三菱電機では「Claude 3」を活用し、ソフトウエア開発における作業工数の大幅な削減に成功しました。Claude 3の強みは、テキストだけでなく、図表などのマルチモーダルな情報解析にも対応できる点にあります。
仕様書に記載された図表の内容をAIが理解し、テキスト情報と合わせて検索に反映させることで、より高度な情報検索が可能です。
今回はClaudeに焦点を当て、できることや使い方、製造業で有効活用するポイントを解説します。
Claudeとは
Claudeは、OpenAI社のChatGPTやGoogle社のGemini（旧Bard）と同様、LLM（大規模言語モデル）を基盤としたAIチャットモデルです。
自然言語による対話が可能で、質疑応答や文章生成、長文要約、翻訳、プログラミングコード生成など、多岐にわたるタスクに対応できます。
2023年3月に一般公開され、2025年2月末現在では、以下のモデルが利用可能です。
| 有料版「Claude Pro」 | より高度な機能を利用できる |
| 「Claude 3.7 Sonnet」 | 2025年2月末にリリースされた最新モデル |
Claudeの使い方
Claudeは、ブラウザ版とiOSアプリで誰でも利用できるようになっており、アクセスすればすぐに対話が始められます。Claudeへの登録は、パスワードを新たに設定する必要はなく、以下のいずれかの方法で認証が完了します。
- お使いのGoogleアカウントでログインする
- 指定のメールアドレスに届く認証用URLをクリックする
アプリをダウンロード後、認証を行うだけでチャット画面が開き、すぐに会話を始められます。アプリ版もデフォルトで最新モデルが設定されているため、特別な操作は必要ありません。
Claudeでできること
ClaudeのArtifacts機能を活用することで、業務効率化や作業スピード向上、品質向上といった、製造業が抱える課題解決に貢献できます。
以下で、Claudeでできることを詳しく見ていきましょう。
図解及びグラフ作成
データ分析やプレゼンテーション資料作成は、専門的な知識やスキルがないと、作成に時間と手間がかかってしまうのが現状です。
ClaudeのArtifacts機能では、CSVデータからグラフを作成する場合、データをアップロードする際に縦軸と横軸をテキストで指定するだけで、瞬時にグラフが生成されます。
グラフの様式は後から変更できるだけでなく、スタイルや部分的なカスタマイズもテキストで自由に行えます。
例えば、折れ線グラフの数が多くて見づらい場合は、表示条件を絞ることで調整できたり、コンテンツ内容に応じて、「.tsx」「.html」「.svg」など、様々なファイル形式を選択できたりします。
フローチャート及び手順書作成
Claudeは、ファイルアップロードにも対応しています。「この内容をフローチャートにしてください」と指示するだけで、複雑なプロセスも視覚的に整理でき、業務の流れを直感的に理解し、改善点を見つけやすくなります。
完成したドキュメントは、汎用性の高いmdファイル形式でダウンロード可能で、業務フローやその他各種マニュアル作成など、幅広い用途に活用できます。
資料からスライド自動作成
Claudeはアップロードされたドキュメントの内容を解析し、自動でスライドを生成する機能を備えています。
例えば、新しいプロジェクトの提案資料をアップロードし、「スライドにしてください」と指示するだけで、瞬時に見やすいスライドが完成します。
また、これまでのチャットでのやり取りをスライドにすることも可能なため、会議の議事録やブレインストーミングの内容などを活用し、効率的にスライドを作成できます。
手書きの資料であっても内容を読み取り、スライドに反映させることができるため、手書き資料のデジタル化とスライド作成を同時に行うことができ、ペーパーレス化を促進するメリットもあります。
3次元シミュレーション制作
製品の組み立てやコンセプトを、3次元シミュレーションを用いて具体的に表現することで、開発チーム内の共通認識を深め、よりスムーズな開発プロセスを促進します。
研究成果を3次元シミュレーションで可視化することで、聴衆の理解を深め、より効果的なコミュニケーションができるでしょう。
また、製品の魅力を引き出すために、ホームページやLPに3次元シミュレーションを組み込むことも有効です。静止画では伝わりにくい製品の構造や動きを3次元で表現することで、顧客の興味関心を惹きつけ、購買意欲を高めることができるでしょう。
外部サービスとの連携
ClaudeのAPIを利用することで、外部アプリケーションにその機能を組み込むことが可能なため、Web検索からの情報やデータベース内のデータを基にした応答生成、外部サービスを通じた高度な推論ができます。
Claudeを活用したプロジェクトの開発や導入など、幅広い用途への応用が期待されていますが、Claude APIを利用するには、法人組織向けのアカウント登録とAPIキーの作成が必要です。
Webサイト構築
Claudeは、OpenAIが開発した大規模言語モデルを基盤としており、自然な会話を通じて様々なタスクを実行できます。
特に、Webサイト構築においては、プロンプトの入力だけでHTMLやCSSコードを生成できるため、効率的な開発が可能です。
企業概要や事業内容などを掲載するホームページや特定のサービスを紹介する簡易的なランディングページを迅速かつ容易に作成できますが、生成されたコードの品質や複雑な機能の実装など実務化に向けてはいくつかの課題も存在します。
しかし、今後の技術発展やユーザーの工夫によって解決されることが期待されています。
製造業でClaudeを有効活用するポイント
Claudeのメリットを最大限に引き出すためには、以下のようなポイントを押さえる必要があります。
- 組織全体の協力体制を整える
