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【2025】輸送コストが上昇している原因とは?左右される要素や削減する方法を解説

物流業界における「2024年問題」の深刻化に伴い、輸送コストは上昇の一途を辿っています。ドライバーの賃金上昇や人材確保のための費用増が企業の収益を圧迫しており、燃料価格の高騰なども輸送コストに大きな影響を与えているのです。

これらの問題を解決するためには、物流業界全体の構造改革が不可欠です。特に、中小零細企業が抱える課題解決を支援し、業界全体の競争力を強化することが求められます。

そこで今回は、輸送コストが上昇している原因や輸送コストが左右される要素、輸送コストを削減する方法を解説します。

輸送コストとは

輸送コストとは

輸送コストとは、商品が工場から消費者の手元に届くまでの間に発生する移動にかかる費用です。 トラックや船などの運賃はもちろん、商品を積み替えたり保管したりする際に発生する費用も含まれます。これらの費用は、商品が最終的に消費者に届くまでの物流コストの約60%を占めていると言われています。

輸送コストと物流コストの違い

輸送コストと物流コストは、どちらも商品や物資の移動に関わる費用ですが、その範囲と内容は異なります。輸送コストは、商品を運ぶことだけに焦点を当てた費用です。具体的には、トラックや船、飛行機などの運送手段や距離、荷物の重量や大きさ、輸送時間などが主な要素となります。

一方、物流コストは商品を製造から消費者の手に渡るまでの全ての過程でかかる費用で、輸送コストの他に、原材料の調達や生産、包装、保管、在庫管理、情報管理、仕分け作業の人件費など、物流に関わるあらゆる活動にかかる費用がすべて含まれます。

輸送コスト 物流における「移動」に特化した費用
物流コスト 企業が商品を顧客に届けるために支払う「総合的な費用」

輸送コストは、物流コストの中でも大きな割合を占めており、企業の利益に大きく影響を与えるため、効率的な輸送ルートの検討や最新の物流システムの導入など、さまざまな工夫が凝らされているのです。

物流コストについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】物流コストの改善が理由とは?効果的な削減方法をわかりやすく解説

輸送コストが上昇している5つの原因

輸送コストが上昇している原因は以下の5つです。

  1. 需要が増えたため
  2. コンテナが不足しているため
  3. 燃料の価格が上昇しているため
  4. 人件費が上昇しているため
  5. 2024年問題のため

以下でそれぞれを解説します。

需要が増えたため

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛やリモートワークの普及で、巣ごもり消費が加速し、BtoC向けの宅配便需要が爆発的に増加しました。この需要増は、ECサービスの利用を促進し、人々の購買行動をオンラインへとシフトさせるきっかけとなりました。

一度インターネットでの買い物に慣れてしまった消費者は、コロナ禍が終息した後も、その利便性から宅配便の利用を継続する傾向にあります。そのため、物流業界はかつてないほどの配送量増加に直面しています。

宅配便ドライバーの不足や過重労働などの問題が深刻化する中、コロナ禍はこれらの課題をさらに顕在化させたのです。物流業界は、この急激な変化に対応するため、新たな配送システムの構築や働き方改革など、さまざまな取り組みを進める必要があります。

コンテナが不足しているため

輸送コストの高騰の要因の一つとして、海上輸送におけるコンテナ不足が大きな影響を与えています。従来、海上輸送用のコンテナの多くは中国で生産されていましたが、米中間の貿易摩擦が激化する中、中国は対米輸出を減らしてコンテナの生産量を抑制しました。

この供給不足が、世界の海上輸送に大きな混乱をもたらし、輸送費の高騰を招いたのです。現在、コンテナの供給不足は徐々に改善されつつありますが、依然として輸送費の高騰は続いており、物流業界全体に大きな影響を与えています。

燃料の価格が上昇しているため

2022年に勃発したロシアのウクライナ侵攻は、世界的なエネルギー価格の高騰を引き起こし、物流業界に大きな打撃を与えています。特に、ロシア産原油の禁輸措置の拡大は、ガソリン価格の急騰を招きました。

ロシアは世界有数の産油国であり、その供給が不安定になることで、燃料費は大幅に上昇しており、輸送コスト全体が押し上げられる形となっています。また、輸送経路の安定性も、燃料費高騰の一因として挙げられます。

現状、この燃料費高騰の状況に終止符を打つ明確な解決策は見出されていません。物流業界は、この困難な状況下において、コスト削減や効率化を模索しながら、事業の継続に努めている状況です。

人件費が上昇しているため

物流コストの高騰には、人件費の上昇が大きく影響しています。特に、トラックドライバーの不足が深刻な問題となっています。

ECサイトの普及により宅配サービスの需要が急増した結果、多くのドライバーが過重労働や長時間労働を強いられる状況が生まれました。この過酷な労働環境が、多くのドライバーの離職につながり、結果的に運送業界全体で人手不足が深刻化しています。

