facebook

【2025】欧州サイバーレジリエンス法とは?日本企業への影響や求められる対策

近年、欧州ではIoT機器のサイバーセキュリティ強化に向けた法規制が行われており、特に欧州サイバーレジリエンス法は、日本の製造業に大きな影響を与えているため、製品開発の初期段階からセキュリティを考慮した体制を構築し、継続的な改善に取り組むことが重要です。チェックリストによる分析と実機に対するセキュリティテストを組み合わせることで、より確実な製品のセキュリティ確保が可能になるでしょう。

そこで今回は、欧州サイバーレジリエンス法の概要や日本への影響、求められる対策を詳しく解説します。

欧州サイバーレジリエンス法とは

欧州サイバーレジリエンス法とは

欧州サイバーレジリエンス法とは、サイバー攻撃から消費者や企業を守ることで、デジタル市場の健全な発展を促すことを目的とした、欧州連合の新しい法律です。この法律は、スマートフォンやパソコンだけでなく、IoT機器など、デジタル要素を含むあらゆる製品の製造事業者を対象としています。

サイバー攻撃の一種であるランサムウェアについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】ランサムウェアに感染したらどうなる?対処法や身を守るための対策方法を詳しく解説

欧州サイバーレジリエンス法の内容

欧州サイバーレジリエンス法は、IoTデバイスやクラウドサービスなど、デジタル化が進む現代社会において広く利用される製品やサービスに適用されます。この法律では、これらの製品やサービスが備えるべきセキュリティ水準を具体的に定めており、下記のようなサイバーセキュリティが求められています。

セキュリティ設計 開発段階からセキュリティを最優先事項として設計する
定期的なアップデート 最新の脅威からシステムを保護するために対策を施したアップデートを提供する
脆弱性の報告と対策 発見された脆弱性を関係機関に報告し対策を実施する

欧州サイバーレジリエンス法では、製品やサービスのサイバーセキュリティレベルを客観的に評価するための認証制度が導入されています。この認証を取得することで、製品の信頼性を高め、消費者の安心安全に繋げることが期待されています。また、違反した場合は企業に厳しい罰則が科されるため、企業は法令遵守を徹底し、製品のセキュリティ対策を強化することが求められます。

製造業のセキュリティリスクについては以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】製造業のセキュリティリスクとは?おさえるべき5つの対策方法やポイント

欧州サイバーレジリエンス法の対象となる製品

欧州サイバーレジリエンス法は、非常に広範な製品を対象としており、具体的には、欧州で販売されるすべてのデジタル製品が対象となり、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアやデバイス、ネットワークに接続される製品も対象です。スマートフォンやパソコンなどの一般的な電子機器はもちろん、IoTデバイスや産業用ロボット、自動車に搭載される電子制御ユニットなど、私たちの生活や産業を支える様々な製品が、欧州サイバーレジリエンス法の対象になるでしょう。

欧州サイバーレジリエンス法設立の理由

欧州サイバーレジリエンス法設立の理由

近年、世界的にサイバー攻撃が急増しており、その標的はIoT機器にまで広がっています。IoT機器の普及に伴い、脆弱性を狙った攻撃が増加している一方で、セキュリティに関する更新プログラムの対応が追い付いていないという状況が深刻化しています。

さらに、ユーザーが製品を選ぶ際に、セキュリティの安全性に関する客観的な情報が不足しており、製造事業者の発表情報に頼らざるを得ないという課題も存在していました。このような状況を踏まえ、欧州はサイバーセキュリティ法を施行し、認証制度を導入したのです。この制度では、欧州内でネットワーク製品などの製品を販売する際には、セキュリティの証明書を取得することが義務付けられました。

しかし、デジタル製品のセキュリティや脆弱性への詳細な対応についての規定を設ける必要性が指摘されていたため、欧州サイバーレジリエンス法を設立したのです。

欧州サイバーレジリエンス法 サイバーセキュリティ対策を義務化する法律
欧州サイバーセキュリティ法 セキュリティ基準を統一する枠組み

欧州サイバーレジリエンス法は、欧州サイバーセキュリティ法よりも具体的なセキュリティ基準や脆弱性への対応基準を規定しています。これにより、欧州におけるデジタル製品のセキュリティレベルが大幅に向上し、サイバー攻撃に対するレジリエンスが強化されることが期待されています。

欧州サイバーレジリエンス法における日本への影響

欧州サイバーレジリエンス法は、欧州域内で販売されるデジタル製品に高いセキュリティ基準を要求しており、日本企業にとっても大きな影響をもたらすことが予想されます。以下で、欧州サイバーレジリエンス法における日本への影響を解説します。

国際的なサイバーセキュリティ基準への強化

欧州サイバーレジリエンス法の施行により、日本企業は国際的なサイバーセキュリティ基準に適応することが求められます。特に、欧州市場でビジネスを展開している企業は、自社の製品のセキュリティレベルを再評価し、必要に応じて強化する必要があるでしょう。

ビジネス戦略の改革

欧州サイバーレジリエンス法の施行は、日本企業のビジネス戦略に大きな改革をもたらす可能性があります。従来のビジネスモデルに加え、セキュリティが企業活動の中核的な要素として位置づけられ、製品開発や市場戦略、顧客サービスなど、あらゆる側面に影響を及ぼすことが予想されるためです。

