日本自動車工業会が実施した乗用車市場動向調査より、現在は次世代自動車として「ハイブリッド自動車」が人気を集めています。複数ある自動車の中で、なぜハイブリッド自動車が次世代自動車に選ばれたのでしょうか。
今回は、次世代自動車の発表内容について、世の中の動向や環境省が動き出した取り組みについて深掘りします。次世代自動車の変化を理解する参考にしてみてください。
次世代自動車とは?
ニュースの中で登場した「次世代自動車」とは、普段から利用されているガソリン車と比べ、燃料の消費量や二酸化炭素(CO2)の排出量を減らせる自動車のことです。例えば、次のような自動車が次世代自動車に該当します。
次世代自動車の種類 | 主な機能 |
電気自動車(EV) | 電気の力をエネルギーとし、電気モーターを使って走行する自動車 |
ハイブリッド車(HV) | ガソリンを利用しつつ駆動用バッテリーに電気をため、走行をアシストしながら動く自動車 |
プラグインハイブリッド車(PHV) | ハイブリッド車の機能に追加して外部充電に対応している自動車 |
燃料電池車(FCV) | 水素・酸素の化学反応を起こして電気エネルギーをつくり、モーターを回して走行する自動車 |
クリーンディーゼル車 | 軽油に対応したディーゼル車を改良し、粒子状物質や窒素酸化物の排出量を減らした自動車 |
水素エンジン車 | 水素を燃焼する力で走行する自動車 |
環境対策が求められる現代では、従来のガソリン車から、環境に優しい次世代自動車へとシフトチェンジしなければなりません。国はもちろん自動車メーカーも次世代自動車の普及に力を入れています。
次世代自動車はハイブリッド車が過半数を占める

日本自動車工業会が実施した乗用車市場動向調査により、次世代自動車として購入検討されているのはハイブリッド車が全体の約5割を占めていると発表がありました。参考として、次世代自動車全体の割合を以下に整理しました。
次世代自動車の種類 | 次世代自動車の購入意欲が高い割合 |
電気自動車(EV) | 28% |
ハイブリッド車(HV) | 45% |
プラグインハイブリッド車(PHV) | 23% |
燃料電池車(FCV) | 7% |
クリーンディーゼル車 | 11% |
水素エンジン車 | 8% |
また2位は電気の力を利用して走行する「電気自動車」、3位はプラグイン機能がある「プラグインハイブリッド車」がほとんどの割合を占めています。
また1位のハイブリッド車を選んだ人たちは、低燃費で運転できることや、走行コストを抑えやすいなど、費用面に関して次世代自動車としての魅力を感じているようです。
次世代自動車の調査結果一覧
日本自動車工業会が実施した乗用車市場動向調査では、他にも次世代自動車に対するさまざまな調査が実施されています。中でも、次世代自動車の購入に関わる重要な調査項目を表にまとめました。
調査項目 | 第1位 | 第2位 | 第3位 |
次世代自動車の認知状況 | ハイブリッド車 | 電気自動車 | プラグインハイブリッド車 |
車両価格が高いと感じる次世代自動車 | 電気自動車 | ハイブリッド車 | プラグインハイブリッド車 |
走行距離が短い | 電気自動車 | プラグインハイブリッド車 | 燃料電池車 |
ほとんどの調査で上位にランクインする電気自動車ですが、メリットが多い反面、デメリットの数も多いと考えられています。またプラグインハイブリッド車の需要も高まっていますが、先に普及したハイブリッド車よりも知名度が低く、ニーズも少ないようです。
次世代自動車における市場変動の傾向
次世代自動車は現在ハイブリッド車の人気が高く調査結果の半数を占めていますが、市場動向の傾向を探ると、次のことが見えてきます。
- 年を追うごとに電気自動車の需要が高まっている
- ハイブリッド車から電気自動車へ興味が移動している
例えば電気自動車に「自宅のコンセントですぐに充電できる」「環境に配慮できる」といった意見が数多く寄せられています。一方で「車両価格が高く購入できない」「1回当たりの充電走行距離が短い」「充電に時間がかかりすぎる」といったマイナスの意見も見受けられました。
将来予想として、今後ハイブリッド車よりも電気自動車に次世代自動車としての人気が集まると期待されています。電気自動車の価格帯が落ち着くほか、充電スポットが増加すれば、次第に電気自動車の需要が増加していくはずです。
市場が縮小している次世代自動車とは?
