「建設DXでBIMソフトを導入する効果は?」と悩む方も多いでしょう。近年、建設業界では人手不足や複雑化する設計・施工プロセスへの対応が急務となる中で、業務効率化や品質向上を目指す「建設DX」の重要性がかつてないほど高まっています。
特に設計から施工、維持管理に至るまで一貫したデータ活用を可能にするBIMの導入は、プロジェクト全体の生産性を向上させる手段として注目を集めています。しかし、実際に運用を始めると「社内に知見がなくどのソフトを選んでいいかわからない」「導入コストが高く効果が見えにくい」などのケースも。
そこで本記事では建設DXにおすすめのBIMソフトを5つ紹介します。また、特徴や向いている用途を紹介するとともに、導入のメリットや失敗しがちな原因、選定のコツまでわかりやすく解説します。
建設DXとは
建設DXとは、設計・施工・維持管理のすべての工程をデジタル化し、業務の標準化や効率化を進める取り組みです。従来の建設業界が抱えてきた人手不足や技術者の高齢化、紙図面と手作業中心の非効率な業務プロセスを改善するには人を集めるのではなく、ICTやIoT、AI、クラウドサービスなどの技術を取り入れてることが解決に早いのでは?と言われています。
また、近年さまざまな問題が深刻になる中で、工事の進捗や品質をリアルタイムに可視化できるだけでなく、関係者間の情報共有がスムーズになり、作業の手戻りやコストの無駄を削減できるとして、建設DXは注目を集めているのです。
建設DXはなぜ重要
建設DXが重要とされるのは、建設業界に以下の問題が深刻化しているためです。
- 少子高齢化による慢性的な人手不足や技術継承の難しさ
- 複雑化する工期・コスト管理
- 脱炭素化やサステナビリティへの対応
上記の問題に対して、これまで紙図面や勘と経験に頼ってきた業務を、デジタル技術で効率化・標準化することが求められています。
設計から施工、維持管理に至る全ての工程で情報を一元管理しながら、高い生産性と品質を維持することは、企業の競争力を左右するだけでなく、業界全体の持続的成長に直結する重要な取り組みとなっています。
特に多重下請構造や現場の属人的なオペレーションを可視化し、ICT・IoT・AIを活用して協力会社との連携を強化することで、ムダや手戻りを削減できます。
BIMソフトの必要性
BIMソフトが建設DXにおいて重要と言われるのは、従来のように2Dの図面作成に頼るだけでは、複雑化する設計や施工プロセスに対応しきれないためです。BIMを活用すれば、三次元データとして統合管理しながら、リアルタイムで設計・施工・維持管理の各工程をつなぐことが可能です。
また、干渉チェックや進捗の可視化、数量拾いの自動化を通じて、手戻りや工程遅延を抑制できます。つまり、デジタル化により、関係者全員が常に最新のモデルを共有し、情報の分断や認識のズレをなくすことができるのです。
以下の記事でも建設DXについて解説していますので、あわせてご覧ください。
建設DXにおけるBIMソフト選定ポイント
建設DXにおけるBIMソフトの選定ポイントは主に以下の3つです。
- 自社の業務領域・規模に合っているか
- 既存システムとの連携のしやすさ
- 現場への定着が早いか
①自社の業務領域・規模に合っているか
BIMソフトを選ぶとき、大切なのは自社の業務内容や規模に合っているかを見極めることです。
たとえば、住宅や小規模物件を扱う会社が、大規模複合施設向けに設計された多機能なソフトを導入しても、機能を十分に活かせずコストばかりかかるでしょう。
逆に、公共事業や大型プロジェクトを多く手がける場合は、干渉チェックや工種別管理、クラウドでの多拠点連携など、複雑な工程にも耐えられるソフトが必要です。導入前に「自社が設計から施工、維持管理までどの領域に重点を置くか」「年間の案件規模や数はどれくらいか」を整理し、それに合ったBIMソフトの特性やライセンス体系を比較することが、投資効果を高める第一歩となります。
②既存システムとの連携のしやすさ
建設DXにおいて、BIMソフトは単体で使うのではなく、他の設計ツールや工程管理システムと連携することでより高い効果を期待できます。
