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中古太陽光パネルの国内販売がスタート!事業の背景や中古ならではのメリット・課題も解説

産業・ICT機器、環境エネルギー事業などを展開するオリックスが、子会社を通じて中古太陽光パネルの国内販売をスタートすると発表しました。太陽光パネルの中古販売によって、今後の環境エネルギー事業はどのように変化していくのでしょうか。

今回は中古太陽光パネルの販売のニュースについて、取り組みの概要や今後の見通し、課題について深掘りします。説明の背景として、世界中で起きている太陽光パネルの問題を解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

オリックスが中古太陽光パネルの国内販売をスタート

中古太陽光パネルの国内販売がスタート

他分野の事業を展開しているオリックスが、環境エネルギー事業のひとつとして中古太陽光パネルの国内販売をスタートすると発表しました。

古くなった太陽光パネルを事業者から買い取り、厳正な検査を実施したのちに再販売するという仕組みで事業を進めるそうです。ちなみに販売対象者は、主に次の人たちを対象にしていると言われています。

中古太陽光パネルの販売対象者 対象者のニーズ
発電事業者 ・安く太陽光発電事業をスタートしたい

・劣化した太陽光発電パネルを交換したい

O&M(運用・保守)事業者 ・運用している太陽光発電パネルを交換したい

・保守サポートとして交換に対応したい

オリックスは、自社でも太陽光発電事業や発電所の運用・保守、さらには太陽光パネルの適正処理・導入サポートといったサービスを展開しています。今回の取り組みでは、これまで蓄積してきたノウハウを活かして事業を展開していく試みです。

中古太陽光パネルを再販売する仕組み

オリックスでは、東京都港区で事業を展開する子会社「オリックス環境」を中心に中古太陽光パネルの再販売をスタートします。販売の流れを以下に整理しました。

  1. 発電事業者等から中古太陽光パネルを買い取る
  2. 回収した中古太陽光パネルの出力性能や外観を検査する
  3. 使用できないパネルを除きメーカー商品を取り揃えて販売する

中古太陽光パネルの国内販売は、新品時の定価からおよそ半額程度で再販売する予定です。
また今後の予定として、使わなくなった中古太陽光パネルを供給する事業者と、発電事業者をスタートしたい事業者を結びつける仕組みつくりにも力を入れていくと発表されています。

中古太陽光パネルを再販売する背景

中古太陽光パネルの背景

オリックスが、中古太陽光パネルの再販売事業を計画したのは、太陽光パネルが抱えている廃棄量問題が関係しています。

まず太陽光パネルの寿命は20~30年程度だと言われています。
2030年には、国内に設置されている太陽光パネルのほとんどが耐用年数を迎えるため、早い段階で再販売事業の仕組みを作ることで廃棄量を減らす試みです。

また、オリックスが実施する中古太陽光パネルの再販売のうち、再販売できない太陽光パネルについては、設備に利用する材料を取り出し、新しい太陽光パネルの製造にリサイクルする予定です。材料を無駄にしない取り組みであることから、発電事業者から期待が寄せられています。

中古太陽光パネルのニーズが増える理由とは?

ニーズが増加する理由

中古太陽光パネルの再販売事業がスタートによって、発電事業者からのニーズが集まるほか、手軽に太陽光発電事業をスタートできるようになります。なぜなら、中古太陽光パネルを安く購入でき、施設導入コストを大幅に削減できるからです。

まず、太陽光パネルは設置容量が20kWで300万円程度、50kWを超えると700万円以上の費用がかかります。対して、中古太陽光パネルを半額で販売すれば、大幅な費用の節約が可能です。

発電施設の規模が大きくなればなるほど導入コストが増してしまい、初期導入費用のせいで発電の利回りの回収が難しいと不安視する事業者も少なくありません。

そのため、中古太陽光パネルを安価に購入できるの事業がスタートすれば、一定のニーズが移動し、市場が拡大していくのではないかと期待されています。

今まで太陽光パネルが再利用されなかった理由

これまでも、耐用年数を迎えた太陽光パネルが数多く廃棄されていました。
もちろん「当初から再利用すればよかったのでは?」といった声が挙がっていましたが、当時の中古太陽光パネルは次の理由から再販売できませんでした。

  • 発電事業者数が少なく利用者ニーズが集まらなかった
  • 中古太陽光パネルの品質・保証の担保が困難だった

そのため国内での再販売ではなく、ほとんどが廃棄や海外販売に回されていました。
ですが近年では、太陽光発電事業の需要が高まり出し、徐々に利用者ニーズの向上や品質・保証の整備が進んでいます。

中古太陽光パネルのリユース市場が拡大すると見込みができたことから、今回のニュースのように、オリックスによる事業展開が始められたのです。

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中古太陽光パネルを再販売するメリット

中古太陽光パネルの再販売事業がスタートすれば、発電事業者はもちろん、世の中にとってさまざまな恩恵が生まれます。具体的な再販売のメリットを3つ整理しました。

再エネ事業の普及が加速する

中古太陽光パネルの販売が本格化すれば、日本で推進している再エネ事業の普及が加速すると期待されています。例えば現在の日本では、主力の発電手法である「火力発電」「原子力発電」から、次のような再生可能エネルギーを用いた発電に移行する流れが生まれています。

