメリットを詳しく解説します。
リアルタイムで柔軟に対応できる
IoTによって工場間の壁を取り払い、柔軟な生産体制を構築できます。例えば、A工場で生産ラインが停止してもB工場やC工場が即座にその分を担うことで、お客様への納期遅延を防ぐことができます。さらに、IoTを活用して各工場の生産データをリアルタイムに共有することで、需要の急激な増加にも柔軟に対応可能です。
また、繁忙期には複数の工場が協力し、効率的に大量生産を実現することができるでしょう。
生産管理を自動化できる
従来、製造業の生産管理は、過去の生産実績やラインの稼働率などのデータを基に、人手で計画を立てていました。そのため、時間と手間がかかり、計画の精度にも影響を与えていました。
IoTを製造機械に導入することで、生産現場の様々なデータをリアルタイムで収集し、自動的に分析することが可能になります。これにより、以下のようなメリットが得られます。
- より精度の高い生産計画を立てることができる
- 計画立案にかかる時間を大幅に短縮できる
- 迅速な意思決定が可能になる
- 生産効率を向上させることができる
機械設備の状態がわかりやすくなる
IoTを導入して、機械設備の温度や作動音、エラー発生状況、動作速度、負荷などのデータをリアルタイムで収集することで、これまで見えなかった設備の細かな状態を可視化できます。そのため、異常を早期に検知し、不良品の発生や作業員の事故などのトラブルを未然に防ぐことが可能になります。
また、設備の状態を常に把握できるため、計画的なメンテナンスの実施が可能となり、予期せぬ故障による生産停止のリスクを大幅に軽減できるのです。
技術やノウハウを数値化できる
従業員の作業データや製品検査結果を詳細に分析することで、高度な技術を持つ熟練工と、まだ経験が浅い従業員のスキルを数値化することができます。数値データを基に熟練工の動作や判断をモデル化して産業ロボットに組み込むことで、高度な技術をロボットに継承することが可能になります。
人材不足の解消だけでなく、製品品質の安定化や生産性の向上も期待できるでしょう。
作業を最適化することができる
従来、業務の改善は現場の経験や勘に基づいた主観的な判断で進められることが多く、その効果にはばらつきがありました。しかし、IoTの導入により、現場のあらゆるデータをリアルタイムで収集し、可視化することで、客観的に問題点を洗い出すことができます。
その結果、企業は主観に頼るのではなく、データに基づいた効果的なアプローチで業務改善を進めることができるようになりました。データで定量的に評価することで、PDCAサイクルを迅速に回すことができ、より効率的な改善活動を実現することができます。
トラブルの予兆を早期に発見できる
IoT技術の活用で、製造現場の様々なデータをリアルタイムに収集・分析することができるため、設備の稼働状況や生産ラインを常時モニタリングし、異常発生の兆候を早期に検知することが可能となります。
例えば、センサーで取得した振動データや温度データから、機械の摩耗や過熱などの異常をいち早く察知できます。また、生産ラインのセンサーデータを分析することで、製品不良につながる可能性のある異常を事前に検出し、品質の安定化を図ることができます。このような早期検知により、生産ラインの停止や製品不良などの深刻なトラブルを未然に防ぎ、生産効率の向上と品質の安定化につなげることが可能です。
製造業のIoT導入成功事例
製造業では、IoTの導入が急速に進み、多くの企業が生産性向上や新たな価値創造を実現しています。以下では、製造業におけるIoT導入の成功事例をご紹介します。
製造業のIoT化の導入事例については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
24時間365日稼働
ある企業ではプラスチック成形機のIoT化により、各成形機の稼働状況を場所を選ばずにいつでも確認できるようになりました。そのため、夜間や休日など人員が少なく、トラブルが発生した場合でも、状況をリアルタイムで把握し、迅速に対応できるようになったのです。
