2024年8月、マクニカとシーメンスは、製造業のDX化を加速させるため、シーメンスのDXプラットフォーム「Xcelerator」の社会実装で協業を開始すると発表しました。マクニカは、製品ライフサイクルマネジメントツール「Teamcenter X」の導入を支援することで、企業が製品開発から生産、保守に至るまでのプロセスをデジタル化し、製品開発の効率化と品質向上を実現することを目指します。
さらに、マクニカのローコードプラットフォーム「Mendix」とTeamcenter Xを組み合わせることで、中量産市場向けに、より手軽に導入できるソリューションを提供します。これにより、幅広い製造業者がDXを推進できるようになるようです。
今回は、製造業DXで得られるメリットや製造業DX推進の具体策、実現させるためのポイントを詳しく解説します。
製造業DXとは
製造業DXは、デジタル技術を活用して製品開発から生産、顧客への提供までの全工程を最適化することです。生産工程のデータを一元管理することで、従来の属人化された作業を脱却し、生産性の向上とコスト削減を実現します。
また、リアルタイムなデータ分析により、顧客ニーズの変化をいち早く捉え、新たな価値を生み出すことができます。
製造現場をDX化する手順については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
製造業DXで得られるメリット
製造業DXは、生産性の向上やコスト削減など、以下のような多くのメリットをもたらします。
- 全工程の情報の見える化ができる
- 人の手で作業していた業務を担うことができる
- 生産効率が向上する
- 顧客満足度の向上につながる
- 新たな製品開発にコストや時間をかけられる
それぞれのメリットを詳しく解説します。
全工程の情報の見える化ができる
IoTなどのデジタル技術を活用することで、受注から生産、物流、アフターサービスに至るまで、企業活動の全工程を可視化できます。そのため、設備の稼働状況や製品の品質データをリアルタイムに把握し、問題発生時の迅速な対応が可能になります。
例えば、生産ラインの異常を早期に検知することで、不良品の発生を予防し、顧客からのクレームを最小限に抑えることが可能です。さらに、需要予測の精度向上や在庫管理の最適化を実現することで、繁忙期と閑散期の生産調整をスムーズに行い、人材や資源の無駄遣いを防ぐことができます。
また、物流ルートの最適化により、配送コストを削減し、顧客への納期短縮を実現することも可能です。これらの効率化により、製品の品質向上とコスト削減を両立させ、新たな製品開発やマーケティング活動に注力できるようになります。
最終的には、顧客満足度の向上と企業収益の拡大に繋がり、持続的な成長へと導くのです。
人の手で作業していた業務を担うことができる
科学技術とIT技術の目覚ましい発展により、機械に仕事を任せることで作業の精度が安定し、生産効率が飛躍的に向上します。また、人材の採用や育成にかかるコストを削減できるというメリットも生まれます。
さらに重要なのは、機械にできることを機械に任せ、人間はより創造的な活動に集中できるようになったことです。製品やサービスの企画、開発、顧客とのコミュニケーションなど、企業の価値創造に直接関わる部分に、人がより多くの時間を割けるようになったのです。
生産効率が向上する
IT技術や機械、ロボットを導入することで、製造現場は半自動化され、人手による作業が大幅に減りました。これにより、生産効率を維持・向上させながら、人件費の削減も実現できます。
さらに、製造現場から集めたデータを分析することで、工程や生産量などの利益に直結する要素を最適化し、より効率的な生産体制を築くことが可能になります。
顧客満足度の向上につながる
製造業におけるDX化は、製品やサービスの品質向上だけでなく、顧客満足度の向上にも大きく貢献します。例えば、衛生用品メーカーでは、紙おむつを自動で発注できるシステムを導入することで、保育園に通うお子様を持つ保護者の負担を軽減しました。
これまで、お子様のおむつが不足した際に、保護者がわざわざおむつを持参する必要がありましたが、このシステムによって、その手間が省けるようになったのです。
この事例からもわかるように、製造業におけるDX化は、顧客の不便さを解消し新たな価値を提供することで、顧客満足度の向上に直結します。顧客視点に立ったDXの推進は、企業の競争力強化にもつながる重要な取り組みと言えるでしょう。
新たな製品開発にコストや時間をかけられる
