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自動車ナットの自動生産を実現!課題や製造業界で進むDX事例も紹介

ナット・締結部品の製造販売を担う企業「紀州ファスナー」が、新たに完全自動で自動車向けナットを製造できる工場を新設すると発表しました。完全自動化に伴い、どのような効果が生まれるのでしょうか。

今回は紀州ファスナーが実施するDXのニュースをもとに、生み出される効果について深掘りしていきます。DX化が進む製造業の事例や動向も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

紀州ファスナーが自動車ナットの自動生産工場を新設

製品・設備・施設などに用いる「締め金具」を製造販売する紀州ファスナーが、和歌山県御坊市の工場敷地内に、完全自動生産の自動車向けナット工場を新設するというニュースがありました。

工場新設にかかった投資額はおよそ20億円であり、工場の自動化だけでなく従業員の仕事環境の整備も同時に進められています。

紀州ファスナーはこれまで「人力」「機械」を組み合わせて自動車ナットを生産するスタイルを確立していました。しかし、紀州ファスナーにも少子高齢化といった影響が出ており、生産性向上や省人化のために自動車ナットの完全自動化が進められています。

紀州ファスナーの概要

創業 昭和32年2月
本社 大阪府東大阪市若江南町5-3-53
提供製品 緩み止め Vナット
ハイブリッドナット
六角ナット(JIS、ISO、各社自動車規格)
長ナット
冷間圧造特殊ナット
丸カラー・スペーサー・パイプ・リング
など

自動車ナットの工場新設の概要

紀州ファスナーが新設に動き出している自動車ナットの工場は、敷地面積2万3,000m²の範囲に建設される予定です。敷地内には自動車ナットの製造に必要な以下の設備が導入されます。

  • 自動車ナットの圧造機
  • ネジ加工機
  • 洗浄機

また新工場の稼働に伴い、新たなDX人材の採用を進めるなど、新技術に対応できる製造環境が着々と整備されている状況です。

自動車ナットの完全自動生産が可能になれば、月間2,000万個もの自動車ナットを製造できるようになります。人力・機械によって生み出されていた従来の生産効率より20%向上すると予想されています。

自動車ナット工場のDXにより労働時間を2割削減

自動車ナットの自動生産工場の新設を含め、和歌山県の工場では自動化装置の導入や省人化・効率化が進められています。DX化推進の結果、20年前の製造体制と比べて、従業員1人当たりの労働時間が2割程度削減できているそうです。

また今後、自動車ナットの完全自動生産工場が新設されることにより、さらなる作業効率化・省人化を目指せると期待されています。

自動車ナットの自動生産化により生まれる効果

自動車ナット工場のDX化で生まれる効果

今回、紀州ファスナーが実施する自動車ナットの完全自動生産化に伴い、4つの効果が生まれると予想されます。

製造工場の生産力UP

自動車ナットの完全自動生産化に伴い、生産における次の生産ロスが減り、生産力UPにつながると予想されます。

  • 段取りの調整ロス
  • 人力作業のロス
  • 設備故障のロス

完全自動化によって計画的に自動車ナットの生産を進行できるのはもちろん、人力作業が加わることによるミスや能力差といったポイントを解消できるのが特徴です。また設備のIoT化を進めれば、設備の不備・故障を未然に発見できます。

従来の製造環境と比べて生産効率が高まり、結果として短時間でより多くの製造が可能となるでしょう。

製造コストの削減

工場の完全自動化を実現できれば、製造の全工程を機械に任せられるのが特徴です。
省人化により人件費を削減できることはもちろん、IoTの技術やシステムを活用することによって、生産予定数・不良品率などを明確に把握できます。

ムダのない効率的な生産を実施できるため、製造コスト削減により、自動車ナット製品の低価格化を実現し、自動車ナットを製造する競合他社と差を付けることができます。

新たな人材採用

自動車ナットの完全自動化に伴い、自動化の知識・技術を持つ人材が新たに採用されると予想されます。実際に紀州ファスナーのニュースでも、装置管理の人材を追加採用する話が出ているなど、DX人材の確保が進められている状況です。

単純作業は機械に任せて判断や検討といった部分に人力を割くというように、今後、製造業全体で人材採用の変化が生まれていくと予想されます。

サプライチェーンの強化

自動車ナット工場の自動化に伴い、生産に関わるサプライチェーンのつながりが、今まで以上に強化されると予想されます。なぜなら自動車ナット工場は、工場内だけでなく次のような外部企業との連携が重要だからです。

  • 自動車ナットに用いる材料の発注(貿易・卸売企業)
  • 自動車ナット製品の輸送企業(運送企業)
  • 自動車ナットの販売店

自動車ナットを作るためには材料の準備が必要であるほか、製品を販売店まで輸送しなければなりません。生産効率工場のためには、前後に発生する工程に着目する必要もあるため、DX化対応の提携企業を検討するなど、サプライチェーンの強化が進むと予想されます。

