土木・建築・製造関連の仕事で必須のCADですが、技術の発展により効率化・自動化の波がやってきています。では、今後CADオペレーターやCAD操作者の働き方はどのように変化していくのでしょうか。
この記事ではCADソフトの今後についてわかりやすくまとめました。
今後必要になるスキルや10年後の将来予想も解説しているので、将来の働き方をイメージする参考にしてみてください。
CADは今後3DCAD・BIMに移行する
2次元平面で図面を作成する2DCADを操作する人たちは、今後3DCADやBIMといったソフトに移行していくとご存じでしょうか。
まず3DCADとは、3次元上に図面を作成できるソフトのことです。
疑似的に立体物を作成できることから、制作物をイメージしやすいことはもちろん、干渉チェック等に役立ちます。
また3DCADは、関わるすべての業種で適用できるソフトです。
3Dプリンターの技術を組みあわせれば、作成したデータをそのまま現物として出力できるので、製造業で用いられる傾向があります。
次にBIMは、座標をもたせた3次元モデルをもとに、図面作成を効率化できるソフトのことです。画面上に挿入するデータすべてに属性情報(色、数値、条件など)を持たせることができ、数量計算の自動化や耐力計算の効率化に役立ちます。
土木・建築分野では今後、国土交通省によるBIMの原則導入の推進が加速する予定です。
今後のことを考えてCADソフトの働き方を考えているのなら、早めに3DCAD・BIMに慣れておくことをおすすめします。
BIMについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
BIMの基礎知識や今後の導入に役立つ情報をまとめています。
CADの今後を生き抜くために必要なスキル
今後も変化し続けるCADに対応していきたいのなら、3DCAD・BIM操作に欠かせないスキルを学ぶべきです。今後を生き抜く参考として、まず覚えておかなければならないスキルを3つ紹介します。
3次元設計技術
3DCAD・BIMで大前提となるのが、3次元設計技術です。
まず3DCAD・BIMは、XY座標で図面が成り立つ2DCADとは違い、XYZ座標で図面を取り扱わなければなりません。
操作画面を360度ぐるぐると回転させながら設計作業を実施するため、2DCADとは異なる操作性を求められます。また3次元設計で難しいのが、線だけでなく面を使って作業することです。
操作に慣れるまで大幅な時間がかかるため、今後早めに3次元設計技術を学習しておくのが良いでしょう。
効率化ツールの活用
3DCAD・BIMには図面設計を効率化できる機能が豊富に搭載されています。
例えば、次のような機能を今後頻繁に利用することとなるでしょう。
便利機能 | 概要 |
部品挿入 | あらかじめ作成されたモデルを挿入できる(数値情報の変更で形状を変えられる) |
数量自動算出・表作成 | 対象物から数量を抽出して表にまとめてくれる |
点群データの活用 | 点群で作成された測量地形をもとに構造物を設計できる |
上記の機能はほんの一例です。
2DCADとは違う機能が豊富に搭載されているため、今後3DCAD・BIMを導入する際には、機能をすべて使いこなせるように対策しなければなりません。
AI技術の活用
3DCAD・BIMには今後AI技術が導入されていくと予想されています。
過去に作成された図面データの情報や、国が公開している基準書・ルール情報を読み込ませることにより、瞬時に図面を作成できるようになるかもしれません。
そういった世界が実現すると、今後人間が行うのは、図面チェックや軽微な調整だけとなります。よって、図面作成のスキルと一緒に覚えなければならないのがAI技術の知識です。
AIへの指示方法やプロンプトの準備など、イメージを形にできる具体的な指示だしを設計することが欠かせません。すでにAIの活用がスタートしています。今後の参考に以下の記事をチェックしてみてください。
データ変換技術
3DCAD・BIMのうち、特にBIMとして設計に携わるCADオペレーターは、今後データ変換を駆使した図面作成を実施しなければなりません。なぜなら、BIMには2DCAD・3DCADのデータのほか、csvといった数値情報を読み込めるからです。
大前提としてBIMでは属性情報を与えながら図面を作成します。
このとき、属性情報のない3DCADのデータを読み込む際には、BIMデータに必要な材料の特性などを自身で設定しなければなりません。
また2DCADのデータの場合には、一度3次元モデルに起こす作業が必要です。