ドライバー不足は人件費の上昇を招き、物流コスト全体の増加に繋がっています。

2024年問題のため

2024年4月から施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの年間時間外労働時間が960時間に制限されました。この新たな規制は、「2024年問題」と呼ばれる物流業界における人手不足問題をより深刻化させる可能性を孕んでいます。

労働時間の短縮は、必然的に輸送能力の低下を招き、物流コストの上昇に繋がるためです。特に、人件費は物流コストの中でも大きな割合を占めており、今後もドライバー不足が解消されない限り、その上昇傾向は続くでしょう。

2024年問題については以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】2024年問題を製造業が守らないとどうなる?できる対策や業務効率化を図る方法

輸送コストが左右される要素

輸送コストが左右される要素

輸送コストは、業界や企業によって大きく異なります。これは輸送距離や輸送手段、貨物の種類など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているためです。

以下で、輸送コストが左右される要素を詳しく解説します。

輸送する距離

輸送距離が長くなればなるほど、輸送コストが占める割合は大きくなります。長距離輸送においては、燃料費やドライバーの労務費といった費用が、全体の輸送コストに大きな影響を与えることが特徴です。

輸送の手段

輸送手段によって輸送コストの構成は大きく異なります。陸上輸送では、トラックによる運搬費用がコストの主要な部分を占めるのが一般的です。一方、海上輸送では、船舶運賃が輸送コストの大部分を占めるケースが多いと言えるでしょう。

輸送する荷物の特性

輸送コストは、荷物の重量や体積などの特性によって変動します。一般的に、大きく重い荷物や特殊な取り扱いが必要な荷物は、輸送に多大な費用がかかる傾向です。

輸送する時間

納期や輸送時間などの条件により、輸送コストは大きく左右されます。特に、短納期での配送や速達便などのサービスを希望する場合、通常よりも高い費用がかかることが一般的です。これらの追加費用は、輸送コスト全体に占める割合を上昇させる要因となるのです。

輸送ルートの組み合わせ

物流ネットワークが効率化されると、原材料の調達から製品の最終消費者への配送までの全ての工程がスムーズになり、輸送距離や時間が短縮されます。また、在庫の最適化や輸送手段の最適化も実現可能となり、輸送コストの比率を下げることができます。

組織の供給チェーン管理能力が高いほど、効率化しやすい傾向にあり、需要予測の精度を高めて在庫の過不足を防ぎ、輸送計画を綿密に立てることで、輸送コストを効果的に削減できるのです。

輸送コストを削減する方法

輸送コストを削減する方法

近年では、原材料費の高騰や燃料価格の変動など、様々な要因が重なり、輸送コストの増加が深刻化しています。そのため、いかに輸送コストを削減し、企業の収益性を高めるかが重要な課題となっています。

輸送コストを削減するには以下のような方法があります。

  • スポット輸送への変更
  • 混載便の活用
  • 配送先の状況把握
  • 時間の有効活用
  • トラックの積載率の向上
  • フェリー便への変更
  • 空荷での移動距離の削減
  • 在庫管理の最適化
  • 事故防止対策

それぞれを以下で見ていきましょう。

スポット輸送への変更

スポット輸送は、必要な時に必要な量の輸送を依頼する契約形態です。輸送量に合わせて柔軟に輸送手段やルートを選択できるため、輸送コストを抑える可能性があります。特に、輸送量が不安定な場合や、急な輸送依頼が発生する場合には、スポット輸送が有効な手段となるでしょう。

従来は、一定量の貨物を安定的に輸送することを前提とした定期輸送が行われていました。定期輸送は輸送量が見込まれるため、輸送単価を下げることで、荷主との長期的な取引関係を構築することができ、両者間の事務処理や連絡の手間を省くことができるメリットもあります。しかし、ECサイトのように輸送量が季節やキャンペーンにより大きく変動する場合は、定期輸送契約が必ずしも最適な選択とは限りません。

輸送コスト削減の手段としては、固定的な輸送量を保証できないため、定期輸送からスポット輸送への変更が挙げられるのです。ただし、スポット輸送は毎回運送会社との交渉が必要になるため、事務処理の手間が増え、運送会社の空き状況によっては、希望通りの輸送ができない場合もある点に注意が必要です。

混載便の活用

混載便とは、自社でトラックを丸ごとチャーターするのではなく、他の企業の荷物と一緒のトラックで輸送する方式です。複数の企業で燃料費や人件費などの輸送コストを分担することで、個々の企業は輸送費を大幅に削減できます。

しかし、混載便は複数の荷物を一つのトラックに積むため、配送ルートの最適化が難しく、配送に時間がかかるケースが多い点が難点です。そのため、納期が厳しく、迅速な配送が求められる荷物には適していません。

配送先の状況の把握

輸送コストの削減には、配送先の状況を正確に把握することが不可欠です。例えば、複数の荷物をまとめて運ぶ混載便を利用する場合、4トンと10トンのトラックでは、10トンの方が運賃が安くなります。トラックの積載量が増えるほど、1個あたりの輸送費用が低減するためです。

