製造業を取り巻く環境は常に変化し、DXの推進におけるデータ活用は、様々な課題に直面しています。日本ラッドは課題を解決し、製造業のDX推進を強力に支援するDataOpsプラットフォームを発表しました。
DX推進では、データリソースや保管手法の乱立、データ処理にかかる時間と手間などが課題として挙げられます。日本ラッドのDataOpsは、現場主導のデータ活用を可能にすることで、企業の競争力強化に貢献することが期待されています。
今回は、DataOps導入によるメリットやデメリット、その解決策を詳しく解説します。
DataOpsとは
DataOpsは、DevOpsの考え方をデータ領域に応用したもので、データフローの自動化や高速化を図り、データ管理者とデータ利用者が協力してビジネス価値の最大化を目指します。
多種多様かつ膨大なデータに基づいて迅速かつ的確な意思決定を行うことが、競争優位性を確立する上で不可欠となっており、製造業において注目されているのです。
DataOpsとDevOpsの関係
DataOps は、データ (Data) と運用 (Operations) を組み合わせた言葉であり、DevOpsの考え方や文化をデータ領域に応用したものです。データ管理者はデータの収集・加工・分析を行い、データ利用者はその結果をビジネスに活用します。
これらの関係者を繋ぎ、データフロー全体を最適化することで、データ活用の価値を最大化します。
一方、DevOpsは開発(Development)と運用(Operations)を組み合わせた言葉で、開発担当者と運用担当者が協力してソフトウェアの開発や運用を効率化する手法です。
DevOps と DataOpsは、それぞれ対象領域は異なるものの、組織のサイロ化を解消し、関係者が協力して目標達成を目指すという点で共通しています。
両者を連携させることで、より迅速かつ効率的に価値を創造できると考えられます。
DataOps | DevOpsの考え方をデータ領域に応用したもの |
DevOps | ソフトウェアやシステムの開発と運用の連携を重視する手法や考え方 |
例えば、DevOpsによってソフトウェア開発プロセスが効率化されれば、DataOpsによって得られたデータに基づいた改善を迅速に反映させることができます。
また、DataOpsによってデータ分析基盤が整備されれば、DevOpsにおけるシステム運用に必要な情報をリアルタイムに把握し、迅速な対応に繋げることができます。
このように、DevOpsとDataOps は相互に連携することで、組織全体の能力を高め、ビジネス価値の最大化に貢献することができるのです。
DevOpsについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
DataOpsで解決できる製造業の課題
製造業は、製品開発から生産管理、品質管理、顧客管理に至るまで、多岐にわたる領域で大量のデータを生成しています。
これらのデータは、企業の競争力を高める上で重要な役割を果たしますが、従来型のデータ管理方法では、様々な課題が存在します。
以下で、DataOpsで解決できる製造業の課題を見ていきましょう。
データ量の急増及び多様化
企業が保有するデータは、日々加速度的に増加しています。これは、IoTデバイスの普及や顧客との接点増加、様々な業務プロセスのデジタル化など、様々な要因によって引き起こされています。
また、以下のようにデータの種類も多様化しています。
- 従来型のExcelやCSVファイルなどの構造化データ
- XMLやJSONファイルなどの半構造化データ
- 画像やテキスト、音声などの非構造化データ
このようなデータ量の急増と多様化は、企業にとって新たな課題をもたらしています。DataOpsを導入することで、企業は、多様なデータを効果的に活用し、ビジネス価値を最大化することができるのです。
データの品質の確保
データに基づいた意思決定を行うためには、高精度なデータ分析が欠かせません。しかし、そのためにはデータの品質が重要な課題となります。
データに誤記や欠落がないことはもちろん、常に最新の状態であることが求められ、用語やフォーマットの違いを解消し、一貫性のあるデータとして一元化することで、初めて高精度な分析が可能です。
また、データ品質が低いと分析結果が誤ったものとなり、誤った意思決定に繋がる可能性があります。
例えば、顧客データに誤りがあると、顧客ターゲティングを誤り、マーケティングキャンペーンの効果を低下させる可能性や生産データに欠陥があると、生産計画の誤りや品質管理の不備に繋がる可能性があるでしょう。
DataOpsは、データフロー全体を可視化し、自動化することで、データ品質の向上に繋がるため、データ駆動型の意思決定を支える高精度なデータ分析が可能となり、ビジネス価値の最大化が期待できるのです。
外部環境の変化への対応
現代のビジネス環境は、目まぐるしいスピードで変化しており、以下のようにデータを取り巻く状況も例外ではありません。
- 法規制の強化
- データソースの制限
- 顧客ニーズの変化
このような外部環境の変化に対応しながら、迅速かつ継続的にデータ駆動型の意思決定を下す上で、DataOpsの手法が有効です。
DataOpsは、データフローの自動化やデータ品質の向上を通じて、データ活用の効率化を実現します。
データ分析におけるコストの削減
企業が保有するデータ量は日々増加の一途を辿り、その分析には多大な時間や労力、コストがかかります。
従来の手作業によるデータ分析では、データの収集や整理、加工、分析にそれぞれ専門家を要し、その連携も煩雑になりがちです。
このような状況下では、データ分析にかけられる時間や予算が限られ、十分な分析結果を得られない可能性があるでしょう。また、分析対象となるデータが増えるほど、必要な人員やツールも増え、コストはさらに膨らんでいきます。
DataOpsはデータ分析プロセス全体を自動化し、効率化することで、データパイプラインの構築やデータ品質の管理、分析環境の整備などを自動化し、データ分析に関わる全ての人々がスムーズに連携できる環境を構築します。
