CMOの役割はここ数年で劇的に変化しています。かつてはマス広告中心のブランディング戦略が主流でしたが、デジタル化の加速により、パーソナライゼーションやデータドリブンなマーケティングが求められるようになりました。
予算削減圧力の下、費用対効果の最大化が急務となり、同時に、AIや自動化技術の導入による業務変革も進んでいます。このような状況下でCMOの在任期間は短縮傾向にあり、その地位は業界や企業規模によって大きく異なっています。そこで今回は、CMOの具体的な役割やCMOが国内で定着しない理由、求められるスキルを詳しく解説します。
CMOとは
CMOは、Chief Marketing Officerの略で、企業のマーケティング部門を統括する最高責任者のことです。日本語では「最高マーケティング責任者」と訳されます。CMOは企業のマーケティング戦略の策定から実行、ブランドイメージの構築まで幅広い業務を担います。
CEOやCOO、CFOと同様に、企業の経営層の一員として取締役を務めることも多く、マーケティングだけでなく、企業全体の経営戦略にも深く関与します。
CEOやCOO・CFOとの違い

企業の経営陣にはCMOの他にも、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)など、様々な役職があります。これらの役職は、それぞれ異なる専門分野を担いながら、企業全体の戦略遂行を行います。
| CEO(最高経営責任者) | 企業全体の経営戦略を策定し、企業の方向性を決定する |
| COO(最高執行責任者) | CEOが定めた戦略に基づいた業務を遂行し、企業の目標達成を図る |
| CMO(最高マーケティング責任者) | 経営戦略をマーケティングに落とし込み、企業全体の目標達成を牽引する |
| CFO(最高財務責任者) | 企業の財務状況を管理し、資金調達や投資などの財務に関する意思決定を行う |
CMOは経営層の一員として、マーケティングの視点から経営戦略に貢献し、企業全体の成長を加速させます。マーケティングの専門知識でCEOやCOOをサポートし、顧客のニーズを的確に捉え、効果的なマーケティング施策を実行することで、企業の収益向上を目指します。
CMOの具体的な役割

