アメリカのソフトウェア会社Adobeが提供するイラストレーターは、デザイナーにとって必須のデザインツールです。そんなイラストレーターを活用すれば、自分だけのオリジナル名刺を作成できます。
本記事では、イラストレーターで名刺を作る際に気をつけたいポイントについて解説します。仕事や趣味でイラストレーターを使った名刺作成をしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
イラストレーターで名刺を作る手順
初めに、イラストレーターで名刺を作る流れについて押さえておきましょう。名刺作成の基本を知ることで、自ずと気をつけるべきポイントが見えてきます。
新規ドキュメントを作成する
イラストレーターで名刺を作る最初の工程は新規ドキュメントの作成です。
名刺に合ったドキュメントを作成する方法は以下のとおりです。
- イラストレーターを起動してホーム画面を表示する
- ホーム画面のメニューから「新規ファイル」を選択する
- 新規ドキュメントの作成画面で上部のメニューから印刷を選択する
- 高さを91mm、幅を55mmに設定する
- 方向を縦に設定する
- 作成を選択する
上記を設定すると、名刺を作るためのドキュメントが作成されます。なお、横向きの名刺を作る際は、高さ55mm、幅91mmで方向を横に設定しましょう。
トンボを作成する
新規ドキュメントを作成したら、仕上がりサイズに断裁するために必要となるトンボを作成します。トンボを作成する方法は以下のとおりです。
- 長方形ツールで高さ91mm、幅55mmの長方形を作成する
- 整列パネルからアートボードの中央に整列させる
- メニューバーのオブジェクトから「トリムマークを作成」を選択する
上記の手順で、アートボードの周りにトンボが作成できます。名刺を作り始める前に忘れず設定しておきましょう。
ガイドを作成する
トンボを作成したら塗り足し線と文字切れラインの追加を行い、それをガイド化します。イラストレーターでガイドを作成する手順は以下のとおりです。
- トンボを作成した長方形のオブジェクトを選択する
- メニューバーのオブジェクトにあるパスから「パスのオフセット」を選択し、オフセットの値を「3mm」にしてOKをクリックする
- 再度トンボを作成した長方形のオブジェクトを選択する
- メニューバーのオブジェクトにあるパスから「パスのオフセット」を選択し、オフセットの値を「-3mm」にしてOKをクリックする
- すべてのオブジェクトを選択する
- メニューバーの表示の中にあるガイドから「ガイドを作成」を選択する
作成したガイドに沿うことで、入稿時に不備のない名刺を作れます。また、作成したトンボとガイドは動いてしまわないように、レイヤーパネルの左にある目のマークの右側をクリックしてロックをかけておきましょう。
ロックのショートカットキーは、WindowsならCtrl + 2、MacならCommand + 2です。
名刺を作成する
トンボとガイドを作成できたら、下準備は完了です。続いては名刺の作成に入っていきましょう。一般的な名刺に記載されている項目は以下のとおりです。
- 名前
- ロゴ
- 会社名
- 役職・部署
- 住所・電話番号・メールアドレス
- SNSアカウント・QRコード
- URL
上記の項目にプラスアルファで情報を詰め込んで、表面・裏面を作成しましょう。
データを保存する
印刷会社に入稿するために、名刺を作成したaiデータを保存します。保存の方法は以下のとおりです。
- メニューバーのファイルから「別名で保存」を選択する
- ファイルの種類をai形式にして任意のファイル名をつける
- 保存を選択する
また、印刷会社への入稿にPDFのデータが必要な場合は、以下の手順で保存しましょう。
- メニューバーのファイルから「複製を保存」を選択する
- ファイル形式からAdobe PDF(pdf)を選択する
- 任意のファイル名を入力する
- 保存を選択する
- Adobe PDF プリセットから「PDF/X-1a:2001(日本)」を選択する
- PDFを保存を選択する
- 注意のダイアログが出たらOKを選択する
必要に合わせてPDFのデータも用意できるようにしておきましょう。
イラストレーターの名刺作成の注意点9選
イラストレーターで名刺作成するうえで、気をつけるポイントが9つあります。これらの注意点を考慮しないと入稿時に不備が出てしまう可能性があるため、しっかりと確認していきましょう。
カラーモードをCMYKにする
名刺を作成する際のカラーモードは、印刷用のCMYKに設定するようにしましょう。コンピューターやテレビなどのディスプレイで表現するRGBを使ってしまうと、入稿時にCMYKに変換されるため、色味がかなり変わってしまいます。
カラーモードがCMYKになっているかは、メニューバーのファイルの中にあるドキュメントのカラーモードで確認できます。最初の設定でカラーモードをRGBにしてしまわないように注意しましょう。
塗り足しをつける
印刷会社で断裁する際、必ずしもトンボに沿って綺麗に断裁できるわけではありません。多少内や外にずれてしまう場合があります。
そのような場合、断裁位置までにしか塗りがなければ上下左右にわずかな白い余白が残ってしまうかもしれません。そのようなデザインの崩れを防ぐためにも、イラストレーターで背景をつける場合は、断裁位置よりも少しはみ出して設定する必要があります。
