立体的な表現ができる3DCGアニメは従来の2Dアニメとは異なる魅力を持っています。実際、映画やゲームなど、さまざまな分野で3DCGアニメの需要が高まっているため、スキルを身につけたいと考えている方も多いでしょう。
本記事では、3DCGアニメ制作におすすめのツールや実際の作り方などについて解説します。これから3DCGアニメの制作を始めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
3DCGアニメとは
3DCGアニメとは、3次元コンピュータグラフィックスを用いて制作されるアニメーションのことです。キャラクターや背景を立体的に表現できるため、質感や奥行きのある映像表現が可能です。
さらに、物理法則を反映させて動きを作れるので、現実と見間違うほどリアルで臨場感のある映像を実現できます。
2Dアニメと3DCGアニメの違いは?
2Dアニメはセルアニメーションとも呼ばれ、パラパラ漫画のように1枚ずつ描いた絵を連続して動かします。自由な動きをつけられる反面、手描きの手間がかかるのが特徴です。
一方、3DCGアニメは作成した3Dモデルに動きをつけて制作します。立体的な表現でアニメーションを作成できるだけでなく、完成したモデルは何度も使い回しが可能です。
3DCGアニメーターは稼げる?
3DCGアニメーターの年収はスキルや経験によって異なりますが、一般的には300〜500万円程度が平均とされています。
特別高収入というわけではありませんが、実績を積めば個人事業主として独立したり、起業したりできる職種のため、頑張り次第でより高き年収を目指すこともできます。
過去作成された3DCGアニメ
3DCGアニメの歴史を振り返ると、1995年に公開された「トイ・ストーリー」が初の長編フル3DCGアニメーションとして知られています。それ以前では、1982年に公開された「トロン」が世界で初めて3DCGを導入した映画といわれています。
日本では、1983年に公開されたアニメ映画の「ゴルゴ13」の作中で一部3DCGが使用されていました。このように、現在では一般的となった3DCGアニメも、1980年代から少しずつ活用が始まっていたことがわかります。
3DCGアニメ作成の工程
3DCGアニメを作成する際は、以下のような工程があります。
- 作品の構成を練る
- モデリングを行う
- テクスチャリングを行う
- リギングを行う
- アニメーションをつける
- ライティングを行う
- レンダリングを行う
これらの工程について詳しく見ていきましょう。
①作品の構成を練る
アニメーション制作の最初の工程は、作品全体の構成を練ることです。どのようなストーリーにしたいのか、登場キャラクターや世界観をどのように表現するのかを明確にします。
構成があいまいなまま制作を始めると、途中で方向性がブレて修正が多発してしまうため、初期の段階でしっかりと骨組みを固めておくことが大切です。
②モデリングを行う
モデリングとは、コンピューター上でキャラクターや背景などの3次元オブジェクトを作成する作業です。基本的には「ポリゴン」と呼ばれる立体的な図形を組み合わせて形を作っていきます。
モデリングの精度が作品全体のクオリティを大きく左右するため、細部まで丁寧に作り込むことが大切です。
③テクスチャリングを行う
テクスチャリングは、モデリングで作成した3Dモデルに色や質感などを与える工程です。キャラクターの肌の質感や服の素材感、背景の木や石などを表現できます。
テクスチャの精度によってモデルの印象が大きく変わるため、リアリティを高めるうえで非常に重要な作業です。
④リギングを行う
リギングとは、モデルにリグを設定する工程です。リグとはモデルの動きを制御する仕組みのことで、この工程によってキャラクターの腕や足などを自然に動かせるようになります。
リグの設定が不十分だと、動かした際にモデルが崩れることもあるため、アニメーションを作成するうえで重要な要素です。
⑤アニメーションをつける
リギングで設定したボーンを動かし、フレームごとに動きをつける工程です。キャラクターが歩いたり走ったりする動作をキーフレーム単位で調整していきます。
動きのスピードやタイミングなどを意識することで、より自然なアニメーションになります。
⑥ライティングを行う
ライティングは、3D空間内に光源を配置してシーン全体の雰囲気を作る作業です。光の位置や強さを調整することで、時間帯や雰囲気の演出ができます。
ライティング次第で同じシーンでも印象が大きく変わるため、映像表現における重要な要素です。
⑦レンダリングを行う
レンダリングとは、制作した3Dデータを書き出す作業のことです。ポリゴン数が多いモデルや高解像度の映像ほどレンダリングに時間がかかるため、高性能なパソコンが求められます。
この工程が完了すれば、3DCGアニメは完成です。
3DCGアニメ作成におすすめのツール3選
3DCGアニメを作成できるツールは多数ありますが、それぞれ用途や機能が異なるため、ツール選びに迷う方も多いでしょう。3DCGアニメ作成に特におすすめなツールは以下の3つです。
| ツール名 | 料金 | 特徴 |
| ①Blender |
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| ②Maya |
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| ③3ds Max |
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これらのツールの特徴について見ていきましょう。
①Blender

