データの傾向を一目で把握できる「ヒストグラム」は、ビジネスや日常のデータ分析に欠かせないツールです。エクセルを活用すれば、特別なソフトを使わずに簡単にヒストグラムを作成することができます。
しかし、正しく作成し、見やすくカスタマイズするには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
この記事では、エクセルでヒストグラムを作成する基本的な方法や、見やすくするための工夫、さらには実際の活用例を見ていきましょう。
エクセルのヒストグラムとは?
ヒストグラムは、データを特定の範囲(階級)ごとに分け、分布を棒グラフのように表現したグラフです。
横軸には階級を、縦軸にはその範囲に該当するデータの頻度(度数)を示します。ヒストグラムは、データの傾向やばらつき、異常値などを一目で把握することが可能です。
また、ヒストグラムは視覚的に分かりやすいため、日常業務やマーケティング、品質管理など幅広い分野で活用されています。エクセルを使えばデータの分布を効率的に視覚化できるので、分析の第一歩として非常に便利なツールと言えるでしょう。
ヒストグラムと棒グラフの違い
ヒストグラムと棒グラフは、見た目が似ているため混同されがちですが、それぞれ目的やデータの種類が異なります。ヒストグラムは連続データを対象にデータの分布を視覚化するのに対し、棒グラフはカテゴリデータを比較するために使われます。
ヒストグラムと棒グラフの違いを以下の表にまとめました。
項目 | ヒストグラム | 棒グラフ |
---|---|---|
対象データ | 連続データ(数値や範囲) | カテゴリデータ(分類) |
横軸の性質 | データ範囲や階級 | 個別のカテゴリ |
棒の間隔 | 隙間なし(連続性を表現) | 隙間あり(独立したカテゴリを表現) |
主な用途 | データ分布や傾向の可視化 | 複数のカテゴリ間の比較 |
例 | テストの点数の分布、身長や体重の測定値 | 売上の地域別比較、投票結果、商品の人気度の比較 |
このように、ヒストグラムはデータがどの範囲に集中しているかを把握する際に便利です。一方、棒グラフは複数のカテゴリを比較したいときに適しています。どちらのグラフも用途に応じて使い分けることで、より効果的なデータ分析が可能になります。
エクセルでは両方のグラフが簡単に作成できるため、目的に合わせて活用してみましょう。
エクセルでヒストグラムを作る方法
エクセルでは、ヒストグラムを簡単に作成するためのさまざまな方法が用意されています。
- ショートカットを使った方法
- 度数分布表を利用した方法
- FREQUENCY関数を活用する方法
この章では上記3つの方法を見ていきましょう。
ショートカットを使った方法
ショートカットキーを使えば、ヒストグラムを素早く作成することができます。エクセルの標準機能を活用した最も簡単な方法です。
以下のステップで作成しましょう。
- データ範囲を選択し、Alt + N + R のキーを順番に押す
- 表示されたグラフの選択画面で「ヒストグラム」を選択し、OKをクリックする
- 横軸をクリックし、軸のオプションから「ピンの幅」を指定する
- 軸のオプションから「ピンのオーバーフロー」と「ピンのアンダーフロー」を指定する
この方法は、データ範囲を選ぶだけで簡単にヒストグラムを作成できるため、初心者にもおすすめです。ただし、④と⑤のように、データ区間の細かい設定が難しい場合があるため、調整が必要でしょう。
度数分布表を利用した方法
度数分布表を作成してからヒストグラムを作る方法は、データの区間を自分で細かく設定できるため、より正確な分析に向いています。
以下のステップで作成しましょう。
- 数値データを基に階級を設定した後、COUNTIF関数を使用し、階級ごとのデータ頻度を求める列を作る
E1:=COUNTIF($B$2:$B$15,”<=10″)E2以降:=COUNTIF($B$2:$B$15,”<=”&D3)-COUNTIF($A$2:$B$15,”<“&D2)
- 度数分布表が完成したら、データ範囲を選択し、挿入タブから「縦棒グラフ」を選択する
- 棒グラフをダブルクリックし、「データ系列の書式設定」から「要素の間隔」を0%にする
この方法では、データの傾向を詳細に分析できるため、ヒストグラムの見た目を整えたい場合や、特定の区間に注目したい場合に最適です。
FREQUENCY関数を活用する方法
FREQUENCY関数を使えば、ヒストグラムの度数を自動で計算し、効率的にグラフを作成することができます。この方法は、中級者向けのテクニックです。
以下のステップで作成しましょう。
- データ範囲と区間(ビン)を準備する
- データ範囲を指定し、FREQUENCY関数を使用して、各区間ごとの度数を計算する
=FREQUENCY(B$2:B$15,D$2:D$12)
- 数式を入力後、Ctrl + Shift + Enter を押す