従来は、成形機のトラブル発生に気付くのが遅れ、生産の遅延や製品の品質低下につながるケースが少なくありませんでしたが、IoT化で成形機の24時間365日稼働を実現することができたのです。
生産設備の状況を見える化
自動車エンジンの生産設備を行う企業では、信号にセンサーを付けることで、各設備の「稼働中」や「停止中」などの状態をリアルタイムでデータ化し、社内サーバーに蓄積するシステムを構築しました。その結果、パソコン上で生産設備の稼働状況を可視化することが可能になり、生産管理者は現場の作業をより詳細に把握できるようになりました。
従来は、生産管理者が現場を巡回して各設備の状態を目視で確認していたため、作業に時間がかかり、人によるミスが発生する可能性も否定できませんでした。しかし、IoT導入によって、生産管理者はいつでもどこでも設備の稼働状況を確認できるようになったようです。
夜間の稼働状況を監視
ある金属熱処理事業では、新しく導入した熱処理炉と既設炉をIoT化して構築しました。そのため、スマートフォンでいつでもどこでも熱処理炉の稼働状況をリアルタイムで確認できるようになりました。
従来、熱処理炉の稼働確認には夜間や休日でも工場へ出向く必要がありましたが、IoT化により、遠隔地からでも炉内の温度や圧力などの状況を把握できるため、業務効率が大幅に向上し、従業員の負担軽減にも繋がっています。
さらに、収集された膨大なデータは、熱処理の温度調整などの実績として蓄積され、データを分析することで、これまで経験と勘に頼っていた熱処理プロセスは、新たなノウハウの創出に繋がり、高度な熱処理を行うことが期待されています。
IoTで稼働を遠隔監視
プリンター機器と専用インクの開発を行うある企業は、IT企業との連携により、プリンターの稼働をIoTで遠隔監視できるようになりました。インク残量やプリンターの稼働状況、利用状況を遠隔から詳細に把握できるようになったのです。
その結果、顧客訪問することなく、きめ細やかなサポートが可能となり、迅速かつ効率的なサービス提供が可能となりました。また、可食プリンターの利用状況をデータ収集できるようになったことで、製品の品質向上に繋がっているようです。
企業がIoT導入を成功させるポイント
IoT導入は、企業の生産性向上や新たなビジネスモデル創出など、多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。では、どのようにIoT導入を推進すれば、期待通りの成果を上げることができるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
IoT導入にとらわれすぎない
IoTは、課題解決のためのツールキットの一つに過ぎません。まずは、自社の抱える課題を明確にし、その解決に最も適した手段を選ぶことが重要です。
システム導入ありきでプロジェクトを進めるのではなく、課題解決を最優先に、IoTの活用を検討すべきです。
業務とシステムを同時並行的に検討する
業務側の検討が完全に終わってからシステムの検討を開始するのではなく、業務の仮説やあるべき姿が固まった段階から、業務と並行してシステムの検討を進めていくことをおすすめします。
IoT導入で良い成果を生み出すのは、システムそのものではなく、システム導入によって変化した業務です。そのため、業務の目指す姿や現状の業務における制約条件を明確にすることが、成功への第一歩となります。
業務とシステムの検討を同時に行い、お互いの検討状況に合わせて調整を繰り返しながら、最終的なシステムの姿を決めていくことが重要です。
PoCで費用対効果を測る
IoTの導入を検討する際、PoC（Proof of Concept）の実施は不可欠です。PoCとは、直訳すると「概念実証」という意味があり、IoTシステムの導入前に実現可能性や効果を実験を通して検証することです。
SaaSの無料トライアルで、実際にサービスを体験し、自社の業務に合うかを確認するようなイメージです。IoT導入は大きなコストがかかるため、PoCにより事前にその効果を測ることで、投資対効果を最大化することが重要です。
関係者を巻き込む
