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自動車をCAE解析する手順!構築やCAE解析・シミュレーションまでを徹底解説

CAE解析はものづくりの現場において必要不可欠となりつつあります。それは自動車製造の分野においても例外ではないと言えるでしょう。では、どのような手順で自動車のCAE解析をしていけばよいのでしょうか。今回は、自動車をCAE解析する手順や、おすすめのCAEソフトなどについて解説します。

自動車をCAE解析する手順

そもそもCAE(Computer Aided Engineering)とは、工業製品を開発・研究する過程で、コンピュータ上で試作品を作って様々なシミュレーションを行い、分析することで開発上の課題点を見つけ出したり、課題を解決できているかを考える工程を指します。従来であればテスト用の試作品を実際に作って、現実世界で様々な実験やテストを行っていたものを、コンピュータ上でそのまま行うイメージです。

CAEを行う上ではもちろんツールの力を頼ることになりますが、重要となるのは如何にCAE解析のためのモデル化を行うかです。即ち、ツールを利用する前段階こそが肝となるステップと言えるでしょう。これを踏まえた上で、どのような手順でCAE解析を行っていくかを以下で解説します。

解析対象の課題点やテストの目標を明らかにする

まずは、これからCAE解析を行う上での目標設定を行います。解析対象について、どのような課題が存在するのか、CAE解析によって明らかにするべき事項は何かについてを洗い出しましょう。自動車の場合は、「空気抵抗がどれだけ走行に影響を与えるか」「衝突した際に車内の人間の安全性はどこまで確保されているか」などの事項を目標として設定することになります。材料工学や機械工学などの知識を使って、テスト目標を確実に設定するようにしましょう。

物理モデルの構築

課題を設定したら、その課題を分析するために最適な物理モデルの構築を行います。例えば、路面の凍った道路で急ブレーキをかけた場合のスリップ距離について検証したい場合、どれぐらいの重さの車を想定しているのか、凍った路面での摩擦係数はどれほどか、といった事柄を物理学的な見地から設定していきます。この物理モデルが正確でなければ正しいシミュレーション結果は得られないため、モデルの構築は慎重に行う必要があるでしょう。

数学モデルの構築

物理モデルで設定した状況を、数学の知識を利用して数式に落とし込んでいきます。シミュレーションで設定する状況を正確に再現するためには、様々な値を正しく設定する必要があります。物理モデルを落とし込んだ数式で、代数解を見つけることができればベストです。数式が解けるものとなっているかどうかをしっかりと見極めましょう。

数値解析

物理モデルをもとに構築した数学モデルで、代数解を見つけるのは手作業では非常に困難です。ここで、ツールの力を借りて数値解析を行い、解を見つけ出します。この時、計算誤差が発生する点には十分に注意しましょう。適切な物理モデルと数学モデルが用意できれば、解析結果も精度の高いものが得られるはずです。

シミュレーション実施

数値解析の結果を元に、実際のシミュレーションを行います。ツールを使うことで、設定した状況の中でどのようなことが起こりうるのかを繰り返し試験することが可能です。問題点が見つかれば、何が悪かったのか、どこに原因があるのかを見つけ、改善の種としましょう。シミュレーション上であれば、衝突実験や耐久試験などといった、現実で行うとコストがかかったり危険が伴ったりする実験も安全にコストを抑えて何度も行うことが可能です。CAEならではの利点を活かすことが、CAEでのシミュレーションを行う最大の意義と言えるでしょう。

CAE解析でおすすめのソフト5選

以下では、CAE解析で便利なソフトを5つピックアップして紹介します。いずれも様々な長所が存在するので、自分の目的や状況に合わせてツールを選ぶと良いでしょう。

ANSYS

アメリカのANSYS社が開発した有限要素法解析プログラムがANSYSです。CAEを中心に複数の解析ソフトウェアで構成されており、電気-構造、電気-磁場、流体-構造などといった形で、異なる解析場を組み合わせて解析を行う「マルチフィジックスソリューション」(連成解析)を行う上では非常に役に立ちます。構造解析と伝熱解析を行うANSYS Mechanical、熱流体解析で頼ることになるANSYS CFD、電磁界解析を行う上で役に立つANSYS HFSSといった機能モジュールが用意されていて、それぞれにニーズに合わせた料金プランが設定されていることも大きな特徴です。