- データ範囲を選択し、挿入タブから「縦棒グラフ」を選択する
- 棒グラフをダブルクリックし、「データ系列の書式設定」から「要素の間隔」を0%にする
FREQUENCY関数は自動的にデータを集計してくれるため、大量のデータを扱う際に便利です。また、区間を変更するだけで新しいヒストグラムが簡単に作れるため、さまざまな視点でデータを分析できます。
その他のエクセルの機能を知りたい方は、下記をご覧ください。
ヒストグラムを見やすくするポイント
エクセルで作成したヒストグラムは、そのままでは見た目が分かりにくいことがあります。データ分析を効率的に進めるためには、下記のように見やすくする工夫が重要です。
- 階級の調整方法
- タイトル・色の編集
- 軸ラベルの追加
ここでは、ヒストグラムをより直感的に理解しやすくするためのポイントを見ていきましょう。
ポイント①階級の調整方法
ヒストグラムの階級幅(ビン幅)は、グラフの見やすさや分析結果に大きな影響を与えます。
デフォルトではエクセルが自動で設定しますが、目的に応じて手動で調整することをおすすめします。前章で見たように、階級を調整するには、横軸を右クリックして「軸の書式設定」を選び、表示される「軸オプション」から「ピンの幅」を設定しましょう。また、最大値と最小値も「オーバーフロー」や「アンダーフロー」の設定で調整できます。
ポイント②タイトル・色の編集
タイトルや棒グラフの色を変更することで、ヒストグラムの視認性を向上させることができます。
グラフタイトルは、内容を一目で伝えるための重要な要素です。タイトル部分をダブルクリックして編集し、グラフに即したわかりやすい名前をつけましょう。
また、棒グラフの色は「データ系列の書式設定」から変更できます。特定の範囲を目立たせたい場合は、その範囲だけに異なる色を設定するのも効果的です。
ポイント③軸ラベルの追加
横軸と縦軸にラベルを付けると、グラフの内容が明確になり、データの意味を読み取りやすくなります。
エクセルでは、グラフを選択した状態で「グラフ要素の追加」から「軸ラベル」を選択し、横軸や縦軸にそれぞれ適切なラベルを設定できます。例えば、横軸には「点数の範囲」、縦軸には「人数」などを記載すると、ヒストグラムの内容をより簡単に把握できるでしょう。
エクセルは上記以外にも機能が豊富にあり、網羅的に学ぶことがおすすめです。エクセルについて学び方を知りたい方は、下記をご覧ください。
エクセルのヒストグラムの活用例
ヒストグラムは、データの分布や傾向を視覚的に把握できるため、多くの場面で活用されています。特に、ビジネスや品質管理、マーケティングにおいては、データ分析を効率化し意思決定をサポートするツールとして役立つでしょう。
ここでは、具体的な活用例として、ビジネスシーンでの分析や異常値の検出について探っていきましょう。
ビジネスシーンでのデータ分析
ビジネスにおけるヒストグラムの活用例として、売上データや顧客分布の分析があります。
例えば、以下のように、購入金額の分布をヒストグラムで視覚化することで、どの価格帯の商品が最も売れているかを明確に把握できるでしょう。
価格帯 | 購入者数 |
---|---|
0~1,000円 | 10人 |
1,001~2,000円 | 25人 |
2,001~3,000円 | 40人 |
3,001~4,000円 | 15人 |
4,001円以上 | 5人 |
このヒストグラムからは、2,000~3,000円の商品が最も人気であることが分かります。この結果を基に、価格帯を意識した商品のラインナップや販促キャンペーンを企画することが可能です。
異常値や傾向の把握
ヒストグラムは、異常値やデータの偏りを視覚的に見つける際にも非常に有効です。例えば、製造業では製品の検査データをヒストグラムで可視化し、不良品やばらつきの原因を特定することができるでしょう。
以下は、製品重量の分布データの例です。
重量 (kg) | 製品数 |
---|---|
4.0~4.5 | 5個 |
4.6~5.0 | 40個 |
5.1~5.5 | 50個 |
5.6~6.0 | 3個 |
この例では、5.6~6.0kgの範囲に異常値が存在するため、結果を基に製造工程を見直し、品質を安定させるための対策を講じることができるでしょう。
また、全体の分布が左右非対称であれば、特定の工程で問題が起きている可能性を疑うことも可能です。
エクセルのヒストグラム作成時の注意点
ヒストグラムを活用する際には、正確にデータを反映させるためにいくつかの注意点があります。階級幅やデータ量の設定、見た目の調整方法によっては、誤解を招く結果になることもあるでしょう。
- 階級幅の選び方が分析結果に与える影響
- データ量が少ない場合の対処法
- 見た目に惑わされないためのコツ
ここでは、上記のヒストグラム作成時に押さえておくべき注意点を解説します。
注意点①階級幅の選び方が分析結果に与える影響
