Specteeは2024年11月、自社とサプライヤーに関連するサプライチェーンの調達リスク情報を自動で収集し、可視化する製品「Spectee SCR」の機能強化を発表しました。今回の強化により、海外で発生したリスク情報を従来よりも詳細かつピンポイントで把握できるようになりました。
今回は、調達リスクの概要や調達リスクを管理するフロー、軽減するために企業が行うべき解決策を具体的に解説します。
調達リスクとは

サプライチェーンは精密な機械のように、各工程が連携し合って初めて機能します。しかし、この機械の歯車が一つでも止まってしまうと、全体の動きが止まってしまうのが現状です。特に、原材料や完成品の調達が滞る「調達リスク」は、企業にとって大きな脅威です。
例えば、地震などの自然災害で工場が停止したり、パンデミックや国際情勢の不安定化によって海外からの部品供給が途絶えたりした場合、製品の製造・販売がストップし、多大な損失に繋がる可能性があります。日本においては、大規模な地震発生のリスクが常に指摘されており、こうしたリスクに備えた対策を講じておくことが一刻を争う課題となっています。
サプライチェーンについては以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
調達リスクを管理するフロー

調達リスク管理は、企業にとって欠かせない活動です。しかし、多岐にわたるリスクを効果的に管理するためには、体系的な手順を踏むことが重要です。以下で詳しく解説します。
①特性や現状を把握しておく
調達リスク管理は、企業のサプライチェーン全体の効率化と利益向上に重要な要素です。しかし、その重要性が十分に認識されていないケースも少なくありません。まずは、現状の調達リスクの特性や課題を深く理解することが重要です。
調達リスクは、さまざまな部門に影響を及ぼすため、各部門との連携体制を構築し、一体となって取り組む必要があります。特に、経営層の理解と協力は不可欠です。経営層の中には、調達リスク管理が直接的な利益に結びつかないと誤解している方もいるかもしれません。
そこで、調達リスク管理の目的を明確にし、企業全体への貢献度を具体的に説明することで、経営層の理解と承認を得ることが大切です。次に、自社のサプライチェーン構造を詳細に分析し、潜在的なリスクを特定します。リスクの種類や発生頻度、その影響度を評価することで、改善すべき点が見えてくるでしょう。
②調達リスクの具体的な管理方法を決める
特定された調達リスクや課題に対して、サプライチェーンの継続性を確保するための対応策を決定する際には、まず特定されたリスクの発生頻度と影響範囲を評価し、優先順位を付けます。この評価は、サプライチェーンリスクマップを作成することで可視化すると、より明確になります。
リスクマップは、リスクの発生可能性と、それが発生した場合に及ぼす影響の度合いを2つの軸として表すもので、どのリスクに最も注力すべきかを視覚的に把握するのに役立ちます。優先順位付けに基づいて、具体的な対応策を決定します。
対応策としては、サプライチェーンの上流または下流に位置するサプライヤーのBCPを改善する方法や、自社のBCPを中心に改善する方法など、様々な選択肢が考えられます。
③調達リスクに対し行動できる体制を構築する
調達リスクは、企業の事業継続に大きな影響を与える可能性があるため、リスクの早期発見と迅速な対応が不可欠です。日々変動する市場において、調達リスクは常に変化します。
そこで、急激な変動や異常な事態を早期に検知し、その兆候を把握することで、リスクがサプライチェーン全体に広がる前に、影響を最小限に抑えることができます。調達リスクが検知された際には、迅速に関係各所に情報を伝達し、共有する必要があります。
これにより、各部門が状況を把握し、適切な対応策を検討することができます。また、調達リスク発生時に迅速かつ的確な対応を行うために、事前に具体的な行動計画を策定しておくことで、混乱を避け、効率的な対応が可能です。
調達リスク軽減のために企業が行うべき解決策