製造現場をDX化することで、余剰となったリソースを創造的な活動に振り向けることができます。具体的には、新しい製品の開発や既存製品の品質向上に注力することができます。
例えば、製造工程の自動化により、人材はより高度な業務に集中できるようになり、革新的な製品を生み出すための研究開発に力を注ぐことができるでしょう。また、得られたデータを分析することで、製品の品質をより高め、顧客満足度の向上にも繋げることができます。
このように、製造業DXは、企業がより高いレベルで競争力を発揮し、持続的な成長を実現するための強力な手段なのです。
製造業DX推進の具体策
製造業におけるDXは、ITシステムの導入だけではなく、ビジネスモデルの革新や組織文化の変革をも含む包括的な取り組みです。製造業DXは生産性の向上、品質の安定化、新たなビジネスモデルの創出など、さまざまなメリットをもたらします。
以下では、製造業におけるDX推進の具体策をご紹介します。
業務マニュアルを作成する
従来、製造業では取扱説明書や操作説明書はあっても、具体的な業務手順を詳細に記述した業務マニュアルを作成していないケースが少なくありませんでした。しかし、業務マニュアルを作成することで、以下のようなメリットが得られます。
- 属人化を防ぎ、知識の継承を円滑に進めることができる
- 社員に対し、業務マニュアルを基にした教育を行うことができる
- 品質の安定化やミス防止につながる
- 業務フローの無駄や改善点が見つかることがある
- 人材の入れ替わりが発生した場合でもスムーズな業務引き継ぎが可能になる
業務の効率化を促すツールを活用する
業務効率化ツールは企業の様々な業務を自動化し、生産性を向上させるためのツールです。例えば、文書管理やナレッジ共有、業務プロセス自動化、帳票管理、タスク管理など、多岐にわたる業務を効率化するツールが存在します。
製造業においては、これらの一般的なツールのほか、倉庫管理システムや生産管理システム、顧客管理ツールなどが広く活用されています。これらのツールを導入することで、在庫管理の精度向上、生産スケジュールの最適化、顧客とのコミュニケーション強化など、様々なメリットが得られます。
クラウドサービスを利用する
DX化を進める上で、どのようなデジタル技術を採用するかという点に注目が集まりがちですが、重要なのが、データやツールの保管場所に関する検討です。保管場所としては、大きく分けて自社で運用するオンプレミスと、外部のサービスを利用するクラウドの2つの選択肢があります。
どちらを選択するかは、企業の規模や予算、扱うデータの量、ITインフラの状況など、様々な要素を考慮して決定する必要があります。特に、セキュリティ面は慎重に検討すべき点です。オンプレミスは、自社でセキュリティ対策を行う必要がありますが、クラウドはサービス提供者のセキュリティ対策に依存する部分があります。
製造業DXを実現させるためのポイント
製造業がDXを実現させるためには、以下のように様々なポイントがあります。
- 必要な情報を全て見える化する
- 資金の余裕があるときに取り組む
- DXの知識を有する人材を育成する
それぞれの項目を具体的に見ていきましょう。
必要な情報を全て見える化する
製造業において、高度な技術やノウハウが特定の個人に集中し、共有されない属人化は、企業の持続的な成長を阻む課題です。特に、専門性の高い技術者は、長年の経験と勘に基づいた作業を行うことが多く、知識やスキルが個人に固着されやすい傾向にあります。
属人化が進むと、以下のような問題が生じます。
- 貴重なノウハウが失われ、技術の継承が困難になる
- 業務の標準化や効率化が困難になる
- 特定の個人に頼らざるを得ない状況が生じ、柔軟な対応が難しくなる
これらの問題を解決するためには、属人化している業務を明確にし、その知識やノウハウを共有できる形に変えていく必要があります。
資金の余裕があるときに取り組む
DXの取り組みには、新しいシステムやツールの導入、クラウドサービスの利用など多額の投資が伴います。しかし、多くの企業は既存の基幹システムの維持管理や老朽化した設備の入れ替えなど、現行業務を円滑に進めるための投資も必要としているでしょう。これらの投資とDXへの投資を両立させることは、容易ではありません。
そのため、DXへの取り組みが後回しになりがちですが、政府では企業のDX推進を支援するための補助金制度が数多く設けられています。これらの補助金を活用することで、自社の財務負担を軽減し、より積極的にDXに取り組むことが可能になります。
