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【2025】山留めとは?土留め工法との違い・工法の種類・設計検討の手順を解説

土木・建築工事で必要となる「山留め」について、どのような工法なのかイメージできずにいる人も多いでしょう。また、土留め工法との違いがわからないという人もいるはずです。

そこでこの記事では、山留めの概要や工事内容についてわかりやすくまとめました。
山留めの設計条件にも触れているため、はじめて山留めの検討をする方は参考にしてみてください。

山留めとは

山留の概要

山留めとは、地盤を掘削する際に周辺の地盤が崩れて、土砂が流れ込まないように対策する工法のことです。「やまどめ」という読み方をし、地盤を直掘りするときに山留を設けなかった場合、まわりの地盤が掘削した部分に流れ込んでしまう次のような事故を防ぐために用います。

  • 作業員や重機が埋もれてしまう
  • 設置した構造物が壊れてしまう

一方で掘削をする際に山留め工法を用いれば、地盤を崩すことなく工事を進行できます。
つまり山留めは、工事の安全を確保するために欠かせない対策であり、土木工事のほとんどで必要になることはもちろん、建築工事の基礎を施工する際に用いるものだと覚えておきましょう。

山留め工法と土留め工法との違い

山留め工法は、掘削工法・土留め工法・締め切り工法を含む仮設工事の総称です。

主に仮設工事の際に欠かせない掘削作業において、構造物の設置を円滑に実施するための準備のことを指します。単純に地盤を掘削する場合もあれば、深い部分を施工するために、仮設構造物を設置する場合があります。

山留めの種類

山留の種類

山留め工法の種類は大きく「掘削」「土留め」「締め切り」の3タイプに分類されます。
具体的な山留めの種類を下表にまとめました。

大項目 中項目 小項目 山留め工法の種類
山留め 掘削 地山自立工法
オープンカット工法
法付けオープンカット工法
土留め 開水性 簡易土留壁
親杭横矢板土留め壁
遮水性 鋼管矢板土留め壁
柱列式連続地中壁
連続地中壁
泥水固化壁
ソイルセメント壁
締め切り 遮水性 一重締め切り
二重締め切り

まず深さがほとんどない工事箇所や、広い施工ヤードを確保できる場合には、掘削工法で対応するのが一般的です。バックホウなどを使って必要範囲を掘削する場合もあれば、法面を設けながら仮設工事を進めるケースもあります。

次に、陸上で工事を実施する場合には土留め工法を採用します。
なお、地下水の高さが工事範囲外の場合は開水性、工事範囲内の場合には遮水性の工法を選択して施工を実施します。

もうひとつ、水中の仮説が必要な場合には、締め切り工法を採用します。
締め切り工法は河川や水路などと接する場合に利用し、水圧や土圧、ほかにも出水時などのタイミングを考慮して、一重締切、二重締め切りを検討しなければなりません。

山留め施工した箇所が倒れてきていないか、リアルタイムにスマホでも監視できる山留めウォッチャーを活用すれば、施工箇所の安全も簡単にキープできます。山留工法の詳しい特徴を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。

【2025】山留め工事とは?工法や安全な手順・施工前の注意点も紹介!

山留め工法を用いる現場

山留を用いる現場

山留め工法が必要となる現場の種類を整理しました。

  • 地盤高よりも低い場所に構造物を設ける必要がある現場
  • 施工中に河川・水路の水が入ることを防がなければならない現場

例えば前者は、建築物の基礎を設ける場合や、山間部に構造物を設ける場合などに必要です。
また後者は、河川護岸や水路構造物、橋梁下部工を施工する場合などに山留めを実施します。

なお、山留め工法は掘削工事とセットで必要になるのが一般的です。
すべて盛土で対応する現場以外は、ほどんどのケースで関わってくると覚えておきましょう。

山留めの設計手法

山留め工法の設計検討を実施する際には、あらかじめ対応できる掘削深さ、そして深さに応じて必要となる構造計算の手法を理解しておくことが重要です。

参考として、一般的に考えられる山留め工法の設計手法についてわかりやすくまとめました。

掘削深さと計算手法の関係

山留め工法は、必要となる掘削深さが変化することにより、安全性を確認する構造計算の手法が変化します。参考として、以下に計算手法の関係表を整理しました。

支保工の形式 掘削深さ 構造計算の手法
自立式 3.0m以下 弾性床上のはり理論
切ばり
アンカー
3.0m以上 小規模土留め設計法(慣性法)
3.0m超え30m以下 慣用法
10.0m超え30.0m未満 弾塑性法

掘削深さが大きくなるほど、対応しなければならない構造計算の手法が増えるのが特徴です。
なお、掘削深さと計算手法の関係は、地方整備局などによってルールが異なる場合があるため、事前に適用できる基準書を確認することをおすすめします。

荷重の組み合わせ

構造計算をする際には、さまざまな荷重を想定して安全性を確認しなければなりません。
参考として、山留め工法における荷重の組み合わせを下表にまとめました。

工法 検討項目 死荷重 活荷重 衝撃荷重 土圧 水圧 温度変化
山留め壁 根入れ長
支持力
断面
腹起し 断面
切ばり 断面
火打ち 断面

山留め工法は、設置した際の土圧・水圧だけではなく、施工中に重機が通る活荷重なども考慮しなければなりません。また季節によって変化する温度における変形なども考慮したうえで部材ごとの安全性を確かめることが重要です。