断裁位置よりも少しはみ出して塗りをつけるのを塗り足しといいます。その塗り足しをする目安の位置は、トンボを作ったときに作成した外側のガイドです。
せっかく作成した名刺が残念な仕上がりにならないためにも、塗り足しがしっかりできているか確認しておきましょう。
文字切れラインをはみ出さない
ガイドを作成した際に、内側につけたラインを文字切れラインと呼びます。文字切れラインとは、文字をはみ出して配置しないためのラインです。
文字切れラインがなく、断裁位置ギリギリに文字を配置している場合、断裁が内側にずれてしまうと文字が切れて不恰好になってしまいます。文字表示を問題なく行うために、文字は断裁位置から3mm手前に設置された文字切れラインをはみ出さないように設置するようにしましょう。
画像の解像度を350dpi以上にする
名刺にロゴやQRコードなどの画像データを使用する場合は、画像の解像度を350dpi以上にするようにしましょう。350dpi以下だと画質が悪くなり、出来上がりの完成度が低くなってしまう可能性があります。
解像度は画像をクリックして、上部のPPIと書かれている横の数字で確認できるため、チェックしておきましょう。
画像は埋め込む
名刺に画像を設定している場合は、埋め込み処理を行っておきましょう。イラストレーターに設定した画像はリンクになっています。そのため、画像を埋め込んでいないと、入稿時にリンクのパスがつながらず表示されなくなります。
埋め込みは、配置している画像を選択して上部のメニューから「埋め込み」を選択するだけで可能です。入稿前に必ずチェックして、忘れず埋め込むようにしましょう。
文字をアウトライン化する
入稿前は、文字のアウトライン化を忘れずに行いましょう。文字のアウトラインができていないと、印刷会社のパソコンにフォントのデータが入っていない場合、ほかの代替できるフォントに置き換わってしまいます。
その結果デザイン崩れが発生してしまうかもしれません。文字をアウトライン化する方法は以下のとおりです。
- メニューバーの選択から「すべてを選択」を選択する
- メニューバーの書式から「アウトラインを作成」を選択する
フォントのアウトライン化をしていれば文字はオブジェクトとして認識してくれるので、フォントのデータがなくてもデザインの崩れは起こりません。
バックアップを取る
イラストレーターで文字をアウトライン化する前には、データのバックアップを取るようにしましょう。イラストレーターで文字をアウトライン化してしまうと、元に戻せなくなるため、誤字脱字があった場合や文言を変えたい場合に対処できなくなります。
文字をアウトライン化する前のデータをバックアップしておくことで、文字の変更があった際にも柔軟に対応できます。データのバックアップを取る方法は以下のとおりです。
- メニューバーのファイルから「別名で保存」を選択する
- アウトライン化前のファイルとわかる名前を任意でつけて保存を選択する
今後文字の変更はないと考えていても、クライアントからの要望で変えなければいけないケースもあるため、バックアップは忘れずに取るようにしましょう。
線の色は「塗り」ではなく「線」に設定する
イラストレーターで線に色をつける場合は、塗りではなく線に設定するようにしましょう。塗りで色を設定するとイラストレーターの画面上では綺麗に表示されていても、印刷時に色が出ない可能性があります。
そのため、線の色は塗りではなく線についているかの確認も事前に行っておくことが大切です。また、塗りで線を表現したい場合はパスをアウトライン化してから設定するようにしましょう。
線の太さは0.3pt以上にする
印刷会社にもよりますが、線は一般的に0.3pt以下になると細すぎて印刷されない可能性があります。そのため、線の太さは最小でも0.3pt以上に設定するようにしましょう。
また、線は太さだけでなく濃さも重要で、薄い色は綺麗に印刷できる保証がないため、ある程度濃い色を設定することが大切です。
ウケの良い名刺をイラストレーターで作るコツ
魅力的な名刺を作るうえで最低限押さえておきたいポイントを2つ紹介します。名刺を作る際の参考にしてみてください。
名刺に住所や電話番号を載せる
名刺に住所や電話番号といった個人情報を載せるのは怖いと考える方も多いでしょう。しかし、安心して仕事を発注してもらううえで、住所や電話番号といった個人情報の開示は大切です。
しかし、個人情報の開示にどうしても抵抗のある方は、名刺交換は信頼できる相手を選ぶようにしましょう。
名刺の裏面もしっかり作る
名刺の表面だけでなく裏面もしっかり作ることで、会話のきっかけにもなります。書くことがない方は、経歴を載せたプロフィールでもよいので、白紙にはしないようにしましょう。
ただし、名詞に情報を詰め込みすぎて見づらくならないように注意は必要です。
イラストレーターと名刺についてのまとめ
今回は、イラストレーターで名刺を作る方法や気をつけるポイントについて紹介しました。イラストレーターを利用すれば、誰でも簡単にオリジナルの名刺が作成できます。
一方で、塗り足しやアウトライン化を忘れてしまうと、入稿時に不備が発生してしまう可能性があります。そのため、イラストレーターのデータを入稿する際は、今回紹介した注意点を踏まえて最終チェックを行うようにしましょう。