製造業ももらえるものづくり補助金については、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
DXの知識を有する人材を育成する
DXを成功させるためには、ITスキルやノウハウを持つ人材の確保と育成が不可欠です。しかし、日本企業の多くがDX人材の不足に悩まされており、経済産業省は、この状況を改善するため、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を設け、高度なITスキルを持つ人材の育成を支援しています。
そのため、企業側も社内に人材を育成するだけでなく、ITコンサルタントや専門企業との連携など、多様なアプローチで人材確保を図る必要があります。DX人材の採用にあたっては、まず自社のDXの目的や方針を明確にし、求める人物像を具体的に定義することで、より効果的な採用活動を行うことができるでしょう。
製造業のDX化推進には人材育成サービスが効果的
企業が生き残るためには、デジタル技術を活用したDX化が不可欠です。DXを成功させるためには、最先端の技術を理解し活用できる人材の育成が不可欠です。
従来の製造業の現場では、経験や勘に基づいた作業が中心でしたが、DX時代においては、データ分析能力やプログラミングスキル、IoTやAIに関する知識など、幅広いデジタルスキルが求められます。これらのスキルを習得するためには、体系的な教育プログラムが必要となります。
製造業向けの人材育成サービスでは、企業の課題や目標に合わせて、最適なカリキュラムを設計し、実践的なスキルを習得できるようなプログラムを提供しています。以下で、おすすめの人材育成サービスをご紹介します。
企業向けDX・AI人材育成サービス
AI研究所の企業向けDX・AI人材育成サービスは、製造業が抱える課題を解決しDXを成功させるために、従業員のDX・AIスキル向上を支援する人材育成サービスです。企業向けDX・AI人材育成サービスの特徴は、AIの専門知識だけでなく、実際の業務に活かせる実践的なスキルを習得できる点にあります。
具体的には、以下の様な特徴です。
特徴 | 内容 |
方向性と解決策のご提案 | お客様の問題と理想をヒアリング |
新しいAI技術の習得 | 短期〜中長期的なプランで御社の業務に合わせカリキュラムを構築 |
Eラーニング対応 | 時間や場所を気にせずAI人材育成を行うことも可能 |
求めるDX人材の育成 | 現場の課題解決のためのAIを活用方法を支援 |
経験豊富なAIコンサルタント | 製造業に強い10年以上のコンサルティング経験を持つ講師がカリキュラム作成 |
企業向けDX・AI人材育成サービスを受けることで、従業員はAIの知識を習得し、自社の業務にAIを導入するための具体的なスキルを身につけることができるでしょう。
CAD・CAM・CAE人材育成サービス
CROSS TECHのCAD・CAM・CAE人材育成サービスは、製造業のDX化を推進するために、企業に特化した人材育成プログラムを提供しています。CAD人材育成サービスは、御社の業務に最適なCAD人材の育成を支援するのが特徴です。
ご紹介した企業向けDX・AI人材育成サービス同様、業務内容や育成したいCAD人材をヒアリングした上で、最適な教育プログラムをご提案するため、企業側が求めるCAD人材が育成されるのが強みです。CAD人材育成のステップは以下の通りです。
未経験 | CADの基礎研修を行い社内で基本スキルを統一 |
初級者 | CADを活用した図面作成・モデリング
人材の役割に合わせた研修プログラムの実施 |
中級者 | 業務に直結するCADスキルの習得と定着化
CADの社内教育ができる人材育成のサポート |
CADマスター | 実務に即したトレーニングで受講後はすぐに業務で活躍 |
BIZROADのCAD・CAM・CAE人材育成サービスは、ソフトウェアの操作方法を教えるだけでなく、企業の課題解決に貢献し、競争力強化をサポートします。
製造業DXでさらなる業務効率化や生産性向上を目指そう!
今回は、製造業DXで得られるメリットや製造業DX推進の具体策、実現させるためのポイントを詳しく解説しました。製造業DXは、企業の課題解決の鍵となる一方で、IT人材の確保や設備投資、属人化といったハードルも存在します。
DXの取り組みは、企業の規模や状況によって多様です。重要なのは、自社の課題を明確にし、それに合ったDXの取り組みを始めることでしょう。製造業のDX化で企業全体の変革を行い、業務効率化や生産性向上を目指しましょう。
