Blenderは映像制作を専門にしている会社などで、広く使用されるようになっています。
さまざまな目的のためにBlenderを活用することが可能で、使用できる機能も豊富にあります。
ここでは、Blenderに関する基本的な情報や活用事例などについて、詳しくご紹介します。
Blenderとは
Blenderとは、3次元のCGアニメーションを自由に制作できるアプリケーションソフトです。Blenderはオランダで開発されたソフトですが、本格的な3DのCGアニメーション制作ソフトとして必要となる環境が統合されており、このソフト一つあればさまざまな作業ができるため、世界中に多くのユーザーがいます。
Blenderの特徴
Blenderの特徴は以下のようなものがあります。
- フリーソフト
- 豊富な機能を搭載
- カスタマイズが容易
- Blender作品の権利は作成者が取得
特徴①フリーソフト
Blenderは、オープンソースのフリーソフトであるため、ダウンロードすれば誰でも簡単に利用できます。価格が無料なのに、有料ソフトにも劣らない機能を持っていることが、このソフトの大きな特徴です。
特徴②豊富な機能を搭載
- モデリング
- リギング
- アニメーション
- シミュレーション
- レンダリング
- コンポジティング
- ビデオ編集
- スカルプティング
など、多岐にわたる機能を一つのソフトウェアで提供していますので、モデリングや質感づけも可能で、ポストプロセス処理や動画編集もまとめて行うことができます。
特徴③カスタマイズが容易
Blenderは、Pythonを使用してスクリプトやアドオン、カスタムツールを作成することができ、Blenderの機能を拡張したり、カスタマイズすることが容易です。
特徴④Blender作品の権利は作成者が取得
Blender本体が完全に無料で利用できるだけでなく、Blenderを使用して作られた作品なども、全て作った人が権利を取得できます。
モデルや画像だけでなく、Blenderを使って制作した動画にも、作った人に著作権が発生します。
個人の趣味として使用できるだけでなく、商業用して使うことも可能です。
ですが、場合によっては使用する時に他者の権利を使用してしまうこともあるので、注意が必要です。他の人が制作したモデルを使用して自分の作品を制作する場合、使用するモデルの著作権の確認が必要になります。
Blenderのスペック
Blenderの動作環境について、要件は、他の商用3DモデリングソフトウェアであるMayaや3ds Maxと比べると比較的軽量な部類に入ります。
公式サイトにて推奨しているスペックは以下の通りです。
オペレーティングシステム |
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ハードウェア |
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ストレージ |
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引用:Blender公式サイト
Blenderで出来ること
Blenderには、3DCGアニメーションを制作するために必要となる基本的な機能が、一通り搭載されています。ここでは代表的な機能を紹介していきます。
モデリング機能
Blenderの豊富なモデリング機能には以下のようなツールが備わっております。
ポリゴンモデル
ポリゴンモデリングは、ゲームデザイン、アニメーション、プロダクトデザインなど、さまざまな分野で広く使用されています。
ポリゴンでモデリングをできる機能が搭載されているので、CADのように使うこともできます。
押し出しやナイフツール
押し出しツールを使用することで、モデルに新しい部分を追加し、複雑な形状を作成することができます。ナイフツールは使用することで、メッシュに新しいエッジを追加し、詳細なトポロジーを作成することができます。
これらのツールを駆使することで、よりリアルで詳細な3Dモデルを効率的に好きな形にモデリングが可能です。
スナップ機能
3Dモデリングにおいてスナップ機能は、オブジェクトを正確に配置するための非常に重要なツールです。
Blenderでは、特定の頂点を選んでスナップができたり、グリッドに沿って整列させることができるのでこのような機能を活用することで、モデルの精度を高め、作業効率を向上させることができるでしょう。
エッジループ機能
Blenderのエッジループ機能は、3Dモデリングにおいて特定の形状やトポロジーを効率的に編集するためのツールです。
エッジループ機能を使って、回転体や形状の流れやアニメーションのディフォーメーションを作成することができます。
スカルプトモード
Blenderのスカルプトモードを使用すれば、彫刻作品のような雰囲気でモデリングをすることも可能です。
