近年、環境に優しい発電の方法として、コージェネレーション(以下、コジェネ)や燃料電池の利用が加速しています。では、2つの技術のどのような部分に注目が集まっているのでしょうか。
今回は、コジェネ・燃料電池のニュースをもとに、各技術の魅力や今後の見通し、実施されている取り組みについて深掘りします。具体的な加速傾向も解説しているので、発電技術の今を知る参考にしてください。
コジェネとは?
コジェネとは、正式名称をコージェネレーションシステムと言い、2つのエネルギーを同時生成して供給する仕組みです。簡単に説明すると、発電装置を動かしたときの熱を使って、別の目的で利用するのがコジェネになります。参考として、コジェネの活用例を以下にまとめました。
- 工場の熱源
- 建物内の暖房設備
- 給湯設備
従来、火力発電といった発電方法は、天然ガスや石油などを燃料として電気を発電するだけであり、排熱される熱を使うことはありませんでした。しかし、近年の環境対策の考えから発電時の熱を無駄にしてはいけないという考えが生まれ、コジェネを推進する流れができています。
コジェネを適用できる原動機とは?
![コジェネの原動力](https://cad-kenkyujo.com/wp-content/uploads/2024/06/qzay-2asifcwq-1.jpg)
コジェネは主に発電施設で使われているガスタービンや、自動車に搭載されているガス・ディーゼルエンジンなどを原動機として利用されています。つまり、私たちが普段利用している自動車にもコジェネの技術が搭載されようとしているのです。
日本は世界でも有数の自動車生産国ですので、コジェネ技術との相性が良いと言えます。
また日本では火力発電が全体の7割を占めていることから、発電の仕組みと組み合わせることにより、高いコジェネの効果を期待できるのが魅力です。
また後述する燃料電池を原動機としてコジェネの技術が適用され始めています。
コジェネと燃料電池は切っても切り離せない関係だと覚えておきましょう。
燃料電池とは?
燃料電池とは、水素と酸素の化学反応を利用して発電する技術のことです。
学生の頃、理科の授業で学んだ「電気分解」の仕組みを活用しており、水素と酸素を含む水から電気を生み出せる画期的な技術として、次のような危機に利用されています。
- 燃料電池自動車
- 家庭用エネファーム
燃料電池はすでに自動車や家など、さまざまな場所で活用されている発電技術です。
その燃料電池が今、コジェネの技術を取り込んでプラスアルファの効果を生み出そうとしています。
燃料電池の普及状況
![エネファームの普及状況](https://cad-kenkyujo.com/wp-content/uploads/2024/06/img01.jpg)
日本ガス協会の調査によると、近年では国内で約43万台のエネファーム(家庭用燃料電池)が普及しているそうです。家庭用燃料電池は新築物件やリフォーム物件が増えるたびに増加しており、2030年には300万台を超えると予想されています。
また燃料電池車の普及は現在も伸び悩んでおり、国内全体で2,000台程度だと言われています。
とはいえ、徐々に普及が進んでいることから、トータル的には省エネ化が進んでいるとわかります。
ちなみに燃料電池は次世代自動車にも活用されている技術です。
燃料電池を使った次世代自動車の普及率を詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
コジェネ・燃料電池の利活用が加速中
コジェネ・燃料電池、そしてその2つを組み合わせた技術の利活用が、近年爆発的に加速していると言われています。ニュースでは将来予想について詳しく取り上げられているので、重要ポイントをわかりやすくまとめました。
コジェネの将来予想
コジェネは、日本全体の発電量のうち8%を2030年までに達成するという目標が掲げられています。具体的な計画としては、毎年20万kWの発電量が増加していることから、2030年には年間発電量を798億kWhを目指す予定です。
またコジェネの累計導入発電容量は、産業用・民生用で次のような目標が掲げられています。
産業用 | 民生用 | |
発電容量 | 1,086万kW | 280万kW |
またコジェネの技術は都市再開発でも活用される予定です。
ニュースでは、次のように予定がまとめられています。
東京都は日本橋付近の地域冷暖房システムで出力7,800kWのガスエンジン3基が熱電併給する。
燃料電池の将来予想
燃料電池はコジェネへの適用が加速しており、水素合成のeメタンと呼ばれる成分を対象とした利活用がスタートしています。また2050年までには、ガス会社が使う天然ガスの90%をeメタンで補うものとして計画が始まりました。
もうひとつ、燃料電池はエネファームとして家庭用・施設用としての導入が加速中です。
ニュースの中ではすでに次の数のエネファームが設置されたと説明されています。
東京五輪・パラリンピックの選手村に建設された約4,000戸の分譲マンション住宅に700WのFCを設置。業務用水素FCも100kW1台と5kW24台が導入された。
コジェネ・燃料電池に期待される効果
コジェネ・燃料電池は環境に優しい技術として、日本のみならず世界中で注目されています。