これにより、データ分析にかかる時間や手間を大幅に削減し、必要な情報を迅速かつ正確に取得することが可能です。また、データ分析基盤を共有化することで、ツールやリソースの重複を避け、コストを最適化することができるでしょう。
DataOps導入のメリット
DataOpsを導入することで、企業は以下のような恩恵を受けることができます。
- 業務効率化と省力化
- 迅速な意思決定と経営判断
- 情報セキュリティの強化
- コンプライアンスの向上
以下で、各メリットを詳しく解説します。
業務効率化と省力化
DataOpsは、企業の業務プロセス全体を見直し、再設計を行うことから始まります。その上で、自動化できる部分を徹底的に自動化し、データ活用方法を策定することで、リードタイムを削減し、企業全体の生産性や品質、価値向上に繋がります。
また、リードタイムの短縮や品質向上は、顧客満足度を高め、企業価値の向上にも繋がるでしょう。
DataOpsは、データ活用を促進するだけでなく、企業の業務プロセス全体を改善し、生産性向上と価値向上も期待できる重要な取り組みと言えます。
迅速な意思決定と経営判断
従来、データは特定の部門や担当者によって管理され、必要な時に必要な情報にアクセスすることが困難でした。
DataOps は、このような状況を改善し、データへのアクセスを容易にすることで、社内の誰もがデータに基づいた意思決定を行えるようにします。
特に、多段なデータ処理を必要とする可視化を社内に標準化することで、チームでの意思決定や上層部での経営判断のスピードが大幅に向上するでしょう。
情報セキュリティの強化
現代社会はデジタル化の波に乗り、ペーパーレス化やテレワークなどの新しい働き方が普及しています。
しかし、情報の自由度が高まるにつれて、企業は機密情報の漏洩という新たな課題に直面しており、企業の機密に関わる情報の漏洩は、企業にとって致命的なダメージを与える可能性があります。
DataOps向けのシステム・ツールは、堅牢なセキュリティ機能を備えており、これらを活用したデータ利用プロセスを構築することで、情報漏洩やデータ消失のリスクを大幅に軽減することができるのです。
テレワークのセキュリティ対策については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
コンプライアンスの向上
DataOps の取り組みの一つとして、データ利用者のリテラシー向上があります。データリテラシが向上することで、データ利用者は法律遵守やステークホルダーへの配慮などの意識を高めることができます。
例えば、個人情報保護法などの法令を遵守したデータ活用、顧客情報や財務情報の適切な管理、労働関連法規に準拠した労働時間管理などが可能です。
このような厳格なコンプライアンス体制を確立することで、企業は法的リスクを低減できるだけでなく、社会からの信頼を得ることができます。
DataOps は、データ活用を促進するだけでなく、コンプライアンス体制を強化し、企業価値向上にも貢献する重要な取り組みと言えます。
DataOps導入のデメリットとその解決策
DataOps はデータ活用を効率化し、ビジネス価値を最大化するための有効な手段ですが、導入にあたってはいくつかの注意点があります。
以下で、DataOps の主なデメリットとその対策について解説します。
一時的な業務効率低下の可能性がある
DataOpsの導入は、長期的に見ればデータ活用を促進し、ビジネス価値を最大化する上で有効な手段です。しかし、導入初期段階においては、様々な要因により一時的に業務効率が低下してしまう可能性があります。
DataOps導入による一時的な効率低下は、以下のような対策を講じることで克服できるでしょう。
- データ管理者や利用者に対して、DataOpsの研修や教育を実施する
- DataOpsを小規模から段階的に導入し、リスクを軽減する
- 関係者間で積極的にコミュニケーションを図り、理解と協力を得る
- DataOpsを推進するためのチームを設置し、関係部署と連携しながら導入を進める
設備投資や人材育成にかかるコストが増える
DataOpsの導入には、データ基盤やツールといった様々なデジタルテクノロジーの導入が不可欠です。これらの導入には、当然ながら費用がかかります。
さらに、DataOpsを 効果的に運用するためには、データを管理するシステム・IT部門などの人材強化や、データ利用者の教育も必要となり、これらの人材育成や教育にも相応のコストがかかります。
このように、DataOpsの導入初期段階においては、設備投資や人材育成にかかるコストが増加することは避けられませんが、DataOpsの導入によって得られる生産性向上やコスト削減といったリターンは、長期的に見れば初期投資を上回る可能性があります。
重要なのは、DataOpsの導入によるリターンをしっかりと見極め、初期投資を回収できる範囲内で設備投資を行うことです。そのためには、DataOps導入の目的を明確にすることが重要です。
DataOps導入で生産性の向上や新たな価値を創造しよう
今回は、DataOps導入によるメリットやDataOps導入のデメリットとその解決策を解説しました。DataOpsはデータ管理者やデータ利用者、デジタルテクノロジー、プロセスを結びつけ、企業内のデータを円滑に利用できるようにすることを目的とした取り組みです。
DataOpsを導入することで、データ品質の向上や大量のデータ格納などが可能となり、企業は大きなメリットを得られます。
しかし、DataOpsの効果を最大限に引き出すには、時間と労力がかかり、一時的な効率の低下やコストの増加といったデメリットも避けられないでしょう。
データマネジメントの自動化をはじめとする基本要素を取り入れてDataOpsを推進し、ビジネス価値の最大化を目指しましょう。
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