しかし、10トントラックで荷物を運ぶためには、配送先にも十分なスペースが必要となります。もし、配送先に10トントラックが入り込めないような状況であれば、せっかく安い運賃で契約しても、結局は別の手段で荷物を運ぶ必要が生じ、かえってコストが増えてしまう可能性もあるでしょう。

そのため、輸送手段を選ぶ際は、配送先のスペース状況や荷捌き能力などを事前に確認し、最適なトラックを選定することが重要です。配送先の状況に合わせて、より経済的な輸送手段を選択することで、輸送コストの削減につながるでしょう。

時間の有効活用

トラックの多くは夕方に荷物を積み込み、翌朝の配送に備えます。つまり、夕方の積み込みまでの間は、トラックが空荷のまま移動している時間が発生しています。この空いている時間を活用し、当日積み込み・当日配送の依頼に対応することで、輸送効率を大幅に向上させることができるのです。

例えば、ある地域へ配送するトラックが夕方の積み込み前に別の地域から依頼があれば、その荷物を積み合わせて運ぶというイメージです。この方法は、トラックの稼働率を向上させ、空車での走行を減らすことで輸送コストの削減に繋がり、運賃の引き下げにも貢献することが期待できます。

トラックの積載率の向上

ECサイトの隆盛により、個人向けの荷物配送が急増し、トラック輸送の積載率が平均40%程度まで低下しており、多くの空きスペースがあります。この未活用の空間を有効活用できれば、輸送コストを大幅に削減できる可能性があるのです。例えば、トラックの積載率を高めるために、様々な貨物の依頼を積極的に受け入れることができるでしょう。

時間的な制約や発注の手間は増えるかもしれませんが、その分、運賃を低く抑えることが可能です。船舶のコンテナ輸送においても、同様のことが行えます。

フェリー便への変更

距離当たりの輸送コストが最も安価な輸送手段は、海上輸送です。一般的に海上輸送は海外便のイメージが強いですが、国内ではフェリー便として利用することができます。

現在トラックや航空便を利用している場合は、フェリー便への切り替えを検討するのもおすすめです。さらに、海上輸送の中でもコンテナ便を活用し、他の企業と共同で輸送することで、より一層コストを削減することができます。共同便を利用することで、コンテナを満載にして、輸送効率を上げられるため、結果的に輸送単価を低く抑えることが可能です。

空荷での移動距離の削減

多くの配送トラックは荷物を目的地へ届けた後、再び拠点に戻る際に、荷台が空の状態であることが少なくありません。この「空車走行」は、燃料費の無駄遣いだけでなく、車両の摩耗を早める原因にもなり、結果的に輸送コストの上昇につながります。

この問題を解決するためには、空車走行距離を可能な限り削減することが重要です。例えば、片道運航契約を締結し、帰りの便は専門の業者に委託する方法があります。また、共同配送として自社で荷物をA地点からB地点へ輸送した後、B地点からA地点へ戻る便を別の企業と共同で利用することで、車両の稼働率を向上させ、コスト削減につなげることもできるでしょう。

ちなみに、これらの施策はトラック輸送だけでなく、船舶や航空機などの他の輸送手段にも応用可能です。

在庫管理の最適化

保管費を削減し、在庫管理を最適化するためには、商品の在庫を必要最小限に抑えることが最も重要です。倉庫内のスペースを無駄なく活用し、在庫の回転率を高めることで、保管効率が飛躍的に向上し、結果としてコスト削減につながるでしょう。

事故防止対策

輸送中に事故が発生すると、その対応や復旧に多くの時間と費用が費やされます。特にトラック輸送では、ドライバーが原因となる重大事故が全体の半数以上を占めるという深刻な状況です。この現状を改善するためには、ドライバーへの過度な負担を軽減し、飲酒運転を徹底的に排除するなど、安全な運行体制を構築することが不可欠です。

また、自社の配送だけでなく、外部の輸送業者に輸送を委託する場合にも、事故防止対策が適切に行われているか否かを厳しく見極める必要があります。

輸送コストは状況把握して備えよう!

輸送コストは状況把握して備えよう!

今回は、輸送コストが上昇している原因や輸送コストが左右される要素、輸送コストを削減する方法を解説しました。輸送コストは年々上昇の一途を辿っており、企業にとって大きな負担となっています。このコスト高騰は燃料価格や人件費の上昇、ネットショッピングの普及による需要の急増など、様々な要因が複雑に絡み合っている結果です。

さらに、2024年問題におけるドライバー不足は、物流業界にさらなるコスト上昇の圧力をかけ、企業は対応に迫られています。物流コストを削減するためには、抜本的な対策が求められます。対策を通じて、企業は物流コストの最適化を図り、経営の効率化に繋げることが期待できるでしょう。

輸送コストが上昇している原因とは?左右される要素や削減する方法を解説
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