自動車ナット工場におけるDX化の課題

自動車ナット工場DX化の課題

自動車ナット工場の自動化には、生産性向上やコストダウンといった魅力がある一方、DX化に伴う課題も複数あります。DX化を実現しにくい企業があること、そして改題解決の方法も含めて紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

導入コストが高い

自動車ナット工場を含めて製造業でDX化を実現する際には、次のような導入コストが発生します。

  • 設備導入
  • システム導入

費用面はもちろん、導入にかかる手間、時間が必要です。
新たな機能・技術を搭載するためには、導入にリソースを割かなければならないと覚えておきましょう。

もし導入コストの問題を解決したいのなら、国が提供しているDX化の補助金等を活用するのがおすすめです。「ものづくり補助金」「IT導入補助金」といった制度を活用することによって、ハードルの高いDX化を実現しやすくなります。

製造工程を一新しなければならない

DX化を実現するためには、設備を導入するだけではなく現状の製造工程を一新し、DX化を基盤とする製造工程を再構築しなければなりません。

なぜなら、自動車ナット工場を含め、多くの製造業の向上は人力と機械を活用した製造工程でプランニングされているからです。IoTや効率化システムを導入する際には、不要になる作業、追加で必要になる作業も多いため、工程の変更が欠かせません。

もし自動車ナットなど製造業におけるDX化を進めたいのなら、事前の計画検討が重要だと覚えておきましょう。また検討の際には、製造工程の検討に役立つ「産業用メタバース」といった新技術が便利です。記事で紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

【2024】産業用メタバースとは?デジタルツインに活用できる最新技術・事例を紹介

従業員の教育が必要になる

製造業のDX化を実施する際には、設備・システムの導入に合わせて従業員の教育が欠かせません。

自動車ナットのニュースの中でも「新たな人材確保」の説明がされており、DX化に伴う環境に対応できる人材が求められています。また、新たな人材だけでなく既存従業員の教育も必要不可欠です。

DX化により自動車ナット工場(また他の製造業)の誰に影響があるのか、新しくどういった知識を学ばなければならないのかを具体的に共有し、適切な研修等・セミナー参加を実施することが重要になるでしょう。

もしDX関連のセミナーをお探しなら、以下のセミナーがおすすめです。
オンラインで手軽に参加できるため、DXを学ぶきっかけにしてみてください。

実践的に学べるDX完全攻略セミナー

製造業で進むDX化の事例

紀州ファスナーによる自動車ナット工場の新設だけでなく、製造業ではさまざまな工場DXの取り組みがスタートしています。参考として、他社で実施されてるDX事例を2つまとめました。

工場のIoT化

自動車ナットを利用する側であるトヨタ自動車は、自動車製造工場のIoT化を実現しました。

ナットなどの部品利用のほか、顧客からデータを得ながら工場生産の効率化を図るために、設備全体をIoT化しています。機器類のログデータを保管することによって、リアルタイムで以上を検知できるのが特徴です。

また、工場内の設備を3DCADデータとしてデジタル化することにより、数値だけではなくビジュアル面でもわかりやすいデータ管理環境が整えられています。

生産管理のクラウド化

自動車部品に使われるナットの製造を実施する株式会社新城製作所は、管理部門における生産管理のDXを実施しました。

業務の中で発生する書類のやり取りをクラウドサービスに移行し、いつでも過去の情報を掘り起こせる環境が整えられています。金融機関との金銭のやり取りのほか、社内間の情報共有としてビジネスチャットアプリが導入されました。

工場稼働の裏で動く管理部門の作業が滞ると、自動車ナットの生産スピードにも影響が生まれます。自動車ナット工場の設備・システムのDXはもちろん、裏方となる場所のDXについても検討していくべきでしょう。

自動車ナット製造における今後の展望

自動車ナット工場DXの今後の展望

今回、紀州ファスナーが自動車ナット製造の完全自動化を実現することに伴い、競合他社でも同様にDX化の波が広がっていくと予想されます。

DX化が実現すると、生産性向上、コスト縮減により今後低価格でナットの提供が可能です。
他社と比べて安く早く製品製造ができるようになることから、紀州ファスナーに注目が集まりやすくなるでしょう。

とはいえ、競合他社でも同様に利益縮小が生まれないようにDXの取り組みがスタートします。
他社に負けないようなDXの取り組みが、国内企業で頻発化し、製造業全体の効率が高まっていくかもしれません。

また自動車ナット工場を含め製造業のDX化を検討する際には、品質管理にも注目しなければなりません。ナット製造時のミス・不備を減らすためにも、事前に品質管理問題について理解しておきましょう。

【2024】品質問題はブラックボックス化が原因?不正改ざんした企業事例も紹介

自動車ナット製造の自動化についてまとめ

大手自動車ナット製造企業の紀州ファスナーが「完全自動化の工場」を新設することに伴い、今後製造業全体でもDX化の波が広がっていくと予想されます。

大量生産が求められる自動車ナット等の部品製造量が増えれば、自動車業界でも低価格で製品を作りやすくなります。製造業界全体のサプライチェーンにも良い影響が広がっていくため、自動車ナットのDX化を含め、今度の動向から目が離せません。

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