2025年2月、政府は「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定しました。この計画は、日本が国際社会に約束した2040年度までに温室効果ガスを2013年比で73%削減する、という今後の日本の産業界全体の道筋を示すものです。
政府はこの基本計画に加え、直面するエネルギーの安定供給確保や持続的な経済成長の実現、地球環境を守る脱炭素化を同時に解決しようとしています。
この大きな転換期において、今こそ、エネルギー政策の本質を理解し、自社の取り組みに取り入れる時ではないでしょうか。今回は、エネルギー政策を味方につけた製造業のサステナビリティ対策をご紹介します。
エネルギー政策とは

エネルギー政策とは、政府や自治体がエネルギーの生産から消費までの流れを最適化するために定める方針のことを指します。この政策は、規制の枠組みにとどまらず、製造現場のコスト構造や競争力、長期的な事業継続性にも直接影響を及ぼします。
政府が掲げるエネルギー政策の核心には、安定的な供給体制の確保があります。製造業では生産ラインの稼働停止は大きな損失につながるため、信頼性の高いエネルギー供給は絶対条件と言えるでしょう。
同時に、気候変動対策の世界的な潮流を受けて、環境負荷の少ないエネルギー源への移行も政策の重要な柱となっています。これにより製造業各社は生産プロセスの見直しを迫られることもあります。
経済性の観点では、エネルギーコストの最適化を促進する政策として、エネルギー効率の向上や新技術導入に対する補助金制度などは、設備投資の判断材料として注目すべき点です。
長期的視点に立てば、持続可能なエネルギー利用への転換を見据えた政策は、将来的な事業リスクの低減にも繋がります。
エネルギー政策の基本理念
日本のエネルギー政策は、「S+3E」という基本理念で成り立っています。
| 安全性(Safety) | 人命と社会の安全を守る |
| 安定供給(Energy Security) | 供給リスクを最小化し、エネルギー源の多様化を図る |
| 経済効率性(Economic Efficiency) | 合理的な価格でエネルギーを調達できる |
| 環境適合(Environment) | 環境と調和したエネルギー利用 |
これら4つの要素をバランスよく実現することが、日本のエネルギー政策の本質です。一つの側面だけを追求するのではなく、安全を基盤としながら、安定供給、経済性、環境適合を同時に達成する道を模索し続けることが、製造業の持続可能な発展には重要です。
以下でそれぞれの理念を詳しく見ていきましょう。
安全性
安全性の確保においては、物理的な耐震性能を高めるだけでは不十分です。施設の堅牢性と同等に重要なのが、万一の事態に備えた包括的な緊急時対応計画の整備です。
これには、迅速な意思決定システムや地域住民の避難経路の確保、自治体との連携強化といった多面的なアプローチが含まれます。
エネルギー供給の持続性と経済性も大切ですが、それらは安全という土台の上に成り立つものであり、この優先順位が揺らぐことはありません。製造業の現場においても、エネルギー政策の方向性を理解することは、中長期的な事業計画を立てる上で欠かせない視点となっています。
安定供給
安定供給とは、国内の様々な需要に応じて確実かつ途切れることなくエネルギーを提供し続ける取り組みです。現代社会において安定供給を脅かす要因は多岐にわたります。
国際情勢の緊張に起因する地政学的リスクは、エネルギー資源の輸入経路や価格に直接的な影響を及ぼし、大規模な地震や洪水などの自然災害は、発電施設やエネルギー輸送インフラを損傷させる可能性があります。
さらに、世界的な需給バランスの変化による資源価格の急激な変動も、安定的なエネルギー確保を困難にします。
経済効率性
エネルギー効率を高めるためには、電力インフラの近代化が欠かせません。老朽化した設備の更新や送電網の強化により、エネルギーの損失を最小限に抑えることができます。
また、工場や事業所における電力使用パターンの最適化も重要です。ピーク時の使用量を分散させることで、設備投資の効率化とエネルギーコストの削減を同時に実現できるでしょう。
環境適合
環境への配慮なくしてエネルギー政策を語ることはできません。エネルギーの生成から消費に至るまでの全工程において環境配慮型の取り組みが不可欠となっています。
