CAMソフトの導入を検討している方の中には、「CNC加工機をもっと効率良く扱いたい」「チーム全体でCAMプロジェクトを進めたい」といったニーズをお持ちの方も多いことでしょう。
そこで活用できるのが、Autodeskが提供している「FeatureCAM」です。今回は、FeatureCAMの概要や、活用することで得られるメリット、主な機能や使い方について詳しく解説します。
CAMソフト導入の一つの選択肢としてFaatureCAMの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
Fusion 360 with FeatureCAMとは
画像引用元:Fusion 360 with FeatureCAM
FeatureCAMは、CADソフトであるAutodeskから出ているFusion 360と連携性のあるソフトです。フライス加工や旋盤加工、複合旋盤加工、ワイヤーEDMなど幅広い加工に対応しており、初心者から上級者まで幅広く活用できるCAD/CAMソフトウェアとなっています。
また、FeatureCAMに付属しているFusion360を活用する場合、FeatureCAM Ultimate、PartMaker、Fusion 360 Team、HSMWorks などAutodeskから出ているあらゆるソフトワンパッケージで利用できます。
FeatureCAMの動作環境
FeatureCAMは以下のような環境で動作します。
オペレーティング システム | 64 ビット版 Microsoft® Windows® 11 および Windows 10。 |
CPU の種類 | マルチコアの 64 ビット プロセッサ(Intel® Core™ i7 や Intel® Core™ i9 など)
最小4コア、8コアを推奨 コア数が多いプロセッサでは、個々のコアクロック速度が高いプロセッサが推奨されます |
メモリ | 8 GB以上のRAMを推奨
要求の厳しい成形品には16 GB以上のRAMを推奨 |
GPU | プロフェッショナルな範囲のNVIDIA GPUまたはグラフィックスカード(Quadro®など)
最低2 GBの完全版OpenGL® 2.0互換 |
画面解像度 | 1920 x 1080 |
ディスク空き容量 | 160 GB |
引用元:Autodesk公式サイト
価格
Fusion 360 with FeatureCAMのライセンス料金は、年間801,000円(税抜)です。また、3年プランを利用する場合は、2,283,000円(税抜)の料金で利用可能です。
FeatureCAMを利用するメリット
FeatureCAMを活用することでどのようなメリットが得られるのでしょうか?ここでは、他のCAMソフトと比較してFeatureCAMの優れているポイントを5つ紹介します。
操作が簡潔
1つ目のメリットは、操作が簡潔であることです。
FeatureCAMは、UIが非常に簡潔でとにかく使いやすいことが特徴です。また、少ない操作でNCデータを加工できるアシストがついているため、学習用として、学校での活用事例も多数あります。
加えて、わかりやすいステップメニューが搭載されているため、CAD/CAM初心者からベテランまで幅広い方がストレスなく利用できるでしょう。
難しいプログラムでも簡単に作成できる
2つ目のメリットは、難しいプログラムでも簡単に作成できることです。
FeatureCAMにはナビゲーションシステムが搭載されており、どれほど複雑な加工でもナビゲーションシステムを使用すれば、従うだけで対応できます。
また、フライス加工、旋削加工、ワイヤー放電加工を含む幅広いCNC加工方法がサポートされているため、制作したデータの加工方法に迷うことはありません。
加工ノウハウの保存でデータ作成を自動化できる
3つ目のメリットは、加工ノウハウの保存によってデータ作成を自動化できることです。
従来のプログラミングの場合、図面などを見ながら加工作業を行い、どの工具を使用するのかを設定したり、送り速度回転数やZステップ、ステップオーバーなどの加工条件をその都度設定したりする必要がありました。
しかし、FeatureCAMの場合は、決められたパターンを使用して自動的に加工方法を定義づけることが可能です。時間がかかっていた作業を簡略化できるとともに、過去制作したデータが自動的に呼び出されるため、使うほど作業工数を簡略化できるメリットがあります。
実際に、FeatureCAMの自動化によってプログラミングにかかる工数を90%削減した実績があります。
