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【2025】インシデントとアクシデントの違いとは?医療や看護・介護による違い・対応や対策も解説

医療・介護・ITなど、さまざまな分野で使われている「インシデント」と「アクシデント」という言葉。一見すると同じように感じますが、実は意味が全く違い、業界によっての捉え方や対応も違います。

この記事では、看護・介護・ITの3つの現場を例に、それぞれの違いをわかりやすく解説します。発生時の対応、具体例もお伝えするので、インシデントとアクシデントの違いを知りたい方はぜひ参考にしてください。

インシデントとアクシデントの違いとは?

インシデントとアクシデントの違いは「被害の有無」です。例えば、医療現場で「薬を取り違えそうになったが、投与前に気づいた」場合はインシデント、「誤った薬を投与してしまった」場合はアクシデントに該当します。

  • インシデント:事故には至らなかったが、危険な状況だった
  • アクシデント:実際に被害が生じた事故

つまり、インシデントは「事故の手前」、アクシデントは「事故が起きた後」の状態です。アクシデントを未然に防ぐためには、インシデントの段階で原因を把握し、対策を共有していくことが重要です。

ヒヤリハットとの違い

ヒヤリハットとインシデントに違いはなく、厚生労働省において同義語として扱われています。そのため、アクシデントとヒヤリハットの違いは、インシデントと同じと捉えて良いでしょう。

例えば、「患者情報の入力ミスに気づいて修正できた」のはヒヤリハット(=インシデント)です。一方で、「誤った患者情報で処理を進めてしまった」場合はアクシデントになります。

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医療現場では、インシデントを防ぐための取り組みの一つにインシデントレポートの作成があります。インシデントレポートの詳しい書き方については、以下の記事をご覧ください。

【2025】インシデントレポートの書き方をテンプレートと例文で解説!目的・厚生労働省の定義も紹介

医療・看護でのインシデントとアクシデントの違い

医療・看護でのインシデントとアクシデントの違い

医療・看護におけるインシデントとアクシデントは、患者への影響度によって違いを明確に区分しています。この分類は医療安全管理において非常に重要な概念です。以下で、それぞれの違いを見ていきましょう。

インシデントとアクシデントの患者影響と分類表

まずは、医療・看護のインシデントとアクシデントの違いが分かる一覧表をご覧下さい。

区分 レベル 影響度 内容
インシデント 0 なし ミスが起こる前に前に気づいた
1 軽微 ミスが発生したが、患者に変化はなかった
2 軽微 ミスで患者に変化があったが、治療は不要
アクシデント 3a 事故のため一時的な治療が必要
3b 中~高 事故のため継続的な治療が必要
4a 事故により長期治療が必要(機能障害なし)
4b 事故による障害が永続的に残る
5 事故が死因となった場合
その他 様々 自殺企図や暴力、クレームなど

参照:済生会保健・医療・福祉総合研究所「インシデント・アクシデントの分類基準

医療・看護におけるインシデント

医療・看護におけるインシデントは、重大事故には至っていない事例を指します。例えば、ミスが発生しても患者に影響がなかった場合(レベル1)、ごく軽い変化はあったが治療を必要としない場合(レベル2)が該当します。

医療・看護におけるアクシデント

医療・看護におけるアクシデントは、ミスや判断の誤りによって患者に傷害が生じ、治療や対応が必要になった事例です。一時的な治療で回復する場合(レベル3a)から、長期的な治療や後遺症を伴う場合(レベル3b~4b)、さらには死亡に至るケース(レベル5)まで含まれます。

介護でのインシデントとアクシデントの違い

介護でのインシデントとアクシデントの違い

介護業界でも、利用者の安全確保のためインシデントとアクシデントの違いを区別しています。

インシデントとアクシデントのレベル分類表

以下は、介護現場でのインシデントとアクシデントの違いをレベルごとに分類した表です。

区分 レベル 影響度 具体例
インシデント 0 なし 他人の薬を準備したが投与前に気づいた
1 軽微 食事介助で汁物をこぼしたが変化なし
2 軽微 転倒したが外傷なく観察のみ
アクシデント 3a 擦り傷で消毒が必要
3b 中~高 転倒で骨折し通院が必要
4a 骨折で長期リハビリが必要
4b 脳出血で永続的な後遺症が残る
5 誤嚥で窒息死