持続可能なエネルギー政策は、単なる環境保全にとどまらず、長期的な産業競争力の維持・向上にも直結します。環境と経済の好循環を生み出すエネルギー戦略こそが、製造業の未来を切り拓く鍵となります。
エネルギーミックスとは
日本は2030年までに温室効果ガスの削減目標を掲げており、この野心的な目標達成のためにはエネルギーミックスという取り組みが存在します。
エネルギーミックスは、先述した「S+3E」の理念に基づく重要な戦略として位置づけられており、以下の異なる特性を持つ電源を効果的に組み合わせることで、リスク分散を実現し、電力供給の安定性を確保しています。
- ピーク電源
- ミドル電源
- ベースロード電源
日本特有のエネルギー問題の現状を正確に把握することは基本ですが、それだけでは不十分なため、現状認識を踏まえた上で、未来志向の実効性ある対策を計画し、実行していくことが重要です。
日本のエネルギー政策においては現実を直視しつつも、将来に向けた具体的な行動計画を策定し、着実に実施していくことが求められています。
エネルギー政策へのサステナビリティ対策8つ

企業がエネルギー政策に貢献する方法には以下のような対策があります。
- エネルギー使用量の削減
- CO2排出量の削減
- 再生可能エネルギーの導入
- エネルギー消費の可視化
- 省エネルギー型の製品やサービスの創出
- エネルギー政策への協力
- 従業員の意識向上
- 複数のエネルギー源の組み合わせ
それぞれの項目を以下で詳しく見ていきましょう。
企業がサステナビリティに取り組む際の手順については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
①エネルギー使用量の削減
照明のLED化や空調設定温度の最適化、生産設備の省エネ運転モードの活用など、すぐに実行できる対策から着手することが重要です。これらの取り組みは、コスト削減効果だけでなく、企業の環境意識の高さを示す指標ともなるでしょう。
また、エネルギー管理システムの導入や高効率設備への更新計画を策定することも効果的です。初期投資は必要ですが、長期的に見れば省エネ効果によるコスト削減が期待できます。
さらに、予期せぬ停電に備えた非常用発電機の整備状況確認、バッテリーバックアップシステムの点検、重要データの保護対策など、万一の事態に備えた準備を整えておくことも企業としての責任です。
②CO2排出量の削減
企業におけるCO2排出量削減への取り組みは多角的なアプローチが求められています。環境負荷軽減のためには、工場内の生産工程の見直しだけでは不十分であり、物流ネットワーク全体の最適化も重要な検討事項となります。
具体的な施策として、社用車の電動化推進は直接的な排出削減効果をもたらします。同時に、配送ルートの効率化や積載率向上などの物流改革によっても、大幅な環境負荷低減が期待できます。
さらに、働き方改革の一環としてのテレワーク推進も見逃せない戦略です。従業員の通勤距離短縮や通勤頻度減少により、間接的ながらも確実な排出削減効果が得られます。
このように、製造現場だけでなく、企業活動全体を見渡した包括的な取り組みが、真の意味での環境配慮型経営への道筋となるでしょう。
テレワークのセキュリティ対策については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
③再生可能エネルギーの導入
現代の産業界において、化石燃料への過度な依存から脱却することは急務となっており、この課題に対応する有効な手段として、再生可能エネルギーの積極的な導入が注目されています。具体的な取り組みとしては、企業施設の屋根や敷地を活用した太陽光発電システムの設置が挙げられます。
太陽の恵みを電力に変換する技術は年々進化しており、初期投資を経て長期的なコスト削減に繋がります。また、地域特性に応じて風力発電の導入も検討する価値があります。
さらに、産業廃棄物や有機資源を利用したバイオマスエネルギーは、資源の循環利用という観点からも注目すべき選択肢です。
企業の施設が位置する地理的条件や建物の構造によっては、想像以上の発電ポテンシャルが眠っているかもしれません。
日照条件が良好な地域や広大な屋上スペースを有する工場では、自社消費量を上回る電力生産が実現する可能性があります。このような余剰電力は電力会社への売却が可能であり、新たな収益源となることも期待できます。
④エネルギー消費の可視化
