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【2024】CFD(流体解析)とは?概要とシミュレーションソフトをわかりやすく比較

CFDは、製造業においてよく用いられる用語です。しかし、昨今では製造業以外にもCFDを活用するケースが増えてきており、「単語の意味を理解していない」という方も少なくありません。

今回は、CFDの解析やシミュレーションの手順、役立つ領域などについて詳しく解説します。
CFDの活用を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

CFDとは

CFDとは

CFDとは、(Computational Fluid Dynamic)の略称です。
日本語では、「数値流体学」や「流体解析」と呼ばれます。

そもそも流体解析とは

流体解析とは、空域の流れや熱の移動、液体の流れなどを解析することを指します。
まずは「流体」の定義を確認しておきましょう。

一般的に、「流体」とは連続体として扱うものとされています。
例えば、物体が放置されている場合、位置エネルギーがそこには存在しておらず、物体は動かず形を変化させません。

一方で、液体や気体は自由に形状を変化させ、動くことができます。
このような液体や気体のことを「連続体」「流体」と呼んでいます。

また、流体を解析し、製造する商品のクオリティアップに役立たせたり、工場のラインを整えたりするのが流体解析です。従来は、主に製造業で用いられた用語でしたが、昨今は建築や工学、スポーツなどさまざまな分野で注目されています。

CADとの違い

CADとの違い

CADは、図面をもとに製品を製造する際に用いられるソフトです。
ソフトによっては熱解析や流体解析などの機能を持つものもあり、CADとCFDが混ざったようなソフトも販売されています。

しかし、CFDは流体解析に特化しているソフトであることが多く、製造機能を担うものは少ないです。ゼロから製品を作るのか、製造されたものを改変するのかという点で違いがあると考えると良いでしょう。

CAEとの違い

CAEとの違い

CAEは、機械設計のプロセスにおいてコンピュータを使用したシミュレーションや解析を行うソフトのことを指します。熱解析や流体解析、振動解析など幅広い解析機能がワンパッケージになったものをCAEと呼びます。

一方で、CFDは流体解析に特化した機能を持つソフトです。
流体解析においては右に出るものがなく、細かい数値まで分析できるといったイメージです。

CAE オールインワンでまとまっている総合的なソフト
CFD 流体解析に特化した機能が詰まっている、より専門的なソフト

CFDシミュレーションの手順

CFDシミュレーションは、一般的に次の手順で行われます。

  1. 前処理
  2. ソルバー処理
  3. 後処理

ここでは、それぞれの処理の概要について詳しく解説します。

CFDシミュレーション手順①前処理

前処理とは、CFD分析で活用するデータを加工し、扱いやすい状態にすることを指します。

データ分析を行う上で、前処理が適切に行われていないと、適切にデータを扱うことができません。そのため、加工が基本であるとともに、CFDの最も重要な役割を担うと考えられています。

データの前処理で行う作業は主に3つです。

  • ノイズ除去
  • フォーマット変換
  • 数式変換

これらを行うのには、多くの時間を必要とします。
しかし、CFDシミュレーションソフトを活用すれば、これら一連のプロセスを大幅に削減し自動化できます。

CFDシミュレーション手順②ソルバー処理

ソルバー処理は、集められたデータをもとに計算を実行するソフトです。
前処理によって最適化されたデータを、CFDにある「ソルバー」を使用して数式を導き出します。

ソルバー処理では多くのデータを処理するため、大容量のシミュレーションができるソフトを必要とします。そのため、CFDソフトを利用する企業の多くは、オンプレミスではなくクラウドベースのものを利用する傾向にあります。

CFDシミュレーション手順③後処理

ソルバー処理の実行を終えたら、後処理のステップが始まります。
後処理では、ソルバーによって演算処理されたデータを、人が視覚的に判断しやすい状態に変化させるステップです。

例えば、アニメーションを使用して流体解析を行ったり、3D画像でデータの状況を示したりします。この段階で表示された情報をもとにして、新たな形状を検討したり、実際の試作品をシミュレーションしたりすることが可能です。

CFDシミュレーションが役立つ領域

では、CFDシミュレーションはどのような領域で役立っているのでしょうか?
ここでは、CFDシミュレーションが役立っている6つの分野を紹介します。

CFDシミュレーションが役立つ領域1.建築

建築

建築現場においては、橋梁の建築にCFDシミュレーションが役立っています。
橋の構造によってどの程度の耐重量があるかを計測するなど、どのような構造を用いれば良いかを考える一つの指標として扱えます。