構造計算ソフトを用いて計算するか、仮設工事業者に山留の検討を依頼して安全性を確かめてみてください。

また、工事の振動を減らすことが山留め工法への影響を抑制することにつながります。
具体的な管理体制を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。

【2025】振動管理とは?手順やメリット・重要性について詳しく解説

山留め工法に用いる部材

山留の部材

山留め工法のなかでもある程度の掘削深さが求められる「土留め工法」「締め切り工法」の場合には、仮設用の部材を設置しつつ、土砂や水が施工範囲内に入り込まないように対策しなければなりません。参考として、山留に利用する主な部材とその特徴を以下にまとめました。

親杭・横矢板

山留に利用する親杭横矢板は最小300×300のH鋼(親杭)そして、木製の仮設矢板(横矢板)で構成される仮設部材です。主に直壁を設ける場合に設置し、親杭・横矢板を次のような手順でセットしていきます。

  1. 打設機・圧入機を用いて親杭を地盤に埋め込む
  2. 掘削に合わせて横矢板を親杭沿い設置していく

なお、掘削深さが大きい場合には、背面の土圧の影響を減らすために、後述する切ばり・腹起し・中間杭を設置することもあります。

鋼矢板

山留に利用する鋼矢板は、周辺が地上・水中のどちらのケースにおいても対応できる仮設部材です。主に圧入機・打設機などを使って地中に埋め込むことにより、内部を掘削できるようになります。

参考として、施工手順を以下にまとめました。

  1. 打設機・圧入機を用いて鋼矢板を地盤に埋め込む
  2. 鋼矢板を打ち込んだのちに内部を掘削する

また、鋼矢板についても深さを確保する必要がある際には、後述する切ばり・腹起し・中間杭を設置しなければなりません。
ただし、鋼矢板Ⅲ型の場合は3mまで、鋼矢板Ⅳ型は4mまで自立が可能です。

切ばり・腹起し・中間杭

中間杭・切ばり・腹起しは、それぞれ山留め工法の深さや広さを確保する際に用いる仮設部材です。

例えば、とある範囲を山留め工法のひとつである鋼矢板で対応するとき、掘削深さが小さければ鋼矢板単体を自立させるだけで背面の土圧・水圧に耐えられます。
一方で掘削深さが大きい場合には、その分だけ背面の土圧・水圧の影響を受けて、鋼矢板が変形してしまうでしょう。

そこで必要となるのが、一定の高さ・位置に支えを設ける対策です。

まず鋼矢板に沿って腹起しと呼ばれる鋼材を設置します。
続いて、鋼矢板と垂直方向に切ばりと呼ばれる鋼材を配置することで、土圧・水圧に耐える構造をつくり出せるのが特徴です。

ただ掘削する範囲が広い場合には、切ばりの長さが足りないことも多々あります。
その際には、掘削する範囲の内側に中間杭を打ち込み、複数の切ばりを支えられるように対策するのが一般的です。

バックアンカー

工事の種類によっては、切ばり・腹起し・中間杭があると工事を進められないというケースも少なくありません。このとき掘削範囲に何も仮設部材を設置したくなく、背面が土砂で構成されている場合には、バックアンカーと呼ばれる工法を利用できます。

バックアンカーとは、鋼矢板といった山留め材の背面の土砂のなかに摩擦力のあるアンカーを設置する工法です。アンカーを所定の長さも受けることにより、土圧の影響で摩擦力が生まれ、矢板に加わる土圧の影響を減らせます。

ただし、アンカーの設置に時間がかかるため、施工日数が延びることに注意しなければなりません。

山留め工法の検討手順

工事の際に用いる山留め工法を検討し、実際に図面・数量を出すまでの手順を以下にまとめました。

  1. 測量を実施して施工箇所の地盤高さを把握する
  2. 地盤調査を実施して構造物設置箇所の土質や地層ごとの設計条件を整理する
  3. 設置する構造物のうち最も深い位置を決める
  4. 山留め工法のうち対応できる工法を選定する
  5. 構造計算用の図面を作成して安全性を確かめる
  6. 必要な仮設部材の数量を算出して概算金額を整理する
  7. 施工計画を立てて必要な重機などを整理する

また、山留め工法を決める際には、発注者と打ち合わせをしながら工法を決定するのが一般的です。1つの工法だけを提案するのではなく、少なくとも3案分の山留め工法を提案してください。

比較表にまとめて施工の実現性や費用感を伝えることにより、スムーズに山留め工法を決定できます。

なお、上記手順の複数の場面で図面作成が必要となります。
設計に利用できる作図ツールを探している方は、キャド研の無料相談窓口までお問い合わせください。

山留めについてまとめ

山留めは土木・建築工事のほとんどで必要となる工法です。
掘削に伴い土砂が施工範囲内に流れ込まないように対策する必要があり、掘削深さがある場合や背面が水と接する場合には、仮設部材を用いて対策をしなければなりません。

条件に応じてさまざまな工法が用意されているので、ぜひ本記事で紹介した情報や基準書などをチェックしながら、山留めの基礎知識を深めてみてください。

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