既存のCADソフトや工程表などとデータ形式が合わないと、変換作業に手間がかかり、情報の更新漏れや整合性の問題が頻発します。
その結果、せっかくDXを進めても結局は紙やエクセルに戻ってしまう恐れも。導入前に、BIMソフトがIFCに対応しているか、既存のクラウドサービスや社内サーバーと問題なくデータ共有できるかを確認することが重要です。
③現場への定着が早いか
どれだけ高機能なBIMソフトでも、現場で使いこなせなければ意味がありません。特に建設業では、さまざまな年齢層やITスキルの異なる社員がいるため、直感的な操作性や日本語のサポート体制が充実していることが重要です。
また、ソフトを使いこなす教育や導入支援がしっかりしているか、初期設定やテンプレート作成を支援するコンサルティングがあるかも確認ポイントです。
導入する前には、実際に試用版を現場で触ってもらい「これなら自分たちでも使える」と納得してから導入を決めることで、スムーズなDX推進が可能になります。
建設DXにおすすめのBIMソフト5選
建設DXにおすすめのBIMソフトは主に以下5つが挙げられます。
ソフト名 | 価格/年間 | 特徴 |
Revit | 453,200円(税込) |
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ArchiCAD | 418,000円(税込) |
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GLOOBE | 165,000円(税込) |
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Vectorworks | 245,300円(税込) |
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Tekla Structures | 要問い合わせ |
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①Revit
引用:Revit
RevitはAutodesk社が提供するBIMソフトで、建築物を情報化して管理するためのデータ構造が特徴です。各部材のテンプレートをルールに基づき整備できるため、作業者ごとのモデル仕様のばらつきを抑え、データ品質の均一化と標準化を実現。
また、Dynamoなどのアドインを活用することで、設計から施工、運用まで情報を一元活用でき、作業の自動化やAPIによる機能拡張も可能です。Revitは3Dモデリングから解析までワンストップで対応し、プロジェクトの変更にも柔軟に対応できます。
そのため、設計業務の効率化、品質向上、ワークフローの自動化が進み、業務全体のDXを推進できる点が強みです。
②ArchiCAD
引用:ArchiCAD
ArchiCADは高度なBIMモデリングと使いやすさを兼ね備えたソフトで、建築物の3D空間構築から施工・維持管理まで多様な情報を一元管理できる点が特徴です。
設計と同時に2次元図面も自動生成され、情報の修正が関連データに即時反映されるため、進行管理や設計変更が容易にできます。IFCなど建築業界共通のデータフォーマットに対応し、他BIMソフトとのデータ連携もスムーズです。
また、遠隔地の複数設計者によるリアルタイム共同作業や、豊富なビジュアライゼーション機能によるイメージ共有が可能で、リモートワークやグローバルなプロジェクトにも適応します。
③GLOOBE
引用:GLOOBE
GLOOBEは日本の設計手法や建築基準法に最適化された国産のBIMです。
法規対応や外観・平面計画など日本独自の設計アプローチを3Dで実現し、日照や換気、空調などのシミュレーションも初期段階から視覚的に行えます。建築基準法に基づく自動計算や申請書類作成機能を標準装備し、行政へのデータ連携も容易です。
BIMデータをFMへ自動で分類・連携でき、建物のライフサイクル全体を通じた資産管理や修繕計画に活用できます。日本市場に特化した対応力と、設計から運用までのデータ活用の一貫性は、建設DXの推進においておすすめです。
④Vectorworks
引用:Vectorworks
