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【2024】BIMとは?CADとの違い・BIMのソフト6種類をわかりやすく解説

近年、社会のIT化が進められている中で、建築業界でもBIMの導入が推進されています。BIMは設計から施工までを合理的に進められる画期的なソフトとして注目されていますが、まだ業界全体に浸透しているとはいえません。

そこで今回は、BIMの概要から活用するメリットについて解説していきます。また、3DCADとの違いやBIMで作成したデータの活用方法も紹介します。

BIMとは

BIMとは

BIMとは、「Building Information Modeling」の略で、情報を持った3Dモデルを一つ作ることで、平面図や立面図、断面図など複数の図面が自動生成されるだけでなく、設計から施工までのワークフローに情報を活用できるシステムのことです。

BIMは平面図から作るのではなく、それぞれが高さや幅などの情報を持った建材パーツや建具などを3Dモデルとして組み立てていきます。これらのパーツには寸法値のデータだけでなく、施工方法や施工時間、積算に必要な材料のデータまでもが盛り込まれています。

こうしたパーツを組み合わせて出来上がった3Dモデルには、設計データから施工方法、施工期間、積算情報までが集約されているので、設計から施工までの全てのデータを一つのモデルから取得することができます。つまり、一つの3Dモデリングによって建築のワークフロー全ての情報を集約できるということが、BIMの最大の特徴にして最大のメリットです。

BIMと3DCADの違い

BIMが建築のワークフローにおいて画期的で重要な役目を担うことが分かったところで、同じように3Dモデリングを行う3DCADと何が違うのかを解説していきます。

3DCADとは

3DCADではまず2Dの図面を作成し、それに3次元の情報を入力することで3Dモデリングを行います。この方法では部材そのものには形状や位置のデータしか入っていないので、完成した3Dモデルには表面的な形状や視覚的な情報しか入っていません。3DCADで制作した3Dモデリングは形状や外観の情報のみのモデルとなっており、中身が空っぽの形だけの図面となってしまいます。

また、2Dから3Dへのモデリングの流れがあるため、3DCADを修正する場合は2Dの図面を直してもう一度3Dモデリングする必要があり、作業にとても時間がかかってしまいます。3DCADでのモデリングには2DCADとの往復が必要になりますので、場合によっては非常に煩わしい作業が多くなってしまいます。

BIMを使った作業の流れ

実際に業務でBIMを活用しようと思っていても具体的なイメージができないという方も多いでしょう。BIMを使った作業の流れは次の順序になります。

  1. 3Dモデルを構築する
  2. 図面ビューを作成する
  3. 面積表や数量表を作成する
  4. 設計図を作成する

それぞれ順番に解説していきます。

3Dモデルを構築する

BIMでは、完成後のイメージを立体的に表現するために3Dモデルを構築していきます。具体的には、オブジェクトと呼ばれる建具や家具をデジタルで表現されたものを組み合わせることで、よりイメージに近づけていきます。

また、配置された各オブジェクトには寸法や品番、単価などのデータを紐づけることで、今後の設計や施工管理に役立てることが可能です。

図面ビューを作成する

BIMでは、ビューと呼ばれる3Dモデルの断面図を平面図や立面図、配置図などさまざまな視点から見た図面を作成していきます。

従来の設計では、平面図や配置図など手作業で書いていく必要がありましたが、BIMで1つの3Dモデルを構築することで作業量の大幅な削減が可能になりました。しかし、BIMで構築した3Dモデルで変更した箇所が自動的に反映されるため、図面修正に手間をかける必要がなくなり、労働時間の削減にも期待ができます。

面積表や数量表を作成する

敷地面積や建築面積をまとめた面積表や数量計算表などの集計表を作成していきます。BIMで作成した図面ビューと集計表は3Dモデルとデータが紐づけられているため、修正するとリアルタイムで自動更新されます。

以前は、修正が発生すると当然ながら関連づけられたデータもすべて手直しが必要でしたが、BIMの機能を活用することで作成・管理が効率的になります。

設計図を作成する

図面ビューや集計表をベースに設計図を作成していきます。BIMで作成した設計図があれば、次の工程で必要な施工図も手間をかけずにできます。

具体的には、BIMの中にある図面枠シートに図面ビューを貼り付け、必要なデータを作成して印刷すると設計図面が完成する流れです。第三者にも完成図の共有が容易になるので、2D図面で起こりやすい不整合の未然防止にもつながります。

BIMのメリット

従来の図面作成が効率的になることでも注目されているBIMですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?BIMを活用することで得られる主なメリットは次のとおりです。