ヒストグラムの階級幅(ビン幅)は、グラフの解釈に直接影響を与えます。階級幅が狭すぎるとデータが細分化されすぎて全体の傾向が分かりにくくなり、広すぎると細かな情報が失われてしまいます。
例えば、テストの点数分布を分析する際、10点刻みなら分布の傾向を把握しやすいですが、1点刻みでは細かすぎて見づらくなるでしょう。
分析目的に応じて適切な階級幅を選ぶことが重要です。
注意点②データ量が少ない場合の対処法
データ量が少ないと、ヒストグラムが信頼性の低い結果になることがあります。このような場合、データを収集し直すか、階級幅を広げることで視覚的な理解を助けることができます。
また、サンプルが不足している場合は、他のデータ分析手法(平均値や分散などの統計値を用いる)と組み合わせることも有効です。データが偏っている場合は、その原因を考慮した上でグラフを作成しましょう。
注意点③見た目に惑わされないためのコツ
ヒストグラムは視覚的に分かりやすい反面、見た目に惑わされることがあります。
例えば、棒の高さが際立つ場合でも、元のデータ量を確認せずに結論を急ぐと誤解を招きます。また、棒の間隔や色の選び方で印象が大きく変わるため、デザインに頼りすぎないことが重要です。
ヒストグラムを解釈する際は、データの性質やサンプルサイズを十分に考慮し、客観的に判断する姿勢が求められるでしょう。
エクセルを学ぶのにおすすめのセミナー3選
エクセルのスキルを効率的に習得するには、独学よりも体系的に学べるセミナーを活用するのが効果的です。特に、ビジネスで即戦力となるスキルを身につけるには、実践的なカリキュラムを備えた講座を選ぶことが重要です。
ここでは、初心者から中級者まで幅広く学べる、おすすめのエクセルセミナーを3つ紹介します。
ProSkilll「Excel基礎セミナー講習」
ProSkilllの「Excel基礎セミナー講習」は、初心者から実務に活かせるレベルまで短期間でスキルを習得できる講座です。2日間で基礎から応用まで学べるため、仕事ですぐに使える実践的なスキルを身につけたい方に最適でしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 初心者~中級者 |
受講形式 | 会場受講・オンライン受講 |
受講期間 | 2日間 |
主な学習内容 | Excelの基本操作、関数、グラフ作成、ピボットテーブル、マクロ基礎 |
料金 | 会場・ウェビナー:38,500円 eラーニング:27,500円 |
特徴 |
|
講座では、実務に役立つスキルを集中的に学ぶことができ、特に関数やピボットテーブル、マクロといった実践的な内容が充実しています。初心者でもわかりやすいカリキュラムが組まれており、効率的にエクセルのスキルを身につけたい方におすすめです。
Excel Camp「Excel研修」
Excel Campの「Excel研修」は、初心者向けの1日集中講座で、Excelの基本操作を体系的に学べる講座です。初心者でも無理なく上位1%のスキルを目指せるカリキュラムが特徴です。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 初心者 |
受講形式 | 対面・オンライン |
受講期間 | 1日間 |
主な学習内容 | 基本操作、ショートカット活用、エラー処理、データ入力効率化 |
料金 | 22,000円 |
特徴 |
|
の研修では、エクセル操作を「スキル化」することを目的とし、ショートカットの活用やデータ入力の効率化など、すぐに実務で活かせるテクニックを学ぶことができます。特に、初心者が最短でエクセルスキルを習得したい場合におすすめの講座です。
大塚商会「Excel 基礎」
大塚商会の「Excel 基礎」は、初心者向けにExcelの基本操作を1日で学べる短期集中講座です。データ入力や表の作成、関数の使い方など、業務で必要なスキルを体系的に学ぶことができます。
項目 | 内容 |
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対象者 | Excelを初めて使用する方 |
受講形式 | 教室(オープンコース)・オンライン |
受講期間 | 1日 |
主な学習内容 | Excelの基本操作、表の作成、四則演算と関数、グラフ作成、データベース機能、印刷設定 |
料金 | 28,000円 |
特徴 |
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コースでは、実際に手を動かしながら学べるため、Excelの基礎をしっかりと身につけることができます。1日完結型なので、短期間でスキルを習得したい方にぴったりの内容でしょう。企業研修としても利用可能なため、職場でのスキル向上を目指す方にもおすすめです。
エクセルでヒストグラムを活用してデータ分析を始めよう
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