より詳しくコジェネ・燃料電池の魅力を知るため、2つの技術に期待されている効果をまとめました。
カーボンニュートラルを実現しやすくなる
コジェネ・燃料電池を活用すれば、今まで日本で実施してきた火力発電から、徐々に再生可能エネルギーへとシフトチェンジしやすくなると期待されています。
例えば、自動車を運転する熱を使うことができれば、空調機器に電力を使う必要を削減できます。使う電力を必要最小限に抑えることにより発電効率が上がるため、コジェネや燃料電池は、カーボンニュートラルを目指す現在の日本において必要不可欠な存在です。
また将来はバイオマス発電を活用したコジェネもスタートする予定ですので、CO2排出量実質ゼロに近づいています。
カーボンニュートラルに関する取り組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
発電効率が向上する
燃料電池を活用したコジェネは、電気系統から供給される電気とは別に電力を生み出せるため、従来の発電にプラスアルファして新しく発電できるのが魅力です。参考として、燃料電池をコジェネ化した場合の活用例を以下にまとめました。
- 災害時の非常電源
- 発電設備事故をカバーする予備電源
万が一メインの電気系統で事故が起きても、コジェネとして備蓄されていたサブの電力でカバーできます。また、今まで以上に電力を生み出せる分、CO2を排出して生成する発電システムの稼働を減らせるのが魅力です。
自然由来の燃料だけで発電できる
近年では、水の電気分解を活用した燃料電池でもコジェネが利活用され始めたことにより、今後、燃料電池の品質が向上して普及すれば、自然由来の燃料だけで発電が可能になると期待されています。
従来、発電するためには化石燃料などを活用するのが効率的でしたが、膨大なCO2を排出することから、世界的に自制する流れが生まれている状況です。一方で、燃料電池およびコジェネの発電割合が増加すれば、自然と化石燃料の使用頻度が減ります。
資源を無駄にしない発電の仕組みをつくり出せるほか、再生可能エネルギーを中心とした発電スタイルに移行できると、日本だけでなく世界中でコジェネ・燃料電池に注目が集まっています。
コジェネ・燃料電池の取り組み事例
コジェネ・燃料電池の技術はすでに国内のさまざまな場所で適用されています。
具体的な取り組み事例・目的・効果についてまとめました。
清水建設北陸支店新社屋
![清水建設のコジェネ事例](https://cad-kenkyujo.com/wp-content/uploads/2024/06/fb434f248c28318c8d5c953db547024e.jpg)
大手ゼネコンの清水建設では、災害時のBCP(事業継続計画)電源の自律供給のために、太陽光発電設備を中心としたコジェネの蓄電環境を整備しました。
施設内には水素エネルギーの利用システムが設けられていますが、その施設でトラブルが起きた際にコジェネで蓄電している電力でカバーするという仕組みです。すでにコジェネ・燃料電池の設備が4,224m²の規模に設けられています。
高知赤十字病院
![高知赤十字病院のコジェネ事例](https://cad-kenkyujo.com/wp-content/uploads/2024/06/0a943644eaf1a52fe02059ef5a16a6f6.jpg)
高知赤十字病院では、近年の予測できない気象変動や豪雨の影響から施設を守るために、施設を浸水リスクの低い高台へ移転したことに合わせて燃料電池とコジェネを活用した病院内施設を建設しました。
平常時は、発電および排熱の給湯利用として用いられますが、地震・豪雨・洪水といった緊急時には非常用電源として活用できるシステムを構築されています。病院内で頻繁に利用する給湯としても使えることから、複数の点で電気・ガスの削減を生み出している事例です。
トヨタ自動車本社工場
![トヨタ自動車のコジェネ事例](https://cad-kenkyujo.com/wp-content/uploads/2024/06/3df673269e2f230c813a4d26a1281ded.jpg)
自動車産業の大手企業であるトヨタ自動車では、生産設備の最適化のため、以下に示す2つのコジェネ技術を導入し、排熱と排水素を使い分ける無駄のない燃料の利活用システムを構築しました。
- 燃料電池
- 水素混焼ガスエンジン
まず燃料電池の排熱について、低温の排熱を水素管理棟の冷房として利用します。
また、冬場には暖房の代わりとして利用する仕組みをつくり出しています。
続いて排水素は、そのまま燃料電池の材料として採用される計画です。
工場内で発生する燃料を無駄にしないことから、自動車製造のコスト削減につなげられています。
コジェネ・燃料電池についてまとめ
コジェネおよび燃料電池は、それぞれ発電時に消費される燃料を無駄にしない魅力的な技術です。カーボンニュートラルの実現を手助けすることはもちろん、企業や家庭でも利活用できると世界中から注目されています。
国によって将来目標が立てられている技術ですので、今後の動向から目が離せません。
![コジェネ燃料電池のアイキャッチ](https://cad-kenkyujo.com/wp-content/uploads/2024/06/15263b5df4bb9be5637c2633863a6b4c-375x245.jpg)