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産業用ロボットの生産額が大幅に縮小!下火が続く理由や問題の解決策を解説

日本ロボット工業会の発表によると、以前まで順調に市場を拡大していた産業用ロボットの市場が縮小し、生産額が下落しているそうです。なぜ、生産額が下火になっているのでしょうか。

今回は、産業用ロボットの生産に関するニュースについて、現状の問題や今後の打開策について深掘りしていきます。産業界全体に影響する問題の解決に、いったい何が必要なのか詳しく見ていきましょう。

産業用ロボットとは?

産業用ロボットとは、工場など生産に関わる場所で用いられている自動化ロボットのことです。
例えば、次のような作業を人間の代わりに実施してくれます。

  • 材料や製品の搬送
  • 材料の加工
  • 材料の組み立て
  • 施設内の洗浄
  • バリ取り作業

時間のかかる作業を産業用ロボットが代行してくれるのはもちろん、計画された一連の動きを効率よく実施できることから、人件費の削減に役立つと人気です。

産業用ロボットの種類

産業用ロボットは、工場の仕組みや生産方法に合わせてさまざまな種類が製造されています。
参考として、一般的に用いられている産業用ロボットの種類を下表にまとめました。

産業用ロボットの種類 用途・目的
垂直多関節ロボット 複数箇所に回転ジョイントが設けられており、溶接や搬送など複雑な動きができる
スカラロボット 2つの平行した回転ジョイントを持っており、部品の押し込みや移動に対応できる
パラレルリンクロボット 天井からつるした状態で利用し、ピッキング作業や製品の組み立てを代行してくれる
直行ロボット スライドしながら製品の搬送や部品の移動を実施できる

アームタイプなど、設備として固定位置にいる産業用ロボットのほかにも、車輪がついた移動式の産業用ロボットなども工場で稼働しています。

国際ロボット連盟の調査によると、世界で導入されている産業用ロボットは50万台を超えているそうです。産業用ロボットは日本国内はもちろん世界中の産業界で欠かせない存在だと言えます。

産業用ロボットの生産額が過去10年で最大下落を更新

産業用ロボットの生産額下落
出典:ニュースイッチ「産業用ロボットの1-3月期生産額、過去10年間で最大の下落率になった背景」

日本ロボット工業会の調査により、最新の産業用ロボットの受注額が、過去10年のうち最大下落を更新しました。

産業用ロボットの生産額は3ヶ月ペースで更新されており、毎回1600億円を超える生産額を維持していました。しかし、最新の生産額調査では1,582億円となり、過去10年で最大下落を見せたと産業界で話題になっています。

世界的に市場が拡大していた産業用ロボットですが、近年では年を重ねるたびに下火が進んでいる状況です。世界経済の先行きが不透明な状態のなか、今後の産業用ロボットの生産において課題が待ち構えています。

産業用ロボットの出荷台数の動向

産業用ロボットの市場縮小について「電気機械製造業」「自動車製造業」という2つのポイントにおける出荷台数の傾向を以下にまとめました。

産業用ロボットの分野 国内出荷台数 国内出荷額
電気機械製造業 3,508台
(前年比14.8%減少)
164億円
(前年比12.1%減少)
自動車製造業 3,373台
(前年比10.2%減少)
161億円
(前年比1.4%減少)

上表からわかるように、業界全体で産業用ロボットの需要が減少しかけている状況です。
自動車製造分野では微減にとどまっていますが、他分野では前年と比べて1割以上の減少が起きていることに注目が集まっています。

産業用ロボットは世界でも需要が減少中

産業用ロボットの市場が縮小している日本の産業界ですが、実は世界における産業用ロボット需要も同様に減少を続けています。

日本ロボット工業会の調査資料によると、国内の産業用ロボット輸出額が1,202億円と、前年度比27.3%と大幅な減少をみせている状況です。特に市場の多くを占めていた中国・アメリカ・インドへの輸出量が落ち込んでおり、業界全体が冷え込みつつあります。

高品質な産業用ロボットを生み出していた日本の製品も売れなくなっていることから、世界中の市場すらも縮小していると予測されます。

製造業の将来性を詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
製造業の現状課題や将来に欠かせない対策について解説しています。

【2024】製造業の将来性とは?未来がないと言われる理由や日本のものづくりの今後について解説

産業用ロボットの市場が縮小している原因

産業用ロボットの生産額下落に影響したポイント

産業用ロボットの市場が縮小している背景には、世界情勢や国内の状況が大きく関係しています。参考として、産業界にダイレクトに影響を及ぼしている原因を3つ整理しました。