Blenderのスカルプトモードは、3Dモデルの形状を自由に変形し、彫刻するためのモードで、マウスやペンタブレットを使用し、モデルの表面に直接手で操作するように彫刻やスカルプトを行うことが可能です。
こちらの記事にて3DCGモデリングの入門者に向けてBlenderのモデリング機能を中心に、基本的な操作方法を解説しておりますのでご参照ください。
テクスチャ機能
Blenderのテクスチャ機能を使用すれば、制作したモデルに効果的な質感づけをすることもできます。
サブサーフェス・スキャッタリング機能
シェーダモデルを選んで使用することもでき、ディフューズとスペキュラの各モデルがあります。
鏡面反射や屈折を表現するための機能もあり、サブサーフェス・スキャッタリングの機能を使用すれば、光が半透明な物体の表面を通り、内部で散らばった後に外に出る様子も表現できます。
毛をリアルに表現するための機能もあり、人間の髪の毛や動物の体毛をCGで表現したい場合にも利用できる機能です。
テクスチャマッピング機能
テクスチャマッピングができる機能も、Blenderには搭載されています。
デカールマッピングの機能を利用すれば、他のオブジェクトの位置を利用してマッピングができます。
凹凸のある物体を表現するためのテクスチャマッピングも可能で、バンプマッピングやノーマルマッピングの機能を使用すれば、凹凸を疑似的に表現できます。
凹凸をよりリアルに表現したい場合には、使用するモデル自体の形を変えることも可能です。
また、ディスプレイスメントマッピングという機能を使用すれば、こうした表現も簡単にできます。
テクスチャに使用する画像には、動画も使えます。
UVマッピングやライティング機能
UVマッピングやライティングのための機能も備わっています。
UVマッピングは一般的なテクスチャマッピング方式で、2Dテクスチャを3Dモデルに適用するために、BlenderにはUV編集ツールが組み込まれており、複雑な展開や調整が可能です。
3Dテクスチャペインティング機能
また、Blenderには3Dテクスチャペインティング機能も搭載しており、直接モデルにリアルタイムで色、模様などのテクスチャや詳細を追加することが可能です。
3Dモデルの表面に直接テクスチャをペイントすることができるのは、Blenderの強力な機能の一つと言えるでしょう。
以下の記事では、Blenderの勉強ができるおすすめのBlender講座を紹介しております。価格や特徴も解説しておりますのでBlenderに興味があるという人は是非参考にしてください。
Blenderが選ばれる理由
このようにBlenderがさまざまな分野で選ばれている理由はなぜでしょうか。
理由①有料ソフトだけでCGアニメを制作するのが困難なため
プロジェクトスタジオQでBlenderを使用してCG制作をするようになったのは、有料ソフトだけでCGアニメを制作することが困難になったからです。
CG制作をするために、複数の企業が協力して仕事をする場合もありますが、特定の有料ソフトを導入していると、他社に協力してもらうことが難しくなります。
他社の有能なクリエイターに協力してもらいたいと思っても、そのクリエイターが自社で使用している有料CGソフトを使用できなければ、協力してもらえないからです。
ですが、フリーソフトであるBlenderならば使用できる人も多いため、さまざまなクリエイターに協力してもらいながら、CG制作が可能です。
理由②使用するまでに時間がかからないため
使用を始めるまでに時間がかからないことも、この会社でBlenderを活用している理由です。
インストーラーをダウンロードして、ソフトを起動するまで数分程度しかかかりません。
起動速度が速いのは、商業用ソフトのようにライセンスの管理が不要だからです。
管理のために必要となる作業に時間がかからないため、起動までの時間を速くできます。
理由③新機能開発が世界中で行われているため
世界中の人によって新しい機能が開発されていることも、Blenderが選ばれる理由です。
必要な機能がある時にはネットで検索して、他の人が開発したツールの情報を探すこともできます。Blenderを使用している人は世界中にいるので、同じような問題を解決するためにすでに必要なツールが開発されている場合も多いです。
個人ユーザーが開発したい機能が公式の機能としてソフトに取り入れられることもあり、Blenderを利用する企業が開発した機能も、公式ソフトに新機能として取り入れられています。
Blenderのダウンロード方法
Blenderは、Blenderの公式ホームページからダウンロードできます。
2024年6月の時点で入手できる最新のBlenderは、Blender4.1.1です。
- Windows
- macOS
- Linux
- Steam
- Source Code
のインストーラーもダウンロードできます。通常版のWindows用インストーラーをダウンロードするためには、パソコンの空き容量が327.2MB以上必要です。