3Dモデルから2次元加工ができる
4つ目のメリットは、3Dモデルから2次元加工ができることです。
3Dモデルから2次元加工の可能な部分を自動抽出してくれるため、2次元加工用に別途データを作成する必要がありません。また、複雑なパーツの加工を自動フィーチャー認識によってシンプルに変化させてくれるため、効率的に製品を製造できます。
NCデータを自動作成できる
5つ目のメリットは、NCデータを自動作成できることです。
3〜5軸ミル、旋盤、ターンミル、スイス型旋盤、ワイヤーEDMなどの機能幅広い種類の加工機用NCデータを作成できるため、用意した機材をフルで活用できます。また、加工内容を事前にシミュレーションでき、どのデータをどのように加工するかが明確になります。
FeatureCAMの主な機能・使い方
次に、FeatureCAMの機能や使い方について解説していきます。主に使うものだけでも12の機能があるため、それぞれを簡潔に解説します。
衝突回避
衝突回避は、モデルを切削する際にパーツと衝突する危険性を抑止する機能です。モデルの指定領域を回避したり、ジオメトリに基づいてツールパスをトリムしたりを自動で実行できます。
クランプと固定具
プログラミングを行う際に、工作物を固定するクランプを考慮できます。クランプは、事前に定義した標準的なモデルをライブラリから採用したり、ユーザーが独自に制作したソリッドモデルを使用したりすることも可能です。
また、ここで設定したクランプはソフトによって認識され、ツールバスを自動更新します。つまり、クランプとの衝突も自動で防いでくれるのです。
シミュレーションとビジュアライゼーション
CNC加工によって、ツールがどのように作動するかのシミュレーションも行ってくれます。実際に加工する流れがシステム上で確認でき、「どのタイミングでマシンをダウンさせるか」や「ドリルツールが故障するタイミングはいつか」などの細かい情報もチェックできます。
加えて、製造後のパーツとプログラム段階の差異もシミュレーションで示してくれるため、機械加工による誤差も理解できます。
マテリアル量の計算が可能
パーツ加工時に、マテリアルがどの程度残っているのか、量を考慮した加工方法を用いることが可能です。ストックモデルから削られた部分のマテリアル量と、残っている部分のマテリアル量の両方を把握しているため、エアーカットを避けた加工が可能となります。
また、荒取り加工中にもリアルタイムで計算を行うため、途中で加工が止まってしまったとしても、途中から再加工を行うことができます。
CNCフライス加工
3軸、4軸、5軸加工に対応しており、ヘッド型、テーブル型、ヘッドテーブル型などさまざまな方式のCNCマシン、マシニングセンタを使用できます。
CNC旋削加工
CNCの旋盤加工も簡単に行えます。具体的には、自動R面取り加工やパーツ処理などにも対応しており、旋盤加工によってモデルの強度を高める専門性の高い手法にも役立ちます。
スイス型旋盤
スイス型旋盤を完全にコントロールできる「マシンモード」が搭載されています。一般的な加工方法とは異なる独自のスイス型旋盤加工にも対応している上、利用できる工具やパーツ製造のオプションなど、さまざまなものを選択可能です。
ターンミルセンター
ターンミルセンターの加工方式にも対応しています。「自動ピンチフォロー旋削加工」を活用すれば自動的に待機コードが配置されたり、材料の除去スピードを倍増させたり、送り速度をカスタマイズしたりすることが可能です。
また、高度なツールホルダーをFeatureCAMに同期させることで、マシンの性能を向上させたりツール交換の必要英を削減できたりもします。
フィーチャー認識
フィーチャー認識機能を活用すれば、切削加工可能なフィーチャーをデータから読み取り特定し、自動抽出します。したがって、プログラミングにかかる時間を大幅に削減可能です。
ワイヤーEDMマシン
2軸および4軸ワイヤーEDMマシンのプログラミングにかかる時間を大幅に短縮できます。加工に特化した手法でツールパス戦略を策定したり、過去の切削加工データベースを活用したりし、高品質のサーフェスを効率的に実現できるでしょう。
サイクルタイムの効率化
切削加工の操作とプロセスを同期して作業を最適化できるツールが用意されています。そのため、マシンの操作性を最大限に高め、サイクルタイムを大幅に効率化できます。
また、メインおよびサブスピンドルの操作を同期させることで、衝突を防ぐことに特化した動きを自動で計算し、サイクルタイムを短縮できるでしょう。