  • 手作業による修正が減る
  • 設計の可視化ができる
  • 時間とコスト削減が可能

1つずつ解説していきましょう。

手作業による修正が減る

変更時に他の図面にも自動反映する機能が備わっているため、BIMで3Dモデルを構築することで、手作業によるミスや修正が減ります。

今までのCADには自動反映の機能がなかったため、それぞれの図面を別個で作成した後に1つずつ照合しながらチェックする必要がありました。BIMでは、変更箇所があった場合に関連するデータ更新が可能になったことで、時間をかけて目視による手作業が不要になります。

膨大な時間が必要な建築において、工期の短縮にも繋がるので結果的にコスト削減の効果が期待できます。

設計の可視化ができる

BIMのメリットは視覚的に完成後のイメージの共有が容易になった点です。実際の施工現場においても、事前に課題点の発見が容易であることから進捗管理も楽になります。

たとえば、今までは建築物の照明度合いを検証するためには専門家へ依頼する必要がありましたが、社内のデスクでも想定したシミュレーションが可能になったことでコスト削減になります。

また、BIMのオブジェクトに単価入力を行うことで工事金額の見積りも可能です。設計図面だけでなく、数値的にも可視化ができるので、精度が高いデータ作成ができるでしょう。

時間とコスト削減が可能

BIMでは、設計図面の完成において作業工程の短縮化が可能であることから、結果的に時間とコストの削減も期待できます。また、工事費用の見積りにかける手間が少なくなり、完成後の設備点検や部品の交換時期の目安を管理する際にも役立ちます。

一度BIMで作成したデータには設備名称や交換時期の詳細が残されるため、メンテナンスが必要になったときにメーカー情報があればスピーディーな対応が可能です。

代表的なBIMのソフト

工数の削減に効果的なBIMは1種類だけでなく、メーカーごとに特徴や機能が異なります。ここでは、代表的なBIMのソフトを紹介していきます。

ARCHICAD

ARCHICAD(アーキキャド)は、ハンガリーに本社を置くグラフィソフト社が提供しているBIMです。建築物のレンダリングが容易であることから、プレゼンテーションの場面でも活躍します。

また、オブジェクトの数が豊富でBIMの経験が少ない方でも直感的に3Dモデルの作成が可能なので、操作性の高いソフトとして人気です。さらに、Macにも対応している数少ないBIMである点も魅力の一つです。

Autodesk Revit

Autodesk Revit(オートデスク レビット)は意匠設計や構造エンジニアリングまで幅広い分野でも活用されているBIMで、オートデスク社が提供するソフトとも連携が可能です。

また、意匠や構造、設備の設計担当者を分けて異なるサーバーで3Dモデルを作成しても、クラウドで統合が可能なので、遠隔による共同作業も実現しています。

Gloobe

Gloobe(グローブ)は、国内の建築基準法に基づく設計が可能なBIMとして活用されています。国産のBIMということもあり、日本の建築設計に特化しているソフトです。

具体的には、工事の実施に必要な実施設計図面や法規関連図面を3Dモデルから自動作成が可能です。また、初期の建築に必要な仮設の配置計画から検証まで行うことができるため、利便性が高い機能が充実しています。

Vectorworks

Vectorworks(ベクターワークス)はAdobe製品のフォトショップやイラストレーターで作成したデザインとも連携が取れることでも便利なソフトです。実際にデザイン事務所や内装業界でも多く活用されています。

また、直感的にわかりやすいインターフェースなので、あまり慣れていない方でも覚えられるメリットがあります。さらに、太陽光と影の位置や建具の寸法などの把握にも役立つため、作業効率が高いBIMです。

Tekla Structures

Tekla Structures(テクラストラクチャー)はフィンランドにあるテクラ社が提供するBIMで、世界中で導入実績を持ちます。主にコンクリートや鉄骨などのオブジェクトが充実しているため、鉄筋の組立も容易にモデル化が可能です。

また、施工期間のスケジュール管理やボルトなどの接合部の細かいモデル作成ができるLOD500の機能も備えられています。

Rebro

Rebro(レブロ)は設備設計専用の3Dモデルを構築が可能なBIMで、空調や衛生、電気設備のモデリングから必要な図面作成もできます。また、建築業界ではRebroで設備設計を行い、Autodesk Revitで建築モデルと統合しながらBIMで3Dモデルの製作を進めていくケースが多く見られます。