MacOS用のインストーラーをダウンロードするために必要な空き容量は256.3MBで、Linux用のインストーラーは285.3MB、Source Codeのインストーラーは69.9MBのサイズです。
Blenderのダウンロード手順
- ブラウザを開き、Blenderの公式ウェブサイトにアクセス
- トップページのメニューから「Download」を選択
※ダウンロードページに移動すると、最新の安定版が表示されます。 - バージョンの選択し、ダウンロード
※通常、ウェブサイトがあなたの使用OS(Windows、macOS、Linux)を自動的に検出し、適切なバージョンを提供 - 「Download Blender」ボタンをクリックして、インストーラーをダウンロード
Blenderのインストール手順
ダウンロードが完了したら、インストーラーを実行します。
Windowsの場合
Windowsの場合、ダウンロードした.exeファイルをダブルクリックしてインストーラーを起動し、画面の指示に従います。
macOSの場合
macOSの場合、ダウンロードした.dmgファイルをダブルクリックし、Blenderアイコンをアプリケーションフォルダにドラッグします。
インストールが完了後は、Blenderを起動して正しく動作するかを必ず確認してください。
以上の手順でBlenderをダウンロードしてインストールすることができます。
Blenderの活用事例
Blenderは幅広い分野で活用されています。
商業用の映画を制作するために、Blenderが活用されることもあります。
フリーソフトであるので、ライセンス料の支払いが必要でないことや、使用しているユーザーの数が多いことも、Blenderが商業用映画作品で使われることが多い理由です。
一般の人にもBlenderを使用して映像制作をしている人が多くいて、商業用作品を制作するスタッフの中にも、アマチュアの頃からBlenderを使い慣れている人が多いために、多くの作品で使用されるようになりました。
活用事例①Tangent Animation
引用:NETFLIX
「ネクスト ロボ」(原題:Next Gen)というTangent Animationによって制作されたNetflixオリジナルのアニメーション映画は、世界中の業界トップクラスのアーティストによってBlenderだけで制作されました。Blenderを活用してキャラクターや環境のモデリング、アニメーション、そして最終的なレンダリングを行っております。
この映画により、Blenderが大規模な商業アニメーションプロジェクトの主要な制作ツールとして使用できることを証明したでしょう。
活用事例②株式会社プロジェクトスタジオQ
引用:Amazon
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』というアニメ作品でも、Blenderが使用されています。
この作品に使用されているCGを制作したのはプロジェクトスタジオQという会社で、一部のCGでBlenderを使用しています。この会社ではBlenderを中心にしてCGの制作事業をおこなっていて、さまざまな種類の仕事でBlenderを使用したCG制作が可能です。
プロジェクトスタジオQで行われているBlenderを使用したCGアニメ制作の特徴は、特別な作り方をしていないことです。従来から採用されていたCG制作のフローを大幅に変更しないで、CGを制作しています。
活用事例③Blender Animation Studio
「Spring」は、Blenderを使用して作成された最初の長編アニメーション映画の1つとして知られており、Blenderから、信じられないような素晴らしい作品作れることに世界中が驚かされました。
この映画は、羊飼いの少女とその犬が、冬を再び春に変えるために古代の精霊と対面する物語でストーリーの面白さと魅力に加え、Blenderによって作成された魅力的な景色とユニークなディテールがこの映画の大きな魅力となっています。
「Spring」は、Blenderの機能を証明するだけでなく、オープンソースソフトウェアの価値や可能性を広く知らせる役割も果たしたでしょう。
Blenderとは?まとめ
Blenderは無料で使用できるオープンソースの3DCGアニメ制作ソフトです。
パソコンにダウンロードすれば簡単に使用できるため、世界中に多くのユーザーがいます。
無料なのに有料のソフトに負けない優れた機能を持っていて、一般のユーザーが開発した機能が公式の新機能として追加されることもあります。
この記事を読んでBlenderに興味を持たれた方は、公式ホームページでソフトをダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
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