設計業務では発注者からもらう過年度データ、協力業者から受け取るデータを組み合わせながら図面を作成するため、今後、設計をする際に何度もデータ変換作業が必要になります。
もし今後の変化に対応する技術・知識を身に付けたいのならオンラインセミナーに参加して3DCAD・BIMの技術を学ぶのがおすすめです。もし今後3DCADの人材育成に力を入れたいのなら、以下のセミナーに参加してみてください。
CADオペレーターに影響する今後の変化
CAD設計の変化に伴い、作業を実施するCADオペレーターにもさまざまな変化が生まれています。参考として、今後の働き方・収入に関する変化をまとめました。
3DCAD・BIMオペレーターへと移行する
今後3DCAD・BIMでの設計が主流に変わってくると、社内での働き方も自然とそちらのほうに移行していきます。つまり、今まで2DCADだけで仕事をしていたのが、2DCADと3DCAD、2DCADとBIMの2本柱で働くことが増えるイメージです。
ただし、2DCADの機能は3DCAD・BIMで包括されています。
作成したデータを2D図面として出力することも可能ですので、最終的には3DCAD・BIMの1本に絞り込めます。
今後、ほとんどの会社が同じようにオペレーターにおける働き方の変化が生まれるはずです。
乗り遅れてしまうと競合他社から差を付けられるほか、時間外労働の増加といったリスクがあるため、早めに準備しておく必要があります。
対応範囲が増えるごとに年収がアップしやすい
3DCAD・BIMを扱う需要が増えだすと、今後スキルの分散化が進んでいくと予想されます。
結果として、以下3つのオペレーターごとに年収の差が生まれていくでしょう。
- CADオペレーター
- 3DCADオペレーター
- BIMオペレーター
ちなみに年収は、下にいくにつれて高額化するイメージです。
今後求められる設計手法に対応できること、効率よく設計業務を進められることから、企業によっては、今後1人当たりの単価が高く設定されるかもしれません。
ちなみに年収の差が生まれた場合、企業によって3DCADオペレーターやBIMオペレーターの争奪戦がスタートします。高給な求人が公開されることが増えやすくなるため、今後転職を検討するオペレーターが増えてくるでしょう。
CADオペレーターに将来性はある?
今後CADオペレーターとして働きたい人の中には、技術発展や操作ソフトの移行に対し、将来性という部分で不安を抱えている方も多いはずです。参考として、今後起こりうる変化を主軸として、CADオペレーターの将来性を紹介します。
CADは設計者自らが操作する時代に変化する
CAD操作に特化したCADオペレーターの仕事は今後、設計作業すべてを担う設計担当者の仕事に変化していくと予想されます。なぜなら、3DCAD・BIMは、短時間で図面を作成できるほか、構造の比較検討がやりやすくなるからです。
今までは、設計者がイメージした形状をCADオペレーターが書き起こすのが一般的でした。
しかし、イメージ共有不足や繰り返しの指示出しに負担を抱えていた設計者も大勢います。
一方で3DCADやBIMは効率よく図面を作成できることから、設計者自らが「こういう形状ならどう?」「もっと別の形状を見てみたい」と作業を片手間で実施できるのが特徴です。
よって今後は、CADオペレーターというスキルだけでなく、設計者としてのスキルが必要になってくるかもしれません。
作図作業の省人化が進む
今後CADの技術が発展すると、CADという仕事が残り続ける一方で、CADオペレーターという仕事は徐々に減っていく恐れがあります。前述したように、設計者自らが図面作成を担うようになると、CADオペレーターの仕事が減ってしまうからです。
最初は年収の低下から始まり、人員の削減が進んでいくでしょう。
10年後には、CADオペレーターの仕事自体が設計者と統合しているパターンも予想できるため、早めに設計者として働けるスキルを身に付けることが重要になります。
CADの今後についてよくある質問
CADの今後について、よくある質問を2つまとめました。
CADの今後についてまとめ
CADの仕事は今後3DCAD・BIMへと移行しつつ、徐々にCADオペレーターから設計担当者の仕事へと変化していくと予想できます。
今後CADオペレーターといった仕事を目指していきたいのなら、合わせて3DCADやBIMの知識を身に付けておくのがおすすめです。徐々に2DCADのみを扱う人材の需要が減っていくため、3次元データを活用した技術を身に付けましょう。