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燃焼装置の市場投入がスタート!パワー半導体分野に参入するSiC対応の装置とは?

半導体製造サービスで世界的なシェア率をもつファスフォードテクノロジが、パワー半導体分野への参入のため、SiC対応の燃焼装置の市場投入に動き出しました。最新の燃焼装置には、どのような魅力があるのでしょうか。

今回は、SiC対応の燃焼装置について、企業動向や燃焼装置に期待される効果などについて深掘りしていきます。半導体分野や燃焼装置について興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

SiC対応の燃焼装置がパワー半導体市場に参入

SiC対応の燃焼装置

半導体装置の製造サービスを展開しているファスフォードテクノロジが、電気自動車などで採用されているパワー半導体のニーズ増加をきっかけとし、新たにSiC対応の燃焼装置の市場投入を始めると発表しました。

従来のSiC対応のパワー半導体は、シリコン製パワー半導体と違い高温の環境に対応できるのが魅力です。しかし、同社が提供しているダイボンディングの技術では高温の場所で接着剤が溶けてしまうという問題が発生します。

そこで新たに発案されたのが、高温のなかでも耐えられる燃焼装置の活用です。
従来のダイボンディング技術と合わせて利用することにより、電気自動車のニーズが高まる現代において、新たな市場拡大を目指せると期待されています。

ファスフォードテクノロジの企業概要

ファスフォードテクノロジは、1963年に創業した半導体の製造企業であり、現在では世界規模で半導体製造サービスを展開している老舗大企業です。

燃焼装置を含め、主に半導体製造装置の開発・設計・製造・販売などワンストップのサービスを提供しており、前述したダイアタッチのひとつである「ダイボンディング」という技術を使って半導体の製造に対応しています。

参考として企業概要を以下にまとめました。

企業名 ファスフォードテクノロジ株式会社
所在地 〒400-0212 山梨県南アルプス市下今諏訪610-5
資本金 4億5千50万円
従業員数 211

本記事で紹介している燃焼装置と関係のある「半導体」について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。半導体の基礎知識や専門用語の意味などをわかりやすく解説しています。

半導体の基礎知識を初心者向けにわかりやすく解説!よく出る専門用語の意味とは?

燃焼装置とは

燃焼装置とは

本記事で紹介するファスフォードテクノロジの燃焼装置とは、電気自動車などに導入されている半導体のチップを熱と圧力を使って接合する装置のことです。別名、シンタリング装置と呼ばれており、セラミックス原料粉末を高温で焼き固めて半導体チップを接合します。

この装置は半導体チップを製造するうえで欠かせない工程であり、専用の機器のなかに半導体を入れることで、燃焼作業を実施して機械が接合してくれるというものです。

さまざまな企業が半導体の接合装置を開発しており、そのなかでもファスフォードテクノロジは、世界シェアトップを獲得しています。

半導体の接合方法の種類

半導体の接合に利用される燃焼装置は、シンタリングの燃焼技術を用いたものだけでなく接着剤により接合する「ダイボンディング」という方法が用いられています。

接合材には電気を通す導電タイプ、電気を通さない絶縁タイプの2種類があり、半導体チップの種類や用途に合わせて接合方法が使い分けられています。

燃焼装置に期待される効果

燃焼装置を用いたパワー半導体の製造を実現できれば、パワー半導体を今まで以上に薄型化できると期待されています。

パワー半導体は何層にも重ねることでデータ容量を増していくのが特徴ですが、従来の製造方法ではサイズ的に重ねる枚数に限界がありました。一方で、燃焼装置を用いてパワー半導体を製造すれば、薄型化により今までよりもデータ容量を増量できるのが魅力です。

そのためファスフォードテクノロジでは、今後の製造の発展に伴い、燃焼装置と既存のダイボンディングの技術を組み合わせ、新たな技術を活用した新型の燃焼装置を市場に投入すると発表しています。

燃焼装置でパワー半導体を製造する魅力

燃焼装置の魅力

燃焼装置を利用してSiC対応のパワー半導体を生み出せる技術、にはさまざまな魅力が隠れています。参考として、市場参入後に期待される魅力を整理しました。

SiCは燃焼装置と切っても切り離せない重要な関係があるため、ぜひ参考にしてみてください。

高いバンドギャップを確保できる

SiC対応の燃焼装置があれば、従来のシリコンパワー半導体では電子が存在できない領域であるバンドギャップの幅を広げやすくなります。

バンドギャップが高くなると、その分だけ耐圧に強くなるため、燃焼の効果により半導体のドリフト層(デバイスの破損を防止する層)を薄くできるのが魅力です。

熱伝導率を倍増できる

SiC対応の燃焼装置を活用すれば、熱伝導率の高いパワー半導体を製造できます。
熱伝導率とは、熱の伝わりやすさを意味するものであり、熱伝導率が高いほど半導体の効率が向上します。

半導体に溜まった熱を効率よく放熱できることも含め、パフォーマンスを維持しながら電気自動車を走行させられるのが魅力です。

また、パワー半導体が利用されている電気自動車について、SiCを採用する効果を詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。パワー半導体の最新動向も含めて解説しています。

パワー半導体で電動車の電力効率を向上!SiC採用によって生まれる効果とは?

