アスカネットが開発を進めている、空中にディスプレイを表示して操作できる「空中ディスプレイ」が電気自動車へ導入される予定だと発表されました。では、空中ディスプレイとは、どのような機能を備えた技術なのでしょうか。
今回は、空中ディスプレイの開発に関するニュースをもとに、技術の仕組みや最新の動向について深掘りします。どのような業界で必要とされる技術なのか詳しくみていきましょう。
アスカネットが空中ディスプレイを開発中
ディスプレイ技術を活かした事業を展開しているアスカネットより、空中ディスプレイを電気自動車に導入する予定だという発表がありました。
ASKA3Dプレートと呼ばれるガラスや樹脂などでつくられた特殊なパネルを通過させることにより、空中にディスプレイを表示できます。直接パネルに触れることなくディスプレイを操作できることから、電気自動車はもちろん各産業にて実用化の可能性があると期待されています。
アスカネットの会社概要
アスカネットはデジタルディスプレイ技術や印刷技術を活かし、次のような事業を展開している会社です。
- フォトブック事業
- フューネラル事業
なかでもディスプレイを活用したフューネラル事業は、冠婚葬祭における動画の配信や葬儀の演出サービスなどで活用されています。インターネットやクラウドを通じてディスプレイに画像・映像を投影できるため、冠婚葬祭におけるデジタル化をサポートしているのが特徴です。
そういったなか、アスカネットではあらたに空中ディスプレイ事業がスタートしています。
空中に映像等を投影する今までにない技術を活かすため、複数の業界への導入や、電気自動車向けのディスプレイが開発されている状況です。
空中ディスプレイの電気自動車導入が間近に迫る
空中ディスプレイ事業を展開しているアスカネットは、中国新興メーカーの電気自動車に、非接触型の空中ディスプレイを導入する計画が立てられています。ちなみに導入開発はすでに進行しており、車載時における次の問題を解決できれば、実用化が可能になると考えられています。
- 季節によって変化する温度
- 地域ごとに変化する湿度
- 走行時の強い振動
ただ映像を映して操作できるだけでなく、電気自動車を取り囲む「過酷な環境」に対応できる状態にしなければなりません。
空中ディスプレイの電気自動車への車載に成功すれば、同じく電気自動車を開発しているメーカーとの差別化を図れるほか、製品としての付加価値を生み出せると期待されています。
空中ディスプレイは電気自動車への導入が進んでいる状況ですが、そのなかでも人気を集めている電気自動車について興味をお持ちの方も多いでしょう。以下の記事では次世代自動車の人気ランキングを解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
空中ディスプレイとは
空中ディスプレイとは、文字通り空中にディスプレイを表示できる技術のことです。
従来のディスプレイと違い、ディスプレイの表面に画像や映像を映すのではなく、独自の光学プレートを使って空中に投影できます。
スマートレンズといった特殊なメガネを着用せずに投影された内容を認識できるのが特徴です。
また、映像を見るだけでなく、直接空中に投影された画面をタッチパネルのように操作できます。
ディスプレイに触れることなく操作できることから、新型コロナウイルスのまん延をきっかけに生まれた「物への接触」の問題を解決できると期待されています。
ホログラフィー・インテグラルフォトグラフィーとの違い
空中ディスプレイと似た技術に「ホログラフィー」「インテグラルフォトグラフィー」と呼ばれるものが存在します。空中ディスプレイ技術とすでに利用されている従来技術との違いを、下表に整理しました。
空中ディスプレイ | ホログラフィー | インテグラルフォトグラフィー | |
投影方法 | 光の反射現象・結像現象を利用して、レンズの表面よりも前に映像を投影する | 光の干渉現象を利用して、立体的に映像を投影する | 複数のレンズを平面上に並べ、光の結像現象を利用して映像を投影する |
タッチ機能 | あり | なし | なし |
映像の投影には光の仕組みが活用されていますが、非接触型のタッチパネル機能があるのは空中ディスプレイだけです。まるで未来を舞台とした映画の世界に似た表現ができます。
空中ディスプレイの仕組み
空中ディスプレイは、ディスプレイに映し出される画像・映像から放出される光線を、特殊なガラスプレートで受け止めることにより、一定の位置に映像を投影できるのが特徴です。
液晶ディスプレイ・ASKA3Dプレート・空中結像という3つの工程で映像を投影でき、私たち人間は、あたかも空中に映像が表示されるように錯覚します。
また、空中ディスプレイを操作するために、別途モーションセンサーが搭載されています。