NX Nastran

NX Nastranは、アメリカのMSC Software社の研究開発によって得られた成果をもとに、ドイツのSiemens社によって開発が行われたCAEソフトウェアで、自動車のみならず航空宇宙、造船、兵器、重機など様々な業界で利用されているのが特徴です。高度な非線形解析に対応しており、中央差分法によって収束が困難な非線形解析を行ったり、2タイプの解析ソルバーを使い分けることで検証結果を素早く得られたりするなど、機能面でも優れた部分が目立ちます。

Particleworks

流体解析を行うならば、Particleworksは大いに役に立つCAEソフトと言えるでしょう。東京大学の越塚誠一教授による監修の元、プロメテック・ソフトウェア株式会社によって開発された国産CAEソフトで、粒子法による流体解析を得意としています。CADファイルをそのまま読み込んで解析を行うことが可能であり、煩雑なメッシュ作成作業を省略することができる点は大きな強みです。CAE解析結果を可視化する機能も優れているため、プレゼンやPRのための資料作りも容易に作成できることでしょう。

SOLIDWORKS

3D CADソフトとして非常に評価の高いSOLIDWORKSは、CAE機能を備えている点でも優秀と言えるでしょう。CADで3次元モデリングを行った後に、シームレスにCAE機能で構造解析を行うことができるため、設計プロセスの初期段階で迅速に検証を行うことが可能です。使い勝手の良さもCAD機能とCAE機能で共通しているため、利便性に関しては文句なしのソフトと言えます。

Fusion 360

SOLIDWORKS同様にCADとCAEの機能を併せ持つソフトが、Autodesk社が送り出すFusion 360です。何と言っても、非商用ならば企業でも無料で利用可能な点が最大の魅力と言えるでしょう。データをクラウド上で管理しているため、データを共有しやすく、万が一のときもクラウド上のバックアップデータを呼び出せる安心な作りになっているのは大きな強みです。解析自体もクラウド上で行いますから、素早く複数のシミュレーションを行うことができます。

自動車のCAE解析を行う際のコツ

自動車のCAE解析を行う上では、精度とスピードのバランスを取ることが何よりも重要です。様々な切り口で解析を行うためには非線形解析や動解析などを使って緻密に行う必要がありますが、その分時間がかかってしまいます。逆に、線形解析や静解析はスピーディに解析を行うことができますが、ある程度条件が限定されてしまうのがネックです。また、メッシュサイズによっても解析精度とスピードのバランスは変わってきます。適切なタイミングで、その場面に応じた精度とスピードの解析を行うことが、効率よく自動車のCAE解析を進められると言えるでしょう。

また、ツールはあくまでも解析を容易にするためのツールであり、「解析で何を調べたいのか」「どのようなモデルを作れば状況をシミュレーションできるのか」という準備段階がきちんとできていなければ、ツールを使ったとしても上手くシミュレーションを行うことはできません。課題の設定と物理モデルの構築という2つのステップは、決しておろそかにしてはいけないことを肝に命じておきましょう。

自動車のCAE解析は準備によってソフトが活きる!

自動車のCAE解析は、様々な条件を設定してシミュレーションを行うことで、実際の試作品を使ったテストよりも安全かつ低コストで検証を進めることが可能です。しかし、そのためには「何を調べたいのか」「どんな物理モデルを構築すべきか」がしっかりとしていなければいけません。CAEツールを最大限に活かすためにも、準備段階の手順を油断なく着実に進めていきましょう。

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