- 経営施策としてClaudeを取り入れる
- 従業員のAIリテラシーを向上させる
- 従業員を適切に評価する
以下で、各ポイントを詳しく解説します。
組織全体の協力体制を整える
Claudeを業務に効果的に取り入れるには、組織全体での協力体制が重要です。まず、具体的な利用場面や効果的なプロンプトの例を共有し、従業員がClaudeの基本的な使い方を理解し、その有用性を実感できるような学習機会を設けることが重要です。
さらに、業務効率を向上させた事例や創造的な活用方法を積極的に収集し、社内全体に公開することで、Claudeの潜在能力に対する理解を深めることができます。
これにより、従業員は自身の業務にどのようにClaudeを応用できるかを探求する意欲を持つようになるでしょう。
このような取り組みを通じ、知識と経験の共有を促進し、組織全体でClaudeを活用する文化を醸成することが技術革新を組織の成長に繋げるための基盤となります。
経営施策としてClaudeを取り入れる
経営層がClaude活用を経営施策として明確に宣言することは、組織全体に対して、AI技術が企業の未来を左右する重要な要素であるというメッセージを伝え、従業員の意識改革を促すきっかけとなります。
経営層からの明確な宣言は、Claude活用が企業の将来を見据えた戦略的な取り組みであることを示すため、AIが自分たちの業務にどのように貢献し、企業の成長にどう繋がるのかを理解し、積極的にClaudeを活用しようという意識を高めることができるのです。
一方、経営層がAI活用に対する明確な姿勢を示さない場合、従業員はClaudeの重要性を認識しづらく、導入に対する抵抗感や不安感を抱く可能性があるでしょう。
そのため、経営層は、Claude活用を経営施策として明確に位置づけ、ビジョンを組織全体に共有することが不可欠です。これにより、従業員は新しい技術に対する意識を強め、積極的にClaudeを利用する動機付けを得ることができます。
経営層が率先してClaude活用を推進することで、組織全体が変革への意識を高め、その技術を最大限に活用し、企業の成長を加速させることができるでしょう。
企業マインドセットについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
従業員のAIリテラシーを向上させる
Claudeの力を最大限に引き出すためには、使い手であるユーザー自身のAIリテラシーが重要です。
生成AIは、ユーザーとの対話を通じてアウトプットを生み出すツールのため、Claudeに指示を出す際、的確なプロンプトを入力できるかどうかで、得られる成果は大きく変わります。
従業員一人ひとりが生成AIに対する理解を深め、使いこなすスキルを習得することがビジネス活用の成功を左右する鍵となるため、貴社のAIリテラシー向上を強力にサポートする以下のようなセミナー活用が重要です。
生成AIセミナー
生成AIセミナーは、AIの専門知識がない方でも安心して学べるよう、生成AIの基礎から丁寧に解説します。生成AIの種類や大規模言語モデル（LLM）の仕組みなど技術的な背景もしっかりと理解できるので、表面的な知識だけでなく、本質的な理解が得られます。
また、機械学習の基本的な仕組みも学ぶことで、生成AIがどのように動作するのか、その原理原則を把握することができるため、生成AIをより深く理解し、応用力を高めることができるでしょう。
セミナーでは具体的な活用方法として、ChatGPTなどの代表的なツールの使い方を実践的に学びます。さらに、プロンプトエンジニアリングの技術を習得することで、生成AIからより精度の高いアウトプットを引き出すことが可能になります。
様々な生成AIサービスを体験することで、それぞれの特徴や強みを理解し、業務に最適なツールを選べるようになります。また、生成AIを業務に活用する上での課題と解決策についても詳しく解説するので、導入後はスムーズな運用ができるでしょう。
さらに、自社独自の生成AIを作成するための知識も習得可能なので、自社のニーズに合わせたAIを開発し、ビジネスに革新をもたらすことができます。また、社員研修として、セミナーの日程や内容を貴社に合わせてカスタマイズすることも可能です。
プロンプトエンジニアリングについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
従業員を適切に評価する
Claudeを活用して業務改善や新たなアイデアを生み出した従業員を適切に評価し、その成果を組織全体で共有することは、従業員のモチベーション向上に欠かせません。
個々の努力や成果が正当に評価され、他の従業員と共有されることで、AIのさらなる活用意欲が高まり、新たなアイデアの創出が促進されます。
具体的には、Claude活用による成功事例や応用例を積極的に共有し、その貢献を公的に評価することが重要です。
Claude活用を成功させるためには、技術導入後の従業員の貢献を適切に評価し、組織全体で知識と成功事例を共有する仕組みを作ることで、従業員のモチベーションを高め、組織全体の成長を加速させることが期待できます。
Claudeの導入で製造業における競争力を高めよう
今回は、Claudeができることや使い方や製造業で有効活用するポイントを解説しました。
実際にClaudeを業務に取り入れてみると、情報収集やデータ分析、斬新なアイデアの創出、煩雑な資料作成など、業務を飛躍的に向上させる強力なパートナーとなります。
中小製造業であっても、Claudeを活用することで、大企業と肩を並べて競争することが可能です。限られた予算や人材という制約があるからこそ、AIの力を借りて、これらの課題を克服し、新たな可能性を追求すべきです。
今回ご紹介したポイントを参考に、貴社の業務効率化や生産性向上に貢献する生成AIの導入を、ぜひご検討ください。