ビルトインインテリジェンス
過去の製造情報をもとにして加工方法を判断するのが「ビルトインインテリジェンス」です。
ツール、ステップオーバー、ステップダウンなどが自動的に選択され、一貫したプログラミングが担保されます。また、すべての加工情報がフィーチャーに基づくため、寸法や加工方法を変更すると、変更情報を反映し、操作の仕方が自動的に更新されます。
つまり、変更したことによって新たなプログラミングを行う必要がなく、効率的に加工を進めることが可能です。
FeatureCAMでできること
次に、FeatureCAMの導入によって実現できることを3つ紹介します。
幅広い種類の加工機用のNCデータを作成できる
フライス、旋盤、複合旋盤、スイス式旋盤、ワイヤー、イケールなど幅広い加工方法に対応しているため、あらゆるマシンに対応可能です。また、ソフトを使ってマシンシミュレーションを行えるため、ツールの衝突リスクを未然に防げます。
CAMの自動化が標準搭載
複雑な作業が発生すると、人的ミスを引き起こしやすくなります。しかし、FeatureCAMにはCAMの自動化機能が標準搭載されているため、複雑な作業を行う必要がなく、効率的にミスのない加工を実現できます。
加工前のシミュレーションにも対応可能
加工前のシミュレーションでは、ダウンタイムの計測やツールパスの連携を行えます。また、シミュレーションによってプログラミングしたパーツと実際に設計したパーツの差異をハイライト表示できるため、機械加工によってどのくらいの誤差が発生するのか把握できます。
FutureCAMの導入企業事例
最後に、FeatureCAMを導入した企業事例を3社紹介しましょう。
株式会社アオキシンテック
株式会社アオキシンテックは、単品部品加工、治工具などの設計・製作・組立、機械修理や各種ものづくりを行っている会社です。
同社では、CAMがワークに干渉してしまったり、UIの難易度が高く特定の人しか利用できなかったりするといった問題点を抱えていました。そのため、プログラム作成に多くの時間を必要としていたようです。
FeatureCAMのフィーチャー認識機能と工具データベースの登録機能を使ってプログラムを行った結果、2D加工、3D加工、5軸加工など幅広い加工に取り組むことができる上、経験者・未経験者の差が縮まり、安定した加工ができるようになったそうです。
株式会社アヅマ
株式会社アヅマは、樹脂と非鉄金属の切削加工を専門とするメーカーです。小ロットで射出整形が難しい形状の製品をメインとして加工を施してきたようです。
同社は、加工技術に関しては多くの方から信頼を得ており、不満はなかったようです。しかし、リスクヘッジのために受けた複雑な形状や加工難易度の高い仕事によって加工が追いつかなくなり、FeatureCAMの導入に踏み切ったようです。
FeatureCAMを導入する以前から、同社は他社製のCAD/CAMを使用していました。しかし、従来使用していたソフトでは約半日かかっていた加工プログラムが、FeatureCAMならはじめての操作にもかかわらず、1時間足らずで加工が完了してしまったようです。
Bright Engineering
航空宇宙産業を手がけているBright Engineeringは、FeatureCAMの導入によってプログラミング時間を50%も短縮できたといいます。
従来のソフトウェアと機材ではダウンタイムが多く、古いマシンを定期的に交換しなければならなかったようですが、FeatureCAMを導入した結果、5軸加工にも問題なく対応できるようになりました。
加工効率が大幅にアップしたことで、プラスチックからステンレス鋼、特殊なニッケル合金までさまざまな素材の加工に挑戦でき、現在はアイルランドとアメリカ、イギリス全土からの顧客を迎えることが可能になったようです。
まとめ
FeatureCAMの概要や、活用することで得られるメリット、主な機能や使い方について詳しく解説しました。
FeatureCAMの最も大きな魅力は、自動CAMだということでしょう。初心者から上級者までが不満を感じることなく利用できるうえ、加工スピードを大幅に向上させられます。
また、FeatureCAMはさまざまな機能を持ち、難易度の高い加工までサポートしているため、機械を選ぶ必要がありません。すでに構築されているフライス加工、旋削加工、ワイヤー放電加工など幅広いCNC加工にも対応しています。
加工効率を向上させたい場合にはおすすめのCAMなので、ぜひ導入を検討してみてください。