介護現場におけるインシデント

介護現場でのインシデントとは、利用者に実際の被害は出なかったものの、事故につながる可能性があった出来事を指します。中には、利用者が軽い不安・不快を感じた場合もインシデントとして報告されることがあります。

介護現場におけるアクシデント

アクシデントとは、介護中の対応ミスなどによって、実際に利用者へけがや健康被害、心理的・経済的不利益を与えた出来事です。軽度の処置が必要なものから、後遺症や死亡につながる重大な事故まで幅広く含まれます。

参照:社会福祉法人 恩賜財団 済生会「インシデント・アクシデントの分類基準

IT業界でのインシデントとアクシデントの違い

IT業界でのインシデントとアクシデントの違い

IT業界でも、インシデントとアクシデントはシステムのトラブルやセキュリティに関して使われます。医療や介護のように明確なレベル設定はありませんが、被害の状況によって違いが区分されています。

インシデントとアクシデントの違い一覧

まずは、IT業界におけるインシデントとアクシデントの違いを一覧で見てみましょう。

項目 インシデント アクシデント
状態 事故につながる可能性(予兆段階) 事故が発生し、損害や影響が発生
被害 軽微またはなし 明確な損害や影響が発生
具体例 サーバーに一時的なアクセス遅延 サーバーダウンでウェブサイト停止

IT業界のインシデント

インシデントとは、システムの異常やセキュリティ上の懸念など、放置すればトラブルに発展する恐れのある事象です。アクセス遅延などの、予兆段階でのフェーズも含まれます。

IT業界のアクシデント

アクシデントは、システム障害や情報漏えいなど、実際に被害が発生してしまった状態を指します。すでに損害が出ているため、原因究明や再発防止、被害の最小化が主な対応になります。

インシデントとアクシデントの対応・対策の違い

インシデントとアクシデントの対応・対策の違い

インシデントとアクシデントは発生段階と影響の大きさに違いがあるため、対応・対策アプローチも変わってきます。ここでは、インシデントとアクシデントの対応・対策の違いを一覧表で見ていきましょう。

対応フェーズ 種別 医療・看護 介護 IT
予防 インシデント
  • 患者確認の徹底
  • 薬剤チェック
  • リスク評価
  • 環境整備
  • 認証強化
  • アクセス管理
アクシデント
  • 多重チェック
  • 安全装置の活用
  • 危険予測
  • 見守り強化
  • 多層防御
  • バックアップ体制
発生時の対応 インシデント
  • 速やかな報告
  • 記録作成
  • 状況確認
  • 観察の強化
  • 一次対応
  • 影響範囲の確認
アクシデント
  • 救命処置
  • 医師への報告
  • 応急処置
  • 医療機関との連携
  • 緊急対応チーム
  • 被害抑制
再発防止 インシデント
  • レポート分析
  • 職員研修
  • カンファレンス
  • 手順見直し
  • ログ解析
  • 訓練の実施
アクシデント
  • 原因分析
  • システム改善
  • ケア修正
  • 研修強化
  • 脆弱性対策
  • 手順見直し

インシデントとアクシデントの違いが分かる具体例

続いて、インシデントとアクシデントの違いを、具体的な例を通して見ていきましょう。

インシデントとアクシデントの違いの具体例一覧

では、インシデントとアクシデントの違いを、具体的な例で見ていきましょう。ここでは、医療、介護、IT、そして情報セキュリティの4分野について、その違いを一覧表でご紹介します。