産業用ロボットの市場に影響する問題を詳しく見ていきましょう。

戦争問題による材料費の高騰

産業用ロボットの市場が縮小していることには、長期化したロシア・ウクライナ戦争が大きく影響しています。

戦争の影響で産業用ロボットの製造に利用する希少金属の価値が高騰し、生産コスト・販売コストが爆発的に増加している状況です。

産業用ロボットは1台当たりの単価も高額であるため、産業界の向上では高額な産業用ロボットを導入できないという状況に陥り、市場の縮小が起きていると考えられています。

また近年ではパレスチナ問題など、新たな戦争問題が起きています。
市場を揺るがす戦争問題が起きるたびに希少金属といった材料が高騰しやすくなることから、今後も市場の縮小が終わらないのではないかと、各業界から不安の声が挙がっている状況です。

世界的なインフレの発生

世界のインフレ問題によるダメージを受けて、国内製造が困難を極めていることも、生産額縮小に大きく影響します。

日本はまわりを海に囲まれ材料資源が少ない土地柄であるため、海外からの材料輸入に依存している状況です。そういったなか世界中でインフレが起き、材料費が高騰すると、1つの産業用ロボットを製造するコストが大幅に増加します。

また日本では円安問題が起きており、世界との通貨価値が大きく広がっている状況です。
輸出入に頼る産業界の場合、世界との開きにより大打撃を受けてしまうことから、今後も産業用ロボットの市場が縮小していくのではないかと予想されています。

国内産業の縮小化

産業用ロボットの市場縮小には、国内における企業倒産といった問題も影響しています。
例えば、次のような日本ならではの問題によって人が減り続け、倒産している企業が増えている状況です。

  • 少子高齢化
  • 担い手不足

産業界を運営するためには人手が必要なことはもちろん、熟練技術者・作業員を育成することが欠かせません。しかし産業界における人手不足が顕著であることから、今後も産業用ロボットの生産を実施しにくい状況が続いていくと予想されています。

同様に、産業用ロボットを購入する企業の資金繰りが悪くなり、次々と倒産していることも問題です。企業が倒産する分だけ購入される産業用ロボットの数が減少してしまうため、現状の国内問題を解決しない限り、縮小が止まらないと不安視されています。

産業用ロボットの生産額減少を食い止める対策

産業用ロボットの市場縮小の解決策

下火が続く産業用ロボットの市場問題を解決するためには、国内で推進されているDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組んで、生産性向上を実現することが重要です。

参考として、製造業界で効果を発揮するDXの対策を3つ紹介します。

レガシーシステムから脱却する

まず重要なのが、長く利用し続けているレガシーシステムから脱却し、DX化の準備を整えることです。

経済産業省の調査によると、企業の半数以上が未だに低性能で複雑な操作を求められるレガシーシステムを導入しており、効率的な業務を実現できていません。レガシーシステムの運用には莫大なコストと人件費を消費するため、早期に解決すべき問題です。

近年ではシステムをクラウド化して、効率よく生産管理・運用できる仕組みをつくることが求められています。よって産業用ロボットの生産効率化を目指したいのなら、第1段階としてレガシーシステムからの脱却を検討してみてください。

レガシーシステムについて詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
レガシーシステムの課題と解決策を詳しく解説しています。

レガシーシステムの課題とは?スマート工場の実現に向けた解決策・企業事例

IT人材を確保する

産業用ロボットの生産業務をDX化したいのなら、DX化を実現するための人材確保に取り組むことが重要です。

どんなに魅力的なDXのシステムを導入しても、それを理解して動かせる人材がいなければ効果を最大限に発揮できません。参考として、IT人材は次の方法で確保できます。

  • IT人材を新規採用する
  • IT人材に業務を外部委託する
  • 社内でIT人材を育成する

上記の中でも低コストなのが、社内でIT人材を育成する手法です。
とはいえ、人材の育成方法がわからないと悩む方もいるでしょう。

もしDXといった知識・ノウハウを学びたいのなら、オンラインセミナーに参加するのが効率的です。次のような面白いセミナーが開催されているので、ぜひ参加してみてください。

IoT技術を活用する

産業用ロボットの生産を効率化したい、生産ロスを減らしたいという場合には「モノのインターネット」という意味を持つIoT技術を導入するのがおすすめです。

IoT技術は、カメラやセンサーなどを活用しながら生産工程をデータ化する仕組みのことを指します。人の目では判断できない情報を、IoTの技術によってデータ化し、生産の問題や改善点の抽出・分析に役立てることが可能です。

IoT技術によってビッグデータを集めて分析し、より効率的な生産体制を計画するといった手法を取ることで、産業用ロボットの生産品質や効率を改善・向上できるかもしれません。

産業用ロボットについてまとめ

産業用ロボットの生産額が下火になりつつあるほか、世界情勢の問題を受け、市場の縮小が長期化しそうな状況です。そういったなか、産業用ロボットの生産性向上や市場拡大を目指すためには、製造業のDX化が必要になります。

産業用ロボットは、人手不足の問題が続く日本の工場に必要不可欠なツールですので、産業界の動向や取り組みから目が離せません。

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