CMOの役割は多岐にわたりますが、以下ではその中でも代表的な役割をピックアップして解説します。
企業内にマーケティング戦略を浸透させる
CMOは、企業の経営戦略をマーケティングの視点から具体化し、顧客視点に立った戦略を立案します。企業全体にマーケティングの重要性を浸透させ、顧客体験の向上や顧客満足度の最大化を目指し、具体的な施策を推進します。
さらに、商品開発や販売、デジタルマーケティングなど、様々な部門の連携を図り、一貫性のあるマーケティング活動を展開するのです。また、経営層の一員として、CEOに対してマーケティングに関する専門的な知見に基づいたアドバイスを行い、企業全体の成長を目指します。
自社のマーケティングの強みを創出する
CMOの役割は、市場での競争優位性を確立するための強みを創出することにもあります。企業が市場で成功するためには、他社との差別化が不可欠です。独自の技術や優れた製品、顧客との強い関係性など、自社が持つ強みを明確にし、マーケティング活動に活かすことが求められます。
そのため、CMOはマーケティングの専門知識だけでなく、市場全体の動向や競合企業の状況を深く理解している必要があります。3C分析やSWOT分析などのフレームワークを活用することで、自社の強みと弱み、機会と脅威を客観的に分析し、より効果的なマーケティング戦略を立案することができるでしょう。
差別化を図りながらブランディング戦略を行う
顧客が「◯◯といえばA社」と連想するように、自社の商品やサービスを顧客の心に深く根付かせることが、マーケティングの重要な目標です。CMOは、この目標達成のために、ブランド戦略を立案して実行します。
顧客のニーズや価値観を深く理解し、共感を得られるようなブランドストーリーを構築することで、競合他社との差別化を図り、顧客のロイヤリティを高めることが求められます。
CMOが国内で定着しない理由
欧米企業では、CMOが一般的になり、企業のマーケティング戦略を牽引する存在として定着しつつあります。しかし、日本の企業においては、CMOの設置率が低く、その役割や重要性が十分に認識されていないのが現状です。なぜ、日本企業においてCMOが定着しないのでしょうか。
その理由には、以下のような要因が考えられます。
専門分野の知識や技術を持つ人材が生まれにくい
日本企業では、社員に幅広い経験を積ませることを目的としたジョブローテーションが広く行われています。しかし、この制度には、CMOのような高度なマーケティング能力を有する人材育成が難しいという側面があります。特に、マーケティング分野では、専門知識や経験を積んだスペシャリストの育成が求められます。
この課題を解決するためには、ジョブ型人事制度の導入が有効と考えられます。ジョブ型人事制度では、事前に職務内容を明確にし、それに合った人材を採用・育成します。そのため、マーケティングのスペシャリストを育成し、CMOの役割を確立することが期待できるでしょう。
経営者視点をも持つマーケターが育ちにくい
CMOは、企業全体の経営戦略と密接に連携し、長期的な視点からマーケティング戦略を策定することが求められます。しかし、多くの企業で、マーケターは日々のキャンペーンや広告運用に追われ、個々のプロジェクトに特化した業務に忙殺されているのが現状です。
広告出稿先の選定や効果測定など、実行レベルの業務に注力するあまり、経営戦略との整合性や長期的なブランド構築への貢献度などの、より経営者寄りの視点が欠如しているケースが少なくありません。そのため、CMOの役割を十分に担える人材の育成が進んでいないことが、CMOの定着率の低さの一因となっていると考えられます。
企業の方針や作りたい物を重視していた
2000年頃より、日本の製造業を中心に、「プロダクトアウト」から「マーケットイン」への転換が求められるようになりました。プロダクトアウトとは、企業が「作りたいもの」を優先する考え方である一方、マーケットインは、市場の「求められるもの」を重視する考え方です。マーケットインはマーケティングの考え方に沿っており、顧客ニーズを捉えることが重要視されます。
しかし、多くの日本企業は、いまだにプロダクトアウト的な考え方に囚われている部分があり、完全にマーケットインにシフトしきれていません。そのため、CMOが定着しにくい要因の一つとなっているのです。
CMOに求められるスキル
最後に、CMOの役割を効果的に果たすために求められるスキルを以下に絞ってご紹介します。
- 顧客のニーズを正確に把握する
- データを分析する力がある
- ICTに精通する知識がある
- 常日頃からアンテナを張っている
- 経営の観点からマーケティングを説明できる
- 従業員をまとめるリーダーシップがある
これらのスキルは、CMOの役割を理解する上で重要な指針となるでしょう。それぞれを以下で詳しく解説します。
顧客のニーズを正確に把握する
効果的なマーケティング戦略を立案し、実行するためには、顧客の深層心理にあるニーズを正確に理解することが重要です。CMOはデジタルツールやSNSを活用し、顧客の行動パターンや嗜好を綿密に分析することで、顧客ニーズを可視化し、戦略に活かすことが重要です。
デジタル化を成功に導くためにすべきことについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
データを分析する力がある
CMOにとって、データ分析力はマーケティング戦略を立案する上で不可欠な能力です。アクセス数やコンバージョン率などの多岐にわたるデータを基に、効果的な施策を立案し、その成果を数値で測る必要があります。
CMO自身が高度な統計分析スキルを有している必要はありませんが、データ分析担当者と円滑にコミュニケーションを取り、データに基づいた意思決定を行う能力が求められます。
ICTに精通する知識がある
現代のCMOは、ICTに関する深い知識なしには、その役割を果たせません。ICTは、インターネットなどの通信技術を使って、情報をやり取りしたり、便利なサービスを受けるための技術のことです。私たちの生活や仕事は、ICTなしでは考えられません。
顧客はスマートフォンやSNSなどのICTを日常的に利用しており、企業はこれらのツールを通じて顧客との関係を構築し、マーケティング活動を行っています。CMOがICTに精通していれば、顧客データを効果的に分析し、パーソナライズされたマーケティング施策を展開することが可能です。また、AIやビッグデータ分析などの最新技術を活用することで、より高度なマーケティング戦略を立案することも期待できるでしょう。
常日頃からアンテナを張っている
マーケティングの世界は、日々新しいツールやトレンドが生まれ変わります。CMOは、こうした変化にいち早く対応するため、常にアンテナを張り、情報収集に努める必要があります。
情報収集の際は、目的を明確にし、本当に必要な情報だけに絞り込むことが重要です。しかし、全ての情報に目を向けるのは非現実的なため、自社のマーケティング戦略に役立つ情報を効率的に集めるため、何のために、どんな情報が必要なのかを具体的に考えましょう。
また、新しいサービスや商品に触れる体験は、新たな視点やアイデアを生み出すきっかけになります。積極的に新しいものを試すことで、情報感度を高め、変化の激しい市場に対応できる能力を養いましょう。
情報収集に効果的な製造業向けメディアについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
経営の観点からマーケティングを説明できる
CMOはマーケティングの専門知識に加え、経営戦略を立案し、実行するための高度な経営能力が求められます。マーケティング活動は、企業全体の成長に直結するため、CMOは経営層と対等に議論し、企業の方向性を決定していくため、経営に関する幅広い知識と戦略的な思考力は不可欠でしょう。
従業員をまとめるリーダーシップがある
CMOは多様なバックグラウンドを持つマーケティングチームを率い、共通の目標に向かって協力させる必要があります。そのため、チームメンバーの意見を聞き入れ、共感し、モチベーションを高めることができる優れたリーダーシップが求められます。
また、複雑なマーケティング戦略を分かりやすく説明し、チーム全体が同じ方向を向いて取り組めるような環境づくりも重要です。
CMOは今後のマーケティング戦略で注目を集める

今回は、CMOの具体的な役割やCMOが国内で定着しない理由、求められるスキルを解説しました。CMOは企業のブランドイメージ向上や売上拡大のために、マーケティング活動全般を指揮する役割を担います。市場調査や競合分析、顧客分析などを行い、効果的なマーケティング戦略を立案し、実行する重要なポジションです。
近年、デジタルマーケティングの重要性が高まる中、データ分析やAIを活用した高度なマーケティング手法が求められており、CMOの役割はますます重要になっています。