IoTは現場の業務そのものを大きく変える可能性を秘めているため、現場で働く人々の理解と協力なしには、成功には繋がらないでしょう。そのため、現場の意見を聞き彼らが変化を受け入れ、積極的に取り組めるような環境づくりが不可欠です。
経営層と現場のリーダーが、IoT化の必要性を深く理解し、従業員一人ひとりを巻き込むための具体的な施策を打ち出すことができれば、プロジェクトは大きく前進します。しかし、現場が変化を拒み、抵抗勢力となってしまうような状況に陥ってしまった場合は、プロジェクト自体を中止することも一つの選択肢として検討すべきです。無理に進めても、かえって組織全体の士気を下げてしまう可能性があるためです。
IoT導入の成功は、技術的な側面だけでなく、人材の育成や組織文化の変革などの広範な視点での取り組みが求められるのです。
いきなり完璧を求めない
IoT導入において、いきなり完璧なシステムを目指してしまうと、変更が必要な範囲が大きくなり、結果的にコストが増大し、導入期間が長期化してしまう恐れがあります。IoT導入を成功させるためには、段階的なアプローチが有効なのです。
まず、将来の理想像を明確に描きながら、初期段階ではシステムの中核となる部分に焦点を当て、シンプルな形でスタートすることが重要です。その後、段階的に機能を拡張していくことで、システム全体を複雑化することなく、柔軟に対応することができるでしょう。
特に、IoTはハードウェアに機能が搭載されていれば、ソフトウェアのアップデートによって機能拡張が比較的容易に行えるケースが多いため、最初のハードウェア選定が重要となります。
IoTならではの課題を解決する
IoT導入にはIoT特有のデータやネットワーク、ハードウェアなど、多くの課題が存在します。これらの課題は、従来のITシステムとは異なる特性を持つため、専門的な知識と経験が求められます。
特に、重要となるIoT人材の不足は、簡単には解決できる問題ではありません。そのため、自社の社員が実践的なスキルを習得し、ゆくゆくは社内にIoT人材を育成していくという計画が、現実的なアプローチと言えるでしょう。以下のような人材育成サービスを活用するのがおすすめです。
デジタル人材の育成については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
CAD・CAM・CAE人材育成サービス
CROSS TECHのCAD・CAM・CAE人材育成サービスは、御社の業務内容や育成したいCAD人材をヒアリングした上で、短期的なプランから中長期的なプランまで、御社に合ったCAD・CAM・CAEの人材育成プランをご提案するサービスです。
内容のカスタマイズや自社用eラーニングシステムの構築、レベルチェックテストの課題など御社に最適な最適な教育プログラムを構築することが可能なため、企業側が求めるCAD・CAM・CAE人材が育成されるのが強みです。ヒアリングからサービス実施までの3つのステップは以下の通りです。
| ヒアリングとご提案 | 弊社担当が御社の現状をヒアリングさせていただいた内容を基に、課題解決に向けた必要なプランをご提案。 |
| 内容の決定 | ご提案内容を基に、ご納得いただくまでカリキュラムや研修後のフォローについてお打ち合わせ。 |
| 実施・検証・報告 | 研修実施後に、ご質問や理解度などを記載した実施報告書をご提出。今後のプロジェクト計画や人材教育にご活用可能です。 |
IoT導入を成功させて生産性を高めよう！
今回は、IoT導入を成功させるためのポイントや製造業におけるIoTのメリット、成功事例、企業がIoT導入を成功させるポイントを解説しました。IoTは、製造業が抱える様々な問題や課題を解決する革新的なデジタル技術として注目されています。
日本においても多くの製造業でIoT導入が進み、数多くの成功事例が生まれています。しかし、IoT導入には、初期投資費用や収集したデータを有効活用するためのノウハウなどの課題も同時に存在します。
そのため、IoTを導入する際には、自社の抱える具体的な問題点を明確にし、IoTによってどのような課題を解決したいのかをしっかりと検討することが重要です。IoTは万能なツールではないため、自社の状況に合わせた最適な導入計画を立てることが成功の鍵と言えるでしょう。