人の動きと映像の位置関係をモーションセンサーが認識することで、空中に表示されているディスプレイを操作しているように錯覚させるのが特徴です。
空中ディスプレイの導入が期待される分野
空中ディスプレイは汎用性の高い技術であることから、複数の業界からの導入が期待されています。そのなかでも、電気自動車以外に空中ディスプレイ技術の特性を活かしやすい業界を整理しました。
観光業界
空中ディスプレイは、今までにない新たな投影技術であるため、近未来的な表現が観光業界で役立ちます。
例えば観光マップを空中ディスプレイで投影すれば、それ自体が観光の目玉になります。
また、タッチパネル機能を合わせれば、さまざまな国からやってくる人たちがマップに手をつけることなく操作が可能です。海外から入ってきたウイルスのまん延を抑えやすくなることも含めて、防菌という視点でも役立つと考えられます。
小売業界
空中ディスプレイは、以下に示す小売業界でも活躍すると考えられます。
- コンビニ
- スーパー
- 百貨店
人の出入りが激しい小売り業界では、近年セルフレジなどタッチパネル式の決済方法が採用されています。しかし、タッチパネルを複数人が触れるという衛生上の問題が発生してしまうのがネックです。
対して、空中ディスプレイをタッチパネルの代わりに導入すれば、訪問客が直接セルフレジの端末に触れることなく決済できます。店舗の衛生品質を向上できるのはもちろん、セルフレジの除菌といった管理負担を減らせるのが魅力です。
医療業界
空中ディスプレイは、衛生面が重視される医療業界でも役立ちます。
まず医療施設で利用されているタブレットなどを空中ディスプレイ化することにより、医療スタッフが直接画面に触れずに問診・健康チェックを続けられます。
また、施設を訪問した患者が受付の端末に触れる必要がなくなるため、病気の媒介を防止しやすくなるのが魅力です。医療施設には免疫力が衰えている患者が訪問することから、衛生管理の徹底が欠かせません。医療スタッフ・患者においてもウイルス対策をしやすくなるでしょう。
広告業界
空中に映像を浮き出させる「空中ディスプレイ」の技術は、デジタルサイネージなど広告業界を発展させる技術だと注目されています。
従来の映像をディスプレイ上に表示させる広告とは違い、ディスプレイよりも前面に映像を浮きださせることが可能です。従来のディスプレイよりも多彩な表現ができるのはもちろん、タッチパネルを使って体験型の広告を仕掛けられます。
ユーザーエクスペリエンスに優れた広告を掲載しやすくなることも含め、新たな広告手法として役立つかもしれません。
また広告事業では、技術の発展に伴い、新たな情報発信の仕組みが数多く登場しています。
そのなかでも動く看板付きの自動車について興味がある方は以下の記事をチェックしてみてください。新たな広告活動の仕組みを解説しています。
空中ディスプレイの企業活用事例
空中ディスプレイは、製品としての販売がスタートしています。
参考として、実際に空中ディスプレイを導入している企業事例をまとめました。
東京ミッドタウン八重洲の受付に導入
東京駅直結の複合施設「東京ミッドタウン八重洲」では、エントランスのオフィス連絡用にタッチレスの入室装置として空中ディスプレイが導入されました。
7インチサイズの空中ディスプレイはポストコロナ時代のウイルス対策として導入され、非接触の状態で入退館を管理する目的で導入されています。エントランスの全エレベーターホールに設置されており、社員はものに触れることなく施設への入退室ができるようになっています。
サントリースピリッツが店頭プロモーションとして導入
ウイスキー・ワインの製造事業を展開しているサントリースピリッツは、以下に示す目的で店内のイベント施設にプロモーション用の空中ディスプレイを設置しました。
- 集客
- 顧客体験工場
- 記憶への定着
「グレンフィディック」という商品説明を空中ディスプレイ上で実施することにより、立体感をもたせながらおいしさ・こだわりなどを伝えられるようになっています。
広島県庁のデジタル受付として導入
広島県庁では、来朝する人々のサポートとして、受付窓口に空中ディスプレイ型の受付システム導入しました。
空中ディスプレイには案内対応をする女性のキャラクターが表示されており、画面に触れることなく施設案内を操作できます。来庁者へのおもてなし、そして感染予防対策の一環として活用されており、全国にある自治体で初めて導入したということで注目を集めています。
空中ディスプレイについてまとめ
空中ディスプレイはすでに実用化が進んでいる技術であり、小売業・観光業など数多くの場所に導入されています。また現在、空中ディスプレイの電気自動車への導入が進行中です。
車載環境に耐えられるようになれば、電気自動車のハイテク化が進むと期待されています。
今までの画像・映像の表示や操作の認識を大きく変える技術ですので、今後の動向から目が離せません。