調達リスクは、製品の生産遅延や品質低下、事業の中断に繋がりかねません。そこで、以下では調達リスクを軽減する解決策を詳しく解説します。
企業全体でセキュリティーを強化する
自社のセキュリティを強化するには、特定の部署や個人に任せるのではなく、全社的な取り組みが重要です。専門業者に委託する場合は、契約書で守秘義務やトラブル発生時の責任分担を明確にすることで、より安全な環境を構築することができます。
具体的な対策としては、本社のPCやサーバーへのアクセスを制限し、ウイルス対策ソフトや不正アクセス検知システムを導入することで、サイバー攻撃に対する防御力を高めることができます。しかし、セキュリティ対策はサイバー攻撃だけではありません。
人的ミスや内部不正、不正侵入や盗難といった物理的な脅威に対しても、対策を講じる必要があります。警備体制を強化したりすることで、以下のような多角的なセキュリティ対策を講じることができます。
- 複数人による相互監視体制を敷く
- 監視カメラを設置する
日常管理を徹底する
自社のセキュリティ対策のみでは、サプライチェーン全体のリスクを完全に回避することはできません。調達リスクを効果的に低減するためには、サプライヤーとの連携を密にし、日々の管理を徹底することが重要です。
特に、サプライヤーのセキュリティレベルは、自社と同等とは限らないため、サプライヤーの担当者と直接対話を行い、セキュリティ体制について詳しくヒアリングすることが求められます。ヒアリングを通じて、改善点や見直すべき点などを把握し、より強固なセキュリティ体制の構築を提案することで、サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上に貢献することができます。
また、新たなビジネスパートナーを選定する際には、その企業のセキュリティ水準を厳格に評価することが不可欠です。以下の国際的な認証を取得している企業は、情報セキュリティに関する高い水準を満たしていると考えられます。これらの認証を取得している企業との連携を検討することで、より安全なサプライチェーンを構築することができます。
| ISMS認証 | 組織が情報セキュリティに関する様々な取り組みを体系的に行うための仕組みを導入・運用していることを認証機関により認められた証 |
| プライバシーマーク | 企業が顧客の個人情報を適切に管理し、保護するための体制を整えていることを証明する証 |
BCPを策定する
BCPとは、企業が災害や事故などの緊急事態に直面した際に、事業を継続したり、早期に復旧させたりするための計画のことです。もしもの時にどう対応するかを事前に決めておくことで被害を最小限に抑え、企業の活動をスムーズに再開させることを目的としています。
BCPを作成することで、いざという時に慌てずに冷静に対応できるようになり、迅速な復旧が可能になるでしょう。
リスクを分散しておく
調達リスクを最小限に抑えるためには、リスクの分散が有効な手段です。例えば、自然災害が発生し、特定の地点からの供給が途絶えても対応できるように、代替品や原材料の調達先を複数確保することが重要です。
また、グローバルなサプライチェーンを持つ企業は、特定の国に依存せず、複数の国に拠点を構えることでリスクを分散できるでしょう。国内においても複数の地域に拠点を設けることで、地域的なリスクを回避することができます。
近年注目されているテレワークも、リスク分散の一つの手段です。従業員が非常時にオフィスに通わなくても業務を継続できる環境を整備することで、事業継続性を高めることができます。
リスクの見える化を行う
BCP策定や調達先の分散化は、調達リスク低減に有効な手段ですが、その実行には多大な労力が必要です。そこで、取引先やサプライチェーンを効率的に管理し、リスクを可視化することが求められます。
具体的には、サプライヤーとの連携強化による情報収集の充実や、代替可能なサプライヤーの調査が重要です。これらの取り組みを円滑に進めるためには、あらゆる情報を一元管理する仕組みが重要となります。
一元管理するSCM戦略については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
セキュリティ意識向上のための研修を実施する
セキュリティ意識向上のための研修は、調達リスクを軽減するための有効な手段です。研修を通じて、社員一人ひとりがセキュリティの重要性を深く理解し、日々の業務でセキュリティ意識を高く持つことができれば、情報漏洩のリスクを大幅に低減することができます。
セキュリティ意識向上のための研修は、実践的な演習を取り入れることで、より効果を発揮します。例えば、フィッシングメールの見分け方やパスワード設定のルールなど、具体的な事例を交えて説明することで、社員の理解を深めることができます。
また、定期的な研修を実施することで、社員のセキュリティ意識を常に高いレベルに維持することが重要です。
CAD人材育成サービス

CAD人材育成サービスでは、実務に即したセキュリティの内容を短期間で効率的に学べるよう、貴社の業務内容や目標に合わせてカリキュラムをカスタマイズいたします。貴社の既存の教育プログラムに、当社のサービスをスムーズに組み込むことができるため、より深い理解を促します。
また、受講者の進捗管理やレベルチェックテストの実施、アンケートによるフィードバックなど、受講者の育成を全面的にサポートいたします。教育後のフォローアップや、新たな技術習得のためのサポートも可能です。
CAD人材育成サービスでは、製造業を中心に10年以上のコンサルティング経験を持つ専門スタッフが、 CADだけでなく、産業用3DプリンターやIoT、AI、AR、DXなど、製造業に関わる幅広い技術に対応した教育コンテンツとコンサルティングサービスを提供しています。
調達リスクを可視化しサプライチェーン全体で管理する

今回は、調達リスクの概要や調達リスクを管理するフロー、軽減するために企業が行うべき解決策を解説しました。サプライチェーンは、原材料の調達から製品の納品まで、各工程が連携して機能する複雑なシステムです。
このシステムのどこか一つでも問題が発生すると、全体がストップしてしまう可能性があります。特に、原材料や完成品の供給が滞る調達リスクは、企業にとって大きな脅威です。
調達リスクに対処するためには、サプライチェーン全体を可視化し、常に状況を把握することが重要です。しかし、サプライチェーンはますます複雑化しており、多くの企業が適切な情報管理を行えていないのが現状です。そのため、リスク発生後に慌てて対応するのではなく、日頃からリスク管理を徹底することが重要です。