引用:Blender
Blenderは、3DCG作成に必要な工程を網羅できるオールインワンのソフトです。3Dモデリングはもちろん、アニメーションやレンダリングまで、幅広く対応できます。
また、オープンソースであるため、誰でも無料で使えるのも大きな特徴です。
Blenderは無料で使える手軽なツールである一方、機能が多く初心者が扱えるようになるには時間がかかります。そこでおすすめなのがBlender基礎セミナーです。Blender基礎セミナーでは、プロからBlenderを一から学べるため、知識がない状態でも、短期間でアニメーション作成ができるほどのスキルを身につけられます。これからBlenderにチャレンジしてみようと考えている方は、ぜひこちらのセミナーもチェックしてみてください。
セミナー名 Blender基礎セミナー 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 27,500円〜 開催期間 2日間 受講形式 対面(東京・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング
②Maya

引用:Maya
Mayaは、Autodesk社が提供する3DCGソフトです。ハリウッドでも使用されている高性能ソフトで、特にVFXによく利用されています。
3Dアニメはもちろん、シミュレーションやモーショングラフィックスなど、さまざまな機能が備わっています。
また、Mayaでアニメーションを作る具体的な方法については、以下の記事を参考にしてください。実際の手順について詳しく解説しています。
③3ds Max

引用:3ds Max
3ds Maxは、Mayaと同じAutodesk社が提供する3DCGソフトです。アニメ業界や映画業界、建築業界など、さまざまな分野で活用されています。
プラグインが豊富に揃っていることや、今注目度が増しているVRやARの制作ができるのが特徴です。
3DCGアニメ作成におすすめの生成AI2選
3DCGアニメを作成する際、AIを活用すれば作業効率が格段に向上します。以下は、3DCGアニメ作成におすすめの生成AIツールです。
| ツール名 | 料金 | 特徴 |
| ①Sora2 |
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| ②ChatGPTatlas |
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これらのツールの特徴について見ていきましょう。
①Sora2

引用:Sora2
Sora2は、OpenAIが提供する動画生成AIです。初代のSoraと比較して物理演算の理解が高まったことで、破綻の少ない自然な動画を生成できるようになりました。
また、動画だけでなく音声も同時に生成できるため、高いクオリティでアニメを作成できます。
2025年11月現在、Sora2は招待制で一般公開されていないので、招待コードのない人は前モデルのSoraを使うことになります。以下の記事では、Soraの特徴やSora2との違いなどについて解説しているので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
②ChatGPTatlas
ChatGPTatlasは、OpenAIが開発したAI機能を統合したWebブラウザです。ChatGPTをブラウザで使用できるのが特徴で、これにより3DCGアニメ制作における情報収集の効率化を行えます。
2025年11月現在では、Mac向けに配信されていますが、今後はWindowsや携帯端末でも展開される予定です。
実際に3DCGアニメを作る手順
実際に、無料の3DCGソフトであるBlenderを使って、簡単な3DCGアニメを作る方法を解説します。どのような手順でアニメーションが作られているのかチェックしてみてください。
①モデリングを行う
まずは、立方体を組み合わせて簡単な人体のモデルを作成します。立方体の追加はShift+Aキーで可能です。

追加した立方体は、Sキーで大きさを調整し、Gキーで位置を調整しましょう。Rキーを使えば回転もできます。
また、腕と足はメッシュを分割しておくことで、滑らかな動作ができるようになります。必要に応じてオブジェクトを選択した状態で編集モードに入り、Ctrl+Rキーでループカットを入れましょう。Enterキーで確定する前に、マウスのホイールを転がして7分割にしてください。

後は、すべての立方体を組み合わせ、Ctrl+Jキーで統合したら簡易的な人体モデルの完成です。

また、Blenderのモデリング方法については、以下の記事で詳しく解説しています。人体モデリングに興味のある方は、ぜひこちらもあわせてチェックしてみてください。
②リギングを行う
モデリングが完了したら、次にリギングを行ってキャラクターを動かせるようにします。Shift+Aキーから「アーマチュア」を選択して、ボーンを追加しましょう。

追加したボーンはオブジェクトに隠れて見えないため、データプロパティの「ビューポート表示」の「表示」から「最前面」にチェックを入れてください。追加したボーンは、下部が足の先端に来るように移動させます。
続いて、編集モードで先端を選択した状態でGキーで股のあたりまで移動させます。