また、ビルを建てる際に、風の流れを判断したり、熱のこもり具合を判断したりすることにも役立つでしょう。

CFDシミュレーションが役立つ領域2.電子工学

電子工学

コンピュータや電話、インターネットなどの開発に携わる電子工学の分野でもCFDが役立っています。CFDシミュレーションでは、チップからの発熱を計算したり、冷却装置の効果を確認したりすることができ、発熱を冷却するためのシステムを組む際に参照できます。

これらのシミュレーションがうまく行われなければ、電子機器メーカーは発熱によって故障する製品の原因究明ができず、ユーザーから信頼を損ねてしまうでしょう。

CFDシミュレーションが役立つ領域3.宇宙産業

宇宙産業

宇宙産業でも、流体解析が役立ちます。
航空機にはエンジン、油圧機器、電子機器の冷却など、流体現象に関わる多くの部品が使用されています。

それらに不備があれば、安全性を損ねてしまうことでしょう。
そのため、特に流体力学的な配慮が重視される分野だといえます。

宇宙産業における航空機体製造においては、気体の流れを理解し、機体の形状を決めることが求められます。また、内部部品の冷却方法を理解することも必要であり、多くの部分で流体解析が必要となっています。

CFDシミュレーションが役立つ領域4.ライフサイエンス

ライフサイエンス

ライフサイエンスの分野では、流体力学がコスト削減に役立っています。

例えば、難易度の高い手術を行う場合に、事前にモデリングとシミュレーションを行うことでコスト削減にもつながりますし、リスク削減にも役立ちます。

もちろん、モデルのみでも手術のシミュレーションは行えますが、流体解析を取り入れることで、適切な血流の動きを理解したり、空気の流れを視覚化できたりするため、シミュレーションの精度が大きく向上します。また、医薬品分野でも製造から生産への過程において流体解析を行い、生産のスピードを大きく向上させています。

CFDシミュレーションが役立つ領域5.スポーツ

スポーツ

スポーツ分野において流体解析を取り入れると、体の動きを分析することができ、より高い成績をおさめやすくなります。

例えば、オリンピックで優勝した選手の体の使い方を流体解析すると、空気や水の流れを把握でき、より効率の良い動きを見つけることも可能です。
水泳においては水の流れを視覚的に確認することは難しいですが、解析であれば数値で具体的に示されるため、どの部分を改善すべきなのか理解できます。

また、これまで正しいとされていた動作が適切ではないと計測結果によって示されるケースもあるでしょう。加えて、選手ごとに最適なストレッチを提案できることも考えられます。

CFDシミュレーションが役立つ領域6.エネルギー分野

エネルギー分野

エネルギー分野では石油や石炭などのエネルギー効率を高める施設を作ることが求められています。その際に、CFDシミュレーションが役立つでしょう。

昨今、世界的にSDGsの重要度が高まっています。
CFDを活用することで、発電所の設計にかかるコストを抑えたり、より効率的にエネルギーを活用できる施設を提案したりと、包括的に役立つでしょう。

CFDソフトを活用するメリット

次に、CFDソフトを活用するメリットについて解説していきましょう。
ここでは、主な5つのメリットを紹介します。

CFDソフト活用メリット1.コスト削減に役立つ

1つ目のメリットは、コスト削減に役立つことです。
流体解析を事前にソフトで行っておけば、試作を作る回数を大幅に減らせます
また、設計を変更し、再度試作を発注しなければならないこともあるでしょう。

しかし、CFD解析であればシミュレーション、再設計などのステップがすべてツール内で完結します。材料費や人件費などを大幅に減らせるため、製造にかけられる予算を増やせます。

CFDソフト活用メリット2.実験が難しい場合も分析可能

2つ目のメリットは、実験が難しい環境でも分析できることです。

たとえば、強力な津波を発生させ、その流れによってどれだけの被害が発生するのかを実験することはできません。しかし、CFDシミュレーションであれば、そういった難しい環境を簡単に再現し、分析することができます

CFDソフト活用メリット3.イメージしづらい動きが視覚的に確認できる

3つ目のメリットは、イメージしづらい動きを視覚的に表現できることです。

リアルな装置を駆使して実験する場合、視覚的にわかりやすい状態を示すことは難しいでしょう。CFDシミュレーションであれば、極端に動いている部分に色をつけたり、必要なデータ以外をマスクしたりできます。
その結果、一目瞭然の結果を導き出せるのです。

CFDソフト活用メリット4.詳細な数値で分析できる

4つ目のメリットは、詳細な数値で分析できることです。

シミュレーションを行えば、動きを数値で理解できます
「どの程度まで数値を下げれば良いか」「数値を下げることでどんなメリットがあるか」などを具体的に理解でき、製品のクオリティ向上に役立つでしょう。