Vectorworksは2D/3DCAD、BIMモデラー、プレゼンテーション機能などを一つに統合したオールインワン型BIMCADです。
2D作図の感覚で3Dモデルを構築できるため、これまで2DCADをしようしていたユーザーもスムーズにBIMへ移行できます。敷地や外構の高度なモデリング機能や、盛土・切土の土量自動計算など、設計初期から正確な検討が可能です。
BIMツールによるオブジェクトのスタイル・シンボル化で再利用性や生産性も向上。多機能ながらコストパフォーマンスが高く、設計から施工、プレゼン、数量拾いまで一貫して対応できるため、業務のデジタル化・効率化を推進します。
⑤Tekla Structures
Tekla Structuresは、鉄骨・RC・プレキャスト・木造などさまざまな構造形式に対応し、LOD500レベルの高精度3Dモデリングが可能な構造BIMソフトです。
リアルタイム共同編集やクラウドによる情報共有で、離れていても常に最新データで作業でき、大規模プロジェクトでも効率的な連携が可能です。モデルのイメージ共有や複雑な形状検討に強く、鉄骨造を中心に高いシェアを誇るのも特徴の1つです。
設計・施工の一元管理と情報共有の高度化により、建設プロジェクト全体の生産性と品質を向上させ、建設DXの実現におすすめのソフトと言えるでしょう。
以下の記事では無料でおすすめのBIMソフトを紹介していますので、なるべくコストを抑えたいという方は参考にしてください。
建設DXにBIMソフトを導入するメリット
建設DXにBIMソフトを導入するメリットは主に以下の3つです。
- 図面の修正・確認作業が楽になる
- 干渉・トラブルを事前に見つけて防げる
- 情報共有が一元化しコミュニケーションがスムーズに
①図面の修正・確認作業が楽になる
BIMを導入すると、従来のように平面図・立面図・断面図を個別に修正する必要がなくなり、一か所の3Dモデルを更新するだけで全図面に自動反映される仕組みが得られます。そのため、以下の効果が期待できます。
- 手動での入力ミスや抜け漏れを削減
- 作図にかかる時間を短縮
- 確認作業が飛躍的に効率化される
結果として、設計・施工・現場の間で発生しがちな手戻りや重複作業が減り、工期の短縮や残業削減にもつながるでしょう。
②干渉・トラブルを事前に見つけて防げる
BIM最大の強みは、構造や設備、配管などの設計データを重ね合わせ、自動で衝突や不整合を検出する「干渉チェック」機能です。従来の方法では現場で施工が始まるまで気づかれなかった配管と梁の干渉、設備のスペース不足なども、設計段階で可視化して調整できます。
つまり、現場での急な修正や再工事の発生を未然に防ぎ、工事中の材料ロスや余分な人件費を削減できるだけでなく、予定通りの工期進行と予算管理の精度が高まるのです。
設計チームと現場チームが一体となって画面上で対話しながら調整できるため、「わからないから現場で対応」という状態を未然に排除でき、プロジェクト全体の品質と効率が向上します 。
③情報共有が一元化しコミュニケーションがスムーズに
BIMを導入すると同じ3Dモデルを共有できるプラットフォームが構築され、PDFや紙図面、Excelなど複数ファイルに頼る必要がなくなります。最新情報へのアクセスが容易になるだけでなく、設計者、施工者、クライアントまでもが同じ視点で「今どうなっているか」を把握できるということ 。
その結果、情報の重複や更新漏れ、誤解が減少し、共有されたモデル上で確認しながら会議や現場指示が可能となるため、意思決定のスピードと正確性が高まるでしょう。
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建設DXのおすすめBIMソフトについてのまとめ
建設DXを推進するうえで、BIMソフトの導入は単なる業務効率化の手段にとどまりません。設計から施工、維持管理までの全工程で情報を一元管理し、現場での手戻りや認識のズレを防ぐものとなります。
しかし、どのソフトを選ぶか、どう社内に定着させるかによって、その効果は大きく変わります。そのため、本記事を参考に今回ご紹介した5つのおすすめソフトの特徴や選定ポイントを参考に建設DXを成功させてください。