製造業において、エネルギー使用の効率化は経営戦略の要となるため、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の活用が大きな革命をもたらしています。
工場や生産ラインにおけるエネルギー消費を常時監視する機能を持ち、データをリアルタイムで集約・解析することで、従来は見過ごされていた無駄なエネルギー消費ポイントを明確に可視化します。
これにより企業は具体的な改善策を講じることが可能となり、省エネルギー化とコスト削減の両立が実現します。継続的なモニタリングによって、施策の効果検証も容易になるため、PDCAサイクルを回しながらエネルギー効率の最適化を進められる点も、製造現場において高く評価されています。
⑤省エネルギー型の製品やサービスの創出
省エネルギー型の製品やサービスを創出することは、エネルギー政策はもちろん、消費者の経済的メリットにも繋がります。例えば、電力消費を抑えた家電製品の開発や、燃料効率に優れた自動車の設計などが該当します。
また、飲料容器を回収して再利用するリターナル瓶の仕組みや、中古品を効率的に流通させるマーケットプレイスの構築なども挙げられます。これらは製品の寿命を延ばし、新たな製造に伴うエネルギー消費を抑制する効果があります。
こうした取り組みは、資源の有効活用と環境負荷軽減を同時に実現する道筋となり、持続可能な社会の構築に欠かせない要素となるでしょう。
⑥エネルギー政策への協力
政府や地方自治体では、エネルギー政策における様々な環境対策補助金や税制優遇措置を設けています。これらを活用することで、企業としてエネルギー政策に貢献できるだけでなく、以下のような経済的メリットも得られます。
| エネルギー効率向上補助金 |
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| 再生可能エネルギー導入支援制度 |
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| CO2排出削減プロジェクト支援制度 |
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| エネルギー管理システム(EMS)導入支援 | 工場やオフィスのエネルギー使用状態を可視化 |
自社製品やサービスを独自にエコフレンドリーにする取り組みも重要ですが、これらの支援制度を活用することで、環境配慮型システムの導入コストを大幅に抑えることができます。積極的に活用することで環境への貢献とコスト削減の両立が可能となるでしょう。
⑦従業員の意識向上
従業員一人ひとりがエネルギー消費について考え、日々の業務で実践することで、エコロジー活動は自然と広がりを見せるでしょう。この意識改革は、会社の方針ではなく、社会全体の持続可能性に繋がる重要な一歩となります。
現場の声を活かした改善提案制度を設けることで、日々の業務に直結した実践的なエネルギー節約策が生まれます。トップダウンではなく、ボトムアップの取り組みこそが真の意識改革に繋がるのです。
従業員一人ひとりがエネルギー問題の解決に参画することで、製造業は環境負荷を減らしながら、持続可能な未来への責任を果たすことができるでしょう。
⑧複数のエネルギー源の組み合わせ
石油や天然ガス、再生可能エネルギーなど、複数のエネルギー源を適切に組み合わせることで多様性を確保し、特定の資源への依存度を下げることが重要です。
また、有事の際にも一定期間のエネルギー供給を維持できるよう、石油や液化天然ガスなどの戦略的備蓄を充実させることも重要です。製造業の競争力維持と持続的成長のためには、このようなエネルギー安全保障の視点を企業戦略に取り入れることが今後ますます重要になるでしょう。
エネルギー政策を味方につけて持続可能な事業を展開
今回は、エネルギー政策を味方につけた製造業のサステナビリティ対策をご紹介しました。企業が国や地方自治体のエネルギー施策に積極的に関わることは、社会的責任の遂行にとどまりません。
同時に補助制度や支援プログラムといった経済面での恩恵も得られるのです。持続可能な事業展開のためには、エネルギー政策への深い理解が重要となっています。自社の従業員や関係者の将来のためにも、自社ができる対策を主体的に模索し、具体的な行動へと移していくことが求められているのです。
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