他のCADで作成した3Dデータとの照合ができるので、相互に確認しながら整合性が取れた図面作成が可能です。

BIMデータの活用方法

他のソフトとの連携も可能なBIMが存在する中で、実際にどのように活用すれば良いのでしょうか?BIMで作成したデータは次のように活用ができます。

  • 立体的な図面データで認識のズレを解消する
  • 日照や周辺環境をモデリングする
  • 建築物の安全性を確認する
  • 購買促進ツールとして活用する
  • デジタルコンテンツの制作に活用する

立体的な図面データで認識のズレを解消する

BIMで作成した立体的な図面データを活用することで、取引先とのイメージ共有の手段として、お互いの認識のズレを解消できます。基本は設計や施工の段階で活用されることが多く、専門知識がない人でも容易に情報共有ができるメリットがあります。

2D図面のように平面図ではわからない立体的な3Dモデルを参考にしながら、打ち合わせやプレゼンテーションの場でも役に立つでしょう。完成後のイメージとの違いを未然防止できることから、BIMのデータを上手く活用することがポイントです。

日照や周辺環境をモデリングする

BIMのデータは設計段階において、建築物の日当たり具合や周辺環境のモデリングに活用ができます。実際に時間帯ごとに変わる日照の位置や近隣から室内が見えてしまうリスクを把握することが可能です。

完成後の問題点を回避するためには、データによる検証が非常に重要です。また、工事を始めてから細かい計算が不要になり、イメージが可視化されるのでロスの削減に期待できます。

建築物の安全性を確認する

BIMで作成したモデリングのデータを参考に、人間と建築物の間で考えられるリスクを想定したときに課題点のピックアップができます。データから施設の外観や内部に設置する予定の建造物の安全性を検証しながら確認も可能です。

たとえば、子ども用の遊具を配置するときに、子どもと建造物の間ではどのようなリスクが想定されるのかなどの情報を参考に、安全性を考慮した目標設定もできるようになります。

購買促進ツールとして活用する

BIMのデータは建築物の設計以外にも、建物を販売する不動産が購入検討者に立体的なアングルで入居後の具体的なイメージを共有することが可能です。

これから購入を考えている人にとっては、平面図を見せられても有識者にしかわからない部分が隠れている可能性が高いため、3Dモデルを使うことで説明が容易になります。チラシなどで具体的な施設内の様子を掲載すると購買促進ツールとしても活用できるでしょう。

デジタルコンテンツの制作に活用する

BIMというと、建築業界でしか使われないイメージが強い方も多いですが、最近ではデジタルコンテンツの製作にも活用されており、注目が集められています。

たとえば、拡張現実と呼ばれるARと仮想現実で知られているVRの登場により、空間内の仮想建築物の設計にもデータの応用が可能です。そのため、新たな分野への実用化が進められています。

BIMを活用した実例

BIMについてわかったところで、BIMが実際に利用されている例を紹介しましょう。

名古屋城天守閣木造復元プロジェクト(株式会社 竹中工務店)

何かと話題に上がった名古屋城天守閣木造復元プロジェクトですが、実は設計施工を請け負う竹中工務店はBIMを活用してプロジェクトを進めています。
名古屋城の木造復元という難解なプロジェクトは、タイトなスケジュール感に加え、設計と調査を同時に進めて随時木材の発注を行うという独特なプロジェクト進行であったため、BIMを活用して膨大で複雑なデータを一元管理することで恐ろしく複雑なプロジェクトを進行させていきました。
また、調査によるデータの集約・反映や、局面屋根の再現も、BIMによる恩恵を大きく受けています。

三栄建設鉄鋼事業本部新事務所(株式会社 竹中工務店)

こちらもBIMの活用に定評のある竹中工務店による設計施工なのですが、こちらの建物では、傾いた壁や斜めに切り欠いたファサードを作るためにBIMが活用されています。
斜めの鉄骨や壁を表現するには2Dの平面図や断面図だけでは限界があるため、3Dモデリングを行うことで施主への説明をより分かりやすいものにしました。
また、斜めの部材は施工の場面でも障害が多く難しいため、BIMにあらかじめ集約された詳細な施工データを基に、段階的に実際の施工状況と比べながら作業を行うという極めて合理的で正確な方法をとることができています。

まとめ

BIMの概要から活用方法まで解説しました。従来の3DCADを使用した設計とは異なり、高精度の設計や施工までの進捗管理にも便利なソフトです。

建築業界ではBIMの導入が相次いでいることから、業務のIT化を担うシステムとして注目を浴びています。こちらの記事をご覧になっている方も、この機会にBIMの導入を検討してみてください。

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