具体的には、製品のセキュリティ機能を大幅に強化し、顧客に対して製品の安全性を担保するための教育を提供することが求められるようになるでしょう。また、セキュリティ対策の強化は、企業の信頼性向上に繋がり、ブランド価値を向上します。

つまり、欧州サイバーレジリエンス法は、企業が競争力を維持し、持続的な成長を実現するための新たなビジネス機会を提供する可能性を秘めていると言えるでしょう。

セキュリティ関連の技術に対する投資の強化

欧州サイバーレジリエンス法の施行に伴い、日本企業はセキュリティ対策の強化を迫られています。同法の基準を満たすためには、セキュリティ対策への投資を強化し、企業のセキュリティ体制を根本から見直す必要があるでしょう。セキュリティ関連への投資は、企業の将来を左右する重要な戦略的決断です。

最新のセキュリティソフトウェアやハードウェアを導入することで、高度化するサイバー攻撃から企業の情報を保護し、ビジネスの継続性を確保することができるでしょう。これらの投資は、初期コストがかかりますが、長期的にはサイバー攻撃のリスクを大幅に軽減し、ビジネスの継続性を確保することができます。

欧州サイバーレジリエンス法の具体的な対策

欧州サイバーレジリエンス法の具体的な対策

欧州サイバーレジリエンス法では、サイバーセキュリティに関する様々な義務が課せられています。以下では、欧州サイバーレジリエンス法により、具体的にどのようなことが求められているのかを詳しく解説していきます。

セキュリティ基準を満たす

欧州市場にデジタル製品をリリースするためには、法によって定められた厳格なセキュリティ基準を満たすことが義務付けられています。製品の製造者は、これらの基準を満たすように設計段階からセキュリティを考慮した開発・製造を行わなければいけません。

製品のリリースにあたっては、具体的には以下が必要です。

技術文書の作成 製品のセキュリティに関するあらゆる側面を網羅し、潜在的なリスクとその対策を明確に示す
適合性評価 製品のセキュリティ機能が適切に実装されており、脅威に対して十分な耐性を持っていることを照明する

適合性評価は、製品が法定のセキュリティ基準に適合していることを証明する手続きです。上記は、欧州市場におけるデジタル製品の安全性と信頼性を確保するための重要な要素であり、規制を遵守することで、消費者からの信頼を獲得し、市場競争力を高めることができます。

脆弱性に対して対応する

リリースされた製品の製品の寿命(最長5年)の間は、製造業者は発見された脆弱性に対して適切に対応する義務を負います。この義務を果たすために、製造業者は以下のことを行う必要があります。

  • 脆弱性対応ポリシーの策定
  • 脆弱性対応手順の整備
  • 脆弱性情報の文書化と更新

インシデントの報告義務を果たす

製造業者は、自社製品のセキュリティ確保において重要な役割を担っています。製品に悪用される恐れのある脆弱性を発見した場合や、サイバー攻撃を受けてデータが漏洩するなど、重大なインシデントが発生した場合には、CSIRT(セキュリティインシデント対応チーム)やENISA(欧州連合サイバーセキュリティ機関)などの専門機関に速やかに報告することが義務付けられています。

従業員への教育を行う

欧州サイバーレジリエンス法の施行に伴い、企業は製品のセキュリティ対策だけでなく、従業員のセキュリティ意識向上を行うことも求められています。セキュリティ意識の高い従業員は、企業の重要な資産であり、悪意のあるサイバー攻撃から企業を守るための最前線で活躍するためです。

従業員へのセキュリティトレーニングは、法規制への対応にとどまらず、企業全体のセキュリティレベルを底上げし、サイバー攻撃に対するレジリエンスを高めることにもつながるでしょう。効果的なセキュリティトレーニングを実施するためには、専門的な知識と経験を持つ以下のような人材育成サービスの活用がおすすめです。

CAD・CAM・CAE人材育成サービス

CROSS TECHのCAD・CAM・CAE人材育成サービスは、お客様のニーズに合わせた最適な人材育成サービスを提供することで、企業のDX推進をサポートします。まず、お客様の業務内容や育成したい人材像を詳しくヒアリングいたします。

ヒアリング内容に基づき、お客様の課題解決に直結する最適な教育プログラムを設計します。また、eラーニングをカスタマイズして提供し、時間や場所にとらわれない学習環境を提供することも可能です。

研修後にはアイデア出しの場を設け、現場における課題解決にどのように活かしていくべきかについて具体的な支援を行います。単なる知識の習得にとどまらず、実際の業務に活かせる実践的なスキルを身につけることを目指します。人材育成の無料相談を承っておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

欧州サイバーレジリエンス法の動向に注目しよう!

今回は、欧州サイバーレジリエンス法の概要や日本への影響、求められる対策を解説しました。欧州サイバーレジリエンス法は、製品開発企業にとって新たなセキュリティ基準を設けるだけでなく、製品を利用する企業にとっても自社のセキュリティ体制を強化する重要な契機となるでしょう。

セキュリティに対する意識を高め、組織全体でセキュリティ対策に取り組むことで、より強固なセキュリティ体制を構築することができます。欧州サイバーレジリエンス法は、今後、さらなる変更や新たな規制が加わる可能性があります。企業は、最新の動向を常に把握し、法令に適合した製品開発やセキュリティ対策を進める必要があります。

欧州サイバーレジリエンス法とは?日本企業への影響や求められる対策
最新情報をチェックしよう!