Blenderのくり抜きでオブジェクトに穴を開けたり、複雑な形状を作ったりしたいと考えている方は多いと思います。
3DCG制作では、最小限の工程で形状を仕上げたい場合が多いため、くり抜き機能のスムーズな活用はとても有用です。
ここではBlenderのくり抜きに関する基礎から応用、具体的な手順まで詳しく解説します。
Blenderのくり抜きの基礎知識
Blenderのくり抜きは、オブジェクトに穴を空けたり、余分な部分を削り取ったりする操作を指します。こうした操作は3Dモデルの形状を大きく変えるため、モデリングのなかでも要所となる機能です。
くり抜きには主に以下の方法が存在します。
- ブーリアンモディファイアを使う
- ナイフ系ツールで手動カットする
- Bisectを使う
これらを使い分けることで、多彩な形状を効率良く作り出すことができます。ではBlenderのくり抜きを行うメリットをもう少し掘り下げます。
Blenderのくり抜きをマスターすると、パーツ同士の組み合わせやメカデザイン、家具やロゴの文字入れなど、多様な用途へ応用できます。用途を意識して操作を習得すると、作品のクオリティと制作効率が格段に向上するはずです。
ちなみに、よりロゴデザインに特化したアプローチを知りたい場合は下記の記事も参考になります。
Blenderのくり抜きでよく使われるブーリアン
Blenderのくり抜きを進める上で最も便利なのが、ブーリアンモディファイアです。ブーリアンとは、複数のオブジェクトを論理的に合成・切断する機能で、メッシュを手軽に加工できるのが特徴です。
ブーリアンには以下の3つの演算があります。
演算 | 概要 |
Difference(差分) | 指定したオブジェクトの形状を他方から削り取る |
Union(合体) | 指定したオブジェクト同士を結合する |
Intersect(交差) | オブジェクト同士が重なっている部分のみを残す |
Blenderのくり抜きでは特にDifferenceを使う場面が多いです。
Differenceを用いると、一つのオブジェクトからもう一つのオブジェクトの形状だけが差し引かれます。穴を開けたいオブジェクト(本体)と、その穴の形となるオブジェクト(くり抜き用)を事前に用意すると良いです。
ブーリアンのメリットと注意点
ブーリアンを使う最大のメリットは、くり抜きのオペレーションが素早く完了する点です。複雑な形状でもブーリアンなら数クリックで加工できます。
一方でブーリアンを適用すると、メッシュのトポロジーが複雑化しやすい点には注意が必要です。余計なエッジが増えたり、法線が乱れたりしやすいため、後で適切にメッシュを整理することが大切です。
Blenderのくり抜きを成功させるナイフ系ツールの活用
ブーリアンだけでなく、ナイフ系ツールを活用したBlenderのくり抜きも多くのユーザーに支持されています。精密な形状を切り取りたい場合、ナイフ系ツールは微調整に適しています。
ナイフツール
ナイフツール(Knife Tool)はメッシュに対して手動でエッジを追加し、カット面を作り出します。ブーリアンほど自動化されていない分、くり抜き後のトポロジーを計画的に整えやすい利点があります。
手でコントロールするぶん、単純な円形や正確な穴だけでなく、独自の形状をくり抜くことができます。
ナイフ投影
ナイフ投影(Knife Project)は2Dの輪郭を投影してメッシュをカットする機能です。
あらかじめ投影用の形状(平面や曲線をメッシュ化したもの)を用意し、正面から投影することで背面のオブジェクトに切り込みを入れます。複雑な模様をくり抜きたいときに有効です。
Blenderでくり抜きをする3ステップの手順
ここでは、ブーリアンを活用したBlenderのくり抜き手順を3ステップに分けて解説します。コピペで実行しやすいよう、操作方法をなるべく丁寧にまとめます。
ステップ1 新規シーンを用意
Blenderを起動し、デフォルトのシーン(真ん中にCubeがある状態)を開きます。今回は、デフォルトのCubeをくり抜きの本体として使うことにします。
もしデフォルトシーンではなく、新規ファイルを使いたい場合は、File(ファイル)から New(新規)から Generalを選択して、新しいデフォルトシーンを作成してください。
ステップ2 くり抜き用のオブジェクトを追加
3Dビューの上部メニュー、またはショートカット Shift + A を使い、Add(追加) → Mesh → Cylinder を選択します。これで新たにシリンダー(円柱)を追加できます。
追加されたシリンダーを移動 (Gキー) や回転 (Rキー)、スケール (Sキー) で、Cubeを貫通するように配置します。
例えば、Cubeの中央を通るようにシリンダーを垂直に配置すると、円柱状の穴を開けることができます。
くり抜き用オブジェクトを選択した状態で、Ctrl + A → Scale を適用します。続いて、Shift + N(またはメッシュの法線再計算)で法線を整えます。