燃焼装置の最新動向

パワー半導体市場の動向

ファスフォードテクノロジが参入を検討している燃焼装置製品およびパワー半導体市場の最新動向をまとめました。

パワー半導体は電子機器などに欠かせない部品であるため、市場が徐々に拡大を続けています。
燃焼装置に参入できる隙があるのか詳しく見ていきましょう。

チップマウンター大手FUJIと提携して燃焼装置の開発を進行中

現在ファスフォードテクノロジは、燃焼装置の製造技術をもつチップマウンター大手のFUJIと提携し、最新の燃焼装置の開発を進行中です。

FUJIはNAND型のフラッシュメモリー市場での世界シェアを50%以上獲得しているメーカーであり、燃焼装置や半導体に関わる実績やノウハウを数多く所有しています。すでにFUJIとの研究開発施設を整備しているなど、着実に開発が進行中です。

2030年までの市場予想

経済専門リサーチャーの矢野経済研究所によると、直近のパワー半導体市場の価値はおよそ239億円程度と言われており、過去から現在にかけて右肩上がりの状態が続いていることがわかっています。

また、過去の動向を見ても上昇傾向が続き、現在もパワー半導体のニーズが上がり続けていることから、燃焼装置の価値も含め、2030年を迎えるまでにはおよび370億円規模にまで成長すると期待が寄せられています。

市場価値の上昇はその分だけ、様々な企業や投資家などが集まることを意味します。
ファスフォードテクノロジが市場参入を検討しているSiC対応のパワー半導体を製造する燃焼装置についても同じように、参入後に一定以上の成果を残せるかもしれません。

市場拡大が期待されている技術

同調さないでは、パワー半導体を活用する電気自動車のニーズ上昇はもちろん、自動車を問わずさまざまな機械の「電動化」「自動運転化」が進展していくと予想されています。

電動化・自動運転化には、パワー半導体といった考慮理に対応できる部品が必要であることから、それを製造する燃焼装置のニーズも上昇し続けると期待されています。

脱炭素として掲げられているカーボンニュートラルの目標が2050年であることも含め、今後長期間にわたり燃焼装置がかかわる分野での市場拡大が続いていくと予想できるでしょう。

ファスフォードテクノロジの燃焼装置に関わる事業・技術

ファスフォードテクノロジは今回紹介する燃焼装置だけでなく、ほかにもさまざまな半導体製造装置の設計・製造・販売などに対応しています。参考として、燃焼装置に関わる事業・技術についてまとめました。

ファスフォードテクノロジの燃焼装置および製造装置に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

ダイボンディングに対応した製造装置の提供

ファスフォードテクノロジは、現在以下に示す5種類の半導体製造装置を提供しています。

  • DB850シリーズ
  • DB830plus+シリーズ
  • DB820
  • DD100シリーズ
  • FC300

それぞれ対応している半導体の種類や積層数、製造スピードが異なります。

また、上記のなかでも最新の装置なのが、FC300です。
大型パネルへのボンディングに対応できるのはもちろん、1台で複数のレシピに対応できるほか、ツールの切り替えにも対応できます。

また、今後新たに燃焼装置の機能をもつ製品も追加される予定であるため、製造ニーズに合わせた製品の提供が可能です。

高品質な積層技術

燃焼装置を含め、ファスフォードテクノロジが提供している半導体製造装置には、寸分の狂いなく正確にダイ(電子回路)を積層できる高精度な積層技術が搭載されています。

薄型の積層に対応した製造機器も提供されていることからダイの積層量を増やすことにより、メモリ容量を増大できるのが魅力です。

小規模スペースに大容量の記録媒体をできることから、小型半導体の製造に関わる製造工場などに活用されています。

破損を防ぐ低ストレスダイピックアップ技術

半導体製造装置は超薄型のダイを積み重ねることで製造するため、従来の機器では薄さのせいでダイ自体が途中で破損する恐れがあります。

一方で、ファスフォードテクノロジが提供している燃焼装置を含む半導体製造装置は、厚さ25~50マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリメートルの1000分の1)の薄さのダイを破損させることなく製造できるのが魅力です。

例えば、ダイに外圧といったストレスがかからないように繊細な機器の動きで対応しながら半導体を製造していきます。小さな落下でも壊れてしまう薄型のダイから、高品質な半導体を生み出す衝撃の加わりにくい製造が可能です。

燃焼装置についてまとめ

市場が拡大し続けるパワー半導体の市場において、SiC対応の半導体を効率よく製造できる燃焼装置は高いニーズを生み出す製品へと変わっていくと予想されます。これから参入がスタートする新たな技術として、国内だけでなく海外でも導入が進んでいくでしょう。

ファスフォードテクノロジは燃焼装置のみならずダイボンディング技術を活用した半導体製造装置で世界シェアトップを獲得していることも含め、参入後の動向から目が離せません。

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