また、このボーンは全体を制御するものでメッシュの変形は不要なので、ボーンプロパティの「変形」のチェックを外しておきましょう。
その後、ボーンの先端を選択した状態でEキーを押し、首の位置まで押し出していきます。再度Eキーで頭まで押し出してください。

頭ができたら、胴体のボーンの先端をEキーで肩まで押し出します。そこから、腕まで再度Eキーで押し出しましょう。

胴体から肩までのボーンは不要なので、Xキーから「ボーン」で削除してください。腕のボーンは分割して肘を作成します。右クリックから「細分化」を選択してください。

最後に足のボーンを作成します。一番最初に追加したボーンの先端から、真横にEキーで押し出します。横に押し出したらそのまま下に押し出して、右クリックの「細分化」を行いましょう。

横に押し出したボーンはXキーの「ボーン」で削除しておきます。片方のボーンができたら、腕と足のボーンをすべて選択して、右クリックの「名前」から「自動ネーム(左右)」を選択します。
続いて、右クリックから「対称化」を選択すると、反対側にも左右対称のボーンが追加されます。次に、モデルとボーンが連動して動くように設定しましょう。
オブジェクトモードで、モデルを選択してからShiftキーを押しながら作成したボーンを選択してください。Ctrl+Pキーから「自動のウェイトで」をクリックすると、自動でボーンの影響範囲を作成してくれ、これによりモデルとボーンが連動します。
③ウェイトを修正する
リギングによってボーンとモデルが連動するようになったら、動きをより自然に見せるためにウェイトの修正を行います。オブジェクトモードでボーンを選択したら、Shiftキーを押しながらモデルを選択します。
その後、Ctrl+タブキーから「ウェイトペイント」を選択しましょう。画面右上の「オプション」から「自動正規化」にチェックを入れ、ツールパネルから「頂点グループをミラー反転」にもチェックを入れたうえで、Xをクリックして有効化してください。

次に、Altキーを押しながら胴体のボーンを選択し、右側の前面と後面の頂点を胴体が赤くなるまで頂点を複数回クリックして影響範囲を調整します。

④アニメーションを作成する
実際に、作成したモデルが万歳するアニメーションを作ってみましょう。画面上部のメニューから「アニメーション」タブを開いてください。
ツールパネルから「X軸ミラー」にチェックを入れたうえで、ボディに近い腕のボーンを選択し、GキーやRキーで腕を下した状態にします。

Aキーで全選択したら、Kキーから「位置・回転・スケール」を選択してキーフレームを設定しましょう。

次に、タイムラインの20フレーム目に移動し、腕のボーンを再度選択してRキーで腕を上げた状態にします。再びAキーで全選択し、Kキーから「位置・回転・スケール」を設定します。
続いて、1フレーム目のキーフレームを選択して「Shift+Dキー」で複製し、40フレーム目の位置に配置しましょう。最後に、タイムライン右下の終了を「50」に変更したらアニメーションは完成です。

スペースキーで再生して動きを確認してみましょう。

慣れてきたら、もう少し複雑なアニメーションにもチャレンジしてみてください。
Blenderを使った3DCGアニメ制作は奥が深く、詳しく学ぶことでより高度なアニメーションができるようになります。Blender基礎セミナーでは、アーマチュアやウェイトペイントなどの設定を基礎から学べるため、アニメーション作成の土台となるスキルを身につけられます。プロから本格的に学びたい方は、ぜひ当セミナーもチェックしてみてください。
視聴者に受け入れられる3DCGアニメを作るポイント
3DCGを取り入れたアニメは増えてきていますが、それでも「違和感がある」「気持ち悪い」「嫌い」といったネガティブな意見を目にすることがあります。これらの意見が出る大きな理由の一つが、物理現象の描写が不十分であることです。
例えば、服のシワが再現されていなかったり、髪の動きが不自然だったりすると、現実の動きとの差異から視聴者は違和感を覚えます。そのため、特にアップで描かれるシーンでは、質感や動きなど細部まで丁寧に作り込むことが大切です。
細部の完成度を高めることで、視聴者の違和感を軽減し、より自然で魅力的な3DCGアニメを作成できるでしょう。
3DCGアニメについてのまとめ
今回は、3DCGアニメ制作におすすめのツールや作り方などについて解説しました。3DCGアニメは、立体的な表現でさまざまな映像演出を可能にする技術です。
モデリングやリギングなどの工程を理解し、適切なツールを使いこなすことで、初心者でも本格的なアニメ制作に挑戦できます。さらに、AIの活用によって作業効率や表現の幅も大きく広がるため、ぜひ今回紹介したツールもチェックしてみてください。