  • 太陽光発電
  • バイオマス発電
  • 風力発電
  • 水力発電
  • 地熱発電

上記の中でも太陽光発電は、国内発電量の1割近くを担っています。
導入しやすくCO2を排出せずに電力を生み出せるため、今回の中古太陽光パネルの販売によって、良い流れが生まれると期待されています。

太陽光パネルの導入コストを抑えやすくなる

中古太陽光パネルの販売がスタートすれば、太陽光パネルをまるごと廃棄するムダを削減しやすくなります。

まず太陽光パネルには、入手が難しい次のような希少金属(レアメタル)が使われており、簡単に製造できる代物ではありません。しかし、大量廃棄によって太陽光パネルがムダに処分されている状況でした。

一方で、中古太陽光パネルの再販売がスタートすれば、太陽光パネルの処分量を必要最小限に抑えられます。さらには、使われている素材のマテリアルリサイクルも実施されるため、希少金属をムダにしません。

太陽光パネルが高額である課題を解決できることはもちろん、資源のムダ使いを解消できるのが、中古太陽光パネルの魅力です。

環境対策コストを削減できる

中古太陽光パネルの普及が進めば、2050年のカーボンニュートラル実現までにかかる環境対策のトータルコストを抑えやすくなるのがメリットです。

例えば、現在の日本では、再エネ賦課金などの税金などを使いながら環境対策を進行しています。しかし、円安や増税といった国民負担が強く、長く続けるのは困難を極めます。

対して、中古太陽光パネルの再販売をスタートすれば、費用を抑えられた分だけ国民負担を減らしやすくなるでしょう。発電事業者のコストだけでなく、めぐりめぐって国・国民の負担を解消できるのが中古太陽光パネルの魅力です。

カーボンニュートラルの実現に関して興味をお持ちなら、以下の記事をチェックしてみてください。企業・大学が連携した取り組みについて紹介しています。

脱炭素社会の実現に向けた取り組みとは?企業・大学連携によって生み出される効果

中古太陽光パネルを再販売する課題

中古太陽光パネルの課題

中古太陽光パネルの販売がスタートすれば、環境や発電事業者、国民など幅広い人たちに良い影響が生まれます。しかし、再販売にはまだ複数の課題があることに気を付けなければなりません。

参考として、中古太陽光パネルを再販売する課題と対処法を3つまとめました。

中古であるため寿命が短い

中古太陽光パネルは品質や出力をチェックしたうえで販売されますが、古い設備であることは変えられません。

例えば、太陽光パネルの寿命が20~30年だと言われているので、10年経過した中古太陽光パネルなら、残りの寿命は10~20年程度だと考えられます。安く購入できる一方で性能の劣化が早まりやすいため、想定よりも早い交換が必要になるかもしれません。

中古太陽光パネルを導入する際には、発電の利回りを事前に確認すること、導入後に積極的なメンテナンスを実施することが重要になるでしょう。

リパワリングする頻度が増える

中古太陽光パネルは、製品の部品を交換・追加することで出力を増加できる「リパワリング」という対策が可能です。しかし、中古であるがゆえにリパワリングの頻度・コストが増えやすいことに注意しなければなりません。

導入する中古太陽光パネルのなかには、導入後すぐにリパワリングが必要になるかもしれません。中古太陽光パネルを導入する際には、初期導入費用だけでなく、リパワリングを含めた運用コストを含めて10年先、20年先の費用を予想しておくのが良いでしょう。

販売されている製品によって品質が異なる

中古太陽光パネルを導入する際には、販売されている製品によって出力や寿命が異なることに気を付けなければなりません。なぜなら、太陽光パネルは製造しているメーカーや利用状況によって品質が違うからです。

例えば、劣化しやすいメーカーの比較的新しい中古太陽光パネルを安く購入できたとしても、あっという間に修理やリパワリングが必要になるかもしれません。

そのため、中古太陽光パネルの導入を検討しているなら、まずは製品ごとの比較が重要です。
製品ごとの耐用年数をチェックすることはもちろん、メーカーごとの違いを理解したうえで購入することが利益・損益に直結します。

中古太陽光パネルの国内販売についてまとめ

オリックスが中古太陽光パネルを再販売する事業をスタートしましたが、今回の発表により太陽光発電の中古市場が大きく動き出すと考えられます。

発電事業者は安く太陽光パネルを導入できるため、今まで以上に発電に取り組みやすくなるのが魅力です。ただし、中古であるがゆえの課題があるのも事実です。とはいえ時間の経過とともに課題が解決されていくはずですので、今後もオリックスの事業をチェックし続けてみてください。

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