CFDソフト活用メリット5.解析後は初心者でも理解できる

5つ目のメリットは、解析結果を初心者でも理解できることです。

解析には専門技術が必要ですが、得られた結果は色がついていたり、数値が示されていたりします。別の部署の方に情報を示す際の共有性の観点からも、CFDシミュレーションには効果があるのです。

CFDソフトのデメリット

さまざまなメリットがある一方で、CFDソフトにもデメリットがあります。
ここでは、主なデメリットを3つ紹介します。

CFDソフト活用デメリット1.微量の誤差が発生する

1つ目のデメリットは、微量の誤差が発生することです。
そのため、シミュレーション結果と現実が異なる場合もあります。

これは、シミュレーションがうまくいっていないわけではなく、現実世界の目に見えない環境変化が影響しているためです。すべての状況で同じ結果が得られないことは注意しましょう。

CFDソフト活用デメリット2.解析には専門知識が必要

2つ目のデメリットは、解析に専門知識が必要であることです。

CFDの解析を行う上では、ソルバーやプロセッサなど、さまざまな知識が必要となります。
そういった知識を包括的に理解しているエンジニアは少なく、採用の難易度が高いことが難点だといえます。場合によっては、会社でエンジニア育成プログラムを設ける必要があるでしょう。

CFDソフト活用デメリット3.解析ソフトはライセンス料がかかる

3つ目のデメリットは、解析ソフトにライセンス料がかかることです。

CFDソフトは、安いものでも数十万円程度、高いものでは数百万円の費用がかかることもあります。また、買い切りではなく保守に費用をかける必要も出てくるため、長期的に多くのコストが必要となるでしょう。

CFD解析の主なソフト

解析ソフトにはさまざまなものがありますが、ここでは、初級者から上級者まで幅広く活用できるソフトを4つ解説します。

Autodesk CFD(Autodesk)

Autodesk CFD
引用:Autodesk CFD

Autodesk CFDは、Autodek社が提供しているCFDソフトです。

直感的に利用できるUIとなっており、解析結果を表示しながら解析も同時に行えるため、操作によってどのような結果が得られるか操作しながら覚えられます
そのため、流体解析に精通したことのない一般の設計者でも簡単に測定できることを強みとしています。

また、多くのCADソフトとの連携ができる上、Autodeskのソフトを使用している場合には、シームレスに解析モデルを製作できます。

Particleworks(プロメテック・ソフトウェア株式会社)

Particleworks
引用:Particleworks

Particleworksは、MSP粒子法を用いた最先端の流体シミュレーションが行えるCFDソフトです。

水や油などの液体挙動を解析したり、熱の発生要因を理解したりすることができます。
専門的な操作ができる上、直感的なUIで利用できるため、ある程度の知識がある方であれば、初めてでも素早く馴染めるでしょう。

Ansys Fluent(アンシス・ジャパン株式会社)

Ansys Fluent
引用:Ansys Fluent

Ansys Fluentは、正確で信頼性の高い流体シミュレーションが行えるソフトです。

Ansys Fluentを活用すれば、高度な物理モデルを製作し、流体現象を視覚化できます。
美しいシミュレーション結果が得られるため、クライアントにシミュレーション結果を提案する際にも重宝するソフトです。

SOLIDWORKS Flow Simulation(SOLIDWORKS)

SOLIDWORKS Flow Simulation
引用:SOLIDWORKS Flow Simulation

SOLIDWORKS Flow Simulationは、3Dモデル製作に強いSolidWorksが提供している流体シミュレーションソフトです。

SOLIDWORKSの各種ソフトとの連携性が高く、連携することで高速でシミュレーション結果が得られます。また、パッケージ販売もされており、構造、熱、電磁界、射出成形シミュレーションなど製造過程において欠かせないシミュレーションをたった一つのソフトで完結させることも可能です。

CFD(流体解析)とは? まとめ

CFD解析の概要やメリット・デメリット、主な手順、活用されているシーンなどについて解説しました。

CFD解析を導入することで、製造業だけでなく、エネルギー分野からスポーツ分野まで幅広い分野に役立ちます。導入にコストはかかりますが、シミュレーションを事前に行っておくことで、トータルコストを抑えられたり、イメージしづらい結果を解析できたりと、さまざまなメリットを得られるでしょう。

今回紹介したソフトも参考に、ぜひCFD解析ソフトを導入してみてください。

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