企業・国総出で次世代自動車の普及を急いでいますが、一部の次世代自動車は徐々に市場が縮小している状況です。
例えば、水素・酸素から電気を生み出す燃料電池車は、年を追うごとにニーズが減少しています。同様にクリーンディーゼル社も少しずつ市場が縮小しています。
現在電気自動車・ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車に購入ニーズが集まっていることから、次世代自動車ごとに性能や評価に差があることに注意しなければなりません。
次世代自動車が抱える3つの課題
環境に優しく低コストで走行できる次世代自動車ですが、3つの課題を抱えています。
普及するために重要なポイントですので、何がネックになるのかチェックしてみてください。
従来のガソリン車よりも高額である
次世代自動車の多くは、登場したばかりの技術が活用されているため、製造や販売のインフラ・基盤が整っているガソリン車に比べて高額です。
例えば、ガソリン車の中でも低価格である軽自動車の中には100万円を切る製品も販売されています。一方で、電気自動車は安くとも300万円を超えるのが特徴です。なぜ金額が高くなるのかについて、以下に整理しました。
- 専用のシステム・機器の開発や製造に費用がかかる
- 水素エンジン車・電気自動車などはまだ充電スポットが少ない
また、市場のニーズがまだガソリン車に偏っており、購入ニーズが低いデメリットです。
「売れる=大量に製造する」という市場の仕組みができていないため、今後、製品が改良されて低価格化が実現しなければ、本格的に普及しないと考えられます。
充電スポットが少ないため購入しづらい
次世代自動車の中には、電気自動車や水素エンジン車など、ガソリンを使用しない独自の燃料を使った自動車があります。しかし、生活エリアに充電スポットが整備されておらず、購入したくても購入できない方が少なくありません。
例えば、電気自動車の場合は次のような場所で充電できます。
- 自宅
- 一部のディーラー
- 一部のガソリンスタンド
- 一部の高速パーキングエリア
上記からもわかるように、自宅以外は一部の施設でしか充電できません。
場合によっては、自宅周辺や移動エリアに充電スポットがない不安から購入できない方も多いと考えられています。
蓄電池を使うほど充電量が減ってしまう
次世代自動車の中でも電気自動車は、蓄電池を用いて電気を充電するのが特徴です。
しかし蓄電池は使えば使うほど劣化するため、時間の経過により最大充電量が少なくなるケースも多く、使いづらいという声が上がっています。
もちろん電気自動車の蓄電池は交換できるように設計されています。
ですが、蓄電池自体の費用が高く新しく購入する費用負担をネックに感じる方も多いです。
近年では蓄電池のリユース・リサイクルといった対策により、低価格化が進んでいます。
ただし「気軽に交換できる」という完全な低価格化が実現するためには、まだまだ時間がかかると覚えておきましょう。
そして近年では電気自動車の電池の再利用が始まっています。
詳しいプロジェクトを知りたい方はチェックしてみてください。
環境省が掲げる次世代自動車の目標
次世代自動車の普及は、企業だけでなく国でも推進されている取り組みです。
そして環境省では2050年目標のカーボンニュートラルの実現のために、次世代自動車の目標を掲げています。
2030年までに新車の5割以上を次世代自動車にする
環境省では、2030年までに新車のうち5~7割を次世代自動車にするという目標を掲げています。
ちなみに現在の次世代自動車のうち、電気自動車のシェア率は1.16%(4,600台程度)です。
2030年までにはトータル80万台程度を普及すると目標設定されているため、今後さらなる取り組みがスタートしていくと予想できます。
2030年までに電池容量7倍・コストを40分の1にする
環境省では、次世代自動車の電気自動車について、走行距離に影響する電池容量を現状の7倍、コストを40分分の1すると目標が掲げられています。
現在、電気自動車の電池容量は一般乗用車で35~80kWh程度です。
また小型車でも10kWhの電池容量が確保されています。
しかし、電気自動車の中には6km/kWh程度の次世代自動車も多く、従来のガソリン車よりも大幅に走行距離が短い状況です。充電する際の電気料金も高額になることも含め、電池容量を増やしつつ、費用コストを減らす対策がスタートしています。
2035年までに100%の電動化を進める
日本政府は自動車の電動化を前倒して、2035年までにガソリン車の新車販売中止を決定しました。そして100%の電動化、つまり次世代自動車の普及を進めると発表しています。
2035年以降は次世代自動車しか製造・販売・購入ができなくなることも含め、今後さらなる技術発展や低コスト化の取り組みが進んでいくと予想されます。
もし次世代自動車に関する自動車メーカーの取り組みを知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。製造DXに関わる新技術や取り組みを解説しています。
次世代自動車についてまとめ
次世代自動車の中で人気を集めるのが、ハイブリッド車や電気自動車です。環境に配慮しているため、カーボンニュートラルの実現に欠かせない自動車だと考えられています。
しかし、環境へのメリットが多い一方でコストや維持管理といった部分に複数のデメリットがあるのも事実です。最短で2030年に向けた改善の目標が掲げられていることも含め、今後の動向から目が離せません。