ステップ3 モディファイアの適用と仕上げ
本体(Cube)を選択します。右側のプロパティウィンドウ(Properties)で、モディファイアプロパティ(スパナアイコン)をクリック。
Add Modifier(モディファイアを追加)ボタンを押して、一覧からBooleanを選択します。Booleanモディファイアの設定画面が表示されたら、Operation(演算)を Difference(差分) にします。
ステップ4 モディファイアを適用
Booleanモディファイアの動作が正しく行われているか確認したら、モディファイアを適用します。これでCubeのメッシュが実際にくり抜かれた状態になります。
ここまでのステップをきっちり実行すれば、Blenderのくり抜きはスムーズに行えます。最終的にメッシュの状態を整えることで、後のマテリアル設定やアニメーションがスムーズになります。
Blenderのくり抜きで気をつけたいエラーと対処法
Blenderのくり抜き操作を行うと、予期せぬエラーやメッシュ崩れが起こる場合があります。こうしたトラブルを回避するため、事前の準備や操作後のメッシュ整理が欠かせません。
代表的なエラーの原因
- 重複頂点(Double Vertices)
- 法線の乱れ(Normalが反転している)
- 非多様体ジオメトリ(Non-manifold geometry)
- メッシュ同士の不適切な重なり
Blenderのくり抜きがうまくいかないときは、まず上記の項目をチェックすると良いです。特に法線や重複頂点の問題は多くのユーザーが経験します。
エラーへの対処法を表で整理
下記の表に、よくあるエラーと対処方法をまとめました。
エラー例 | 対処方法 |
---|---|
法線が反転している | Ctrl + A でスケール適用し、Shift + Nで法線を再計算 |
重複頂点がある | Editモードで全選択→Mキー→By Distance |
ブーリアンが適用されない | オブジェクトを1つずつ確認し、非多様体ジオメトリを解消 |
形状が崩れる | トポロジーの見直しと再トポロジーの検討 |
事前にスケールと法線を整えておくと、Blenderのくり抜きによるエラーは激減します。
Blenderのくり抜きがうまくいかない場合の改善ポイント
Blenderのくり抜きでトラブルが多い場合、メッシュの設計段階や事前準備を見直すと効果的です。下記の点を意識すると、エラーの発生率を大きく下げることができます。
メッシュ設計とリトポロジー
ブーリアンでくり抜いた後のメッシュを見渡し、三角面が増えすぎていないか確認します。トポロジーが複雑になった場合は、リトポロジー(再トポロジー)を検討すると扱いやすい形状に戻せます。
リトポロジーを行うとポリゴン数や面構成が整理され、後の作業が快適になります。
スケールと法線の管理
スケールを適用しないままブーリアンをかけると、不自然な位置で面が切れてしまう場合があります。
Blenderのくり抜きでは法線とスケールの管理がとても重要です。定期的にCtrl + Aでスケール適用し、Shift + Nで法線を再計算しておくと安心です。
非多様体ジオメトリの除去
面と面が重なったり、頂点が意図せず内部で増えたりしているとブーリアンが適用されないケースがあります。
モデルを制作していくうちに気づかない重複が発生することは珍しくありません。Editモード→全選択→Mキー→By Distanceなど、こまめにメッシュを整理すると事故を未然に防げます。
Blenderのくり抜き応用例と活用シーン
Blenderのくり抜きは、建築パーツやキャラクターモデル、ロゴデザインなどあらゆるシーンで活用されています。必要な場所に穴を開けるだけでなく、複数のパーツを組み合わせて複雑な構造を表現する際にも便利です。
たとえば、Blenderの機能を使ってロゴデザインを行う際に文字の形状をくり抜きたい場合、ブーリアンで素早く大枠を作り、細部はナイフツールなどで整える方法が有効です。
また、Blenderでビジュアルエフェクトを施す際にもくり抜きが活用されます。オブジェクトの一部を透過させたり、穴から光を差し込ませたりなど、多彩な演出が可能です。詳しくは以下の記事もご参照ください。
まとめ
ここまでBlenderのくり抜きの基礎知識からツール選択、よくあるエラーと対処法、具体的な操作手順を解説しました。
Blenderのくり抜きにおいては、まずブーリアンで素早く形を作り、その後ナイフツールやリトポロジーで仕上げるのが定番のワークフローです。
エラーを防ぐために、スケール適用や法線の向き、重複頂点のチェックなどを行うとトラブルが減ります。くり抜き機能をうまく活用すれば、自由自在なモデリングと多彩な演出が実現できます。
Blenderのくり抜きのスキルを習得することで、建築モデルやキャラクターデザイン、ロゴ制作など、より幅広いクリエイティブに対応できるようになります。これを機にくり抜き機能をマスターし、作品制作に生かしてみてください。