分野 インシデントの例 アクシデントの例
医療・看護
  • 投薬ミスに気づき訂正
  • 転倒しそうな患者を支えて防止
  • アレルギー情報の確認漏れ回避
  • 誤投薬による健康被害
  • 転倒による骨折
  • 手術部位の取り違い
介護
  • 食事形態ミスに気づき交換
  • 移乗時にふらつくが転倒なし
  • 入浴温度の異常に気づき調整
  • 誤嚥による肺炎
  • 移乗時の転落による骨折
  • 入浴時の熱傷
IT
  • サーバーに負荷の警告
  • 自動でバックアップに切り替え
  • エラーログを検知し事前対処
  • 長時間のサービス停止
  • データ消失
  • オンライン決済障害で取引停止
情報セキュリティ
  • 不審メールを開かずに削除
  • ウイルスを検知し駆除
  • ファイアウォールの不正アクセス遮断
  • フィッシングで情報流出
  • ランサムウェア感染でデータ暗号化
  • 不正アクセスによる個人情報漏洩

エクセル業務における「インシデント」と「アクシデント」

「インシデント」と「アクシデント」の違いは、エクセル業務にも当てはまります。例えば、エクセルでのデータ入力ミス(インシデント)や、ファイルの管理が煩雑な状態(インシデントの予兆)は、放っておくと「業務停滞」という大きな問題につながる可能性も十分あるでしょう。

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各業界の情報セキュリティ部門は、日々サイバー攻撃の脅威に直面しています。サイバー攻撃は年々増加し、2024年には12億件を突破、前年比154%を記録しました。その数だけでなく種類も多様化・巧妙化しています。

以下の記事でサイバー攻撃の種類を詳しく解説しているので、ぜひこの機会に知識を深め、対策に役立ててください。

【2025】サイバー攻撃の種類39選をジャンルごとに徹底解説!攻撃の割合や対策・最新IPAランキングも紹介

インシデントとアクシデントの違いを理解する重要性

インシデントとアクシデントの違いを正しく理解することは、重大な事故やトラブルを未然に防ぐためにも重要な学びです。

小さな判断が、大きな事故を防ぐ力になる

大きな事故の多くは、突然起こるものではありません。その背後には必ずといっていいほど、「あれ違う?」という違和感や、「ヒヤッ」とした経験があります。それが「インシデント」です。つまり、被害は出ていないけれど、うまくいかなければ重大な結果につながっていたかもしれない出来事です。

例えば、介護現場で利用者が歩行中にふらついたとき、職員がすぐに支えて無事だったらインシデントです。もし反応が一瞬遅れていれば、転倒して骨折し、入院やリハビリが必要になっていたかもしれません。そうなれば、それは「アクシデント」です。

インシデントを見過ごさないことが組織力を高める

こうしたインシデントを「大したことなかった」として見過ごしてしまうと、組織としての気づく力、備える力が弱まります。実際、医療、介護、IT、製造などあらゆる業界で、大きなトラブルの背景には小さな異変や兆候が存在していたという報告が後を絶ちません。

インシデントは、失敗ではありません。学びの種であり、組織全体で安全意識を高めるチャンスです。報告しづらい空気や「こんなことまで?」という雰囲気があると、本当に重要なサインを見逃してしまうことにもつながります。

「言いやすい」職場環境を作る

インシデントの気づきを大切にし、アクシデントを防ぐためにも、「言いやすい」「共有しやすい」環境づくりが必要です。一人ひとりの「これは気になる」という感覚を大切にし、それを現場で共有し合える文化が、安全で信頼できる職場を支えるのです。

日々の小さな判断と声かけが、未来の大きな事故を未然に防ぎます。それは、利用者の安心を守るだけでなく、働く私たち自身の安心にもつながるのです。

インシデントとアクシデントの違いについてまとめ

インシデントとアクシデントは、被害の有無という大きな違いがあります。業界によっても、その定義や分類は異なりますが、基本のこの点は全て同一です。

つまり、インシデントの段階で気づいて対処できれば、多くのアクシデントは未然に防ぐことができるのです。ぜひ、小さな出来事と軽くとらえずに、インシデントの段階で情報を共有することを習慣化しましょう。

【2025】インシデントとアクシデントの違いとは?医療や看護・介護など業界ごとの違い・対応や対策も解説
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